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「ベルリン・フィル・ラウンジ」第74号:シャイー、カラヤン時代のベルリン・フィルを語る

2013年3月6日 (水)

ドイツ銀行 ベルリン・フィル
ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

第1回バーデン=バーデン・イースター音楽祭2013が3月23日〜4月1日に開催
 バーデン=バーデン祝祭劇場でのベルリン・フィル・イースター音楽祭が、3月23日から4月1日まで開催されます。ベルリン・フィルの復活祭シーズンは、昨年までザルツブルクで行われていました。今年からは、場所をドイツのバーデン=バーデンに移し、全面的なリニューアルを図ります。
 会場のバーデン=バーデン祝祭劇場は、15年前にオープンした比較的新しいコンサートホール。2500席の収容人数を誇り、オペラ公演やコンサートで確固たる地位を獲得しました。復活祭のフェスティヴァルは、ベルリン・フィルに特化したもので、オペラやシンフォニー・コンサートだけでなく、教育プログラム、室内楽演奏会、オーケストラ・アカデミーの活動が展開されます。右ヴィデオでサー・サイモン・ラトルが語る通り、「ベルリン・フィルのベルリンでの活動が、そのまま短期間に体験できる」コンセプトです。
 今年のオペラ公演は、モーツァルトの《魔笛》がラトルの指揮で上演されます。ロバート・カーセンの演出に、ジモーネ・ケルメス(夜の女王)、ケイト・ロイヤル(パミーナ)、パヴォル・ブレスリク(タミーノ)、ミヒャエル・ナジー(パパゲーノ)、ドミトリー・イヴァシュシェンコ(ザラストロ)が出演。3人の侍女役にアニック・マシス、マグダレーナ・コジェナー、ナタリー・シュトゥッツマン、弁者役にジョゼ・ファンダムが登場するのも話題です。
 シンフォニー・コンサートは、ラトル指揮のマーラー「交響曲第2番」(3月24、31日)、ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」、ブルックナー「交響曲第9番」(28日)、アンドリス・ネルソンス指揮のブラームス「ヴァイオリン協奏曲」、ワーグナー《タンホイザー》序曲、ドビュッシー《海》、ラヴェル《ラ・ヴァルス》(25日)。コンチェルトのソリストは、クリスティアン・ツィンマーマンとマクシム・ヴェンゲーロフが務めます。その他15回にわたり室内楽、教育プログラム、オーケストラ・アカデミーの演奏会が行われます。

ベルリン・フィル公式サイトのバーデン=バーデン・イースター音楽祭特設ページ

 最新のDCHアーカイブ映像

「ヴァイオリンの女王」ムターのドヴォルザークがアップ!
2013年2月9日

【演奏曲目】
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲
ルトスワフスキ:管弦楽のための協奏曲

ヴァイオリン:アンネ・ゾフィー・ムター
指揮:マンフレート・ホーネック

 ライブ中継が行われなかった2月9日の演奏会がアップされました。目玉は、アンネ・ゾフィー・ムター独奏によるドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲。あでやかな赤いドレスで登場するムターは、まさに「ヴァイオリンの女王」と呼べるでしょう。また、指揮のマンフレート・ホーネックは、今回がデビューとなります。

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ラトルのシューマン「第2」。ペレーニはルトスワフスキのチェロ協奏曲で登場
2013年2月22日

【演奏曲目】
デュティユー:メタボール
ルトスワフスキ:チェロ協奏曲
シューマン:交響曲第2番

チェロ:ミクローシュ・ペレーニ
指揮:サー・サイモン・ラトル


 今年はルトスワフスキの生誕百周年に当たります。ベルリン・フィルでは、この作曲家の小特集が組まれていますが、当コンサートもそのひとつ。彼のチェロ協奏曲が、ミクローシュ・ペレーニの独奏により演奏されました。
 プログラムの後半では、ラトルが現在集中的に取り組んでいるシューマンの作品から、交響曲第2番が取り上げられています。ベルリン・フィルの演奏能力が最大限に生かされた、瞠目すべき演奏です。

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 これからのDCH演奏会

風雲児ネルソンスのショスタコーヴィチ「第6」
日本時間2013年3月9日(土)午前3時30分

【演奏曲目】
モーツァルト:交響曲第33番
ワーグナー:《タンホイザー》序曲
ショスタコーヴィチ:交響曲第6番

指揮:アンドリス・ネルソンス


 ヨーロッパで大人気のアンドリス・ネルソンスが、今シーズン2回目の登場を果たします。すでに常連のポジションを獲得した彼は、次代の指揮界を担う存在でしょう。バーミンガム市響とのCDも存在しますが、ベルリン・フィルとの共演でその実力をご確認ください!

生中継:2013年3月9日(土)日本時間午前3時30分

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独ユース・オケ界の雄、ユンゲ・ドイッチェ・フィルをマーラー「第9」で!
日本時間2013年3月20日(水)午前4時

【演奏曲目】
マーラー:交響曲第9番

ユンゲ・ドイッチェ・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ジョナサン・ノット


 ユンゲ・ドイッチェ・フィルは、ドイツを代表するユース・オケで、1974年創設されました。全国の音楽大学学生をメンバーとし、その実力は内外で広く知られています。今回の演奏会では、ジョナサン・ノットの指揮でマーラーの「交響曲第9番」に挑戦。若者の清新な覇気に満ちた演奏が期待されます。

生中継:2013年3月20日(水)日本時間午前4時

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 アーティスト・インタビュー

リッカルド・シャイー(後半)
「明晰でありながら、重厚な響きが得られ、同時にテンペラメントがある。ベルリン・フィルの魅力は、まさにそこにあるのです」
聞き手:アルブレヒト・マイヤー(ベルリン・フィル首席オーボエ奏者)
2013年1月11日

【演奏曲目】
メンデルスゾーン:交響曲第4番《イタリア》
ブルックナー:交響曲第6番
指揮:リッカルド・シャイー


 リッカルド・シャイーのインタビューの後半をお送りします。前回では、メンデルスゾーンの《イタリア》が話題となりましたが、今回はプログラム後半のブルックナーの演奏について語っています。興味深いのは、シャイーが「現在のベルリン・フィルには、驚くほどカラヤン時代の響きが残っている」と語っていることです。シャイーは、約10年間ベルリン・フィルのブランクがあり、ここの1月の演奏会は久々の登場でしたが、過去との比較は興味深く思われます。

アルブレヒト・マイヤー 「シャイーさんは、80年代にベルリン放送交響楽団(現ベルリン・ドイツ響)の首席指揮者を9年間務められました。今回、久々にベルリンに戻られて、どのようにお感じになりましたか」

リッカルド・シャイー 「ベルリン時代は、私にとって非常にエネルギッシュで熱狂的な時期でした。当時私はまだ30代で、血気盛んだったのです。またベルリンには本当に“壁を越えて行く”印象があり、非常に特別な場所でした。今回、私と妻は久しぶりにここに来ましたが、まったく別の世界という感じです。フィルハーモニーの周辺も本当に変わって、予断がならない(笑)という気がします。何しろ私たちの頭のなかでは、昔のベルリンがまだ生きているので…。
 しかし、一歩フィルハーモニーのなかに足を踏み入れると、驚くほどすべてが昔のままです。それが“ああ、家に帰ってきた”という気持ちを与えてくれます。ベルリン放送響も、ずっとここでリハーサルと演奏会を行ってきたのですから…。我々がどんな音楽をしたか、ひとつひとつの思い出がよみがえってきます。そしてカラヤン。私は彼のリハーサルと録音に出入りさせていただき、彼がベルリン・フィルでどんな指揮をしたが、どのように響きを作り上げたかを、つぶさに観察することができました。私の人生のなかでも、忘れられない瞬間です」

マイヤー 「ちょっと挑発的な質問をさせてください。ベルリン・フィルの響きは、当時と変わりましたか。今我々は、当時とはまったく別のメンバーです」

シャイー 「ベルリン・フィルは、よりフレキシブルになりました。様式的な意味でも、テンポの変化に対する反応の意味でもです。しかし、例えばブルックナーの交響曲で、ある特定の響きを要求すると、まぎれもなくカラヤン時代の音が出てきます。当時の響きは、間違いなく今でも存在するのです。今、どれくらいカラヤン時代の奏者がいるか分かりませんが…」

マイヤー 「…私の義父アンドレアス・ブラウは、当時からの団員です(笑)」

シャイー 「そうですね(笑)。響きの伝統は、毎日のリハーサルのなかで育まれてゆくものです。もちろん私は、その響きを出してほしいと意識的にお願いするわけですが、そう願えばちゃんと出てくるのです。カラヤンは、日々その響きを目指してリハーサルをしてきたのであり、そのカルチャーは、今でも生きていると言えます。それは本当に素晴らしいことです」

マイヤー 「今回のリハーサルで興味深かったのは、シャイーさんが回数を重ねるごとに、響きを柔らかく、透明感に満ちたものにしていったことです。最初からではなく、徐々に変わっていきました」

シャイー 「ブルックナーの第6のような曲では、透明感、明晰さというのは難しい課題です。というのは、最初のリハーサルでは、そうした明晰さはなかなか得られないからです。こうした時、私は座右の銘である“耳で読むことleggere con le orecchie”を考えます。我々はスコアに書かれていることを内なる耳で聴いて、明晰さを探りださなければならないのです。明晰さを求めることは、演奏を作り上げるプロセスで非常に重要ですが、それと同時に、深く、重心の深い響き、そして感情の豊かさを維持する必要があります。ベルリン・フィルと一緒に仕事をしていて素晴らしいのは、そのすべてが得られることです。明晰でありながら、重厚な響きが得られ、同時にテンペラメントがある。ベルリン・フィルの魅力は、まさにそこにあるのです」

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 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

オロスコ=エストラーダがフランクフルトHR交響楽団の首席指揮者に
 1977年コロンビア生まれの若手指揮者アオンドレス・オロスコ=エストラーダが、パーヴォ・ヤルヴィの後任としてHR響の首席指揮者に就任することになった。契約のスタートは、2014/15年シーズンからで、年数はまず4年である。オロスコ=エストラーダはここ数年、HR響に数回客演しており、大きな評判を呼んでいた。
 なお彼は、同じく2014/15年シーズンより、ヒューストン響の首席指揮者も務めることが決定している。

コンロンがロサンゼルス・オペラの音楽監督職を延長
 ジェームズ・コンロンが現職のロサンゼルス・オペラとの契約を延長するという。これにより彼は、最低5年ロサンゼルスに留まり、2017/18年シーズンの終わりまでシェフを務めることになる。
 なお、ロサンゼルス・オペラの総監督はプラシド・ドミンゴであるが、彼の契約は本来現在のシーズンで満了する予定であった。しかし彼も延長が決定し、今後は2年ごとに自動更新されるという。

ブーレーズがシカゴ響とクリーヴランド管の演奏会をキャンセル
 ピエール・ブーレーズが予定されていた演奏会を再びキャンセルした。シカゴ響とクリーヴランド響の公演がそれだが、これは「医師の勧めによるもの」だという。シカゴではクリスティアン・マセラル、アッシャー・フィッシュ、クリーヴランドではアラン・ギルバートが代役を務める。ブーレーズは1年前に目の手術のためにクリーヴランド響のコンサートをキャンセルしているが、今回の報道では、健康状態の詳細については明かされていない。

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2013年4月5日(金)発行を予定しています。

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