ジョーイ・テンペスト(EUROPE)インタビュー!
2013年11月6日 (水)

去る2013年10月、スウェーデンのスーパースター Europe が来日、ラウドパークにて圧巻のステージを披露した。Europe と言えば "The Final Countdown"。誰でも知っている名曲である。少なくともあのメロディを聞かせれば、「ああ、この曲ね!」と音楽に関心のない人間でも答えるだろう。"The Final Countdown" のような名曲を書こうとチャレンジするも、あえなく挫折したミュージシャンは数知れない(はず)。今回幸運にも Europe のヴォーカリスト、Joey Tempest に話を聞く機会を得た。名曲が名曲たりえた訳を、その本人に聞いてみた。
- --- Mirai Kawashima(以下Mirai) : 今年はデビュー30周年ですが、30年は長かったですか、それともあっという間でしたでしょうか。
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Joey Tempest(以下JT) : あっという間だったね。デビュー30周年というのは、特に日本との関わりにおいて特別な意味があるんだ。1983年にデビューアルバムをリリースしたんだけど、マサ・イトーが気に入ってくれて、カメラマンを連れてわざわざスウェーデンまで飛んできたんだよ。そして日本で紹介してくれて、有名になったっていう訳さ。本当に感謝しているよ。スウェーデン国外で最初に人気に火がついたのが、日本とノルウェーだからね。その後で世界的に有名になったんだ。日本は本当に最初の最初さ。
- --- Mirai : イタリアのホラー映画はお好きなのですか?日本でも "Seven Doors Hotel" がヒットしましたが、あのような美しいメロディを持った曲が、(イタリアのホラー映画の)「ビヨンド」について歌ったものであるというのは驚きでした。
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JT :)「ビヨンド」は本当にストレンジな映画だったね。俺もまだ18-19歳と若くて、あの映画を見てシーンを思い出しながら歌詞をつけたんだ。
- --- Mirai : 「セブンドアーズホテル、地獄へと続く七つの門」という歌詞が、一般的な Europe のイメージとはかけ離れていて面白かったです。
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JT :ああ、あの頃は色々な歌詞を試していてね。"The King Will Return" とか、プログレッシヴというのかな、そういう歌詞を書いていたんだ。とても楽しかったよ。タイトルも色々冒険してね、"Seven Doors Hotel" なんてカッコいいだろ。"Wings of Tomorrow" とかさ。クールなタイトルを考えるのが楽しくてさ。
- --- Mirai : 北欧のバンドは、アメリカやその他のヨーロッパの国と比べ、メロディを大切にしているように感じるのですが、それは何故だとお考えですか。
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JT :アメリカのバンドはスリーコードが好きだし、言葉に重点を置いているよね。何世代にも渡って言葉というものを、何より大切にしている。いわゆるブルースとか。言葉が一番で、その下で普通の音楽を奏でるスタイルだ。もちろんこれはきちんと演奏されれば素晴らしいものになる。Bruce Springsteen や Bob Dylan は天才だろ。使っているのは普通のスリーコードだが、ストーリーが見事に伝わってくるんだ。それに対して俺たちは明らかに異なるバックグラウンドを持ってるわけさ。メランコリックな、例えば MSG や UFO、 Thin Lizzy とかね。Thin Lizzy はアイルランドの古いメロディを取り入れてるだろ。俺たちもスカンジナヴィアのフォークミュージックが頭にしみ込んでいるんだ。つまりアメリカのバンドと違って、ルーツにブルースがないんだよね。イギリスなどはアメリカからの影響を受けて、多少ブルースのバックグランドがあったり、そしてまたアメリカに影響を与え返したりしているけど。俺たちのルーツはスカンジナヴィアのフォークソングさ。
- --- Mirai : バンドのお気に入りと、ファンのお気に入りが異なるというのはよくあることですが、あなたにとって "The Final Countdown" はどのような曲ですか。Europe 史上最高の楽曲だと思いますか。
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JT :ユニークな曲だと思うよ。興味深い曲だし、ライブで演奏するのも楽しい。一方で俺にとってはアルバムの中の1曲であるのは確かだ。これはアルバムのオープニングであり、そしてライブの1曲目としても演奏できる荘厳な曲さ。まあだからファンが感じるのとはちょっと違った意味合いを俺たちは感じていると思うのだけど、この曲はユニークだし他の曲とは違うしね。Europe は基本的にはギター中心のバンドだけど、この曲、そして "The Final Countdown" というアルバムは、その間口を少し広げたものだよ。
- --- Mirai : あの曲のイントロは、Van Halen の "Jump" と共に、音楽史上最も印象的なものだと思うのですが。
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JT :そうだね、Eddie が Oberheim のキーボード(注:"Jump" のイントロで使われているのは、Oberheim 社の OB-Xa というキーボード。)をプレイしてるのを見てとても面白いと思ったんだ。俺は当時、日本の最新のアナログキーボードに魅了されてたんだけど、おそらく Eddie も Oberheim のキーボードに同じような感情を抱いていたんじゃないかと思う。俺は Korg の Polysix や Roland のキーボードを使っていた。キーボードという楽器自体が、Eddie や俺、ノルウェーの A-ha などのインスピレーションになっていたと思うんだよね。("Take on Me" のイントロを歌う。)80年代初めに日本からキーボードがやってきて、ソングライターをインスパイアしたんだ。ソングライターというのはインスピレーションを得るためならば、何でも試すものだからね。ギターバンドであった Europe が、キーボードの可能性を試してみるちょうど良い時期に来ていたんだ。ストリングスやイントロのピアノなど、色々とキーボードを使ったよ。Mic Michaeli はとても優れたキーボーディストさ。
- --- Mirai : "The Final Countdown" のイントロは Korg Polysix ですか?
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JT : いや、あのイントロは俺が Polysix で作曲をしたのだけど、レコーディングではシンセを MIDI で11台つなげて録ったんだ。Mic なら細かく覚えていると思うんだけど、一つは Yamaha。
- --- Mirai : DX-7 ですか?
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JT :そう、DX-7 だ。ラックタイプの音源がたくさん並んでるやつ。(おそらく TX816。DX-7 の音源ユニットを8台搭載したもの。)あとは PPG だったかなあ。
- --- Mirai : あのイントロは、名曲を書くのに複雑なコード進行など必要ないということを証明しましたが、一方で同じコード進行を使ったからと言って、あのような名曲に仕上がるという訳ではありません。"The Final Countdown" が何故あれほどの名曲に成りえたのか、言葉で説明することはできますか。それとも「マジック」であるとしか言えないでしょうか。
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JT :あれを書いたのは、俺がまだ高校生か大学生の頃なんだ。ただの短いフレーズでね。それをしばらく使わずにとっておいたんだ。サードアルバムを作るときに、イントロが必要になってね。アルバム、ショウのどちらのイントロとしても使えるものが。それで色々試しているうちに、Iron Maiden の "Run To The Hills" や UFO の "Lights Out" のようなギャロップのリズムが、あのフレーズにぴったり来ることに気付いたんだ。それまで様々なリズムを試したんだけど、どれもうまく行かなくて。曲全体としてはサウンドトラックみたいな感じだろ、とても流れが良いし。曲が進んで、違った雰囲気のギターソロに突入して、そしてまた綺麗に元の雰囲気に戻ってくる。どうやって作ったのかははっきり思い出せないけど、Oberheim のドラムマシンに合わせてキーボードを弾いて作ったんだ。あの時は Polysix じゃなかったな。とてもメランコリックなメロディだろ。フィンランドの古いフォークソングで "Mustalainen" というのがあるんだけど、それみたいなマイナーの、とても悲しい感じでさ。それにただメランコリックなだけじゃなくて高揚感も同時に持ち合わせているし。
- --- Mirai : なるほど、ギャロップのリズムというのがこの曲にとって大切な部分なのですね。
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JT :そうなんだ。スイスのスタジオで、普通の8ビートのリズムも試したんだけどね、まったくしっくり来なかった。プロデューサー (Kevin Elson) がアメリカ人だったから、ギャロップのリズムに慣れていなくて、8ビートを使いたがったんだけど、いやこれはギャロップじゃなくちゃダメだって押し通したんだ。間違いなくこのリズムがマジックの一つだね。それからコード進行。George Martin と Billy Joel が名曲の秘密について語る番組を見たことがあるんだけど、大切なのは「解決」だよ。旅の始まりがあって、そして終わりを感じられること。曲に「解決」を感じることで皆ほっとするんだ。「緊張」と「解決」だよ。それが多くの名曲の秘密さ。だけど、どの音を使えばそれが達成できるのるのかは、自分でやってみなければわからない。時には偶然見つかることもあるし。ギターで試してみて、キーボードで試してみたり。二日酔いの状態で適当に弾いたものを、「意外とこれは悪くないな」ととっておいて、それをまた後から取り出してみて改めて弾いてみる。作曲というのはこういうことの繰り返しさ。大変な作業だよ。無意識の作業だろ。寝ている時、他のことをやっている時にふとアイデアがひらめいたり。別のことをやりながら頭には曲が浮かんできたり、つまりは二つの作業を同時にやっているのさ。テレビを見ながらギターで作曲したり。完全に二つ別のことを同時にやっているわけだからね。不思議なものだよ。
- --- Mirai : "The Final Countdown" の歌詞についてですが、なぜ彼らは金星を目指すのでしょう?
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JT :歌詞は David Bowie のファーストシングル、"Space Oddity" からの影響だね。これにとても魅了されて、自然に曲に合う歌詞が出てくるまで何度も何度も繰り返し試したんだ。曲の雰囲気に合うような、とてもドラマチックなものをね。地球を去らなくてはいけない、地球にはもう住めない、新しい星を探さなくては、これって究極の Good-bye だろ?究極のさよならさ。
- --- Mirai : それはそうなんですけど、何故金星なんですか?金星には住めないと思うのですけど。
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JT :韻を踏みたかったんだよ!!
- --- Mirai : Seen us と Venus?
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JT :そうだよ、いいじゃないか別に科学ロックじゃないんだから!あまり真面目に捉えることじゃないよ!確かに金星に人は住めないだろうけど、金星が行き先だとも言ってないよ。金星の方に向かっているだけで、さらに先があるかもしれないし。
- --- Mirai : おっしゃる通りです。それでは最後に日本のファンにメッセージをお願い致します。
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JT :日本のファンの皆、また戻って来られてうれしいよ。1984年に初めて日本に来た時は21歳だった。もうずっと昔のことさ。日本が大好きだよ。家でも箸を使ってるし、息子にも箸の使い方を教えてるんだ。日本の食べ物や文化が大好きさ。もう20回か30回来てるけど、日本のファンは最高だよ!
- --- Mirai : どうもありがとうございました。
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Bill : どこ行ってたの?
Jeff : Europe 見に行ってたんだけど、残念ながらすでに最後の曲だったよ。
Bill : 最後の曲何だった?
Jeff : 決まってるだろ!
"The Final Countdown" の魅力に国境はないのだ。
それにしてもあのイントロ=サビは何故あれほど印象的なものに成りえたのだろうか。世の中には作曲の仕方や名曲を分析した書籍が多く出版されているが、名曲がなぜ名曲たり得るかを説明するのは容易ではないし、ましてや「こうすれば名曲が書ける」という方程式はまだまだ完成しそうにもない。特に "The Final Countdown" の場合、そのコード進行やメロディを分析してみればわかるが、複雑な理論は何一つ使われていないのだ。あのイントロも、いわゆる循環コードに始まり、キーをはずれるコードは出てこない。メロディも殆どがコードトーンで構成されているのみ。それだけに、この曲があれほどのインパクトを持ち、世界中で名曲として認知されている理由を言葉で説明をするのは難しい。特殊なコードでも使われいれば、「これがスパイスでね。」などと言えるのだろうが。
そういう訳で、Joey Tempest に「"The Final Countdown"が名曲たりえた秘訣を言葉で説明できますか。」という質問を用意はしてみたものの、「君ねえ、そんなもの説明できるわけないだろ。音楽ってそういうものではないだろ?音楽というものをわかってないねぇ。」などという厳しいリアクションも予想していた。だが彼の答は、そんな陳腐な予想の遥か上を行くものであった。秘密はリズム。ギャロップのリズムにすることで、物悲しいメロディに、一気に勇壮さが加わり、あの名曲が生まれたのである。以下の二つのリズムであのメロディを歌い比べてみて欲しい。全然イメージが変わるのがわかるだろう。これ、キーボードの音色のせいもあり、てっきり初めから、まるでトランペットで演奏するような勇敢なイメージで書かれたメロディのような気がしていたが、そうではなかったのだ。。Europe というと、どうしてもその美しいメロディに耳が行きがちだが、当然のこととは言えそのリズムも奇跡的な名曲を作り出すのに大きな役割を果たしているのである。

そしてもう一つ、"The Final Countdown" はギターではなく、キーボードを使って作られたからこそ生まれた名曲なのだ。作曲とは不思議なもので、使う楽器が変われば、出てくるメロディも変わる。Europe をインスパイアし、永遠の名曲を生み出す原動力となったのが日本製のキーボードであったことは、我々日本人にとっては誇らしいことではないか。
地球に住めなくなり、人類が新たなる安住の地を求めて宇宙に旅立つ。いつかそんな日が来るのかもしれない。しかし、仮にそんな日がやって来たとして、内惑星である金星に向かうことはないんじゃないの?という、私が常々抱いていた下らない疑問にも笑って対応してくれた Joey。曲解説では鼻歌も交えて熱心に説明をしてくれる姿を、ぜひとも文章だけでなく、ビデオでも見てみて欲しい。
ラウドパークにおけるパフォーマンスも圧巻の一言。演奏や歌の安定感もずば抜けていた。そして "Carrie"、"Seven Doors Hotel"、"Rock the Night"、"The Final Countdown" など、多くの人が知っている、一緒に歌える名曲、ヒット曲を持っているというのも強い。ロックスターとしてのオーラを十分に持ち合わせる Joey Tempest であるが、その話しっぷりからは音楽への情熱が溢れ出ているのがひしひしと伝わってきた。本物のロックスターであり、本物のミュージシャンなのだと改めて認識させられたインタビューであった。

Joey & Mirai
川嶋未来/SIGH
https://twitter.com/sighmirai
http://twitter.com/sighjapan
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ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。
30周年記念ライヴ!(2CD付き)

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