BEHEMOTH/Nergalインタビュー!

2014年2月3日 (月)

Behemoth
BEHEMOTH (2013)
< ネルガル / BEHEMOTH インタビュー >

 10枚目のアルバムとなる "The Satanist" をリリースするポーランドの Behemoth。昨年のラウドパークでも貫禄のステージを見せてくれた彼ら。来日時、リーダーの Nergal に話を聞くことができた。



--- Mirai Kawashima (以下、M): 素晴らしいショウでした。首から下げていたのは何ですか?(インタビューはラウドパークでのライブ直後。)


Nergal(以下、N) :鶏の骨だよ。

--- M : 本物ですか?


N :ああ。

--- M : 日本は今回で二回目でしたっけ。


N :いや、三回目だね。初回は東京だけ、二回目は名古屋、大阪なども回るツアーで、今回のラウドパークで三回目。日本で最大のメタルイヴェントだろ。(同室にいた他の Behemoth のメンバーに向かって)ちょっと、少し静かにしてくれないか!

--- M : 日本の印象はどうでしょう。


N :とても魅力的だね。今日で日本に来て三日目だけど、ダウンタウンを歩いたり、色々な場所や人を見たりしたよ。日本を良く知るには数カ月は必要だね。京都には是非一度行ってみたいのだけど、毎回時間がなくて。寺院など、日本の伝統的な文化に触れるのは、とてもエキサイティングだよ。昨日は日本の伝統的なレストランに行って、最高品質の神戸ビーフを食べたんだ。日本の文化というのは、建造物もそうだけど非常に表現的で興味深く、色々とインスピレーションを受けるね。人々はとても親切で礼儀正しいし。

--- M : あなたが初めて体験したエクストリームメタルは何でしたか。


N :そうだな、パっと思いつくところでは(カナダのブラックメタルバンド)Blasphemy の "Blood Upon the Altar" のデモ。

--- M : あれは89年でしたね。


N :俺が聞いたのは91年頃だったかな。ちょうどアンダーグラウンドのシーンに興味を持ち始めて、ファンジンやテープトレードの存在を知ったんだ。君もやっていたからわかるだろ、あれには本当にハマった。そしていまだにこの世界から抜けられないのだけど。Behemoth を始めて20年、テープトレードというものも無くなってしまって、代わりにMP3ドロボーが出てきたが、俺にとっては音楽が一番大切なものさ。ガキの頃と同じ情熱を、今も持ち続けているよ。そう言えば Blasphemy のライブを見て、メンバーにも会ったんだよ。

--- M : 彼ら非常に大きいんですよね。


N :ああ、巨大なモンスターだよ!でもとても良い奴らなんだ。Jeff(ステージネーム Caller of the Storms、Blasphemy のギタリスト)とクサ吸ったりビールを飲みながら話したんだ。Black Winds(Nocturnal Grave Desecrator and Black Winds、Blasphemy のベース・ヴォーカル)にはサインをしてもらったよ。彼はもちろん Behemoth を知っていたからびっくりしていたようだけど、俺は Blasphemy を聞いて育ったわけだからね。ステージも最高だったよ、完全にアウト・オブ・コントロールという感じで。

--- M : 80年代のポーランド・メタルシーンというのは、もちろん Turbo や Dragon、KAT、Acid Drinkers などは知られていましたが、それでも秘密のヴェールに包まれている感じでした。ところが90年代に入ると突如あなたたちや Vader 等、急激に世界的に有名になるバンドが出てきましたよね。これは何がきっかけだったのでしょう。


N :どうだろう、よくわからないな。俺たちはそれほどビッグだとは思わないけど、常に情熱を持って活動をしてきたからね。メタルのためなら死ねるくらいの気持ちでやってるんだ。

--- M : 先ほど Blasphemy がお好きという話が出ましたが、一方でノルウェーのブラックメタルからの影響はありましたか。


N :もちろんスカンジナヴィアのシーンからの影響は大きかったよ。彼らはとても才能があり、かつエクストリームだっただろ。

--- M : ポーランドのシーン全体に大きなインパクトがあったということですか。


N :非常に大きいインパクトがあった。俺たちだけじゃなく、ポーランドのシーン全体にね。スカンジナヴィアからの影響は大きかったけど、ポーランドのバンドは自分たち特有のスタイルを作り上げることに成功した。まあスカンジナヴィアのマネができるほど、才能が無かっただけかもしれないけど。スウェーデンやノルウェーのバンドのようなテクニックを持っていなかったからね、それを埋める別のものを作り出さなくてはいけなくて、その結果ポーランド特有のスタイルが出来上がったんだ。

--- M : Behemothはデスメタルバンドだと思いますか、それともブラックメタル?或いはどちらでも良いですか。


N :どっちでも良いね。大切なのはクオリティとオネスティだよ。これが無ければ俺はここにはいない。感じることを正直に表現することだよ。

--- Dr. : 以前ポーランドのライブで聖書を破り、問題になりましたよね。


N :問題というか、一人のクソ野郎が俺を訴えただけさ。

--- M : Gorgoroth もやはりポーランドで似たようなトラブルに巻き込まれましたよね。


N :結果として、Gorgoroth の名前がますます知れ渡ったというのが俺の見方さ。訴えた奴らの負けだね。

--- M : どちらのケースもバンドにとっては良い宣伝だったということですね。


N :ああ、ちょうど良いPRになったけど、俺も時々出廷して自分の考えを説明したりしなくてはいけなくてさ。俺が有罪の訳がないだろう。アーティストであるということが罪ならば、俺は有罪なんだろうけど、アーティストであることが違法か?そんな訳ないよな。少なくとも民主主義の国では。だから俺はポーランドに住んでいるんだ。中国ではなく。

--- Dr. : ポーランドは宗教的な問題に敏感ですね。日本では殆ど誰も気にしていませんよ。


N :確かに日本の街中を歩いていると、誰もジーザスが誰であるかすら知らない感じがするね。彼らは自分自身の神を持ち、敬い、自分自身の平和というものを見つけているようだ。他に反抗すべき対象があるのかもしれないが、とにかくジーザスの問題は無さそうだね。

--- Dr. : ニューアルバム "The Satanist" についてですが、過去の作品とはかなり違ったものになりますか?


N :ああ、かなり違うね。もっと有機的でエモーショナルでスピリチュアル、一方で俺たちのルーツに戻る感じでもあるが、同時にモダンでもある。エクストリームさを保持した、とてもダイナミックなアルバムだよ。クラシックの要素もありながらロックで、冒険的でメロディックでもある。言葉で説明するのは非常に難しいのだけど、聞いてもらえば俺の言っていることがすぐにわかると思う。日本でもビクターから発売されるよ。まだアルバムを聞いた人間は数少ないけど、リアクションは一様に素晴らしい。俺自身もアルバムの出来に非常に満足しているし、Nergal という存在が、この芸術作品に非常に良く表現されていると思う。俺の内面から湧き出たものを、プラスチック(CDのこと)に閉じ込めたというのかな。賞賛に値する、完成された作品だ。非常に芸術的で、アーティスト的にも人間的にも非常に Behemoth な作品だよ。

--- Dr. : ありがとうございました。最後に日本のファンにメッセージをお願いします。


N :日本でプレイできるのは最高の喜びだ。三度日本に来て、いつも素晴らしい待遇を与えてくれる。ニューアルバム "The Satanist" がリリースされたら、また日本に戻ってくることを約束するよ。いつも温かく迎えてくれて、どうもありがとう。ニューアルバム楽しみにしていてくれ。また会おう。



 このインタビューはラウドパークの時、すなわち昨年の10月に行われたものだが、新作の "The Satanist" はこの時すでに完成済み。「ニューアルバムは凄いよ。」と自信満々であった Nergal。有機的、エモーショナル、スピリチュアル、ダイナミック、冒険的でメロディック。"The Satanist" を形容する言葉は無限であるかのよう。そして、その言葉に偽りはなかった。ブラックメタルでありデスメタルでもある。速く、激しく、重く、深く、荘厳で、そして何より邪悪であるのにキャッチー。ブルータルさを保持しつつ、細部まで聞き取れるという理想的なサウンドプロダクション。(本アルバムのプロダクションは、今後のエクストリームメタル界において、一つのスタンダードになるのではないだろうか。)こうやって文面にすると、一見矛盾をしているような事象が、すべて高い次元で昇華、止揚されているのである。日本盤のライナーノーツにこのあたりの詳細分析を書いたので、是非読んでみて欲しい。2014年エクストリームメタルのベストアルバム筆頭候補である。Nergal の言う通り、一聴すれば彼の言葉の真意を簡単に掴めるであろう。

 Nergal がインタビュー中に語っている、テープトレードについても少々触れておきたい。インターネット、ディジタル全盛の今となっては、完全に過去の遺物となったテープトレード。そもそもカセットテープなんて実物を見たことがない、という世代も出現していることだろう。現在、作品をデモで発表するということは、MP3 などのディジタル音源をインターネット上のサイトで公開することであると言える。つまり日本に住んでいる我々も、自宅にいながら世界中の音源をチェックすることができる。ではディジタルメディアが普及する以前、つまり CDR すら一般的でなかった80年代〜90年代初頭のバンドは、どうやって自分たちの音源を広めていたのか。レコーディングをし、それをカセットテープという媒体に落とし、デモテープとして販売するというところまでは簡単に想像がつくだろう。だが、そもそもそれをどうやって宣伝するのか。ライブ会場で販売するなど、ローカルな活動はできるだろう。もちろん Kerrang!Metal Hammer など、世界的に流通している雑誌に広告を打つという手はあるが、そのような金銭的余裕があるバンドなどほんの一握り。そこで登場するのがテープトレードのネットワークだ。簡単に言ってしまえば、自分が持っているデモテープをダビングし、郵送して交換しあうマニアのネットワークである。トレードされるのはデモだけではなく、リハーサルを録音したものや、ライブテープなど様々。そしてカセットテープと一緒に必ず同封されてくるのが、大量のフライヤー。バンドはデモの注文があると、買ってくれた人に商品だけではなく、大量の小判のチラシ(たいていは白黒コピーの簡素なもの)を封入する。そしてデモを購入した人は、テープトレードの際にそのチラシも同封、トレードの相手はまたそのトレードの相手に、という具合に、ネットワークを通じて世界中に宣伝チラシが広まっていく仕組みだ。商品であるデモを勝手にダビングして広めるなんて、と思う方もいるかもしれないが、デモレベルのバンドというのはその音源でお金を儲けることではなく、名前を広めることが第一の課題。Nergal の言う現在の MP3ドロボー とはまったく性質が異なり、バンドにとってテープトレードのネットワーク程、有難いものはなかったのである。そしてこれらアンダーグラウンド情報を統括していたのが、まだレーベル契約を持たないバンドのインタビューやデモのレビューなどを掲載するファンジンの存在。(ファンジンには、テープトレード相手を探す人のためのコーナーもあった。)○○というバンドのXXというデモは凄いぞ!とういような情報が、本当に口コミで、あっという間に世界中に広がっていったものだ。Nergal も挙げていたカナダの Blasphemy もそんなバンドの一つ。彼らの1989年のデモ "Blood Upon the Altar" は、当時テープトレードネットワークを震撼させた、伝説の作品である。

 自分の持っている音源リストをタイプライターで作り、カセットテープをダビングし曲名を記し、手紙を書いて郵便局に持っていく。現在の e-mail文化と比べると、手間もかかるしお金もかかる。しかし、毎日郵便受けに世界中からの手紙が届く楽しみは、そんな苦労を遥かに上回るものであった。若き日の Nergal も、そんな苦労と喜びを味わっていたのであろう。

 という訳で、Behemoth 史上最高傑作間違いなしの "The Satanist"。エクストリームメタル好きならば聴くしかない。Nergal の言葉通り、近い将来、是非ともまた日本に戻ってきてもらいたいところだ。


Mirai & Nergal





川嶋未来/SIGH
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