【ライブレポ】 HMV GET BACK SESSION シアターブルック『Tropopause』@渋谷WWW

2015年7月2日 (木)

「悪そうな奴が少なくなった渋谷で」

ほぼ時間どおりにメンバー達がステージに登場。無言のまま、歪んだギターのイントロからドラムの一音で広大な世界が広がる「俺の手にはギター」。浮遊するサウンドとタイジ氏の歌声が、フロアの意識を一気に引き込む。低音が効いた激しいサウンドの「悲しみは河の中に」になだれ込むと、フロアは一気にヒートアップ！タイジ氏も「あれからだいぶ経つ渋谷で　悪そうな奴が少なくなった渋谷で」とシャウト。その熱を保ったまま、名曲「まばたき」へ。果たしてここにいるどれだけの人がこの曲に救われたことだろう。18年前の自分もその一人だったけど、未だヘッドフォンから聴こえてくると何度もリピートしてしまう曲。“さあ　今ここを旅立つのは勇気がいるぞ”と歌うサビでは観客が待ちかねたように手を高く挙げる。まるでその言葉を手に受けとめようとしているかのようでまぶしい。そして水滴が落ちるようなイントロの「曼珠沙華」。ドラムの沼澤さんが凄く楽しそうな笑顔で様々な音を重ねていて、思わずこちらも笑顔に。

interlude曲も完全に再現、しかも生音で！

ここから中盤はシアターブルックの世界に深く潜っていく。「透き通らず」ではノスタルジックなピアニカで異国にトリップ。オールファルセットのボーカルもバッチリ再現。「Bring Some Water」では絶妙なリズムとギターのカッティングでフロアを横に揺らす。そして「If you want tell him」へ。そう、今回は曲間に差し込まれていたinterlude曲も完全に再現、しかも生音で！再現ライブならではの贅沢な醍醐味。「乾き過ぎた風」では青いライトに染まったステージとタイジ氏の泣き出しそうなシャウトに引き込まれ、畳み掛けるギターのイントロが最高な「捨てちまえ」で再びフロアが熱狂！周りから「ヤバい」「カッコいい」と声が上がる。

来るか来るか……来た！シークレットトラック！

「カウント９」で“どんなにあいつが強くても　どんなにあいつが速くても　俺は絶対ブッ倒す！”と、ストイックなボクサーのようにタイジ氏が叫ぶとフロアは最高潮。そしてついに最後の曲「けものみち」。ヒーローも教師もいない、自分でけもの道を歩いて行け、と最後に聴き手の背中を押すこの曲が終わっても、フロアは静まりかえったまま。なぜならアルバムではこの曲の後、シークレットトラックが入っていたのだ。来るか来るか……来た！MCを一切行わず、最後まで完璧にアルバムを再現！粋な計らいに大満足の拍手の中、メンバーは一旦ステージを降りる。

『Tropopause』を振り返る事が、新作に繋がった

アンコールの手拍子の中、登場したのはInter FMの番組『Love On Music』でタイジ氏と共にDJをしているジョー横溝氏。タイジ氏も呼ばれ、しばしトークタイム。このアルバムが作られた1997年を振り返りつつ、「当時は予算も沢山あって、丁寧に緻密に作ったアルバムだった。それを思い出して、ゆるんじゃいかん、と今度出すニューアルバムも緻密に作った」とタイジ氏。7/29に発売されるニューアルバム『LOVE CHANGES THE WORLD』ではレコーディングに使うあらゆる電力をソーラーでまかなった、ということで「レコーディングに使ったマンションの屋上にソーラーの機材を置くため、自分で管理事務所に交渉に行った」と裏話も。豪華なゲスト陣の名前を挙げていくたびに客席が「オオー」とどよめく。
そして、今日だけの“ボーナストラック”としてアンコールに演奏したのは、シングル「捨てちまえ」のカップリングだったレア曲「カミツレと黒い山羊」と、ニューアルバムではゲスト全員で歌ったという「もう一度世界を変えるのさ」。

「やっぱこのアルバム名盤だな」

「今回の名盤再現ライブをやってよかった。当時の調子のよかった日本、調子のよかったシアターブルックを見返すきっかけになった」とタイジ氏。終演後のロビーでは「やっぱこのアルバム名盤だな」「カッコよかった」といった声があちこちから聞こえ、笑顔があふれていた。特別なライブを目撃できた幸せな余韻は、まだ当分続きそうだ。