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2014年4月30日 (水)

ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

バーデン=バーデン・イースター音楽祭レポート
 4月12日にスタートしたベルリン・フィルのバーデン=バーデン・イースター音楽祭。今年はプッチーニの《マノン・レスコー》(サー・サイモン・ラトル指揮)を中心に、ピーター・セラーズ演出による《ヨハネ受難曲》(ラトル指揮)、シンフォニー・コンサート3プログラムを含む計8公演が上演されました。加えて15回の室内楽コンサート、5回の教育プログラム演奏会も開催されています。
 バーデン=バーデンは、ドイツの南西部、バーデン=ヴュルテンベルク州の中都市。地理的には、フランクフルトとチューリヒの中間に位置します。ベルリン・フィルは、これまで40年以上にわたってザルツブルクで復活祭フェスティヴァルを行ってきましたが、昨年よりバーデン=バーデンに移転。オペラやシンフォニー・コンサートのほか、ベルリン・フィルがベルリンで力を入れている室内楽、教育プログラムの演奏会が多数開催されます。その意味で、「ベルリンでの活動全容を短期間に見せるフェスティヴァル」と呼べるでしょう。
 さて、オペラ公演の《マノン・レスコー》では、ラトルのプッチーニ・デビューが話題となりました。ベルリン・フィルも、カラヤン指揮で《トスカ》(1989年、ザルツブルク・イースター音楽祭)を演奏して以来プッチーニを弾いておらず、オケにとってもフレッシュな体験でした。ベルリンの日刊紙『ターゲスシュピーゲル』は、公演を好意的に評価しています。「ラトルとベルリン・フィルの強みは、他のオーケストラならばトラブルを抱えるだろう個所である。第1幕の学生たちの雑踏や第2幕終結部の緊迫した逮捕シーンでは、細かなモチーフが輝き、アンサンブルはR・シュトラウスの交響詩のような精緻さを発揮する」。その一方でラトルには、「プッチーニ特有のむせ返るような甘美さは欠け、彼のオペラ・イタリア語にはなまりが混じっている」と論じています。リチャード・アイルの演出は、第2次世界大戦中のドイツ占領軍下のパリ、という設定。主役を歌ったエヴァ=マリア・ウェストブレーク(マノン)、マッシモ・ジョルダーノ(デ・グリュー)は、おおむね好評を得ています。
 コンサートでは、セラーズの「儀式化」がともなう《ヨハネ受難曲》が高く評価されました。今年2月にベルリンで初演された舞台は、バーデン=バーデンのためにアジャストされ、セラーズ自身が現地でリハーサルを行っています。上演中は、ラトル自身が合唱に混じって指揮するなど、新機軸も展開。ソリスト(カミッラ・ティリング、マグダレーナ・コジェナー、マーク・パドモア、トピ・レティプー、クリスティアン・ゲルハーヘル、ロデリック・ウィリアムズ)の活躍はもちろんですが、主役は様々なマイムと演技が要求される合唱でした。これはアリア以上にコラールの役割が大きい《ヨハネ受難曲》の内容に即したものでしょう。ベルリン放送合唱団は、全曲を暗譜で歌い、体当たりの演唱は大喝采を浴びています。
 シンフォニー・コンサートでは、ズービン・メータがウェーベルン「管弦楽のための6つの小品」、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番《皇帝》」、R・シュトラウス《英雄の生涯》を指揮しました。ベートーヴェンのソリストは、イェフィム・ブロンフマン。彼は欧州で最も人気を博しているピアニストのひとりで、今回も恐るべきテクニックを披露。一方第2楽章では、透明なリリシズムを示し、力一辺倒でないところも垣間見せています。《英雄の生涯》では、ベルリン・フィルの輝かしい響きとパワーが全開。メータは、しばらく続いていた不調期を脱したようで、確固たるタクトが印象に残りました。なおこの演奏会では、バーデン=バーデンに住むピエール・ブーレーズがコンサートを訪れています。
 21日まで続く音楽祭では、今後20日の演奏会がデジタル・コンサートホールで中継されます。ラトルの指揮で《春の祭典》が演奏されるほか、ソル・ガベッタがエルガーの「チェロ協奏曲」でベルリン・フィル・デビュー。中継は、日本時間21日(月)午前1時スタートとなっています(「今後のDCH中継」参照)。なお19日には、アンネ・ゾフィー・ムターがブラームスのコンチェルトで共演しています。
来年のフェスティヴァルは、ラトル指揮の《ばらの騎士》で開幕。アニヤ・ハルテロス、マグダレーナ・コジェナー、アンナ・プロハスカ、ピーター・ローズのキャストのほか、注目は往年の大メゾ、ブリギッテ・ファスベンダーの演出でしょう(彼女は独墺の歌劇場で演出家、インテンダントとして活躍中です)。演奏会も、シャイー、アルゲリッチ等が出演し、華やかな音楽祭となることが予想されます。

ベルリン・フィル公式ツアーブログ(写真多数掲載)

アーノンクールがベルリン・フィルの名誉団員に
 3月7日、ベルリン・フィルはウィーンへのツアー中に、ニコラウス・アーノンクールを名誉団員に迎えました。
 アーノンクールは、1991年のベルリン・フィル・デビュー以来、20年間に29プログラム90回の演奏会を指揮しています。オーケストラ代表のペーター・リーゲルバウアー(コントラバス)は、短いセレモニーでアーノンクールに次のような祝辞を述べました。「あなたは我々に、18〜19世紀音楽ついての新しい視座を与えてくれました。楽譜の表面には表れない、様式的な真実があることを教えてくれたのです」
 アーノンクールのベルリン・フィルでの最後の演奏会は、2011年10月のベートーヴェン・プログラムで、「交響曲第5番」と「ミサ曲ハ長調」を指揮しています。昨年12月には、シューマン「ファウストからの情景」での客演が予定されていましたが、健康上の理由によりキャンセル。なおアーノンクールは、今後ベルリン・フィルの演奏会には登場しないことを表明しています(写真:ウィーン楽友協会でのセレモニーの模様。右はリーゲルバウアー)。

ベルリン・フィル公式ウェブサイトの記事

 最新のDCHアーカイブ映像

2009年のヴァルトビューネ・コンサートがアップ。ラトルとブロンフマンが共演
2009年6月21日

【演奏曲目】
チャイコフスキー:《くるみ割り人形》抜粋
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
ストラヴィンスキー:《春の祭典》

ピアノ:イエフィム・ブロンフマン
指揮:サー・サイモン・ラトル

 2009年のヴァルトビューネ・コンサートは、サー・サイモン・ラトルの指揮で行われました。テーマは、ロシア音楽。チャイコフスキーの《くるみ割り人形》は、彼の交響曲は指揮しないラトルが特別な愛情を持っている作品で、ベルリン・フィルと全曲を録音さえしています。
 ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番で共演するのは、イェフィム・ブロンフマン。当代一のテクニシャンとして知られる彼ですが、繊細な表情にも欠けず、ヨーロッパでは今一番の人気を誇るピアニストとして認知されています。今回も、「技術的に最も難しいピアノ協奏曲」と呼ばれるこの作品を、驚異的なテクニックで弾ききっています。
 プログラムの後半は、《春の祭典》。ラトルとベルリン・フィルのお得意の作品で、2013年の来日公演でも披露されましたが、これはそれよりも前の演奏。デジタル・コンサートホールには、彼らの複数の「ハルサイ」がアップされていますが、聴き比べてみるのも一興ではないでしょうか。

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ハイティンク85歳!ベルリン・フィル・デビュー50周年記念演奏会
2014年3月15日

【演奏曲目】
モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番「ジェナミー」
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

ピアノ:エマニュエル・アックス
指揮:ベルナルド・ハイティンク


 ベルナルド・ハイティンクが初めてベルリン・フィルを指揮したのは、1964年3月12日のことでした。共演50周年にあたる記念すべき今回の定期演奏会では、ウィーン古典派に定評のあるアメリカ人ピアニスト、エマニュエル・アックスをソリストに迎えます。
 今回彼が弾くモーツァルトのピアノ協奏曲第9番《ジェナミー》は、1777年、ピアニストのルイーゼ・ヴィクトリア・ジェナミーのために書かれました。当時21歳だったモーツァルトは、この技巧的な作品によりピアノ協奏曲の新スタンダードを確立。曲の冒頭でソリストとオーケストラが対話を交わすのは当時としては異例で、モーツァルトの慣習にとらわれない創作への意思を示していると言えるでしょう。
 後半はブルックナーの交響曲第4番。《ロマンティック》の愛称で知られ、ブルックナーの交響曲の中でもっとも頻繁に演奏されるこの作品は、冒頭のホルンをはじめ、美しいメロディーに満ちています。ハイティンクは1996年にベルリン・フィルとこの作品を演奏しており、今回は18年ぶりとなります。

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ユンゲ・ドイッチェ・フィル客演公演。ソリストはルノー・カピュソン
2014年3月16日

【演奏曲目】
シュレーカー:「烙印を押された人々」前奏曲
シューマン:ヴァイオリン協奏曲
ショスタコーヴィチ:交響曲第4番

ヴァイオリン:ルノー・カピュソン
ユンゲ・ドイッチェ・フィル
指揮:ステファン・アズバリー

 1974年結成のユンゲ・ドイチュ・フィルハーモニー管弦楽団は、ドイツの音楽大学の優秀な若手によって構成され、現在ドイツでもっとも著名なユース・オーケストラの一つとして知られています。毎年集中的なリハーサルの中で、メンバーはオーケストラにおける責任や民主主義を学び、プログラムや指揮者やソリストの選定といった事柄まで関わります。
 今回のフィルハーモニーの客演では、指揮にステファン・アスバリー、ソリストにヴァイオリンのルノー・カピュソンを迎えています。プログラムは、後期ロマン派の濃厚な響きを持つシュレーカーの歌劇《烙印を押された人々》序曲、長年不当な評価を受け続けていたシューマンのヴァイオリン協奏曲、そしてショスタコーヴィチの交響曲第4番。中でもショスタコーヴィチの第4番は、初演の4日前になって作曲家本人が撤回し、実際の初演まで四半世紀を待たなければならなかった曰く付きの傑作です。

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ネゼ=セガンのマーラー「第4」。首席フルート奏者A・ブラウがライネッケの協奏曲を吹奏
2014年3月21日

【演奏曲目】
ライネッケ:フルート協奏曲
マーラー:交響曲第4番

フルート:アンドレアス・ブラウ
ソプラノ:クリスティアーネ・カルク
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン

 2010年10月、カナダ人指揮者のヤニック・ネゼ=セガンがベルリン・フィルの定期演奏会にデビューした際、ベルリンの新聞は「指揮者界の新星による記憶に残る夕べ」と讃えました。彼は現在、ロッテルダム・フィルの音楽監督、ロンドン・フィルの首席客演指揮者、フィラデルフィア管音楽監督など名だたるオーケストラの重責を務めています。
 メインに選ばれた演目は、マーラーの交響曲第4番。「角笛交響曲」の最後を飾る作品です。第2番《復活》、第3番という記念碑的なスケールを持つ前作に比べて、この第4番では明確に規模と編成が縮小され、軽快で親密な曲想を持っています。オーケストレーションも比較的簡素で、譜面に記された「非常に落ち着いて」「非常に心地よく」などの指示は、演奏家に過度な感情表現をしないよう促しています。とはいえ、マーラーの音楽の二面性はここにも見られ、牧歌的な音楽に奈落の気配が顔をのぞかせるなど、雰囲気の突然の変化も随所に聴き取ることができるでしょう。ソプラノのクリスティアーネ・カルクが「天上の生活」を歌うフィナーレにもご注目ください。
 前半に演奏されるのは、ライプツィヒで活躍したドイツ・ロマン派の作曲家カール・ライネッケのフルート協奏曲。40年以上に渡って当団の首席奏者を務めてきたアンドレアス・ブラウが、作品にふさわしい重厚で華麗なソロを披露します。

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2011年のジルベスター・コンサートがアップ。ソリストはキーシン
2011年12月31日

【演奏曲目】
ドヴォルザーク:スラブ舞曲集
グリーグ:交響的舞曲第2番イ長調
ピアノ協奏曲イ短調
ラヴェル:《道化師の朝の歌》
R・シュトラウス:《サロメ》より7つのヴェールの踊り
ストラヴィンスキー:《火の鳥》よりバレエ組曲

ピアノ:エフゲニー・キーシン
指揮:サー・サイモン・ラトル

 2011年のジルベスター・コンサートは、首席指揮者ラトルの指揮で開催されました。ジルベスターのテーマである「ダンス音楽」が周囲を固めるなか、コンサートの真ん中で演奏されるのが、グリーグの「ピアノ協奏曲」。ソリストは、日本でも人気の高いエフゲニー・キーシンが務めています。キーシンがベルリン・フィルに登場するのは、90年代以降、10数年ぶりのこと。かつてカラヤン指揮による最後のジルベスター・コンサートでデビューし、伝説的名演を繰り広げた彼ですが、成熟した芸術家となった彼の演奏にも眼を見張らされます。
一方ベルリン・フィルは、R・シュトラウスやストラヴィンスキー、ラヴェルの華麗なダンス音楽で妙技を披露しています。ラトルはこの年、ザルツブルク・イースター音楽祭とベルリンで《サロメ》を指揮していますが、これはその回顧と呼べるでしょう。

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 これからのDCH演奏会

バーデン=バーデン・イースター音楽祭より中継。ガベッタがベルリン・フィル・デビュー!
日本時間2014年4月21日(月)午前1時

【演奏曲目】
リゲティ:《アトモスフェール》
ワーグナー:《ローエングリン》第1幕への前奏曲
エルガー:チェロ協奏曲
ストラヴィンスキー:《春の祭典》

チェロ:ソル・ガベッタ
指揮:サー・サイモン・ラトル

 バーデン=バーデン・イースター音楽祭から、サー・サイモン・ラトル指揮の演奏会が生中継されます。
 注目は、ソル・ガベッタのベルリン・フィル・デビュー。ガベッタは、ドイツで特に高い人気を博していますが、これまでベルリン・フィルでは演奏したことがありませんでした。彼女はバーデン・バーデンの後、5月の定期演奏会にも登場し、マルティヌーの「チェロ協奏曲第1番」を演奏します。
 バーデン・バーデンでのエルガーのコンチェルトは、ジャクリーヌ・デュプレの伝説的名演以来、女性チェリストが好んで取り上げる作品ですが、ガベッタの録音したCDも、既に高く評価されています。
 プログラムの冒頭に演奏されるリゲティとワーグナーは、ラトルによれば「神秘的な雰囲気」を音化したもの。リゲティにはほとんど和声、旋律がなく、いわば空間のなかに浮遊するような作品ですが、ラトルは「ワーグナーのイ長調の和声が続けて演奏された時、聴き手にショックを与えるだろう」と語っています。
 《春の祭典》は、ラトル&ベルリン・フィルのいわば名刺代わり。2013年来日公演での演奏も記憶に新しい作品です。

生中継:日本時間2014年4月21日(月)午前1時

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第3回レイト・ナイトは、ヘンツェへのオマージュ
日本時間2014年4月26日(土)午前5時30分

【演奏曲目】
ヘンツェ:レクイエム

トランペット:ガボール・タルケヴィ
ピアノ:オハッド・ ベン=アリー
指揮:サー・サイモン・ラトル

 2012年10月27日、作曲家ハンス・ヴェルナー・ヘンツェは、86歳でドレスデンで亡くなりました。それは、現代でもっとも影響力のある作曲家の死だったと言えるでしょう。今回のレイトナイト・コンサートでは、サー・サイモン・ラトルとベルリン・フィル団員がヘンツェの《レクイエム》を演奏し、この作曲家にオマージュを捧げます。「ピアノ、トランペット、大規模な室内管弦楽のための9つの宗教的協奏曲」と題されたこの作品は、1993年、ロンドン・シンフォニエッタの指揮者だったミヒャエル・ワイナーの死去に際して書かれました。叙情的な瞑想から、破滅的なまでの音の密集、そして攻撃的な軍隊調のリズムに至るまで、作曲家の率直な感情表現が表れています。

生中継:日本時間2014年4月26日(土)午前5時30分

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コンサート形式による《マノン・レスコー》
日本時間2014年4月27日(日)午前3時

【演奏曲目】
プッチーニ:歌劇《マノン・レスコー》

マノン:エヴァ=マリア・ウェストブレーク
デ・グリュー:マッシモ・ジョルダーノ
レスコー:レスター・リンチ
ジェロンテ:リャン・リー
歌手:マグダレーナ・コジェナー
指揮:サー・サイモン・ラトル

 プッチーニのオペラ《マノン・レスコー》は、アベ・プレヴォーの小説《騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語》を元にした作品です。真実の愛と贅沢への欲望との間を揺れ動くマノン・レスコーの生き様は、作曲家の創作意欲に火を付けました。当時35歳のプッチーニは、1893年に初演されたこの作品で、同時代の代表的なオペラ作曲家への仲間入りを果たしたのです。同じ原作を基にしたマスネによるオペラがすでに大きな成功を収めていましたが、あふれんばかりの情熱とドラマ、うっとりするようなメロディーと色彩的なオーケストレーションによって、プッチーニはその独創性を開花させました。
 サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルによる今回の演奏会形式上演は、直前に行われるバーデン・バーデンのイースター音楽祭との同プロダクションです。マノン・レスコー役を歌うのはエヴァ=マリア・ウェストブレーク。オランダ出身の彼女は、ワーグナーの《ワルキューレ》のジークリンデ役で、2005年と12年にベルリン・フィルに登場。さらに2007年と08年には、エクサン・プロヴァンスとザルツブルクでも共演し、抒情とドラマ性を兼ね備えた歌唱で評価を得ました。マノンの恋人デ・グリュー役は、ナポリ生まれのマッシモ・ジョルダーノ。現代を代表するスピント・テノールのひとりです。強力な顔ぶれによるプッチーニを、どうぞお楽しみください。

生中継:日本時間2014年4月27日(日)午前3時

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 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

ティーレマン指揮ザルツブルク・イースター音楽祭《アラベラ》
 復活祭周辺の音楽祭が相次ぐなか、ザルツブルク・イースター音楽祭が4月12日にスタートした。今年のオペラは、R・シュトラウスの《アラベラ》。クリスティアン・ティーレマン指揮ドレスデン・シュターツカペレの演奏で、ルネ・フレミング(アラベラ)、トーマス・ハンプソン(マンドリュカ)のスターが歌っている。ティーレマンの指揮は各紙絶賛。両歌手の歌唱には、「確かに輝かしくはあるが、傷があった」とする留保付きの賞賛が寄せられている。一方、ツデンカでデビューしたハンナ=エリーザベト・ミュラー、90年代のドラマティック・ソプラノ、レナーテ・ベーレの息子ダニエル・ベーレ(マッテオ)は、演技・歌唱の両面で最も多くの喝采を得た。
 演出は、ドイツ人のフロレンティーネ・クレッパーが担当している。舞台は20世紀初頭、作品成立時代に設定されていた。なお、来年のフェスティヴァルは、ティーレマン指揮、フィリップ・シュテルツェルの演出で《カヴァレリア・ルスティカーナ》&《道化師》が上演される。主演は、ヨナス・カウフマン(写真© Foster)。

バレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場フェストターゲ《タンホイザー》
 ベルリン国立歌劇場のイースター音楽祭「フェストターゲ」では、《タンホイザー》が新演出上演された。指揮はダニエル・バレンボイム。演出は、振付家のサシャ・ヴァルツが担当した。ヴァルツは、ベルリンで絶大な人気を博すが、批評家の評価は、「複雑なワーグナー作品の演出は、振付師ヴァルツにはやや手に余ったのではないか」というもの。
 題名役のペーター・ザイフェルトをはじめ、歌手はおおむね好評である。バレンボイムの指揮も、立ち上がりがやや遅かったものの、高く評価されている。なお、同音楽祭では、バレンボイムの指揮、プラシド・ドミンゴの主演で《シモン・ボッカネグラ》も上演されている。
 来年のフェスティヴァルの演目は、《パルジファル》新演出(バレンボイム&ディミトリー・チェルニアコフ)、《タンホイザー》再演だという。

ルツェルン・イースター音楽祭
 ルツェルン・イースター音楽祭が、4月5日から13日まで開催された。当フェスティヴァルでは当初、クラウディオ・アバド指揮モーツァルト管の客演が予定されていたが、アバドの逝去により中止。代わりに、アンドリス・ネルソンス指揮ルツェルン祝祭管のアバド追悼演奏会が急遽行われ、アバドと関連の深いプログラム(シューベルト《未完成》、ブルーノ・ガンツによるヘルダーリンの詩の朗読、イザベル・ファウスト独奏によるベルク「ヴァイオリン協奏曲」、マーラー「交響曲第3番」より終楽章)が演奏された。
 一方、恒例のバイエルン放送響のイースター・レジデンスでは、グスターボ・ドゥダメルとアンドリス・ネルソンスが指揮。前者はバイエルン放送響デビューで、《春の祭典》を快演。またネルソンスは、《パルジファル》第3幕を、コンサート形式で指揮している。

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2014年4月30日(水)発行を予定しています。

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