SIGH 川嶋未来氏コラム第4弾!

2012年5月24日 (木)

SIGH / Mirai Kawashima
SIGH / Mirai Kawashima
<80年代アメリカにおける Crossover ブーム>

 『第2回 D.R.I. と Crossover ブームの終焉』


それではニューヨーク以外の地ではどうだったのだろうか。(Crossover 第1回はこちら)

もちろん Crossover ブームは、アメリカの他の地域でも起こっていた。
ニューヨークのお隣、ニュージャージーの Adrenalin O.D.。86年の "Humungousfungusamongus" はしばしば Crossover の名作に挙げられるが、本人たちはメタル化したつもりはおそらく皆無、実際音もメタル的要素は少ない。しかしこれはメタルファンも聴いていて損はない実に楽しい大名盤。
それからノースカロライナの Corrosion of Conformity"Animosity"。元々メタル要素強めのハードコアをやっていたが、この作品では見事なクロスオーバー、というか当時の C.O.C. にしか出せない音。


Cryptic Slaughter

西海岸では Attitude Adjustment の "American Paranoia" が挙げられる。サンタモニカの Cryptic Slaughter の最初の2枚、"Convicted""Money Talks" は Crossover の名盤としてだけでなく、グラインドコアの始祖の一つとしても重要な作品。演奏はバラバラだが疾走感が半端無い。Napalm Death がカバーしたり、Municipal Waste が元ネタにもしている。ちなみにベーシストが後に Ozzy Osbourne のバンドに参加する大出世。


一時期 Cryptic Slaughter とドラムを共有もし、当時最速のスラッシュと言われた Wehrmacht のデビュー作 "Shark Attack" は Crossover と呼ぶにはスラッシュ色が強い気もするが、これも必聴。
もちろんテンポ自体も速いがリフの手数が多いので、疾走感抜群。ただ途中、ゲロの音が延々と録音されているので、そういうのが苦手な人は要注意。89年の 2nd "Biermacht" ではよりハードコア化、シーンの流れとはまったく逆のパターンを辿った。
本物のギャング集団、Suicidal Tendencies 一派は、スケートボードブームと相まって、大きな人気を博した。本家の ST だけでなく、ExcelBeowulf もメジャーからアルバムをリリースしている。


Mace

異色なところでは、ワシントン州の Mace。85年の "Process of Elimination" と87年の "Evil in Good"、どちらも DRI や SOD にも引けをとらない素晴らしい作品だと思うのだが、このバンド、典型的な Big in Japan。物凄く規模の小さい Big in Japan だけど。
何故だかわからないが、この Mace、本国のアメリカでも相当のマニアでないと名前すら知らない。その証拠に残した2枚のアルバムも、これまでブートでしか CD 化されていない。( CD化されていないから知名度が低いのかもしれないが。)今年再結成を発表し、日本ではファンの間でちょっとした騒ぎになったが、海外ではそのニュースは殆どスルーされた。
この Mace も類似のバンドが見つけられないタイプ。一体どんなバンドに影響を受けてこんな音を出していたのか、想像がつかない。とにかく Mace のオリジナルとしかいいようがない、そして完全にメタルとパンクの中間としかいいようがない音楽性。
再結成で、果たしてニューアルバムは出るのだろうか。

Corssover ファンにとっては知ったことではないかもしれないが、ギターの Dave Hillis はグランジのプロデューサーとして名声を博している。


D.R.I. (Dirty Rotten Imbeciles)

色々と Crossover バンドを紹介したが、最後にこのバンドに触れないわけにはいかない。
S.O.D. に匹敵するインパクトをシーンに与えた Dirty Rotten Imbeciles、通称 D.R.I.
1985年リリースの "Dealing with It" は Crossover 史上、いやエクストリームミュージック史上に残る大名盤だ。

元々テキサスで結成、その後サンフランシスコに移住。初期のライブでは、演奏する曲数が多すぎて、セットリストが巻物のようになっていたという伝説がある。83年 "Dirty Rotten EP" (EPと言っても22曲入り)で1分に満たない超高速の曲を立て続けにぶちかましてハードコアファンの度肝を抜いた D.R.I. は "Dealing With It" でメタルに接近。 Slayer の Dave Lombardo がファンであることを公言したことも功を奏し、瞬く間にスラッシュマニアにもその名が浸透。

一度見たら忘れられない、非常階段マークデザインのTシャツも、D.R.I. の名前を広めるのに一役買ったのは間違いないだろう。


D.R.I. (Dirty Rotten Imbeciles)

さて、ここで一つ考えたいのだが、メタルとパンクの音楽的な違いって何なんだろう。
ステレオタイプな分類なら一応は可能だ。メタルの方がギターの音色が重い。メタルにはギターソロがある。メタルの方が曲が長い。メタルの方が曲展開が複雑。メタルの方がリフ重視。ツインリードなどは非常にメタル的。言葉では説明しづらいが、同じはき捨てヴォーカルスタイルでも、スラッシュメタルとパンクのそれはやはり違う。もちろんギターソロがあるハードコアもあるし、メタルよりもテクニカルで曲展開が複雑なハードコアも存在する。しかし、ギターの音色がヘヴィでリフ重視でツインリードがあって、派手なギターソロがある10分の曲を演奏するバンドがいたら、それはやはりヘヴィメタルにカテゴライズされる可能性が高い。
当時の Crossover の「シーン」は、ハードコアバンドが上記のヘヴィメタル要素をいかにうまく取り入れるかで成り立っているような部分があった。すなわち Dan Lilker も言っているように、Crossover =融合という言葉が使われていたものの、実際はハードコアパンクのバンドがメタルの要素を取り入れていくという、殆ど一方通行的なムーヴメントであった。もちろんスラッシュメタルに対するハードコアパンクの影響は多大だが、どんなに Slayer がハードコアから影響を受けようが、Slayer は首尾一貫してメタルバンドであった。

Jeff Hannemann が「俺たちが影響を受けたハードコアバンドが、今度は俺たちから逆に影響を受け、変なことになってしまった」という趣旨の発言をしているが、@ハードコアバンドとしてスタート→Aメタルの影響を受けクロスオーバーに→B完全にメタルになってしまう等音楽性を変更して失速、というパターンを辿ったバンドがいかに多かったことか。

それは当時、商業的にヘヴィメタルがパンクよりも遥かに優位に立っていたという理由がある。Metallica を筆頭に次々とメジャーデビューしていくスラッシュメタルバンドを横目に、故意にせよ、そうでないにせよ、メタルの要素を取り入れるハードコアバンドは後を絶たなかった。しかし、期間は短かったにしても、Aの状況で多くの奇跡的名盤が生まれたのも事実。その代表が "Dealing with It" である。初期の EP に比べれば曲が長めになってきたとはいえ、25曲34分、1曲1分程度。しかしいわゆるハードコアの楽曲よりは展開がある。リフはハードコアっぽいが、ギターの音色はメタル寄り。ヴォーカルはやはりハードコア。Dave Lombardo が一目置いたドラミングもタイトで素晴らしい、これはメタル、ハードコアどちらだろう。全体としてメタルとも言い切れない、ハードコアとも言い切れない。そして楽曲、演奏、疾走感、いずれをとっても文句のつけようがない完璧なアルバム。確実に "Speak English or Die" と双璧をなす、Crossover アルバムだ。

しかし残念ながら、メタルとハードコアの微妙なバランスは、あっという間に崩れさる。1987年に D.R.I. がリリースしたアルバムタイトルは、そのものずばり "Crossover"。随分と大胆なタイトルをつけたものだが、このアルバムこそ Crossover ブーム終焉の象徴である。

前作 "Dealing with It" が25曲入りだったの対し、本作はわずか12曲。そりゃ12曲って普通の曲数ですよ、普通のジャンルだったら。しかし25曲が12曲になるということは、単純に考えれば曲の長さが倍以上になったということ。曲が長くなる、それはつまりますますメタル化が進んだ証。
日本ではこのアルバムがメディアで好意的に持ち上げられたせいか、このアルバムでD.R.I.を知る、もしくはこれを D.R.I. の最高傑作とするような雰囲気があったりした。だがとんでもない。繰り返して言うが、このアルバムこそ Crossover ブーム終焉の象徴。もっと言えばこのアルバムが Crossover ブームの終焉を導いたのだ。実際、明らかに前作より遥かに低いテンションのこのアルバムに、がっかりしたファンは少なくなかった。確かに "Dealing with It" も、最初の EP からはテンションが下がっている。しかし、"Dealing with It" はそれを補って余りある楽曲魅力、タイトさがあった。しかし "Crossover" は頂けない。これでは平凡なスラッシュバンドと大差ない。しかもこれ、単純にスピードがダウンした等の問題ではなく、曲が長くなったことによる弊害でテンションが下がったとしか思えないのだ。

同じ40分のアルバムを作るにしても、2分x20曲=40分のアルバムを作るのと、5分x8曲=40分のものを作るのでは根本的に異なるテクニックを要する。どちらが難しいか、という問題ではない。まったく別物なのだ。前者が得意なバンドもいれば、その反対もいる。ただ、ずっと1分、2分の曲を作っていたバンドが、曲の長さ倍にすればいいんでしょう、と安易にやれるほど、音楽というのは簡単ではない。(もちろんいつも5分の曲を作っているバンドに、1分の曲だけでアルバムを作らせても簡単にはいくはずがない。) D.R.I. は、明らかに短い曲で畳み掛けるのを得意とするバンドであったのだ。

そして残念ながら、今日に至るまで、D.R.I. は "Dealing with It" を超える作品を発表していない。もちろん "Crossover" 以降の作品も、悪くは無いという意見は理解できる。しかし "Dealing with It" が凄すぎた。あれと比べてしまうとどんな作品も霞んでしまうのはやむをえない。



Corrosion of Conformity

他のバンドも様々な形で Crossover を卒業していった。 S.O.D. は解散。Mace も解散。Attitude Adjustment は分裂して消滅。 Crumbsuckers はセカンド "Beast on My Back" も曲が長くなり、too much metal であると大不評を買い、解散。 Cryptic Slaughter もスラッシュメタルに寄り過ぎて失速、解散。 Agnostic Front はメタリックなエッジは残しつつも、ハードコアの世界へ帰還。 Ludichrist はその後 Scatterbrain へと発展し、メジャーのフィールドに挑戦するも大成功はせず。
一方で COC が完全な方向転換をし商業的に成功したのはご存知の通り。 Suicidal Tendencies は相当メタル寄りで商業的に成功。 Crossover の微妙なバランスを保ち続けたバンドは皆無だった。 "Dealing with It" が85年、"Crossover" が87年だから、ブームは実質2年足らずで終了してしまったのである。

言うまでもないことだが、ブームの終焉によって Crossover バンドやシーンが消滅したわけではない。
というよりもその後、メタル・パンクどちらにもアピールするということが何ら特別なことではなくなり、あえて "Crossover" を前面に押し出す必要がなくなった、それだけ "Crossover" というものが浸透、普通のものになった、とも言えるのだろう。とはいえ、その後商業的にはメタルとパンクの位置は完全に逆転、パンクバンドが続々メタル化をするということは起こりようもなくなったせいで、87年までのアメリカにおける "Crossover" ブームというのはあの時代のみに存在しえた、一味違った特殊なブームと相成ったのである。


Municipal Waste

ちなみに現在では、先日ニューアルバム "The Fatal Feast: Waste in Space" をリリースした Municipal Waste が、一番良く当時の Crossover の音楽を再現している。彼らも結成時はかなりハードコアパンク寄り、その後 Crossover 作品を発表し続けているので、ぜひメタルに成りすぎて失速するところまで演出して欲しいところだが、さすがに今回のアルバムでもそこまでやってみせる気配はない。



(Crossoverのムーブメント、特にイギリスでは違った様相を呈していた。しかしそれについては今回は割愛、あくまでアメリカメインの視点に絞らせてもらった。)

川嶋未来/SIGH
http://twitter.com/sighjapan

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