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葉加瀬太郎 インタビュー2014 Part 3 葉加瀬太郎インタビュー2014へ戻る

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2014年8月7日 (木)



日本のクラシックコンサートで、なおかつステージセットやマイクすら使わないアンプラグドで、客席全体がスタンディンオベーションとなる瞬間は、そうは体感できないもの。葉加瀬太郎さんが2011年から3年間続けたアコースティックコンサート「クラシックシアター」は、生楽器の"音を楽しむ"喜びと、純粋に美しい音楽に浸る多幸感へとリスナーを導きました。このクラシックシアターから生まれたスコアとアレンジ、手応えと自信。その全てを注ぎ込んだ最新作『Etupirka〜Best Acoustic〜』が誕生しました。弦楽五重奏にピアノというアンサンブルを核とした完全なるアコースティックサウンドで、生楽器の息吹はそのままに。これまで多くの人の日常に寄り添ってきた"葉加瀬サウンド"が、本作では"室内楽"へとドレスアップ。進化と深化を続ける葉加瀬太郎さんへのロングインタビューをお届けします。
取材/文 鄭 美和


Part3:「知恵を集結して、アイディアを考え抜く」


─本作を俯瞰されて、自分らしさが如実に表れていると実感されることとは?

 自分らしさを一言で言えば「濃い」に尽きるのですが(笑)。昔からロマンティックな音楽が大好きだし、そういう曲を自分でも作り、可愛がってきた。"葉加瀬っぽいサウンド"というのは、そういうことなんだろうなと。例えば、本作の「シシリアンセレナーデ」は、そんな自分のロマンティックな部分が如実に表れている曲。クラシック以外で、長年刷り込みの様に聴き続けてきた映画音楽の影響も色濃く反映されています。

─心の風景が浮かぶような「シシリアンセレナーデ」は、美しく切ない旋律に感情ごと持っていかれます。

 これほどまで直球でロマンティックな曲は、奇をてらっても書けないし、自信が無いと発表できないとは思います。この曲を好きだと言って下さる方も多いのも、作り手冥利に尽きます。曲というのは、生まれても人様に受け入れて頂かないことにはどうにもならない。こういう曲が自然と受け入れてもらえるインストゥルメンタル界の現状は、実に良いことだなと僕は考えています。

─葉加瀬さんのコンサートで大いに沸く「ハンガリー舞曲第五番」を、本作によって何度でも聴けるのも嬉しいことです。

 コンサートで長年弾いてきたし、クラシックシアターを象徴する一曲でもあります。僕の敬愛するブラームス先生のデビュー作である「ハンガリー舞曲集」の中でも一番有名で、多くの演奏家たちが色んな形で演奏し続けてきた曲です。近年では、ラカトシュというジプシーヴァイオリニストの大スターが演奏した究極のハンガリアンダンスがあるのですが、啼鵬さんには「ラカトシュを超えるアレンジを!」と無茶なリクエストをさせて頂きました(笑)。改めて紐解くと、和音やコードの解釈も大変複雑な難曲なのですが、啼鵬さんがこれまでにないアヴァンギャルドなハンガリアンダンスへと仕上げてくれました。お見事!に尽きます。こういう普遍的に愛されている曲ほど、知恵を集結してアイディアを考え抜き、新鮮なものに変えていかなくてはいけないんですよね。

─アイディアを考え抜く過程で、面白い仕上がりになったと実感される曲とは?

 8ビートのロックナンバー「ZERO HOUR」は、アコースティックな編成でロックな曲を演奏してみたいという純粋な音楽的衝動が具現化された曲です。凄くスリリングな体験でしたね。「WITH ONE WISH」も、この曲は2012年にリリースした当初は、鳥山雄司さんのオーケストレーションによって、アルバム全体のいわば開会式のような位置づけのような曲でした。それが今回の編曲では、しっとりとしたストリングスで、セレモニックな世界観はそのままに、今度は閉会式のような雰囲気の曲へと生まれ変わりました。

─濃密なるレコーディング期間に、"奇跡が起きた"セッションを挙げるとすると?

 フラメンコギター奏者の沖仁さんと共演できた「Asian Roses」です。もともとフラメンコ的要素を内包した曲ではありますが、沖君の手にかかるとこんなにも大きく羽ばたくものなのかと。彼との出逢いは10年程前に遡ります。実は、僕のレーベルであるハッツアンリミテッドで作品を作ってほしいと彼にラブコールしていた時期があって。当時は彼も自分の道を選び、アルバム制作は叶いませんでしたが、その後も僕の作品やコンサートに参加して頂いたりと交流が続いてきました。去年、彼の演奏を久しぶりに聴く機会があったのですが、その時の衝撃といったら!フラメンコと対峙しているのではなく、完全に彼の音楽としてフラメンコが存在している。「これは何か一緒にやらないと嘘だ」と確信して、今回のセッションが実現したんです。スタジオ内にずっと音楽が溢れていて、凄まじいほどの熱量の高い演奏が生まれた。沖君からその日のうちに「生涯忘れ得ないセッションでした」とメールをもらいましたが、僕も心からそう思います。

─エンディングの「ひまわり」は、包まれるような優しさと温かさがあります。

 2010年のNHK連続テレビ小説「てっぱん」のテーマソングとして作ったのですが、この曲がこれほどまで大切な一曲になるとは、作った時には想像もしませんでした。ドラマの放送中に、あの東日本大震災が起きました。一度中断を経て放送が再開された時に「この曲をまた聴けて嬉しいです」と、被災地の方々から沢山のお手紙を頂いたことは忘れられません。以来、自分の中では日本復興のテーマ曲になっています。あの時の記憶をずっと刻むためにも大切に演奏し続けていこうと思っています。
Part 4(8月14日更新予定)に続く


 公演情報







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