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【連載】 森は生きている 「コラム」 第六回 「影響」(6)-リズムと言葉(2)-

2014年12月26日 (金)

森は生きている
連載「コラム」

森は生きている、メンバー全員登場の「無人島〜俺の10枚」が、めでたく完結し、今度はなんとコラムの新連載。アルバムへの理解を深めるサブテキストのような連載をどうぞお楽しみに!毎週金曜夕方更新を予定しています。

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第六回 「影響」(6)-リズムと言葉(2)-

 (前回からの続き)
 「コップに入った水をこぼさないように渡る」「板に置いたボールを転がさないよう平均台を渡る」という視点から言うと、大滝氏の初期のキャリアである『ゆでめん』で既に成功を見て取れる。「かくれんぼ」では、言葉がメロディーに乗って、スローな8ビートの中を絶妙に縫っていく。あたかも『日本昔ばなし』のオープニングの竜のよう。竜はもちろん一体の生き物で、途中で切れていない。
 「十二月の雨の日」の歌唱も絶妙であるが、これは言葉自体のリズムと、曲構成の絡みも面白い。まず、イントロは茂さんのご挨拶。いきなりの転調でA。「水の匂いが」「眩しい通りに」「雨に憑かれた」「人が行き交う」言葉だけを見ても連歌にも通ずるようなリズムを感じるが、それぞれが一つのリズムだとして(それぞれを一つのリズムと感じさせる大滝氏の成功は上記の通り)、それぞれの間の断絶こそがリズムを産み出し、音楽と交われる原動力となっているように思える(息継ぎをせずに歌ってみれば瞭然)。Bでは、風がふいに起こって、Cでは、自分もその場にいるだろう。ギターでの描写説明を挟み、もう一度同じ構成が繰り返され、茂さんのご挨拶で幕を閉じる。言葉一つ、Aだけ、曲全体、どこを見ても、断絶と再開が繰り返され―それはリズムに乗せられ、とも言えるかもしれない、不思議な時間と各々の心象風景を生み出すだろう。
 少し話がそれたが、大滝氏の歌唱法がどこから生まれたのかと考えると、中学時代からプレスリーなどのシングルを揃え、それを作曲家別に分類し、死後コレクションがCDになってしまうような氏であるからに、海外の音楽からの影響は間違いなく強いであろう。では、それら海外の音楽での言葉がリズムに乗っていく感覚はどこから来たのだろうか。それは、恐らくそうであったから仕方なかったという世界な気がする。「apple」が何故「apple」なのか、「赤」はどうして「赤」いのかという話。そうでなければ自然と違和感の出てくる事象。(語源を探って深い意味を感じることや、リズムを遡ってアフリカに辿り着き研究することももちろん必要なことではあるが。)大滝氏が日本語で歌う時にどこまで意識的であったかはもうわからないが、中学時代から聴いたそれらのシングル盤の感覚が当たり前のところまで行っていたことは推測できる。出会ったことがないものに出会った時の衝撃が、憧れに変わるとしたら、体現するには当たり前のところまで突き詰めて、そうでないものに違和感を感じるまで至らせることは基礎でもあるだろう。(それを基礎にせず、アイデンティティにまで持って行くと、落とし穴にはまることもあるだろう。大きな時間に敬意を払わず、新しいことをした気になるほど愚かなことはない。芥川龍之介が、コラム第一回でも紹介した『文芸的な、余りに文芸的な』で書いていたが、1mmでもはみ出したら大事件なのである。そういったところで、自分はあえて日本語と実験に帰ってきたつもりである。まだ見ぬ大きなイメージを秘めた高校生に伝えたい。コピーは絶対にしたほうがいい。自分がなくなる直前までやったほうがいい。直前でやめる意味も感じて欲しい。自分もまた、ある部分では同じところに一生いるつもりでいる。)
 また、違和感を感じられることは一つのセンスだとも思う。映画『ブライアン・ジョーンズ』で、プールでブライアンがサラグッドに、チェケレを振らせ、「もっともっと」「よし、それだ」と言うシーンには、映画とは言え彼のワールドワイドなセンスを感じた。最近、ツチヤニボンドのレコーディングに参加したが、土屋氏の作曲の仕方、録り方にも同じようなセンスを感じた。
 最後に、これを書いている最中、ツイッターの大滝詠一botで面白い会話が紹介されているのを見つけたので、共有したい。こういう感じ好きだなぁ。

詠一「やっぱりね、詞は理解して歌わないと...」
幸之助「それはでも...やったら、"カレン"なんか大変じゃないですか」
詠一「"カレン"は...どうしたんだっけか?ま、フラレてっからいいじゃない」
https://twitter.com/each_bot/status/545791003982983168

それでは、よいお年を。もう少し続きます。

(続く)
森は生きている 増村和彦(Dr.etc.)



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【連載】 森は生きている 「コラム」 
森は生きているが1stアルバムのさらに上いく圧倒的完成度のセカンドアルバム『グッド・ナイト』を発売した。アルバムの発売を祝し、メンバーによるコラム連載がスタート!アルバムへの理解を深めるサブテキストのような連載をどうぞお楽しみに!毎週金曜夕方更新を予定しています。

第一回 : 「影響」(1)-序- | 第二回 : 「影響」(2)-幼少期のこと- | 第三回 : 「影響」(3)-リズムのこと- | 第四回 : 「影響」(4)-リズムのこと(2)- | 第五回 「影響」(5)-リズムと言葉- | 第六回 「影響」(6)-リズムと言葉(2)-


『グッド・ナイト』 森は生きている [2014年11月19日 発売]

『グッド・ナイト』 森は生きている 予てよりバンドが血肉化してきた数々の有機的な音楽遺産に加えて、このセカンドアルバムでは、サイケデリックロックや、時にはプログレッシブロック〜アヴァンギャルド的な語法も交えつつ、枚挙するに戸惑われるほどの数多の要素や音楽美が溶かし込まれている。レコーディング〜ポストプロダクションにおいてもバンドの完璧主義が全面的に敷衍され、ベーシックトラックに於けるアナログテープ録音から、様々な楽器音・電子音の重層的配置、更にはリーダーの岡田拓郎自らによる偏執的とも言える精緻かつ玄妙なミキシング作業までを通して、生鮮と爛熟が奇跡的にバランスする、圧倒的な音楽世界が作り上げられている。そして、ファーストアルバムでも独自の美意識を薫らせていた歌詞表現も更に奔放な羽ばたきを得て、音像と詩的心象がただ一つに融解していくように、聴くものを幻夢の世界へと誘い混む。それは恰も、歴史に晒されながらも清廉を保つ芳醇なシンフォニーのようでもあり、かつてモンパルナスに集った吟遊の芸術家集団による狂騒歌のようでもあり、老練の工人によって紡ぎ出される生活歌( ブルース) のようでもあり、そして、いつか見た未来を朧気に映し出す幻燈の静寂音のようでもある。2014年という時代に屹立する、森は生きているという純音楽集団にしか創り出し得ない圧倒的名盤にして孤高の作品が、ここに誕生した。

【HMVオリジナル スペシャル音源特典】
森は生きている「early tape of “グッド・ナイト” vol.2」CD-R

[収録内容]
1.プレリュード demo
2.青磁色の空 demo

※特典は無くなり次第終了となります。ご購入前に必ず商品ページにて特典の有無をご確認下さい。

『グッド・ナイト』収録楽曲

  • 01. プレリュード
  • 02. 影の問答
  • 03. 磨硝子
  • 04. 風の仕業
  • 05. 痕跡地図
  • 06. 気まぐれな朝
  • 07. 煙夜の夢 (a,香水壜と少女 / b,空虚な肖像画 / c,煙夜の夢(夜が固まる前))
  • 08. 青磁色の空
  • 09. グッド・ナイト

森は生きている プロフィール

岡田拓郎(Gt.,etc.) /竹川悟史(Vo.,etc.) /谷口雄(Pf.,etc.) /増村和彦(Dr.,etc.) /大久保淳也(Flute,Reeds, etc)
柔軟な吸収力と表現力を武器に、滋味豊かでいて瑞々しい独自の音楽を生み出す「純音楽楽団」、森は生きている。
2012年、リーダーの岡田拓郎を中心に東京で活動を開始。その年の末、ファーストCD-R「日々の泡沫」を発表し、自主制作盤にもかかわらず各レコード店にて軒並みソールドアウトを記録。2013年にはP-VINE RECORDS よりファースト・アルバム『森は生きている』をリリース。音楽シーンを代表する作品として各界から高い評価を得、発売を記念して行われた各地でのリリースツアーも大盛況のうちに終える。その後もさまざまなイベントやフェスへ出演するなど活発な活動を繰り広げる中、2014年にはファースト・アルバムのアナログ盤をリリース、それに合わせバンド初となるワンマン公演を東京渋谷WWW にて大盛況のうちに開催。11 月には待望となるセカンド・アルバム『グッド・ナイト』をリリースする。
カントリー、ソフトロック、サイケ、スワンプロック、アンビエント、モンド、トロピカル、ジャズ、ブルース、アフロ、クラシック、現代音楽etc…数々の音楽遺産を深く咀嚼しつつもあくまで現代的な表現として昇華する有機的且つ先鋭的なプロダクション、卓越した演奏、そして仄かに文学の匂いが薫る歌詞世界。森は生きているの奏でる音楽が、時代の心象を儚く切り取るように、そこここへ満たされていく…。

http://www.moriwaikiteiru.com/


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無人島 〜俺の10枚〜 【森は生きている 連載編】 一覧 
森は生きているが1stアルバムのさらに上いく圧倒的完成度のセカンドアルバム『グッド・ナイト』を11月19日に発表する。アルバムの発売を祝し発売日に向け連載された『無人島 〜俺の10枚〜 【森は生きている 連載編】』

第一弾 : 増村和彦 | 第二弾 : 谷口雄 | 第三弾 : 大久保淳也 / 五野上欽也 | 第四弾 : 竹川悟史 | 第五弾 : 岡田拓郎

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発売日:2014年11月19日

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