【HMVインタビュー】 カーネーション

--- 名作『天国と地獄』から今年で20周年、振り返ってみていかがですか？

納得するまで夢中で音楽に没頭して作り上げたアルバムだったから、その達成感が半端なくて、つまりそこで得たジャッジメント、その基準は今も地続きで繋がっているわけです。いわばバンドのルーツであり、精神ですね。

--- 20周年を記念して『天国と地獄』のコレクターズ エディションがリリースされます。改めて聴いてみていかがでしょうか？

メンバー全員が"変化するんだ！"ってやる気に溢れていたからだと思うけど、歌や演奏の活きのよさに驚いています。20年前の音なのに飽きがまったくこない。不思議なんですが、魅力ある普遍的な作品とあらためて思いました。しかも映像まで発掘されましたから、すごいリイシューとなりました。

--- 98年に再発された際に、ブックレット用に収録されたインタビューで「すごく愛着のあるアルバム」と語っていましたが、さらに10年以上の時を経て、どのように感じられていますか？

聴けば聴くほど面白いのです。メンバーが知恵を寄せ合ってる姿が浮かぶし。あと、曲の作りからアレンジ、アルバムの流れに至る創意工夫もふんだんだから。昔のレコードからサンプリングしたリズム・ループのエグみを持ち込んでみたら思いもよらないグルーヴが生まれたりね、ロックの概念みたいなものも、また何回転目かで変わろうとしていたそんな時だから、なおさら大変なわけ。じゃぁってんで、こっちもロック・バンドとしての決着をつけなくちゃと思って、必死で良いと思えるメロディを書いたりしてた。スタイリッシュに格好はつけなかったけれど、やっぱり堂々と歌えばそれはそれで面白いわけだから。毎日が革命みたいだったし、見渡せば発見だらけだった。世界中にリズムのアイデアは山ほど。なので曲想も広がっていくしね。「いくいくお花ちゃん」にはレゲェ、ダブ、アルジェリアのライ・ミュージックのムードを1曲の中にぶちこんでたりしてますし。

--- 92年の発売当時は評価されず悔しい思いもした作品が、年月と共に評価を増し、20年を経た今も愛され続けている事に関してどのように思われますか？

隅から隅まで過剰なロックっぽいロマンに溢れた作品ですから、本当の評価はこれからつくのかもしれないですね。とにかく、じわじわと残ってこれて、こうして映像も含めアップグレードした再発CDが発売できたことを心からうれしく思います。あの頃はこだわりぬいてやたらと録音に時間をかけたけど、スタジオの使い方や遊び方をこのアルバム制作時に多くを学んでいたんですね。夢を描いたり、試行錯誤がひとつひとつ音に生まれ変わるのがとにかく快感だった。思い込みや実験も多いのに驚くほどに普遍的なポップだというのが『天国と地獄』のマジックなんです。気分も曲もアッパーだし、不思議な音や謎も隠されていたりするから永く楽しめる作りになってるのかもしれない。だからこれからもっとたくさんの人、そしてこのアルバムを知らなかった人たちにまで伝わってくれたらいいなと思うし、そう願っています。

--- 『天国と地獄』から、今も活動を共にする大田譲氏がメンバーに加わります。直枝さんにとって大田さんはどのような存在でしょうか？

リズムの中心にいて安心できる男ですね。彼が黒っぽくて粘っこいロックのノリを持ち込んだんです。カーネーションのサウンドの可能性を常に広げてくれました。そして楽しい音楽、面白い音楽を身体で知っている人だから、歌詞や音のジャッジなどでも彼が「これいいよ」というものはいい。そういうことになってます。

--- 『天国と地獄』録音当時、音楽の聴き方も拡がったとの事ですが、当時良く聴いていた作品を3枚あげて下さい。


--- また最近、良く聴いている作品を3枚教えて下さい。


--- 今回のコレクターズ エディション発売にあたり、デモ音源に加え、未発表映像DVDが収録されます。これはどのような映像でしょうか？

まず『天国と地獄』のレコーディング風景をまとめたミニ・ムーヴィー30分、これは当時、みんなで映し合った記録用のフィルムを新たに編集しました。スタジオ風景を中心にベーシック・リズム録音や歌入れ、ダビングなど、リアルな制作現場を追体験する事ができます。そしてもうひとつは当時のライヴを丸ごと90分近く。こちらはジャケットのデザインを担当してくれたヤギヤスオさんが撮影した秘蔵のHi-8です。どちらも非常に資料価値もあるし、重要なフィルムです。とにかくメンバーが若い。テンポもちゃきちゃきしてて活きがいいですよ。

--- 5/20、6/1に「HMV GET BACK SESSION」『天国と地獄』再現LIVEが開催されます。まずはバンドメンバーに関して教えてください。

直枝政広（G）、大田譲（Bass）に今、カーネーションのサポートで活躍中の張替智広（Dr）、元メンバーの鳥羽修（G）、Schroeder-Headzの渡辺シュンスケ（Piano）、buffalo daughterの大野由美子（Moog）、The Thrillのロベルト小山（Sax）です。東京のみ美尾洋乃さんがヴァイオリンでゲスト参加してくれます。

--- 久々の演奏になる楽曲も多いかと思います。リハーサルの感触はいかがですか？

最高ですね。昨日もリハーサルをやってきたのですが、まずはあの楽曲のテンションの高さに驚いています。メンバーも強者揃いですから、かなり面白く熱いライヴになると思いますよ。

--- レコーディング後ぶっ倒れたという程の一世一代の名演「愛のさざなみ」が、今回どのように表現されるかなど見所満載の今回のLIVE。どのようなLIVEにしようと考えていますでしょうか？

忘れられない一夜にしたいですね。ぜったいに見逃さないでもらいたいです。こんなことめったにないですから。『天国と地獄』の完全再現以外にもおたのしみでいろいろとセッションを用意しています。

--- LIVEに来場されるお客様にメッセージをお願いします。

この『天国と地獄』という作品の面白み、その奥深さをあらためて確かめに是非ライヴ会場へいらしてください。

--- 最後に、カーネーションの次回作の展望を。

只今制作中ですが、最高傑作の予感！どうぞご期待ください。

--- ありがとうございました。