【全曲解説】 Mardelas 『Ground ZERO』

2019年05月23日 (木) 17:00

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全曲解説テキスト by 蛇石マリナ(Vo) 及川樹京(Gt)



1. Time of Tribulation

(Music:Mao)


リードトラックが「Apocalypse」に決まった段階で、今作のオープニングは王道HR/HMの様式美を踏襲したいと決めていました。
例を挙げるならAngraやHelloween、Gamma Rayのアルバムのイメージですね。
Maoくんにそんなイメージを伝えて書いてもらいました。最高にリードトラックが際立つSEになりました。(及川)


私からはリードトラック「Apocalypse」のテーマを伝えてMaoくんなりに解釈してもらって作ってもらいました。樹京の方で方向性がある程度イメージがあったようなので二人にお任せしました。「Apocalypse」への繋がりも秀逸ですし、素晴らしい作品の幕開けになったと思います。(蛇石)


2. Apocalypse

(Music:Kikyo Oikawa / Lyrics:Marina Hebiishi / Arrange:Kikyo Oikawa)



アルバムのオープニングを飾る王道のHR/HMナンバー。こんなにストレートで良いのかなと思うくらいストレートですね。
今作は実は原点回帰というのが自分のコンセプトで、今まで避けてきたストレートな表現もどんどんやってしまおうと思いこの曲を書きました。
ミュージシャンとして大人になることがかっこいいと思っていた時期を乗り越えて、もっと素直にすべてをさらけ出すのが自然体でかっこいいじゃんってやっと思えるようになりましたね。
そんな今だからこそ作れた曲です。もちろんその間に洗練されたものがあるからこそ、この完成度で作れたってのもありますけど。
リフは3種類出てきて、ギターソロは3回あります。間奏の転調は敢えてドキッとするように少し強引に作りました。
キーボードでMaoくんが参加しているのもあり、ギターとキーボードのソロの掛け合いのセクションがあります。ソロにおける弦楽器と鍵盤楽器のアプローチの違いも意識して聴いてもらえたら面白いかなと思います。(及川)


3rdアルバム『Mardelas V』制作中に樹京からリフだけ聴かせてもらっていたんですが、その時点で只ならぬオーラを放っていた曲です。当時はすでにリード級の曲が続々あがっていたこともあり、次作のリード曲候補として3rdアルバムには入れませんでした。とにかくリフのインパクト、ギターとキーボードのソロバトル、そしてフック満載の歌メロなど、アルバムの顔となるに必要な素質を兼ね備えたキラーチューンに仕上がったと思います。
デモが上がった点ですでにリードトラック最有力候補だったので、テーマに関してはかなり考えました。アルバムのキーヴィジュアルにそのまま直結するので、カッコよさやインパクトも重要ですからね。まず1stアルバムからずっとシリーズ化されている“魔界都市新宿歌舞伎町シリーズ”が前回のコンセプトアルバムのテーマそのものであったため、今回はどうしようかと。継続する選択肢もありましたが、音楽的に“原点回帰”がテーマであると同時に、ゲストミュージシャンとコラボすることで新しいアプローチを狙いたかったことを踏まえ、“じゃあ一度全部壊してしまおう”ということになりました。ただ今まで流れと辻褄の合わないことはしたくなかった為、前作は時代設定が現代だったのに対し、今作は現代〜近未来、“魔界都市の崩壊”とすることで、これまでの流れを汲みつつ全く新しい世界観を作ってみました。
“終末”をテーマにしたもので最も参考にしたのは“The Walking Dead”です。観たことある方はわかると思うんですが、ゾンビをテーマにしつつあくまでもヒューマンドラマなんですよね。ああいった世界の終焉で、人間らしさや理性を保ちながら生きるってすごく難しいことだと思うんです。それは現実の世界でも同じで、大災害だったり戦争だったり、今も世界のどこかで起こっている異常事態全てに共通して言えることで。そんな異常事態の中でむき出しになる人の性を歌おうと思った時に、それが音楽業界で抗う自分たちにも重なったんです。特にメタル業界は保守的だったりカテゴライズしたがる人も多くて、新しいことをやれば必ず叩かれますし、業界自体正直言ってクリーンな世界だとは言えないと思います。
テンポを上げるだけ上げて音数増やしてシャウトでもいれておけばいいでしょ、みたいな型に嵌った曲を作った方がうけるのも事実で、でも表現者として心を売るような真似をして自分は納得できるんだろうか?そんな厳しく不条理とも言える世界で、Mardelasはどう“自分らしく”アーティスティックに生きていたいのか、“アポカリプス”の世界観はあくまでもそれのメタファーなんです。(蛇石)


3. Cleopatra

(Music:Kikyo Oikawa / Lyrics:Marina Hebiishi / Arrange:Kikyo Oikawa)


こちらもリードトラック候補だった1曲。樹京らしい作曲で、オリエンタルで妖艶な独特の雰囲気とどこまでもキャッチーなメロディが特徴だと思います。イントロの雰囲気からエジプトの女王クレオパトラ7世を連想し、クレオパトラと私のシンボルが同じ“蛇”であることもあってテーマを決めるまでにはそう時間はかかりませんでしたが、クレオパトラという具体的なイメージを使ってどんなメッセージを提示するか等、作詞自体はかなり時間がかかりました。大きなテーマは二つあって、“男と女の生き方の違い”、“真実と真相”というところですね。
冒頭の“月夜の砂の宮殿/密謀に包まれし甘い誘い”はクレオパトラが自らを絨毯に包んで、カエサルのもとへ贈り物として届けさせ誘惑したとされる有名なシーンで、対して2番の“落陽照らす闘技場/滅亡の駆け引き凌ぐ剣闘士”はローマの英雄であり、クレオパトラと恋に落ちた男マルクス・アントニウスを表していることは、何となく感じてもらえるのではないでしょうか。
クレオパトラの名言とされている“国を支配しているのは男。その男たちを支配しているのは私”。悪女として語り継がれている一方で、愛に生きた女とも言われていたりします。彼女の墓が未だ発見されていないことと同じように、史実として語り継がれていることの真相は今となっては誰にもわかりません。エジプト側とローマ側で語り継がれる彼女のストーリーは当然違いますし、歴史は常に勝者が語ることが真実とされがちです。世間で真実とされていることは本当に真相なのだろうか。普通に生きていてもあることないこと言われたり誤解されたりすること、皆さんもきっとあると思います。そういう部分に自分を重ねながら作詞しました。
ちなみにBメロの歌詞が特に気に入っていて、“男は在り方に拘り/女は手段を問わず” という部分は男女の対比をうまく表現できたと思いますし、サビ前の決め台詞である“bend the knee”は私の最も好きな海外ドラマ『Game of Thrones』からの引用です。(蛇石)


この曲も「Apocalypse」に続き自分が作曲で、リードトラック候補でした。
疾走感のある8ビートとキャッチーなサビが特徴のとてもMardelasらしい曲です。
とてもストレートなんだけど、ところどころエスニックな雰囲気もあり、独特な空気感のある個性的な楽曲になりました。マリナの歌詞のテーマもバッチリハマってますね。
ギターソロは強いて言うならNIGHT RANGERっぽい、LAメタルなイメージですね。これも自分のルーツをストレートに表現しました。
自分は特にキャッチーな曲を書くときはただのポップな曲にならないように気をつけてます。山椒のようなピリッとした何かを必ず入れるようなイメージ。
この曲もとにかくギターソロからキーボードソロへの流れがとても綺麗です。必聴!(及川)


4. Outsider

(Music:Marina Hebiishi / Lyrics:Marina Hebiishi / Arrange:Kikyo Oikawa)


“平家物語”の引用から始まり、カタカナや英語を織り交ぜたスタイルは純日本人として生まれ、多民族国家シンガポールで育った私のごちゃまぜアイデンティティそのものです。 もともと実体験をもとに作詞するのが私のスタイルではありますが、“Streets of Tokyo, Streets of Marina Bay”と実際の地名を入れることで、より色濃く自己投影しました。(※Marina Bayとはシンガポールの地名。)その全英語で歌っているCメロは私の中では、ギターソロならぬボーカルフェイクソロパートとしていて、この曲で個人的に一番気に入っている部分です。
私が尊敬するアーティストの一人、STINGの曲「Englishman In New York」の影響もあって、歌詞を書き始める際の仮タイトルは“Singlishgirl in Tokyo”でした。
“I'm an alien, I'm a legal alien I'm an Englishman in New York”や、“Be yourself no matter what they say”というサビの歌詞が有名ですが、“A gentleman will walk but never run”という歌詞を聴いた時、NYというせかせかした街でも英国紳士は絶対に走ったりしないものだ、無理に街に染まろうともしないし自分が何者であるかを常に忘れない、そんな表現をたった一行で表せる才能に感銘を受け、また共感したのを覚えています。自分の生い立ちに置き換えて考えてみて、私はもっと迷ったり苦しんだりしたなと思っていたので、彼の歌詞の人物像とはかなり違いますが、私なりの“Singlishgirl in Tokyo”を描いてみました。作曲面でもいろんなジャンルを融合させてそんなごちゃまぜ感を表現したい気持ちがあったので、その意図を完璧にくみ取ってくれた樹京は本当に心強いアレンジャーだなと改めて実感しましたね。(蛇石)


この曲は、作曲はマリナで自分はアレンジ全般を手掛けました。
メタル、ヘヴィネスっぽいリフから入りメロディックに展開していくのですが、この曲は完成してからすごいなと思うところがありまして。
アレンジのイメージとしては色んなジャンルが各セクションに潜んでる感じで作りました。
例えば、ゴリっとしたリフで入るのにサビは少しジャズっぽかったり、間奏も1回目はワウで速いフレーズを弾き倒してるのに2回目は少しオシャレだったり。
そんな中完成した歌詞の内容を聞いて、アレンジのイメージとぴったりだったのでびっくりしました。とても深い曲になったなと思います。
ギタリストとして器用になると何をすれば良いのか見失いそうになるときもあるけど、ジャンルに囚われず好きな音楽全てを表現するのが自分だなと改めて思いました。(及川)


5. Redline

(Music:Marina Hebiishi / Lyrics:Marina Hebiishi / Arrange:Kikyo Oikawa)


“Redline”とはエンジンが最高速度に振り切った状態。レーシングゲームなどに合いそうだなと思い、迷いなく自分に真っ直ぐに生きる様をカーレースに例えた楽曲です。作曲していた段階でBメロは英詞の仮歌詞が頭にあったためセクションまるごと英詞にしました。どの曲にもいえることですが、曲の個性を最重要視し、あくまでも日本語詞にこだわる上で英詞とのバランスにはかなり気を遣いました。作詞作曲共に、「Outsider」では自分らしさにこだわったのに対し、この曲はストレートさを追求出来たと思います。迷いやコンプレックスをテーマとした「Outsider」から“迷いに終止符を”という流れにしたかったので、曲順も完璧にハマりました。所謂アルバムの中での希望の光の部分ですね。世界の終焉という背景があるからこそ、そんな1曲が必要だと思って書きました。私にしてはかなりポジティブで直球な歌詞に仕上がったと思います!(蛇石)


この曲もアレンジを担当いたしました。
「Outsider」よりはストレートですね、でも所々変化球があってどこか新しいみたいな。
自分としては珍しくギターソロでアドリブのテイクをそのまま採用しました。
とにかく疾走感があって聴いてて気持ちいい曲にしたかったので、間奏もそのまま突っ走るイメージで弾きました。我ながら勢いはすごいなと思います(笑)。同じフレーズを丁寧に弾いたら成立しないなーと。(及川)


6. Coma

(Music:Marina Hebiishi / Lyrics:Marina Hebiishi / Arrange:Marina Hebiishi, Kikyo Oikawa, Mao)


自分の武器である感受性を出来る限り放出すべく、全エネルギーを使い歌いきった曲です。作曲した段階からどんな風に歌いたいかのイメージがしっかりあったんですが、そうなると自分の中でハードルどんどん上がっていくので、頭の中にある理想形をどう超えていけるか、とにかく自分との戦いでした。実際落ちサビ部分は本当に涙を流しながら歌っています。思わず泣いてしまったので、その後落ち着いた状態で綺麗なテイクも録ってみましたが、やっぱり自然に込み上げる感情を素直に歌ったテイクが一番良かったです。メンバーにも、歌入りのラフミックスを聴いてもらった時に“すごく感動した”って言ってもらえて、“伝わったんだ……!”と実感できて嬉しかったです。心と歌を直結させるのは簡単なようでとても難しいことなんです。感情だけでも技術だけでも人の心には響きません。だから今回は感情の波に限りなく寄り添い心の底から歌う事ができたことで、表現力の限界を一つ超えることができたのではないかと思います。
作曲に関しては、コード進行とメロの響きにはすごくこだわりましたし、自分の歌唱の持ち味を最大限生かせるようなメロディを追及しました。アレンジは自分がオーケストラに入ってた経験もあって、オケとバンドサウンドを融合したような壮大で広い世界観にしたかったので、樹京とMaoくんにも手伝ってもらった結果、今回だからこそ成立する最高のフィナーレになりました。
ちなみに作詞面では、先述しました“The Walking Dead”へ感謝と愛を込めて、2曲目「Apocalypse」の歌詞が“Walk”から始まり、この曲の最後の歌詞が“Dead”で終わっている、という小ネタにもこだわっていたりします(笑)。ネタとしても“The Walking Dead”からの引用がありますが、ネタバレになってしまうので気になる方はシーズン9の5話を見てくださいね(笑)。タイトルの“Coma”とは“昏睡状態”という意味で、“こんなに辛いことが起こるなんて酷く悪い夢を見ているんじゃないか”とか、“幸せすぎて私本当に生きてる?”とか、良い意味でも悪い意味でもとても信じ難いことを目の当たりにした状況を歌っています。まさに“アポカリプス”の世界で生きていかなくてはいけなくなった絶望だったり、そんな残酷な世界で人の温かさや愛に触れた瞬間、そんなイメージですね。
そして曲名の文字数が1曲目から6曲目にかけて少なくなっていく、という字面にも小さな仕掛けがあります。グラウンド“ゼロ”に向かって、といった感じですね。曲の流れもそうですし、そういった視覚的な文字の並びをとっても、私の中ではこの曲順以外はありえなかったです。(蛇石)


この曲はマリナ作曲で、Maoくんと共に少しアレンジを手伝ってます。
デモをもらったときは海援隊かな?と思いましたが、完成したら全然違いました。
今作は7弦ギターを全曲で使っていますが、この曲が一番低い音を弾いてるかもしれません。
重くしたいというよりはキーによって軽くなってしまう音域をカバーするというイメージですね。
結果的にはいい感じにどっしりしたなと思います。
この曲はとにかく泣けますね。歌詞も良いし、メロも良い。
間奏のギターソロは落ちサビに向けて一番盛り上げないといけないセクションなので、そんな泣ける歌に負けないように感情を込めて弾きました。(及川)


Mardelas 『Ground ZERO』

GENRE:HARD ROCK, METAL
紅一点、蛇石マリナ率いるMardelasの最新作は
骨太HR/HMサウンドとシアトリカルな世界観が融合した濃厚な全6曲を収録

前回、“愛憎と欲望渦巻く新宿歌舞伎町を舞台とした任侠ドラマ”という、インパクト満点のコンセプト・アルバムでリスナーの度肝を抜いたMardelas。そんな彼らが、近未来の黙示録的な出で立ちのアー写で、装いも新たに新作EPを完成させた。今作は、LIGHT BRINGERのキーボーディスト Maoをゲスト・アーティストとして招いており、キーボードの演奏だけでなく作曲やアレンジにも参加している。そのため、サウンドの厚みや深みが増し、これまで以上にスケール感がアップした印象だ。蛇石マリナ(Vo)が描く感情豊かで濃厚な詞世界と、原点回帰の骨太HR/HMサウンド、そしてふんだんに盛り込まれたキーボードにより開かれた印象のサウンドで、新機軸を打ち出した作品となった。
山本 真由【ライター推薦】


グラウンド・ゼロ

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価格(税込) : ¥2,592

発売日: 2019年05月22日

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