【インタビュー】LUCER

2019年02月13日 (水) 20:00

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デンマークの若きロック・バンド、ルーサー。テュー・マドセンがミックスを手掛けたセカンド・アルバム『ゴースト・タウン』がリリースになるということで、色々と話を聞いてみた。バンドはラッセ(Vo, Ba)、アンダース(G)のボグマーク兄弟と、ジョナサン(Dr)、クリストファー(G)の4人編成である。

川嶋未来(以下、川嶋):ニュー・アルバム『ゴースト・タウン』がリリースになりますが、デビュー・アルバムと比べてどのような点が、進歩、変化したと言えるでしょう。

クリストファー:俺だね。

ジョナサン:(笑)。確かにクリストファーが加わったからね。やりたかったことは、2018年にいた位置から一歩踏み出すことだった。何か違うことにチャレンジしたかったんだ。以前よりも、もっと色々な影響を取り込みたかった。このアルバムでは、音楽自体にどのような方向に進むべきか指示させたんだ。どういう音楽が良いのかを、頭で考えて探るのではなくてね。そこがファースト・アルバムと最も異なる点だと思う。

川嶋:タイトルの『ゴースト・タウン』には、どのような意味が込められているのですか。

クリストファー:俺たちは、それぞれみんなコペンハーゲンの郊外で育ったんだ。クリストファーは、また別のところの郊外だけれども。だからゴースト・タウンというのは、俺たちが育ったところのことなんだよ。アルバム・ジャケットには、バックにデカくて退屈で陰鬱な建物が写っているよね。あれは、実にコペンハーゲンの郊外らしい建物なんだ。

川嶋:歌詞の内容はどのようなものなのですか。

ラッセ:例えばタイトル曲は、コペンハーゲンの中心地に住んでいないと、アウトサイダーという感覚になるということについて歌っている。だけどそれを悪く取るのではなく、自分の育ったところを受け入れるということさ。退屈なところかもしれないけれども。基本的に、このアルバムの歌詞は、ルーサーについてだよ。ここ数年、俺たちが経験してきたものについてさ。そして同時に、それはミュージシャンと自分たち自身という2つの顔のコントラストについてでもある。つまり「自分vs自分の化身」みたいな、2人の人間についての物語さ。歌詞は、人生の中で化身が優勢になっていく状況を巡って展開していくんだ。正しいこと、良いことをするということに関する闘いに勝ち、初めできると思っていたことを乗り越えて行くという描写だよ。

川嶋:先ほど少し話題に出ましたが、クリストファーが2人目のギタリストとして加入しています。メンバーを加えた理由は何だったのでしょう。

ジョナサン:そもそもは、ライヴ・パフォーマンスをより良いものにしたいと思ったんだ。サウンドをもっとマッシヴにしてね。3人だけではそれは難しかったから。それで、とても仲の良かったクリストファーに声をかけたんだ。彼はずっと「もしセカンド・ギタリストが必要だったら声をかけてくれ」って言っていたし。最初はライヴ・ギタリストというつもりだったのだけど、1年くらい一緒にプレイして、正式にメンバーになってもらったんだ。

川嶋:ルーサーの結成は何年ですか。

ジョナサン:2012年だよ。

川嶋:その後EPをリリースしたとするソースもありますが。

ジョナサン:厳密にはデモを出したんだ。だけどデモのことは随分と宣伝をしたからね、EPということになっているけれど(笑)。

川嶋:「Lucer」というのはどのような意味なのですか。

ジョナサン:フランスのモペッドからとったんだ。古い「ルセール」というブランドがあってね。ロゴがとても気に入ったので、読み方を変えてバンド名にした。覚えやすいし(笑)。

川嶋:バンド名の読み方は、「ルーサー」で良いのですか。

ジョナサン:その通りだよ。

川嶋:今回のアルバムでは、ハードロックからパンク、レゲエに至るまで、さまざまなスタイルの音楽からの影響が感じられますが、無理やりにでもカテゴライズするとしたらどうなりますか。

ジョナサン:おそらくパブ・ロックと呼ぶのが良いんじゃないかな。やっぱりカテゴライズするのは難しいよ。さっきも言った通り、自然に湧き上がってくる音楽に従ってできたアルバムだからね。

川嶋:そもそものみなさんの音楽的バックグラウンドはどのようなものなのでしょう。

ジョナサン:俺は子どもの頃クラシックをやっていたんだ。オーケストラに入っていて。だけど譜面を見て演奏をするというのにうんざりして、ロックをプレイするようになった。それでこのメンバーでバンドをやるようになったんだ。

ラッセ:俺も似たようなものさ。放課後に、ユースセンターのようなところでギターを弾いたり、バンドをやったり。マイクとか、レコーディング機材も揃っていたからね。

クリストファー:俺はハードロックやメタルがバックグラウンド。コペンハーゲンに引っ越してきたあとは、グラム・メタルのようなバンドをやったりしていた。今はルーサーにいる(笑)。

川嶋:影響を受けたバンドはどのあたりですか。

ジョナサン:ラッセが答えた方がいいよ。

ラッセ:今回のアルバムに関して言うならば、トゥウェンティ・ワン・パイロッツ、イマジン・ドラゴンズ、それからデンマークのニュー・ポリティックスとかだね。何か新しいものを作りたかったし、ロックンロールの未来を見据えてアルバムを作ったから。過去を振り返るのではなくね。だから、今挙げたみたいな、最近のバンドから影響を受けている。もちろんAC/DCのような古いロックンロール・バンドからの影響も受けているけれど、モダンなサウンドもミックスするようにしているのさ。

川嶋:タイトル曲はレゲエっぽいですが、これはザ・クラッシュあたりからの影響なのでしょうか。

ラッセ:そうだね、やっぱりクラッシュからの影響はある。だけどさっきも言ったように、「この曲はクラッシュっぽくしよう」みたいに意図的に作ったわけではないよ。

川嶋:モータウン・サウンドからも影響を受けているとのことですが。

ラッセ:モータウンからの影響は大きいよ。自分たちのサウンドを広げる上で、俺たち自身が好んで聴く音楽を取り入れているわけだけど、中でもモータウンは重要な要素さ。インスピレーションを得るために、ちょっと違う音楽も聞いてみたりしているんだ。20曲もロックンロールを書けば、たいていアイデアは尽きてしまうからね。「ミラー・オブ・ア・マン」みたいな曲を聴いてもらえばわかるけど、モータウンの音楽は非常に新鮮だったよ。色々と取り入れるアイデアがあった。行ったことのない土地に行くような経験だったね。

ジョナサン:もし俺たちがシンプルなロックの曲だけを書き続けたとすると、何枚かアルバムを出したところでインスピレーションは尽きると思うんだ。俺たちはエアボーンみたいな新しいロック・バンドも好きだけれど、彼らはもう5枚も同じ内容の作品を出してるよね(笑)。

アンダース:ちょうど良いタイミングだと思うよ。デビュー・アルバムをリリースして、みんなが"Second Coming"(=キリストの再臨)を待っている。デビュー作の延長になるのか、新しい方向性になるのか、いずれにせよね。俺たちは変化を選んだのさ。

ジョナサン:その方が楽しいしね。チャレンジを続けるというのは楽しいよ。もしまた同じロックの曲を10曲入れたのだとしたら、俺たちは音楽的に進歩していないということさ。

川嶋:バイオグラフィーには、ディスコからの影響という記載もありました。ただ、聴いていてそのような影響はわからなかったのですが。

ジョナサン:そうなんだよ。実は俺たちもわからない(笑)。レーベルの誰かが、PCを前にして狂ってしまったのかも(笑)。

川嶋:元ホワイト・ライオンのマイク・トランプのバックバンドを務めていたとのことですが、どのような経緯だったのでしょう。

ジョナサン:俺たちがディスコから影響を受けていると書いたレーベルが(笑)、彼らはたくさん良いこともしてくれてるんだよ。マイクと引き合わせてくれたということもその1つさ。ある日俺たちのリハーサルスタジオに、レーベルのオーナーが来たんだ。「サプライズがあるよ、シークレットゲストを連れて来た」って。まあ、俺たちはそれが誰なのかわかってたけど(笑)。マイクは俺たちの演奏を聴いて気に入ってくれて、それ以来彼が俺たちの師匠であり、コーチになった。それから確か半年くらい経って、マイクのバンドがツアーに出ることになった。それで、若いバックバンドを試してみたらどうなるだろうということで、俺たちが選ばれたんだ。とてもうまく行ってね、結局丸2年も彼のバックバンドを務めたのさ。とても良い経験になったし、マイクのファンが俺たちのファンにもなってくれた。

ラッセ:マイクは音楽業界のことを色々と教えてくれたし。

ジョナサン:今でも困ったことがあると、マイクに電話して、「マイクお願いだ、どうすればいいか教えてくれ」って(笑)。


川嶋:ルーサーの音楽は、デンマーク的だと思いますか。

ジョナサン:君はどう思う?

川嶋:それがデンマークのものであるかはわかりませんが、北欧的な哀愁は強く感じます。

ジョナサン:デンマークは寒くて暗いからね(笑)。故意にスカンディナヴィア風にしようとは思っていない。特にファースト・アルバムでは、スカンディナヴィアっぽい部分は多かったと思うけど、わざとではないんだ。だけど、周りの人間や気候から影響を受けないというのは容易なことではないだろうからね。暗くて青いアルバム・ジャケットは、確かにスカンディナヴィア風かもしれないし(笑)。

川嶋:デンマークのロック・シーンはどんな感じですか。

ジョナサン:少なくともロック・シーンに関しては、ここ数年とてもヘルシーでポジティヴになって来ていると思うよ。Spotifyのようなストリーミングのサービスは、若い新しいバンドに居場所を与える効果をもたらしている一方で、競争はさらに激しくなってるんじゃないかな。誰でも良いレコーディング機材を使うことができるしね。バンドはたくさんいるから、状況は厳しい。だけど一般的にみて、これは良い傾向だと思う。

川嶋:ルーサーは普段どのようなバンドと一緒にプレイしているのですか。なかなかピッタリくるバンドを見つけるのが難しいのではないかと思うのですが。

ラッセ:基本的にはレーベル・メイトだね(笑)。だからハードロックやメタルのバンドが多い。

ジョナサン:アルバムを聴いてもらえればわかると思うけど、確かに俺たちのスタイルにパーフェクトに合うバンドを見つけるのは難しいんだよ。だけど俺たちにはロックのバックグラウンドがあるからね。ハードロックのバンドと共演すると、彼らのファンも俺たちの音楽を気に入ってくれるんだ。今はやっぱりハードロック系のバンドとやることが多いね。

ラッセ:来年は、もっと違うジャンルのバンドともやってみようと思ってる。ファンベースを広げるためにもね。

川嶋:ニュー・アルバムのリリース後の具体的な活動は決まっていますか。

ジョナサン:デンマーク・ツアーやフェスティヴァルの出演のアレンジをしているところだよ。もちろんアルバムも出るし、ビデオもあと3本公開する予定さ。アルバムに収録しなかった曲もあるから、それを仕上げるかもしれない。これまで散々ツアーをやって来たわけだけど、来年はちょっとライヴの本数は減らすかもしれない。その代わりライヴ1本の価値を上げるよ。ライトやサウンドも徹底して、より完璧なロックのショウにしたいと思ってるんだ。

川嶋:お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

ジョナサン:クリストファーから行ってくれ(笑)。まあいいや、俺から行くよ。ナンバー1は、『Night at the Opera』。クイーンね。ナンバー2はフー・ファイターズの『Wasting Light』。ナンバー3は難しいな。どうしよう。フー・ファイターズをもう1枚かな、いや待て、オアシスの『Be Here Now』。

ラッセ:俺に最も大きな印象を与えたアルバムは、ニルヴァーナの『Nevermind』。それからセックス・ピストルズの『Never Mind the Bollocks』。 ジョナサン:もう1枚"Never Mind"で行けるかな(笑)。

ラッセ:デッド・ケネディーズの車が燃えてるやつは何だっけ。

川嶋:『Fresh Fruit for Rotting Vegetables』です。

ラッセ:それそれ。

アンダース:俺はラッセに完全に同意(笑)。3枚とも同じでいいよ。

ジョナサン:さすが兄弟(笑)。

クリストファー:ガンズ・アンド・ローゼズの『Appetite for Destruction』。それからア・パーフェクト・サークルの『eMOTIVe』。あとはディジー・ミス・リジーのファーストだね。

川嶋:では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

ラッセ:俺は日本の漫画やアニメが大好きなんだ。ワンパンマンの第2シーズンを楽しみにしてる。あれは最高だよ。

ジョナサン:やあみんな、俺たちはデンマークのルーサーだよ。ぜひ日本でプレイしたい。『ゴースト・タウン』、ぜひ聴いて見てくれ。タイトルトラックのビデオは、俺たちのホームタウンで撮影されたんだ。

インターネットを検索してみても、あまり情報が出てこない謎のバンドであるルーサーだが、本国デンマークでは、ビールのCMに起用されたり、マイク・トランプのバックバンドを務めたりと、大きな活躍を見せている。インタビューでは故意ではないと言っているが、やはり北欧のバンドらしい哀愁あふれるメロディは、日本人の感性にピッタリ。テュー・マドセンも、「すべての曲がヒットになる可能性を持っている」と太鼓判を押す『ゴースト・タウン』。ぜひメタル・ファンのみなさんにも聴いて頂きたい。

取材・文 川嶋未来



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