河村尚子/ベートーヴェン:『熱情』、『ワルトシュタイン』、他

2019年08月01日 (木) 15:00 - HMV&BOOKS online - クラシック


ベートーヴェンの新しい世界を開示する、空前のピアニズム

【充実の「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト」の成果】
日本を代表する人気ピアニストとしての実績を着実に積み上げている河村尚子。2018年5月からは、「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト」として、自ら熟考を重ね選び抜いた楽聖ベートーヴェンによる14の珠玉のソナタを全4回シリーズで披露していくプロジェクトを始動させており、東京(主催:ジャパン・アーツ)、横浜(主催:青葉区民文化センターフィリアホール)、兵庫・西宮(主催:兵庫県立芸術文化センター/『河村尚子ベートーヴェン紀行』)、山形・白鷹町(主催:白鷹町文化交流センター)の4箇所を拠点に展開、さらに2019年4月にはその成果をディスクに刻んだ『ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集(1)悲愴&月光』をリリースし、「レコード芸術」誌・特選盤、「ステレオ」誌・今月の特選盤に選定されるなど、ベートーヴェンという作曲家に積み重ねられてきた伝説のヴェールを剥ぎ取り、脱神話化を図るかのような河村のアプローチが全く新しい解釈として高く評価されています。

【ベートーヴェン中期の4大ソナタを1枚に】
収録曲は、2大有名曲「熱情」「ワルトシュタイン」に加え、ベートーヴェンのソナタの中では4楽章構成の起伏のある第18番「狩り」と優美さが際立つ第24番「テレーゼ」。古今の名ピアニストたちが腕を凝らして蓄積してきたこれらのソナタにおける既成概念を軽々と乗り越えるかのように、河村は楽譜に書かれたメッセージを緻密、かつ誠実に音化していきます。一瞬一瞬が発見に満ち、まるで作品がその場で生み出される場面に立ち会うかのような経験ともいえましょう。あらゆる音符がしなやかに息づき、気品ある歌心が聴く者の心を捉えます。ポピュラリティの高さと内容の濃さを兼ね備えたアルバムとして、プレ・ベートーヴェン・アニヴァーサリーの2019年の大きな話題になること必至です。

【この秋最大の話題映画「蜜蜂と遠雷」でピアノ演奏を担当】
河村は、国際ピアノ・コンクールにおける若者たちの群像劇をリアルに描いた、作家・恩田 陸の直木賞受賞小説を原作とした映画『蜜蜂と遠雷』で主人公・栄伝亜夜のピアノ演奏を担当。2019年10月4日の公開を前に、早くも大きな話題を撒いています。(メーカー資料より)

【収録情報】
ベートーヴェン:
● ピアノ・ソナタ第18番変ホ長調 Op.31-3
● ピアノ・ソナタ第21番ハ長調 Op.53『ワルトシュタイン』
● ピアノ・ソナタ第24番嬰ヘ長調 Op.78『テレーズ』
● ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 Op.57『熱情』


 河村尚子(ピアノ/ベーゼンドルファー280VC)

 録音時期:2018年12月18〜21日
 録音場所:ブレーメン、ブレーメン放送ゼンデザール
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
 SACD Hybrid
 CD STEREO/ SACD STEREO

 プロデューサー:フィリップ・ネーデル(ベルリンb-sharpミュージック&メディア・ソリューションズ)
 エンジニア:ミヒャエル・ブラマン
 調律:ゲルト・フィンケンシュタイン


【河村尚子】
ハノーファー国立音楽芸術大学在学中の2006年ミュンヘン国際コンクールで第2位を受賞、翌年、クララ・ハス
キル国際コンクールで優勝を飾り、一躍世界の注目を浴びる。ドイツを拠点に、欧州で積極的にリサイタルを行う傍ら、ウィーン響、バイエルン放送響、チューリッヒ・トーンハレ管、サンクトペテルブルク・フィルなどと共演。室内楽では、C.ハーゲン(チェロ)とのデュオで知られるほか、M.ホルヌング(チェロ)とロンドン・ウィグモアホール、R.オルテガ・ケロ(オーボエ)とニューヨーク・カーネギーホールにデビューするなど、同世代の実力派アーティストたちとも積極的な活動を展開している。
 日本では、2004年東京フィル定期演奏会でデビュー。P.ヤルヴィ指揮NHK響など国内主要オーケストラと共演を重ねる傍ら、フェドセーエフ指揮モスクワ放送響、ルイージ指揮ウィーン響、ヤノフスキ指揮ベルリン放送響、ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルなどの日本ツアーに参加。その他、ノリントン、インバル、ラザレフ、テミルカーノフなど多くの指揮者から度々再演の指名を受けている。
 文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞、新日鉄音楽賞、出光音楽賞、日本ショパン協会賞、井植文化賞、ホテル・オークラ賞を受賞。主なCDに「夜想(ノットゥルノ)〜ショパンの世界」「ショパン:ピアノ・ソナタ第3番&シューマン:フモレスケ」「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番&チェロ・ソナタ」ほか、2018年4月にリリースした最新譜「ショパン:24の前奏曲&幻想ポロネーズ」がある(RCA Red Seal)。2018年5月より2シーズンにわたり、ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクトを日本各地で展開し、高評を得ている。これまで、ウラディーミル・クライネフ、澤野京子、マウゴルジャータ・バートル・シュライバーの各氏に師事。現在、ドイツ・エッセンのフォルクヴァング芸術大学教授。(メーカー資料より)
【ベートーヴェンは人間のあらゆる感情を表現〜河村尚子、大いにベートーヴェンを語る】
2018年5月、河村尚子は「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト」を開始した。計4回(2019年11月まで/年2回)でベートーヴェンのソナタ14曲を採り上げ、毎回、東京や横浜など数都市を巡るツィクルスだ。第2回の横浜(フィリアホール)公演を終え、折り返し点へ至った彼女に「河村尚子にとってのベートーヴェン」を聞いた。

―ベートーヴェンのソナタを、それもプロジェクトとして集中的に取り組んだのはなぜなのでしょうか。

きっかけは室内楽ですね。特にクレメンス・ハーゲンさん、マキシミリアン・ホルヌングさんとチェロ・ソナタを共演する機会があって、新しいインスピレーションやアイデア、衝撃的なエッセンスを得ることができました。それで、自分がピアノ・ソナタに向き合った時にどうなるか、試してみたくなった。
もう一つは、大学で得た経験です。今、フォルクヴァング芸術大学(ドイツ・エッセン)で教えていますが、学生たちは入学試験で古典派のソナタを弾かなければなりません。当然ベートーヴェンも含まれ、彼らの演奏について、同僚の先生方といろいろディスカッションをします。その中で、ベートーヴェンは自分のイメージよりもっと面白い作曲家じゃないか、と思うようになりました。
弦楽四重奏やシンフォニーを聴いた体験も大きいですね。弦楽器、そしてオーケストラではどんな響きがするのか、どんな解釈があり得るのか。ピアニストにとってベートーヴェンは避けては通れない作曲家ですから、折に触れて弾いてきましたが、義務的な感覚がありました(笑)。素晴らしい音楽だけれど、本当に好きかと問われると、正直なところ分からない。
でも今は、主張の強さ、しつこさ、画期的なアイデアなどに惹かれます。大好きなのは和声ですね。美しさ、重厚さ、その中に生まれてくる温かみ、優しさ、悲しさ。彼の和声には構成要素がいろいろあって、どの音を強調するとどう響くのか、様々な可能性があります。以前はそれを活かせなくて、つまらないと感じていたんですが、「この音をこう弾いたらどうなるか」と実験して、可能性を探るのが楽しくなってきました。
私はもちろんピアノを弾くわけですが、ベートーヴェンのソナタの場合はシンフォニーを演奏する感覚で弾いています。いつもどこかで、木管楽器が聞こえたり、チェロとコントラバスが掛け合いをしていたり、という感じですね。
ベートーヴェンはとても正直な音楽だと思います。考え抜いた上で、余計なものを全部捨て去り、ストレートに進んでいく。特に、中期以降の作品は凝縮された曲が多いですね。耳が聞こえなくなって孤独だったこともあるのでしょう。自分の世界だけを映していて、外との接触がない感じがすごくします。とても熱くて、悲しみもある。

―ピアノ・ソナタ全曲を演奏することは考えなかったのでしょうか。

全曲を演奏するにはもっと時間がかかりますね。2年ではなく5年。それと、更なる努力も必要(笑)。ソナタ全32曲には、私がまだ手掛けていない曲もありますので。逆に、レパートリーにあっても今回は弾かない曲もあります。
今の私が挑戦したいものとして、14曲を選んだ、ということですね。この14曲を弾き終えた時点で、自分がどういう地点へ到達できるかを見たい気持ちがあります。
今回は、全曲やらなくてもいいかな、と思いました。なぜかというと、今の私に合わない曲だってあるわけです。無理をせず、自分が好きな曲を選んで、どこまでハイ・クオリティへもっていけるかに挑戦しようと。もちろん全曲やった方が、ベートーヴェンのいろいろな面を見ることができます。とても勉強になるだろうと思いますが、今はその時期ではないかなと。

―Vol.2まで、8曲のソナタを弾いた手応えはいかがでしたか。

改めてベートーヴェンを好きになりました。ベートーヴェンという作曲家に近づけた。それが私にとって重要なポイントですね。テンポ設定やペダリングをはじめ、自分の奏法としていろいろな実験をしてみて、どうすれば良い響きがするか、どんな演奏効果が上がるか、成果を得られた8曲だったかなと。
これまでロマン派を中心に弾いてきて、優美さや美しさを意識してきた傾向がありましたけれど、音楽はそれだけではない。醜さやえげつなさも音楽だなと。人間自体が、美だけでは存在してないわけですから。
やはり、ベートーヴェンは人間のあらゆる感情を表現できた作曲家ですね。正直に作曲した人だ、と最初に申し上げましたが、クラシック音楽の長い歴史の中でも、ここまで人間の存在を全面的に表現できた作曲家はいなかったのではないかと思います。

〔2018年11月 東京〕 取材・文/友部衆樹(メーカー資料より)
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