FUNK/SOUL兄弟仁義

2012年12月4日 (火)


ロゴ

毎度お馴染み兄弟仁義のお時間です。前回のDJ THEM氏のインタビュー&オススメ盤紹介は楽しんでいただけたでしょうか?実に多くの方からご意見やご感想を頂き、ありがたく思う次第であります。

さてさて、今回の兄弟仁義ですが、前回に続きスペシャルゲストを迎えて掲載させて頂きます。そのスペシャルゲストとは、日本初のソウルミュージック専門レーベル“SWEET SOUL RECORDS”(以下“SSR”)の皆様!!世界中の良質作品を日夜発掘&紹介している、今、日本でもっとも勢いのあるレーベルの1つ。(余談ですが、現在HMV目黒店ではSSRとコラボ企画を展開中!特設試聴スペースもございますのでお近くにお寄りの際は是非ご来店下さい!!)
そんなソウルミュージックを心から愛するレーベルの方々がどんな作品を紹介してくれるのか、いやはや楽しみですね〜。どうぞ時間の許すかぎり、ごゆるりとお楽しみください。

SWEET SOUL RECORDS代表 山内直己

  SWEET SOUL SELECT ARTISTS / WORLD SOUL COLLECTIVE VOL.1

世界のソウルの扉を開く、SWEET SOULのコンセプトアルバム

2009年にSWEET SOUL RECORDSを創設してから、早三年。私たちのコンセプトに共感をしてくれるアーティスト達が、今日も世界各国からコラボレーションを求め連絡をしてくれます。そのときいつも驚くのは、ソウルという音楽が本当にボーダレスで、え?!こんな国にも?!といった具合で、世界中にソウルアーティストがいること。 このコンピレーションに収録した曲も、メキシコ、オランダ、フランス、ニュージーランドといった世界各国から集めました。 90年代から2000年代にブームとなったネオソウルを昇華し、コスモポリタンソウル(私たちがつくった造語です)へと進化したこれらの曲は、きっといつも聴いているあなたのソウルレパートリーにも類似した要素を感じさせてくれつつ、アーティスト一人一人の個性と心地よく混ざり合い、新しい提案をしてくれます。
そして、このアルバム発売を記念して、最後の曲に日本人Nao YoshiokaがSWEET SOUL RECORDS初のオリジナル曲で参加しています。メッセージは「Make The Change」。変革は自ら創り出す、という強いメッセージを込めています。この混沌とした音楽世界を私たちは変えて行く、だからみんな一緒にそれを成し遂げようという歌詞で歌っています。アルバムのクオリティは、私自身がセレクトしているので、それは自分にとっては間違いありませんが、弊社でも最も人気があるCDなので、きっと期待は裏切らないはず。この一枚でソウルは世界に繋がっていることを実感できる一枚。是非お試しあれ。


  SWEET SOUL SELECT ARTISTS / URBAN, SOUL LIGHTS

JPソウルの可能性を感じるシリーズ、SOUL LIGHTS最新作

マァイマァイマァイ〜とトークボックスのコーラスワークで始まる、6曲目。吉岡悠歩が歌う、珠玉の一曲。個人的にもとても思いが深い曲です。ジョニー・ギルの「My, My, My」の様に、ど頭から放出される高温の情熱とは対照的に、エンディングまでじっくり気持ちを抑え、最後にジェントルに爆発するセンスの良さ。 他5人の女性シンガー達にも大注目。新世代のアーティストが作品に新しい息吹を吹き込んだニュースタンダードといえる作品です。SWEET SOUL RECORDSは今まで、未発掘の素晴らしいアーティスト達を世に出すため、日々草の根活動を繰り返し、SOUL LIGHTSもシリーズやっと4作目。なんといっても今回は、HMVの伝説的な存在の、カリスマバイヤー西崎信太郎さんとのコラボレーション作品です。 選曲をご覧になられるだけで、アンテナがピン!!っと立つ方も多いのではないでしょうか。90年代のヒット曲がずらり。そしてシリーズならではの生音での楽器レコーディングは、Gakushiさんが率いるバンドチーム。三浦大知さんのバックバンドを務める日本人の若手トップミュージシャン達が現場を最高に楽しみながら、本気で取り組んでいます。


  Frank Mccomb / The Truth

価値観が変わるかもしれない。そんなアルバムに出会えた瞬間

ローリン・ヒルが最も称賛された自分のアルバムを「なんであんなPOPなものを作ってしまったんだろう」と商業的な音楽を批判したように、フランク本人の意図とは少し反する、そんな作品なのかもしれない。でも私からしたら、スティーヴ・ハーヴェイのプロデュース力によって、これだけ多くの人を魅了してしまう要素が加わっていることを称賛したい作品。『The Truth』以降、本人がインデペンデント・アーティストとしてリリースした、ジャズをベースとされた巧妙なピアノプレイとアーティスティックな部分がにじみ出る作品とは全くと言っていいほど、違うパーセプションを感じます。かなり顕著にメジャー感が漂う、「ネオソウル」を狙って制作されています。ファンにとってはワオ!と思うようなおいしい要素が存分に詰まった完成度の高い作品に出来上がっています。 個人的には#07の「Action Speak Louder Than Words」のドラムブレイクから始まる、狙い抜かれたクールな中にも情熱を感じる世界観に完全にノックアウト。彼の普段のライブを見ていると、ハービー・ハンコック・フレーズやセロニアス・モンクを思わせるフレーズがちらほら。基本はジャズやフュージョンといった視点を持つフランクのプレイをこのアルバムではあえてスティーヴ・ハーヴェイがR&Bやクラブピープルへの理解を広げる動きをしているんですが、自分の音楽価値観に大きく影響をしたアルバムと言えます。ネオソウルといえばディアンジェロ、エリカ・バドゥと真っ先にヒップホップな視点からの文化を想起しますが、その流派とは少し違う視点で新しく進化し続けているフランクやレディシなどのJAZZに強く影響されたアーティスト達の存在は忘れてはなりません。コレは聞いとけ!と自信を持ってお勧めする、何年経っても語り継がれるであろう、マスターピースです。


  Patti Austin / Havana Candy

メッセージ、アティテュードが自然に心に語りかける


私たち音楽を創る側の人間は特にそうですが、「録音がどうだ」、「マスタリングがどうだ」など、音のクオリティについて話をするわけですが、大切なのはアーティストの魂を感じ、アティテュードを感じ、訴えようとしているメッセージや世界観を理解すること。その理解が無限なのが、音楽という芸術の楽しみ方であり可能性だとさえ思うのです。 私がこれまで聞いてきた多くの名作のなかでも、その歌心が私の魂をダイレクトに揺さぶったアルバム『Havana Candy』をご紹介します。レコードコレクターのみなさんには、まぁ当たり前なスタンダードアルバムかもしれませんが、どの時代に誰が聞いてもフレッシュであり、感じるものがある作品だと思うのです。甘く切なく、やさしくも力強い、パティ・オースティンの歌声は多くのファンの心をわしづかみにするでしょう。「Say You Love Me」の人と言えば、きっとわかる人もたくさんいると思いますがなんと若干5歳でレコード会社と契約したとんでもない才能の持ち主なんです。クインシー・ジョーンズら著名なプロデューサーとの共作もいろいろとあるんですが、個人的にはこのアルバムが特別。ロマンティストだけど、コテコテなものより少し変化球が好きなあなたにおすすめです。プロデューサーはフュージョン界で知らない人はいない、デイヴ・グルーシンとラリー・ローゼン。参加ミュージシャン達もニューヨークのトップミュージシャン達が名を連ね、その作品への意気込みを感じられます。 なにか大切なものを忘れそうになった時、私が聴く曲が#07「We’re In Love」です。恋をしたことがあるひとにはきっとわかる、目に見えない愛というものを明らかに感じる瞬間。そんな一瞬の感情をぐっと曲に凝縮したような曲です。 心、愛、ソウルすべては目に見えないもの。目に見えないものを信じることはとても難しいですね。そんな目に見えないものを形にして表現することに挑戦する手法の一つが音楽であり、多くのアーティスト達が常に挑戦を続けているのです。そんな積み重ねられた歴史の中に、パティのようなアーティストがいてくれたことにただただ感謝します。




TADA

  SOULACOASTER / SOULPERSONA

幼い頃からロイ・エアーズ大好きな私にとって、UK屈指のプロデューサー、ソウルペルソナの創りだすミラクルなサウンドは、全てが好みすぎて本当にどうしようという感じでした。それもそのはず、シンガーの一人には、なんとロイ・エアーズ伝説のバンドRAMPのボーカルを務めていたシンガー、サイベル・スラッシャーも参加していて、RAMP活動時に書き溜めていた歌詞を、彼のサウンドに乗せて歌いあげていたのです。当時、日の目を見ることのできなかった歌詞達は、このタイミングでリリースされる運命であったかのようにすら感じてしまいます。現代のネット技術が成せる技を駆使し、世界中のアーティストとオンライン上で交流を重ね紡ぎ出されたgroovyな結晶達は、決して懐古主義でもなく、きちんと今生きている現代を肯定しているサウンドです。 ブラックネスをしっかりと感じる事のできる一枚は、70年代ファンにも自信を持ってオススメ!


  ELLE / NTJAM ROSIE

アルバム収録曲「In Need」のYouTubeを初めて見たとき、一瞬にしてこのアーティストは間違いない!と確信したのを今でも鮮明に覚えています。良い音楽とは、いつでも直感に訴えてくるもの。ソウルミュージックは、音楽の中でも一番確実に、人々の魂に呼びかける方法だと思っていましたが、彼女の才能と音楽に触れたとき、その考えは裏付けされたような気がしました。アルバムに収録されている楽曲達は、「In Need」以外も全て聴き応えたっぷり。最後の展開で、アフリカの大地と風を感じさせる「Elle (PartT)」と、独特の緊張感がいつ聴いてもゾクゾクとする「L’amour」も本当に大好きな楽曲です。現在、来年の春に向けて新譜をレコーディング中という彼女。次作ではどんな彩りを届けてくれるのか、今から楽しみでなりません。


  Uptown Funk Empire / Empire Strikes Back

フランスの鬼才、“Patchworks”ことブルーノ・オバールによるプロジェクトとして発表された一枚。実は、SWEET SOUL RECORDSからインポートCDとしてリリースしている“Mr. President”と彼は同一人物。私の独断では、彼はフランス一ファンキーなアーティスト! スピリチュアルジャズの名曲、ファラオ・サンダースの「You’ve Got To Have Freedom」の現代版カバーが何より一押しの一曲ですが、ロジャーを彷彿とさせる「Take You Out」も最高にクール。彼がどんな音楽が好きで、どんな世界観が好きなのか、話しをした事もないくせに、手に取るように分かってしまう気がします。クールネスとは、余計な物を全て削ぎ落とし、決して妥協する事のない精神と取り組みから誕生するのだ、と思う一枚です。


  2003 Live At Radio City Musichall / Luther Vandross

最後の一枚は、テイストを変えてみんな大好きルーサー・ヴァンドロス!! 私は大袈裟でなく、ルーサー・ヴァンドロスのような人が世界に存在してくれていたという事だけで、この世に生まれてきて本当に良かったな〜と思ってしまいます。彼の歌声を好きではないという人はいるのでしょうか?そんな人がいるとは思いたくもないくらい、私はとにかく彼が大好きです。このライブ音源は、ただただ“素晴らしい”の一言につきます。 「Never Too Much」から始まり、涙なしには聴く事のできない「Superstar」、サンプリングされた事でも有名となった「House Is Not A Home」に、チェンジ時代の名曲「The Glow Of Love」まで、全てが文句の付けようのないライブ構成。バックミュージシャン達も、パーフェクトな演奏を披露していて、バックコーラス陣の優しすぎる歌声は、癒し度200%。 ライブ映像のDVD化を切実に望んでいますが、残念ながらまだのようです・・・。


MACHIDA

  Shirma Rouse / Chocolate Coated Dreams

上質ソウルの宝庫と言えるオランダの歌姫 Shirma Rouse(シャーマ・ラーズ)。SSRが密かに狙うオランダのSOULコミュニティの代表格が彼女!そんなシャーマが日本に届けてくれた珠玉の一枚がこの『Chocolate Coated Dreams』です! 表題の通り、甘さと渋さが絶妙な味わいを醸し出す高級チョコレートのような一枚は、多くのグッドミュージックが溢れるSWEET SOUL RECORDSが発掘した音楽の中でも一際輝きを見せる、大傑作に仕上がっています。 かつてのMotownサウンドが持っていた夢やロマン、人間味のある温かさを感じる事が出来るでしょう。 僕のオススメ曲は 「My Baby」(#01)、「A Place Called Home」(#05)、「Thank You」(#08)、「Take Me As I Am」(#12) です。 中でも「Thank You」(#08)は、僕がとても大切にしている一曲でシャーマ本人が両親に広く大きな感謝を表して書いた1曲。 是非、ヘッドホンで夕日を見ながら聴いて欲しいです。思わず涙してしまう程、心にスッと染みこんでくる、そんな1枚です。


  Shirma Rouse / Sings Aretha

そんな彼女の関連作で、敬愛するアレサ・フランクリンに捧げる渾身のカバー集。表題の名が示すように彼女が幼少の時から尊敬するクイーンオブソウルことアレサ・フランクリンの名曲達をカバーしたアルバムです。アレサや往年のソウルファンは勿論のこと、90年代以降のR&B世代も納得の一枚。さらに、ソウルを知らないリスナーにとってはソウルへの入門編としてもぴったりだと思います。


  Mary Davis Jr. / New Day

「どれだけ熱いんだオランダのソウルシーンは!!」と思わずにはいられません。実は僕も一人のシンガーとなるのを志しておりまして、いつか必ず現地に行ってその空気を感じ、吸収したいと真剣に考えているほど、素敵なシンガーがたくさんいるんです。ここでご紹介する彼女もシャーマ・ラーズ同様オランダのアーティスト。 ひたすらに素直で、普遍的な日常を詩う彼女の名はMary Davis Jr.(マリー・デイヴィス・ジュニア)。至ってシンプルな曲作りながらも、オーガニックなサウンドとマリーの真っすぐで透き通った歌声が聴く人を癒してくれる今作『New Day』(ニュー・デイ)。実はシャーマ・ラーズがコーラスとして参加しており、オランダのソウルシーンの熱さを日本にいながら感じられる超上質盤です。最初から最後まで心地よさに溢れていて、推薦曲を挙げ始めたらキリがないのですが、なんとしてでも聞いてもらいたいのは「Crazy」(#03)と、「New Day」(#07)。 バンドのレベルを極限まで絞り、“声”をフューチャーし重なるコーラスが最高に気持ちいいミドルナンバー「Crazy」(#03)。そして朝の日差しと共に一日の始まりに聴きたい「New Day」(#07)は僕を元気づけてくれる応援ソングです!なんとなく過ぎ去る毎日を新鮮に感じることはあなた次第なんだ、というメッセージと、ちょっと早起きして散歩でもしたくなるような、心に余裕をもたらしてくれる楽曲が相まって、元気の出ない日にそっと背中を押してくれるんです。勇気が欲しい時に聴く大好きな1曲。皆さんも新たな一日を過ごし始めてはいかがでしょうか?


  Musiq Soulchild / Aijuswanaseing

僕が敬愛して止まない、フィラデルフィアのソウルシンガー、ミュージック・ソウルチャイルドのデビュー作『Aijuswanaseing』(アイジャスワナシイング)をご紹介します!「僕はただ歌いたいだけなんだ」そんな彼の歌うことに対する姿勢が伝わってくる表題の本作。 ヒップホップビートにJAZZスタンダードである「Sunny」のコードをのせ、更にはミュージックの絡みつく歌声が中毒性のある「Just Friends (Sunny)」(#05)、歌詞/PV/メロディ/歌唱...どれをとっても傑作としか言いようが無い極上バラード「LOVE」(#07)、そしてローズのさわやかな音色とグルーヴを助長するコーラスワーク、ミュージックの無垢な歌声がなんとも気持ちのいいミドルテンポなラヴソング「143」(#06)と、今ではネオソウルのスタンダードとも言える超有名曲がぎっしり詰まっています。特に「LOVE」は大好きでもう何回聴いて、熱唱して来たことか…。この歌詞中にある「Love,for better or worse I still will choose you first」(どんな時も僕は真っ先に君のことを想うんだ)という部分を歌う瞬間は、まっすぐに想い続けるこの歌の主人公に自分がなったかのように胸が熱くなります。。。 アルバム全体を通してミュージックのスムースで温かみのある歌声を堪能することが出来るネオ・ソウルの超重要盤。聞くのはもちろん、歌詞に目を通して口ずさんでミュージックのソウルに触れたくなる。そんな魅力的なアルバムです。


  Maxwell / BLACKsummers'night

この作品に出会わなければ、今の僕はいません。生音と打ち込みサウンドが絶妙なトラック、そして流麗なファルセットが堪らない。そんなマックスウェルの第4作目『BLACKsummers'night』(ブラックサマーズナイト)をご紹介! 本作の「Pretty Wings」(#03)に出会い、僕の音楽人生は変わったのです。当時それこそ誰でも知っているボーイズ・II・メンやスティーヴィー・ワンダーを良く聴いていたのですが、そんなある日、この曲と出会った瞬間の感動は今でも鮮明に覚えています。ほろ苦い声が堪らないシャウト、むせび泣くようなファルセットが曲に表情を与える彼の歌唱。また歌詞は愛する恋人への愛情が実らない事に対して「僕とは違う中で、愛を探しに自由に羽ばたいて」と詩う、切ない恋愛模様が鮮明に浮かびます。そして聴き終わった後は胸が熱くなり思わず涙ぐんでしまったほど、この1曲が僕に与えた衝撃は大きなものでした。その他にもホーン隊、シンセオルガン、輪郭のあるベースが創りだすグルーヴが最高にファンキーな「Cold」(#02)や、インスト曲「Phoenix Rise」(#09)などインストだけ聴いても素晴らしい楽曲達。ご存知の方も多いアルバムだとは思いますが、ぜひ今一度曲のストーリーを感じながらこのアルバムを通して聴いて頂きたいです。そうして全て聴き終わった後の余韻はまたこれまでとは一味違う格別なものだと思います!


企画:堀内(HMVアトレ目黒)
店舗情報