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マシュー・キイチ・ヒーフィー(TRIVIUM)インタビュー!

2013年11月29日 (金)

TRIVIUM
L to R: Nick Augusto(B)、Matthew Kiichi Heafy(Vo/G)、Corey Beaulieu(G)、Paolo Gregoletto(B)
< マシュー・キイチ・ヒーフィー/TRIVIUM インタビュー >

 先日来日公演を行った Ihsahn。(川嶋氏による Ihsahn インタビュー)彼にはちょっとした異変が起こっていた。とにかくキイチの話しかしないのだ。Matthew Kiichi Heafy。言わずとしれた Trivium のギター兼ヴォーカリスト。Trivium と Ihsahn という、ちょっと意外な組み合わせ。聞けばキイチのソロアルバムを、Ihsahn がプロデュースしているというではないか。それにしてもだ。

 私 :相変わらずステージでも眼鏡かけたままですね。
 Ihsahn :ああ、キイチも同じ眼鏡を持っているんだよ。
 私 :夕ご飯何食べます?
 Ihsahn :キイチからお勧めレストランのリストをもらってるんだ。
 私 :痩せました?
 Ihsahn :キイチからヨガを習ってるんだよ。

終始こんな調子。元 Emperor、ブラックメタル界に君臨する Ihsahn をここまで魅了する Matthew Kiichi Heafy とは、一体どんな人物なのか。
その Ihsahn の来日からわずか10日後。ラウドパーク出演のために来日した Matthew Kiichi Heafy に話を聞いてみた。





--- Mirai Kawashima (以下、M): 日本へようこそ。早速ですが、初めて聞いたメタルは何でしたか?エクストリームメタルでしょうか、あるいは普通のへヴィメタル?


Matthew Kiichi Heafy(以下、K) :Metallica"Black Album"(『Metallica』) だよ。それ以前はポップパンク/スカを聞いていた。ポップパンク/スカのバンドもやっていたよ。当時は俺もロクにギターを弾けなかったら、すぐにポシャってしまったけど。ある時友人が "Black Album" を貸してくれたのを、学校帰りに車の中で聞いてね、すぐテープに落としたんだ。その後1989年のシアトルでのライヴビデオを見て、これが俺のやりたい音楽だって思ったんだ。"Black Album" をきっかけに、色々なメタルバンドを聞き漁るようになったのさ。

--- M : それはいつですか?


K :98年か99年だね。

--- M : あなたは86年生まれですよね。


K :そうだよ。

--- M : "Master of Puppets" がリリースされた年です。


K :そうだね、俺が "Master of Puppets" を聞いたのが99年だから、"Black Album" は98年に聞いたのかな。Trivium のオーディションを受けたのが99年だね。

--- M : 私は "Master of Puppets" の時にすでに16歳でしたよ。そこからさらにエクストリームな音楽を聞くようになったきっかけは何ですか。


K :(Trivium の)前のドラマー Travis の友達が高校の上級生だったんだけど、彼が俺を家から学校まで車で送ってくれていて、その時聞かせてくれたのが、Megadeth"Countdown to Extinction"Pantera"Official Live: 101 Proof" だった。それから Slayer"Divine Intervention"。"Killing Fields" が初めて聞いた Slayer の曲だったよ。その頃まだ Napster があったんだけど、そこでチャットしていて、これ聴いてみろって送られてきたのが In Flames の ”Jotun” だったんだ。美しいメロディに最初から最後まで激しいスクリームで歌うっていうスタイルは初めての体験だった。そして近いものを漁り始めて、Children Of BodomCradle Of FilthCannibal Corpse などを聞いた。それからそうだ、思い出した。あの時エクストリームメタルにハマり始めていたから Trivium の他に、Mindscar というフロリダのブラックメタルバンドのオーディションも受けたんだ。彼らはアルバムデビューはしていないのだけど、凄く良い奴らで優れたミュージシャンなんだよね。そこのフロントマン、Richie は凄い奴で、彼が Emperor や Dimmu Borgir、Dissection なんかを教えてくれた。まだ15-6歳だったんだけど、色んなレコード聞かせてくれて、Anorexia Nervosa"New Obscurantis Order" とかね、それで一気にブラックメタルにハマったっていう訳さ。デスメタルも好きだったけど、コレクションをするほどではなかった。でもブラックメタルにはハマったね。それで好きなバンドのシャツを集めたりし始めたんだ。俺にとってはまったく新しい世界を見つけたという感じだったよ。

--- M : まずメロディック・デスメタルを最初に聞いて、さかのぼったということですね。


K :そうだね、メロディック・デスメタル、デスメタル、ブラックメタルという順かな。Cannibal Corpse や Krisium の方が、Emperor や Dimmu Borgir より先だった。

--- M : なるほど。デスメタルの聖地であるフロリダ出身のあなたが、メロディック・デスメタルやブラックメタルという、アメリカではどちらかと言うとマイナーなジャンルに魅かれたというのは少々不思議な気がします。むしろヨーロッパで優勢なジャンルですよね。


K :確かにアメリカでは、メロディック・デスメタルやブラックメタルというのはマイナーなジャンルだね。96〜98年頃は一段落していたとはいえ、Tampa には素晴らしいデスメタルバンドがたくさんいた。In Flames のメンバーと話していて面白かったのは、彼らは「え、君は Tampa 出身なの?凄いな、Tampa にはグレートなバンドがいっぱいいるよね。」なんて言ってくるのだけど、一方俺は「あなたたちは Gothenburg 出身ですよね!」という調子でさ。俺にとっては Gothenburg がデスメタルの聖地で、彼らにとっては Tampa が聖地なんだよ。

--- Dr.Mikannibal(以下、Dr.) : 多くの Tampa のバンドが Orlando に移ったと聞きましたけど。


K :そうだね、いくつかのバンドは移ってる。Deathの Chuck は隣の高校に通っていたんだよ。残念ながら Chuck に会うことはなかったけど、彼が入院している時に、彼のチャリティコンサートに出演したことがあってね。Death からの影響は本当に大きいんだ、右手のピッキングとか。あんな風なスクリームはできないけど。

--- M : どのアルバムが一番好きですか?


K :"The Sound of Perseverance" かな。それから "Symbolic""Individual Thought Patterns"

--- M : 後期のテクニカルなのがお好きなんですね。


K :そうだね、君は?

--- M : 私は圧倒的に1stの "Scream Bloody Gore" です。年寄りなので。


K :(Dr. Mikannibalに)君は?

--- Dr. : 私は Death よりも Cannibal Corpse 派(MikaさんによるCannibal Corpse インタビュー)です。ステージネームも彼らからとっていますし。


K :Cannibal Corpse は本当に良い人たちだね。彼らとはよく一緒にプレイするのだけど、ある時 Cannibal Corpse は出演しない日にもかかわらず、モッシュピットの中に George "Corpsegrinder" Fisher みたいな人がいて、良く見たら本人なんだよ。一番前までやってきて、一緒に歌ってくれていてさ、最高だったね。

--- M : エクストリームメタルの中ではブラックメタルがお好きとのことですが、


K :あとはメロディック・デスメタル。

--- M : やはり Emperor が一番ですか?


K :そうだね、Emperor が一番だよ。Ihsahn には友達として、そしてミュージシャンとして多くの影響を受けているよ。Mrityu(Ihsahn プロデュースによるキイチのソロプロジェクト)では、初め90年代初頭のノルウェジアン・ブラックメタルスタイルの曲をやるつもりだったんだ。エクストリームメタルのファンからしたら、Trivium のメンバーがブラックメタルをやるなんて信じられないか、聞きたくもないという感じかもしれないと思ったので、偽名で発表することも考えたり。だけど(Ihsahn の4thアルバム)「Eremita」 を聞いて、心から湧きあがる、本当にやりたい音楽をやるべきなんだということを学んだんだ。Ihsahn の作品や君たちの作品を聞いて感じるのは、やりたいことは何をやってもいいんだということ。ブラックメタルでは音楽的な制約がなくて、次々と新しい試みが行われている。そこがブラックメタルの好きなところなんだ。想像もできないような要素を取り入れたりね。

--- Dr. : Ihsahn は、あたなの作るメロディはとても独創的で、彼が考えるものとはまったく違うと言っていましたが、それは何故だと思いますか。


K :うーん、俺は本当に色々な音楽を聞くからね。様々なスタイルの音楽を聞くというのはとても大切なことだと思うよ。俺もカントリーやラップというのは好きではないけど、それでも反面教師としてチェックするしね。ワールドミュージックもよく聴いているよ。俺は演奏できないけど、伝統的なフラメンコの音楽も聞くし、例えばブラジル料理を作るときはブラジルの音楽を、メキシコ料理を作る時は Rodrigo y Gabriela とか、メキシコの音楽を聞くようにもしてるよ。Mrityu の音楽を言葉で表現するのはすごく難しいんだけど、それが逆にクールだと思う。とにかくアティテュードを大切にしているんだ。サウンドはブラックメタルとは違うけど、ブラックメタルと同じアティチュードを表現して独自性をもたせているよ。



--- Dr. : あなたは半分日本人なので、日本に来るというのは故郷に帰るというような意味もあると思うのですが、日本に住んでいたのは1歳までですよね。


K :そこは非常に微妙で、俺はドイツとアイルランドのクオーターで、日本のハーフだから、日本人の血が一番多く入っているんだ。アメリカで育ったメリットというのは、アメリカは世界中から来た人たちで成り立っている点だね。やっぱり自分は何よりも日本人だという気持ちはずっとあるよ。残念ながら日本語は話せないのだけど。小さい頃は話していたんだけどね。日本という自分のルーツについて色々読んだりしているんだ。例えば刺青の良い点、悪い点。元々は良いものだったのだけど、段々刺青が入っていると人々が怖がるようになったというのを読んだ。俺の刺青もすべて日本式のものさ。この刺青も、子どもの頃母が話してくれた羅生門のストーリーに基づいていて、渡辺綱という侍が茨木童子というデーモンと戦っているシーンだよ。こっちは喜多川歌麿の「昇り龍」さ。伝統的な日本の刺青にしか興味がなくて、全て正しい場所に入れているんだ。そしてこれが円相。

--- Dr. : 円相?


K :日本の多くのアーティストは、精神的な修行として毎日円を描く練習をするんだよ。円は、すべてのものと無を同時に表わすんだ。俺は「空」(くう、英語では Void と表現)という概念が大好きだからね。Ihsahn がニーチェやバタイユを紹介してくれたんだけど、彼らもしょっちゅう「空」について触れているし。円相は完全と不完全を同時に表わすものなんだ。一筆書きされるものなんだよね。

--- Dr. : 私たちよりずっと日本の文化に詳しいですね。


--- M : 発音が非常にナチュラルなので、日本語が話せないというのは意外でした。


K :アメリカ人は(Rの発音を強調して)ARIGATO になるよね。(やはりRを強調して)キリスティーゴメンという発音になるし。俺の日本語の発音が良いのは母のおかげだよ。3-4歳までは流暢に日本語を話していたんだ。でもアメリカの学校に通うようになって、すべて忘れてしまった。外国に行くと、なるべくその国の言葉を覚えるようにもしている。単語20個ずつ、20ヶ国語くらいで言えるよ。

--- Dr. : キイチというのは漢字はあるのですか?


K :うん、あるけど書けない。でも意味が大好きなんだ。「キ」は殆ど定義を持たない、「イチ」「one」だね。つまり、定義不可能な者。実はこの名前は、亡くなった叔父のものなんだ。俺が飼っている犬にも日本の名前をつけてるよ。ミユキチャンっていうんだ。フレンチブルドッグなんだけど。

--- Dr. : Ihsahn も犬を飼っていますよね。彼は以前は秋田犬を飼っていたようですし。


K :俺たちのプロデューサーの(Disturbed の) David Draiman も Gabriel という秋田犬を飼ってるよ。

--- Dr. : ちょうど David Draiman のお話を伺おうと思っていたところでした。彼からヴォーカルのレッスンを受けたんですよね?


K :彼は素晴らしい人物だよ。Trivium のメンバー全員にエンジニア、David に彼の奥さん、それに3匹の犬で2ヶ月間、彼の家で過ごしたんだ。彼はギター、ソロ、ヴォーカル、歌詞、何でも扱える素晴らしいプロデューサーなんだけど、俺にとっては最高のヴォーカルコーチだった。呼吸法から食べ物、眠る時の注意、ショウの準備、ツアー中にどのように喉を労われば良いかなど、すべての面を改善してくれたおかげで、常に最高の状態で歌えるようになったんだ。今回のアルバムでは Auto-Tune などのディジタル補正は一切使っていない。ショウでも同じように歌えるように訓練してくれたおかげでね。

--- M : あなたのヴォーカルスタイルは、Elvis Presley、Jim Morrison、Glenn Danzig の流れにあるように感じることがあるのですが。


K :それは素晴らしい!Elvis は大ファンさ。

--- M : Danzig からの影響はありますか?


K :いや、Danzig に触れたのはわりと後になってからなんだ。面白いことに、初めて David (Draiman) に会ったのが、2005年に Trivium がシカゴで Danzig のオープニングをやった時なんだよ。それで彼は Trivium のファンになったんだ。そして俺が初めて Disturbed を見たのが、彼らがフロリダで Danzig のオープニングをやった時なんだ!Disturbed、Six Feet Under、Danzig という組み合わせだった。だから Danzig を通じて色々とつながっているんだよ、ニューアルバムでは Misfits のカバーも2曲やったしね。俺は時々アコースティックライヴをやるんだけど、Elvisの"Can't Fall in Love with You"のカバーをいつも演奏するんだ。他にはRoy OrbisonJohnny Cashとか。俺は声が低いからね、ああいうスタイルはとてもやりやすい。おかげでどんどん声が低くなっていっているけど。David には高音の開発もしてもらったんだ。最高音と最低音をヒットする方法を教えてもらった。エルヴィスと比べてもらったのは初めてだよ。とても嬉しいね。

--- Dr. : では最後に日本のファンにメッセージをお願いします。


K :いつもサポートしてくれてどうもありがとう。日本に来られて光栄だよ。一回のライブでは物足りないので、また日本に来られるよう是非 Trivium のことを もっともっと広めて欲しい。アリガトウゴザイマシタキヲツケテネマタネ



 動画を見て頂ければわかるが、彼はとにかくヘヴィメタルが大好きで、音楽への熱意にあふれているのが良くわかる。あの Ihsahn が圧倒されるのもうなずける。 ヘヴィメタルは80年代に隆盛を極め、現在はすでに過去の音楽と成り果てているとする風潮が存在する。だが、キイチのこのインタビューを見ても同じことが言えるだろうか。1986年という、スラッシュメタルが最も輝いていた年に生を受けた人物が、今やヘヴィメタル界を牽引する役割を担っているのだ。
 初めて聞いた Metallica のアルバムが Black Album。デスメタルよりも先にメロディック・デスメタルを聴き、その後デスメタルにさかのぼって行った。私と同年代の人には驚きかもしれない。だが、考えてみれば当たり前のこと。1970年生まれの私も、The BeatlesDeep Purple の作品を聴くのにファーストアルバムから順番にたどったわけでは当然無い。60年代、70年代のロックという確立されたジャンルがすでに存在していて、発売順とは関係なく名盤と言われるものを聴き漁って行ったものだ。それと同じことがヘヴィメタルの世界でも起こっている。すなわち80年代、90年代のヘヴィメタルが、すでに確固たるジャンルとして確立され、認知されているということなのだ。ヘヴィメタルは決して終わったジャンルではない!

 ラウドパークでも素晴らしいステージを見せてくれた Trivium。メジャーになるバンドは総じてヴォーカルが素晴らしいものだが、Trivium も例外ではない。キイチの場合、単に歌がうまいというだけでなく、天性の声の良さも持ち合わせているのだから強い。ステージでも Emperor のTシャツを着用していた。Ihsahn プロデュースの元、キイチのソロアルバムも予定されているとのことなので、実に楽しみだ。蛇足ながら、キイチも Ihsahn をきちんと「イーシャン」と発音しているので、ぜひ動画も合わせて見てみて欲しい。


Mirai & Kiichi & Dr.Mikannibal





川嶋未来/SIGH
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