【インタビュー】Felix Martin

2019年06月01日 (土) 23:30

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南米ベネズエラから、新時代を担うギタリストが世界へと羽ばたく。フェリックス・マーティンのワールド・デビュー作『カラカス』は、16弦ギターを両手タッピング、ベネズエラの伝承音楽を縦横無尽に弾きまくる斬新なプログレッシヴ・ラテン・ジャズ・メタル・アルバムだ。

その唯一無二のギター・プレイの原点とその進化、そしてギター・ミュージックの未来について、フェリックスが雄弁に語った。


ー16弦ギターを両手タッピングする独自のギター・スタイルは、どのように編み出したのですか?

16弦ギターといっても、1本のネックに2つの指板があるんだ。ある意味、ツイン・ネックに似ている。だから、それほど珍奇でもないんだよ。裏から見れば、1本のネックだけどね。チューニングもレギュラー・チューニングだし、決してギミックではなく、俺の中では理に適ったスタイルなんだ。


ー現在のスタイルに至るまで、紆余曲折は経てきましたか?

最初はフェンダーやアイバニーズの6弦ギターから始めた。それからもっと自由が欲しくなって、アイバニーズの7弦を弾くようになったけど、それでも満足出来なかったんだ。それで2本のギターを同時に弾くようになった。ただ、そうするとボディが2つあって邪魔だろ?1本のギターに2本のネックを付けるようになって、それから1本のネックに2つの指板を付けるようになったんだよ。7弦や8弦ギターの低音部を念頭に置いたスタイルが好きなんだ。今でも6弦ギターは弾けるけど、限界を感じるし、6弦に戻ることはないだろうね。ただ、自分の中で“16弦ギターだぜ、クールだろ?”とは考えていない。多弦ギターを弾いているという感覚がないんだ。それよりギターを2本弾いている感じかな。2つの手で1本ずつギターを弾いているんだ。

ースティーヴ・ヴァイやマイケル・アンジェロのように、2本のネックが別方向に向かっているギターを弾いたりはしませんか?

いやあ、弾いたことがないな。2本のネックが別々の方向を向いていると、右と左をキョロキョロしなければならないだろ?それは俺には難しすぎるよ。俺のスタイルだと、2つの指板が同じ方向を向いているから、ひとつの視界に入る。マイケル・アンジェロは見事にこなしているし、リスペクトしているけど、同じことを自分がやりたいとは思わないな。

ーインドのシタールや日本の琴など、外国の多弦楽器を弾いたことはありますか?

どちらも弾いたことがないけど去年、中国に行ったとき、現地の弦楽器を弾いてみたよ。日本の多弦楽器にも興味がある。ぜひ日本に行って、琴を弾いてみたいね。

ーメタルというとパワー・コードのバッキングが魅力のひとつですが、両手タッピングでバッキングを弾くことでダイナミクスをどのように出していますか?

メタルにおいてパワー・コードが必要不可欠だとは思わないな。それよりも必要なのはエネルギー、そして精神的な熱気だよ。「La Vaca Mariposa(ザ・バタフライ・カウ)」が良い例だ。最初からメタルなノリがあるけど、初めてパワー・コードが入るのは30秒を経過したところだ。(4)「Querencia」もイントロはパワー・コードではなく、強くタッピングしているんだ。ほとんどスラッピングに近い感じでね。


ーどんなギタリストから影響を受けてきましたか?

俺はベネズエラのバルキシメトという田舎町で生まれ育ったから、少年時代にはインターネットも普及していなかったし、 メタルのCDやレコードを扱っている店も小規模なものだった。だから耳に入ってくる音楽はすべて聴くようにしてきたんだ。それで、いろんな音楽が好きになった。だから好きなギタリストを挙げるのは難しいな。パット・メセニーからはギタリストとして多大な影響を受けた。彼は十代の頃にデビューして、60歳を超えた今でも最前線で活躍している。俺もそうありたいと考えているんだ。ジョー・サトリアーニからも十代の頃から影響を受けてきたし、ギタリスト以外ではパナマのルーベン・ブラデスからインスピレーションを受けてきた。

ー両手タッピングで影響を受けたギタリストはいますか?

基本的に独学で、アルバム『カラカス』で弾いたようなベネズエラや近隣諸国のポピュラー・ソングやフォルクローレをタッピングで演奏しながら自分のスタイルを確立したけど、スタンリー・ジョーダンからは影響を受けたね。俺はいわゆるジャズ・ギタリストではないし、音楽性ではまったく異なっているかも知れない。でもスタンリーはタッピングに革命をもたらしたよ。彼とは2015年、テキサス州オースティンで会ったことがある。バックステージで一緒に写真を撮ったんだ。その数日後にその写真をSNS経由で送ったら、「君がフェリックス・マーティンか!君のプレイは聴いたことがあるよ。素晴らしいね!」と褒めてくれた。俺のことを知っているというのに驚いたし、嬉しかったよ。残念ながら、その後は直接話す機会がないんだ。NAMMショーで彼の演奏を見たりしたけど、声をかけたりはしなかった。

ー現代のギター・ミュージックが置かれている状況について、どう思いますか?メインストリームのヒット・チャートにおいてギターが占める割合が低下して、ギブソンやギター・センターの経営難が話題になっている一方で、新しい世代のギタリストも登場していますが...。

2019年は、ギター・ミュージックにとって良い時期だと思う。1980年代にテクニカル・ギターのブームがあったのと同じように、ここ最近5年も、ギターへの注目が高まっている。アニマルズ・アズ・リーダーズやCHON、ポリフィアなどが世界をツアーして成功を収めているんだ。新しいシーンがあって、新しい需要があるのは嬉しいことだよ。昔のシュレッドに文句があるわけではないけれど、あのスタイルは過去のものだ。イングヴェイ・マルムスティーンみたいに弾いても、「凄いね、でもそれはイングヴェイが35年前にやったよ」となってしまう。これから俺たちが新しいギター・ミュージックを創っていくんだ。一過性のブームに終わらせてはならないよ。


ー過去のギタリストは、どれぐらい昔まで掘り下げていますか?

ジョー・サトリアーニ、スティーヴ・ヴァイ、イングヴェイ...彼らはみんな凄いね。ジミ・ヘンドリックスが偉大なのは判るけど、あまり聴き込んではいない。エディ・ヴァン・ヘイレンの「暗闇の爆撃 Eruption」は知っているし、オリジネイターとしてリスペクトするけど、特に影響は受けていない。クラシック・ロックはあまり聴いていないんだ。

ー両手タッピングではナイト・レンジャーのジェフ・ワトソンが1984年に「ロック・イン・アメリカ」で8フィンガー・タッピングを披露していますが、彼のプレイを聴いたことはありますか?

...うーん、名前も聞いたことがない。判って欲しいのは、決して過去に対するリスペクトがない訳ではないんだ。ただ、自分が生まれる前の曲だし、子供の頃にあまり音楽を聴くことが出来なかったから、馴染みがないんだよ。ぜひ機会を見て聴いてみるようにするよ。

ーあなたの音楽を表現するのに、しばしば“プログレッシヴ”という語句が使われますが、プログレッシヴ・ロックからの影響はありますか?

ドリーム・シアターやプラネットXは大好きだし、影響を受けてきたよ。俺のアルバムを聴いて、彼らと共通する要素があるかは判らないけどね。それより前の世代のプログレッシヴ・ロックは、正直よく知らないんだ。ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾンなどを聴き込む機会は今までなかったし、代表曲以外は知らないけど、いずれじっくり聴きたいと思っている。サンズ・オブ・アポロは“プログレッシヴ”の範疇なのかな?彼らとは去年(2018年)一緒にツアーしたよ。マイク・ポートノイとビリー・シーンは最高のミュージシャンであり、素晴らしい人たちだった。彼らと友達になることが出来て、自分のやってきたことが間違っていなかったと確信したよ。いつか彼らと共演することが出来たら最高だね。

ーアルバム『カラカス』ではベネズエラに伝わる伝統的な楽曲、フォルクローレなどをプログレッシヴ・ラテン・ジャズ・メタルのスタイルでプレイしていますが、そのコンセプトはどのようにして生まれたのですか?

今、俺はロサンゼルスに住んでいるけど、生まれ故郷のベネズエラのことは常に考えている。ベネズエラは今、独裁政治や経済危機で難しい状況にあるし、祖国の友人やファミリーに捧げる作品にしたかったんだ。それともうひとつ、トータル・アルバムというものが好きなんだよ。YouTubeやSNSで自分の曲を発表するミュージシャンも多いけど、俺はオールドスクールな“アルバム”という単位にこだわりたいんだ。前作『Mechanical Nations』(2017)ではディストーションを使わずにタッピングの可能性を追求したし、『Human Transcription』(2015)ではアドルフ・ヒトラー、ベニート・ムッソリーニ、チャーリー・チャップリンなどの演説を採譜して、音楽作品として発表した。クレイジーなプロジェクトだったよ。『カラカス』は自分の音楽的ルーツを探求するアルバムであり、自分の新しい可能性を発見する作品でもある。日本の音楽ファンにぜひ楽しんでもらいたいね。

取材・文:山ア智之




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