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「ベルリン・フィル・ラウンジ」第71号:ベルリン・フィルから愛される若手K・ペトレンコのインタビュー

2013年1月11日 (金)

ドイツ銀行 ベルリン・フィル
ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

ラトル&ホワイト:バレンボイム70歳の誕生日に寄せるメッセージ
 ダニエル・バレンボイムが昨年11月15日、70歳の誕生日を迎えました。それを記念して、サー・サイモン・ラトルとサー・ヴィラード・ホワイトが、お祝いの言葉と歌を寄せています。ヴィデオをご覧ください。
 バレンボイムはすでに50年近くにわたり、ピアニストおよび指揮者としてベルリン・フィルと共演しています。最初の演奏会は、1964年9月7日のズービン・メータ指揮のコンサートで、フルトヴェングラーの「交響的協奏曲」のソロを演奏しています。指揮者としての最初の演奏会は、69年6月14日。プログラムは、ハイドン「交響曲第95番」、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番(独奏:クリフォード・カーゾン)」、シューマン「交響曲第4番」でした。その後、弾き振りなどでも頻繁に客演していますが、興味深いことに、純粋なソリストとして登場したのは、68年以降は80年が初めてでした(70〜79年の演奏会はすべて指揮のみか、ピアノとの兼ね合い)。バレンボイムが、ベルリン・フィルにおいて早くから指揮者として認められていたことが分かります。
 バレンボイムは、今シーズンは定期演奏会の指揮は担当しない予定ですが、2013年3月18日のギ・ブラウンシュタインのリサイタルでピアノを受け持つことになっています。

ラトルとホワイトのヴィデオを観る

ベルリンのオペラ、オーケストラが、ヘンツェの合同追悼会を開催
 2012年10月27日、ドイツの作曲家ハンス・ヴェルナー・ヘンツェが亡くなりました。ヘンツェはベルリンの音楽界にとっては重要な存在で、数多くの作品がこの町のオーケストラやオペラハウスにおいて初演されています。1951年には、フェレンツ・フリッチャイ指揮のRIAS交響楽団(現ベルリン・ドイツ交響楽団)が、バレエ音楽《ローザ・ジルバー》を初演。ベルリン・ドイツ・オペラでは《鹿の王》、《若い騎士》、《裏切られた海》、またベルリン国立歌劇場では《フェードラ》が初演されています。ベルリン・フィルは、管弦楽曲、室内楽曲、そして交響曲第4、6、9番を世界初演。またヘンツェの最後の作品「ある劇場のための序曲」は、ベルリン・ドイツ・オペラのために作曲されました。
 ベルリン・フィル、ベルリン・ドイツ交響楽団、ベルリン・ドイツ・オペラ、ベルリン国立歌劇場は、2013年1月6日、ヘンツェの死を悼んで合同追悼会を開催しました。ドナルド・ラニクルズ指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管により、「ある劇場のための序曲」他、モーツァルト等の作品が演奏されています(写真:© Deutsche Oper Berlin)。

ヘンツェ合同追悼会のプログラム(ベルリン・ドイツ・オペラ)

ジルベスター・コンサート2012
 ベルリン・フィルのジルベスター・コンサートは、例年ダンスをテーマとしたプログラムに加え、有名ソリストが登場しますが、今年の客演者はオペラ界の大スター、チェチーリア・バルトリでした。
 ラトル指揮によるプログラムは、前半がラモーの《ボレアド》からバレエ音楽、後半がドヴォルザークやブラームスの舞曲、ラヴェル《ダフニスとクロエ》第2組曲。バルトリは、ヘンデルのオペラ、オラトリオから、4曲を歌いました。そのスター性、華やかなオーラは、現代を代表する名歌手のものと称されています。
 日本では、2013年1月28日(27日深夜)に、NHKのBSプレミアムシアターで収録映像が放送される予定です(写真:© Stephan Rabold)。

ジルベスター・コンサートの詳細はこちらから

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ティーマンとポリー二がモーツァルトで共演!
2012年12月15日

【演奏曲目】
メンデルスゾーン:序曲《静かな海と楽しい航海》
モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番ハ長調
リスト:交響詩第13番《ゆりかごから墓場まで》
同第6番《マゼッパ》
同第3番《前奏曲》

ピアノ:マウリツィオ・ポリー二
指揮:クリスティアン・ティーレマン


 12月にはクリスティアン・ティーレマンが2回ベルリン・フィルに客演しましたが、その2つ目の演奏会は、ドイツ・ロマン派とモーツァルトを組み合わせた内容です。メンデルスゾーンの音詩的な《静かな海と楽しい航海》に、リストの交響詩3曲が対置される一方、マウリツィオ・ポリー二がモーツァルトのピアノ協奏曲第21番を演奏されています。ティーレマンとポリー二のコンビは、一見意外に思われますが、すでにドレスデンで共演。今回は、ティーレマンのモーツァルトが聴けるという意味でも興味深い内容です。

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レイトナイト・シリーズ第2回は、現代音楽ソプラノ、バーバラ・ハニガンが大活躍
2012年12月15日

【演奏曲目】
ヒンデミット:室内音楽第1番
ヘンツェ:《美しくあること》
ウォルトン:朗唱と6つの楽器のための《ファサード》(抜粋)

指揮・ソプラノ・語り:バーバラ・ハニガン
指揮・語り:サー・サイモン・ラトル


 今回のレイトナイト・シリーズでは、ソプラノのバーバラ・ハニガンがソリスト兼指揮者に迎えられています。1923年に作曲されたウォルトンの《ファサード》は、アカデミック、大衆風、さらにカバレットやジャズなど、さまざまな音楽的要素が盛り込まれた作品集で、この作曲家の名を一躍有名にしました。またヒンデミットの室内音楽第1番のほか、先頃逝去したヘンツェのカンタータ《美しくあること》が取り上げられています。コロラトゥーラ・ソプラノ、ハープ、4本のチェロという編成の、ユニークな作品です。ハニガンのユーモラスな演技、そしてラトルの語りのご注目ください。

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今年の教育プログラム、クリスマス・コンサートはパーカッション!
2012年12月16日

司会:サラ・ウィリス
ベルリン・フィルの打楽器奏者たち


 ベルリン・フィルの教育プログラムの一環によるクリスマス・コンサートが、今年もフィルハーモニーで行われました。司会は当団ホルン奏者のサラ・ウィリス。今回はベルリン・フィルの打楽器奏者たちを迎え、パーカッションの多彩な世界、そして彼らのヴィルトゥオーゾぶりが存分にお楽しみいただけます。聴衆も、手拍子や合唱で一緒に音楽を奏でます。

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ペトレンコのロシア&ルーディ・シュテファン・プロ
2012年12月22日

【演奏曲目】
ストラヴィンスキー:詩篇交響曲
シュテファン:ヴァイオリンと管弦楽のための音楽
1楽章の管弦楽のための音楽
スクリャービン:《法悦の詩》

ヴァイオリン:ダニエル・スタブラヴァ
ベルリン放送合唱団(合唱指揮:カスパース・プトニンシ)
指揮:キリル・ペトレンコ

 昨年最後のデジタル・コンサートホールの中継は、キリル・ペトレンコ指揮のロシア&ルーディ・シュテファン・プロです。これまでにもロシアもので成果をあげてきたペトレンコゆえ、ストラヴィンスキーとスクリャービンの選曲は当然ですが、興味深いのはシュテファンでしょう。この作曲家は、1887年生まれのドイツ人で、28歳の時に第1次世界大戦で戦士するという不幸な生涯を送りました。しかしその作品は、注目に値する先進性を湛えています。後期ロマン派と現代音楽への橋渡しをする存在と言えそうです。
 今号では、ペトレンコのインタビューもお読みいただけます。当ページ下部をご覧ください。

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 これからのDCH演奏会

シャイーの12年ぶりのベルリン・フィル定期は、メンデルスゾーンとブルックナー
日本時間2013年1月12日(土)午前4時

【演奏曲目】
メンデルスゾーン:交響曲第4番《イタリア》
ブルックナー:交響曲第6番

指揮:リッカルド・シャイー


 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の首席指揮者リッカルド・シャイーが、ベルリン・フィルの指揮台にカムバックします。彼は、前回2001年に定期演奏会に出演していますが、2011年夏のヴァルトビューネ・コンサートに続き、当プログラムでフィルハーモニーに再登場します。プログラムは正攻法なもので、メンデルスゾーンの《イタリア》に、ブルックナーの「第6」。この曲目で、ヨーロッパ・ツアーも行う予定です。

生中継:2013年1月12日(土)日本時間午前4時

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ペライアが指揮者として登場!モーツァルトとシューベルトの夕べ
日本時間2013年1月19日(土)午前4時

【演奏曲目】
モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番
シューベルト:グラン・デュオ(ヨアヒム編曲)

指揮・ピアノ:マレイ・ペライア


 マレイ・ペライアは、昨年ベルリン・フィルのピアニスト・イン・レジデンスを務めていますが、今回の演奏会では、指揮者としても活躍します。シューベルトの4手のための「グラン・デュオ」(ヨーゼフ・ヨアヒム編曲)という、ピアノに関連した作品でのチャレンジです。一方、コンチェルトは、モーツァルトの最後のピアノ協奏曲。円熟したペライアの演奏に、期待が掛かります。

生中継:2013年1月19日(土)日本時間午前4時

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レイト・ナイト第3回は、ハースの《イン・ヴェイン》!
日本時間2013年1月19日(土)6時30分

【演奏曲目】
ハース:《イン・ヴェイン》

ベルリン・フィル・オーケストラ・アカデミー団員
指揮:サー・サイモン・ラトル


 レイト・ナイト・シリーズ第3回では、ゲオルフ・フリードリヒ・ハースの《イン・ヴェイン》が取り上げられます。ハースは、1953年グラーツ生まれのオーストリアの作曲家。この作品では、微分音を駆使し、平均律で構成される12音のオクターブから離脱する音響世界を作り上げています。

生中継:2013年1月19日(土)日本時間6時30分

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 アーティスト・インタビュー

キリル・ペトレンコ
「次回は、ベルリン・フィルとメインストリームの曲をやる自信が生まれました」
聞き手:アレクサンダー・バーダー(ベルリン・フィル クラリネット奏者)
2012年12月22日

【演奏曲目】
ストラヴィンスキー:詩篇交響曲
シュテファン:ヴァイオリンと管弦楽のための音楽
1楽章の管弦楽のための音楽
スクリャービン:《法悦の詩》

ヴァイオリン:ダニエル・スタブラヴァ
ベルリン放送合唱団(合唱指揮:カスパース・プトニンシ)
指揮:キリル・ペトレンコ


 12月に客演したキリル・ペトレンコのインタビューを、2回にわたってお届けします。ペトレンコは、現在ドイツで最も高い評価を受けている若手指揮者のひとりで、とりわけベルリン・フィルからは愛されている存在と言えます。このインタビューでも、素直で自然な人柄、音楽に取り組む真摯な姿勢が強く感じられます。これまで比較的特殊なレパートリーで客演し、当演奏会でもルーディ・シュテファンの秘曲を取り上げていますが、インタビューでは「次回からはベルリン・フィルとメインストリームの曲をやる自信が生まれた」と語っています。その言葉にも、オケとの良好な関係が感じられるでしょう。

アレクサンダー・バーダー 「ペトレンコさんは、2002年から07年までベルリン・コーミッシェ・オーパーの音楽総監督でした。2013/14年シーズンからは、バイエルン国立歌劇場の音楽総監督を務められます。ベルリンで指揮される時は、古巣に戻る、という感じですか」

キリル・ペトレンコ 「実は私は、まだベルリンに住んでいるのです。1月の終わりにミュンヘンに引っ越すのですが、ベルリンには11年住んだことになります。私にとって一番好ましいのは、自分の家からリハーサルに行けることです。コーミッシェ・オーパーの時がそうでしたし、今回のベルリン・フィルの場合も、家から来られました。残念ながら、フリーで活動していたこの数年は、そうできないことが多くて…」

バーダー 「ペトレンコさんは、コーミッシェ・オーパーのポストの後、しばらくフリーで活動すると宣言し、首席指揮者になることを拒否し続けてきました。今回ミュンヘンで新しいポストに就くわけですが、この決心をしたのはなぜでしょう」

ペトレンコ 「おっしゃる通り、私は一時期フリーとして活躍する道を選びました。コーミッシェ・オーパーでの年月は私にとっては本当に重要で、色々なことを学びましたが、オペラでの仕事はどうしても事務的なことに関わる必要があり、大変だったのです。それまではずっと特定のオペラハウスに所属していたので、一度自由に活動してみたかったのです。
 しかしこの生活を5、6年続けてみて、フリーでいることが段々不都合になってきました。というのは、客演指揮者というのは本質的に根無し草なんです。ホームベースがあった方がいい、という考え方になりました。ミュンヘンから声が掛かったとき、最初は非常に懐疑的だったのですが、もう一度考え直して、受けることに決めたのです。私には、特定の場所で長期的に活動することの方が向いていると思います」

バーダー 「その方が、よりよい音楽ができるといことですね。長いリハーサルができるからですか」

ペトレンコ 「リハーサルの長さという以前に、団員との人間関係のためです。というのは、ある人のことをよく知っていれば、どの日、どの時間、どの瞬間に一番よい形で、最大のものを引き出せるかが分かります。例えば、初めて客演するオーケストラの場合、顔を合わせ、リハーサルを少ししたと思ったら、もうゲネプロになってしまいます。大体、私は性格的にシャイで、すぐに打ち解けられないんです。2回目に来たときは、少し団員のことが分かっていますが、それでも1歩戻ったところから始めなければなりません。自分のオーケストラであれば、メンバーのことがよく分かっているので、効率のよい形でリハーサルを進めることができます」

バーダー 「ベルリン・フィルでも、メンバーのことが分かってきましたか」

ペトレンコ 「ええ。今回、1日目はちょっと緊張していて、2日目になると少し落ち着きました。人や状況に慣れるのに時間が掛かりますが、ベルリン・フィルは、私にとってはエベレストのようなものなので、なおさらです。ですが、今回3回目に客演して、音楽的に団員と一体化することができる、と感じています。客演するごとに、1歩1歩前進している感じです」

バーダー 「我々の方から言わせていただくと、皆あなたが来るのが楽しみなんですよ。日程が近づくと、“ペトレンコが来るね”と噂しあうんです。あなたの客演は、心から大歓迎しています。
 今回のプログラムについてお話したいと思いますが、なぜこのような構成になったのでしょう。独特の選曲だと思いますが」

ペトレンコ 「今回声が掛かったとき、まずスクリャービンの《法悦の詩》をやりたいと思いました。ベルリン・フィルとフィルハーモニーでやる曲として、合っていると考えたのです。ルーディ・シュテファンについては、私はこの作曲家を数年前に発見しました。第1次世界大戦で27歳で戦死した悲劇的な人物ですが、その才能は明らかです。せっかく埋もれた作曲家を取り上げるのですから、1曲だけではなく2曲一度に、プログラムの重点として演奏しようと思いました。ベルリン・フィルのような一流のオーケストラの定期演奏会で、きちんと再演してこそ、広い聴衆に知らしめられると思います。ストラヴィンスキーの詩篇交響曲を取り上げたのは、詩篇(ダヴィドの詩篇)には悲劇的なものがあり、それをシュテファンの運命と関連付けようと思ったのです。でも、お客さんがあまにり悲しい思いで家路につかなくて済むように、最後にスクリャービンを置きました。
 私はひと晩のプログラムは、様々な側面を持つべきだと思います。今回のシュテファンのように教育的、教養的なレパートリーを加える一方、オケマンにとって弾いて楽しい曲(今回の場合ならばスクリャービンですが)、また、お客さんが楽しめる作品を組み合わせてゆくことが必要ではないでしょうか。しかし、次回はもう少しポピュラーな作品を取り上げられれば、と考えています。実はこれまでは、ベルリン・フィルでメインストリームの作品をやるのは早すぎると思っていました。ですが、次回はオケがソラで弾けるような曲をやっても大丈夫だという気持ちになりました。その自信が生まれた、という感じです」

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 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

沼尻竜典がリューベック劇場の音楽総監督に就任
 沼尻竜典が、2013/14年シーズンよりドイツ、リューベック劇場の音楽総監督に就任することが決定した。契約スタートは2013年8月1日で、期間は5年になるという。
 リューベックでは、日本の作曲家を含むプログラミングや、自ら伴奏を担当してのリーダーアーベントの導入などが予定されているという。2013年1月1日には、リューベック・フィルを指揮してニューイヤー・コンサートを行っており、ヴェルディ《運命の力》序曲、モーツァルト「ピアノ協奏曲第23番」、ドヴォルザーク《新世界》を演奏している。
 沼尻は、ドイツではこれまでケルン・オペラ、バイエルン国立歌劇場、ベルリン・コーミッシェ・オーパーなどでも指揮していた(写真:ニューイヤー・コンサートで喝采を受ける沼尻。© Theater Lübeck)。

サザビーズが楽器部門を閉鎖
 国際的オークション・ハウスとして知られるサザビーズが、楽器の取引から撤退することを発表した。これは、同社の楽器オークションのスペシャリスト、ティム・イングルズ、ポール・ヘイデイが退社し、自らのオークション・ハウスを開くためだという。イングルズ&ヘイデイの最初の競売は、2013年5月に予定されている。
 これにより、サザビーズは骨董品、美術品のオークションに専念することになる。

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2013年1月24日(木)発行を予定しています。

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