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【連載】 森は生きている 「コラム」 第二回 「影響」(2)-幼少期のこと-

2014年11月28日 (金)

森は生きている
連載「コラム」

森は生きている、メンバー全員登場の「無人島〜俺の10枚」が、めでたく完結し、今度はなんとコラムの新連載。アルバムへの理解を深めるサブテキストのような連載をどうぞお楽しみに!毎週金曜夕方更新を予定しています。

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第二回 「影響」(2)-幼少期のこと-

 今回を書く時点でもまだ『グッド・ナイト』は発売されていない。せっかちな性格に加え、発売週はレコ発ライブとアルバムとは別のプロジェクトに追われる予定とあって、早めに原稿を仕上げるしかないといった次第。太宰治が何かで、「遅筆は小説家の恥」と言っていたし、自分は小説家ではないが、歌詞を書く中で思い当たる節もあるので、せっかちな性格の言い訳としたい。

 幼少期はとても不思議な時間であったと記憶する。いや、記憶がそう訴え、美化して、ありもしない不思議を幼少期の記憶にしているだけかもしれない。でも、幼少期に、「自分はどうして生まれたんだろう」「目の前の何もない部分はなんなんだろう」などと考えていたことや、その思いが進行するにつれ自分が今ここにいないような感覚に陥っていた経験は、今の仕事をしようと思った発端の部分であるように思う。今思えば、言葉にはしにくいが、浮遊感というか郷愁というかそういうものにいつも忠実であったと同時に、ちょっと音楽をかじり知ったかぶって周りに満足できないとほざいていた高校時代よりも、周囲に疑問を持っていた。そういうことは長く忘れていたように思うが、大学時代ドラムからパーカッションのほうに興味が移っていったことはそこに起因している気もするし、森は生きているが始まってからはそれに意識的になって、歌詞の題材の一部にしたりもした。時期が来たというわけだ。
 幼少期の不思議は、作品に直接表現されていなくとも多くの芸術家がベーシックに抱えているものであるだろうし、実際に作品のテーマになっていることも多い。クレオール文学の旗手パトリック・シャモワゾーの『幼い頃のむかし』は、そういう議題に客観的になって説明を加えつつも、詩的に昇華している面では稀有な存在である。テーマというものは説明してしまえばそれまでのものである。或いは端から研究書や評論として成り立たせる方法を採るだろう。シャモワゾーのその小説も大半は私小説風に幼少期の出来事が語られていく(カリブ海の魅惑の世界観に、またこの本を知るきっかけとなった大江健三郎の『晩年様式集』の言葉をかりれば「森の世界の表現」に、美しさを覚え幻惑されると同時に、やはりカリブらしい素朴な視点にクスっとさせられる。)が、冒頭では、テーマの説明自体が詩を生んでいるとも、詩がテーマを隠しきれずにそれが強く飛び出ているとも取れる。誰もが本当は感じているはずの、特に素朴な土地であればあるほど意識しないところであふれている不思議を、言葉で表現するということは、カリブ出身でフランス国籍の作家らしいとも言えるかもしれないが、初めて読んだ時には、記憶の跳梁が先行し、言葉が言葉として入ってこなかった。読了と同時にタイトルから想起される時間に思いを馳せると、昔感じたここにいないような感覚に捉われた。
 浮遊感に捉われた幼少期の自分は、3mほどある家の塀の上を歩いたり、阿蘇山の火口スレスレを歩いたり、波止場の海スレスレを歩いたり縄止めに立ったり、傍から見ればただのやんちゃ坊主であったが、特に水の中は最もお気に入りで、9月に入っても川に連れて行けと祖父にねだったり、5歳の時スイミングスクールに通わせてくれとねだったりした。『イン・ザ・プール』という映画で、水に憑かれた会社員が仕事中堪らずトイレの流しに水を貯めて心を鎮めるシーンは、痛いほど共感できた。そういえば、1stアルバムが発売された時に何かの記事で、「いかにもスポーツ嫌いの歌詞が辛い」と書かれたことがあった。その記事に何の反論もないが、浮遊感が昂じて小学校時代は毎年水泳の大会で県で上位だったことだけここに記しておく。
(続く)
森は生きている 増村和彦(Dr.etc.)



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【連載】 森は生きている 「コラム」 
森は生きているが1stアルバムのさらに上いく圧倒的完成度のセカンドアルバム『グッド・ナイト』を発売した。アルバムの発売を祝し、メンバーによるコラム連載がスタート!アルバムへの理解を深めるサブテキストのような連載をどうぞお楽しみに!毎週金曜夕方更新を予定しています。

第一回 : 「影響」(1)-序- | 第二回 : 「影響」(2)-幼少期のこと-


『グッド・ナイト』 森は生きている [2014年11月19日 発売]

『グッド・ナイト』 森は生きている 予てよりバンドが血肉化してきた数々の有機的な音楽遺産に加えて、このセカンドアルバムでは、サイケデリックロックや、時にはプログレッシブロック〜アヴァンギャルド的な語法も交えつつ、枚挙するに戸惑われるほどの数多の要素や音楽美が溶かし込まれている。レコーディング〜ポストプロダクションにおいてもバンドの完璧主義が全面的に敷衍され、ベーシックトラックに於けるアナログテープ録音から、様々な楽器音・電子音の重層的配置、更にはリーダーの岡田拓郎自らによる偏執的とも言える精緻かつ玄妙なミキシング作業までを通して、生鮮と爛熟が奇跡的にバランスする、圧倒的な音楽世界が作り上げられている。そして、ファーストアルバムでも独自の美意識を薫らせていた歌詞表現も更に奔放な羽ばたきを得て、音像と詩的心象がただ一つに融解していくように、聴くものを幻夢の世界へと誘い混む。それは恰も、歴史に晒されながらも清廉を保つ芳醇なシンフォニーのようでもあり、かつてモンパルナスに集った吟遊の芸術家集団による狂騒歌のようでもあり、老練の工人によって紡ぎ出される生活歌( ブルース) のようでもあり、そして、いつか見た未来を朧気に映し出す幻燈の静寂音のようでもある。2014年という時代に屹立する、森は生きているという純音楽集団にしか創り出し得ない圧倒的名盤にして孤高の作品が、ここに誕生した。

【HMVオリジナル スペシャル音源特典】
森は生きている「early tape of “グッド・ナイト” vol.2」CD-R

[収録内容]
1.プレリュード demo
2.青磁色の空 demo

※特典は無くなり次第終了となります。ご購入前に必ず商品ページにて特典の有無をご確認下さい。

『グッド・ナイト』収録楽曲

  • 01. プレリュード
  • 02. 影の問答
  • 03. 磨硝子
  • 04. 風の仕業
  • 05. 痕跡地図
  • 06. 気まぐれな朝
  • 07. 煙夜の夢 (a,香水壜と少女 / b,空虚な肖像画 / c,煙夜の夢(夜が固まる前))
  • 08. 青磁色の空
  • 09. グッド・ナイト

森は生きている プロフィール

岡田拓郎(Gt.,etc.) /竹川悟史(Vo.,etc.) /谷口雄(Pf.,etc.) /増村和彦(Dr.,etc.) /大久保淳也(Flute,Reeds, etc)
柔軟な吸収力と表現力を武器に、滋味豊かでいて瑞々しい独自の音楽を生み出す「純音楽楽団」、森は生きている。
2012年、リーダーの岡田拓郎を中心に東京で活動を開始。その年の末、ファーストCD-R「日々の泡沫」を発表し、自主制作盤にもかかわらず各レコード店にて軒並みソールドアウトを記録。2013年にはP-VINE RECORDS よりファースト・アルバム『森は生きている』をリリース。音楽シーンを代表する作品として各界から高い評価を得、発売を記念して行われた各地でのリリースツアーも大盛況のうちに終える。その後もさまざまなイベントやフェスへ出演するなど活発な活動を繰り広げる中、2014年にはファースト・アルバムのアナログ盤をリリース、それに合わせバンド初となるワンマン公演を東京渋谷WWW にて大盛況のうちに開催。11 月には待望となるセカンド・アルバム『グッド・ナイト』をリリースする。
カントリー、ソフトロック、サイケ、スワンプロック、アンビエント、モンド、トロピカル、ジャズ、ブルース、アフロ、クラシック、現代音楽etc…数々の音楽遺産を深く咀嚼しつつもあくまで現代的な表現として昇華する有機的且つ先鋭的なプロダクション、卓越した演奏、そして仄かに文学の匂いが薫る歌詞世界。森は生きているの奏でる音楽が、時代の心象を儚く切り取るように、そこここへ満たされていく…。

http://www.moriwaikiteiru.com/


無人島 〜俺の10枚〜 【森は生きている 連載編】 一覧はコチラから!

無人島 〜俺の10枚〜 【森は生きている 連載編】 一覧 
森は生きているが1stアルバムのさらに上いく圧倒的完成度のセカンドアルバム『グッド・ナイト』を11月19日に発表する。アルバムの発売を祝し発売日に向け連載された『無人島 〜俺の10枚〜 【森は生きている 連載編】』

第一弾 : 増村和彦 | 第二弾 : 谷口雄 | 第三弾 : 大久保淳也 / 五野上欽也 | 第四弾 : 竹川悟史 | 第五弾 : 岡田拓郎

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グッド・ナイト

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発売日:2014年11月19日

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発売日:2013年08月21日
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