トップ > 音楽CD・DVD > ニュース > クラシック > 「ベルリン・フィル・ラウンジ」第60号:フォン・オッター、マーラーを語る

「ベルリン・フィル・ラウンジ」第60号:フォン・オッター、マーラーを語る

2012年4月26日 (木)

ドイツ銀行 ベルリン・フィル
ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

2012年ヨーロッパ・コンサートの舞台は、ウィーンのスペイン乗馬学校!

【演奏曲目】
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
ハイドン:チェロ協奏曲ハ長調
ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調

チェロ:ゴーティエ・カプソン
指揮:グスターボ・ドゥダメル


 2012年のベルリン・フィル、ヨーロッパ・コンサートは、5月1日、ウィーンのスペイン乗馬学校で開催されます。スペイン乗馬学校とは、460年前にホーフブルク宮殿内に設立された馬の曲芸場で、名前は当時導入されたスペイン種の馬にちなむもの。今日では観光名所となっており、日本人ツーリストもよく訪れる場所です。現在の建物は、1735年に完成されたバロック様式の絢爛たるもので、マリア・テレジア統治下では、仮面舞踏会等も催されていました。
 今回ベルリン・フィルが演奏するのは、ウィーンへのオマージュとも呼ぶべきプログラム。ハイドン、ベートーヴェンの古典派の名曲、この街を第2の故郷としたブラームスの作品が演奏されます。ハイドンのチェロ協奏曲を独奏するのは、フランスのゴーティエ・カプソン。指揮には、ベルリン・フィルではおなじみのグスターボ・ドゥダメルが迎えられます。
 なお演奏会は、ヨーロッパ各国のテレビ局で生中継される予定です(© Spanische Hofreitschule)。

ベルリン・ムジークフェスト2012のプログラムが発表
 毎年9月に開催されるベルリン・ムジークフェストのプログラムが、発表になりました。今年のテーマは、「アメリカ音楽」。8月31日から9月16日にかけて、21回の演奏会が行われる予定です。オーケストラは、マーラー・チェンバー・オーケストラ(MCO)、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、ロンドン響の外来団体のほか、地元ベルリンからベルリン・フィル、ベルリン・シュターツカペレ、ベルリン・ドイツ響、ベルリン放送響、ベルリン・コンツェルトハウス管が参加します。指揮者は、サー・サイモン・ラトル、ダニエル・バレンボイム、マリス・ヤンソンス、マイケル・ティルソン・トーマス、ケント・ナガノ、トゥガン・ソキエフ等。なかでもハイライトは、ラトル指揮ベルリン・フィルによる《ポギーとベス》、ジョン・アダムス自身の指揮による《中国のニクソン》(BBC交響楽団)、シルヴァン・カンブルラン指揮バーデン=バーデン&フライブルクSWR響による《モーゼとアロン》の3つの演奏会形式オペラとなるでしょう。
 チケットは、外来オーケストラに限りすでに販売開始されており、こちらからお求めいただけます。

ベルリン・ムジークフェスト2012のプログラム一覧

 最新のDCHアーカイブ映像

ラトルのザルツブルグ・プロ!フォーレのレクイエム
2012年4月14日

【演奏曲目】
ベリオ:ソプラノと器楽のための《エ・ヴォ》
メゾソプラノと5人の器楽奏者のための《おお、キング》
シューマン:《夜の歌》
ピアノ協奏曲イ短調
フォーレ:
レクイエム

ピアノ:マレイ・ペライア
ソプラノ:ケイト・ロイヤル、バーバラ・キント(《エ・ヴォ》)
バリトン:クリスティアン・ゲアハーヘル
ベルリン放送合唱団(合唱指揮:サイモン・ハルシー)
指揮:サー・サイモン・ラトル


 今年のザルツブルク・イースター音楽祭における演奏会と同じプログラムが、ベルリンでも取り上げられました。内容は、今シーズンのテーマであるベリオのほか、シューマン、フォーレの作品を組み合わせたもの。シューマンのピアノ協奏曲では、巨匠マレイ・ペライアがソロを務めています。ペライアは現在、ベルリン・フィルのピアニスト・イン・レジデンスを務めており、室内楽やソロ・リサイタルにも登場しています。

この演奏会をDCHで聴く!

ラトル指揮、コジェナー初役!ザルツブルクの《カルメン》をコンサート形式で
2012年4月21日

【演奏曲目】
ビゼー:歌劇《カルメン》全曲(演奏会形式)

カルメン:マグダレーナ・コジェナー
ドン・ホセ:ヨナス・カウフマン
エスカミリオ:コスタス・スモリジナス
ミカエラ:ゲニア・キューマイヤー


 ザルツブルクでの最後のイースター音楽祭のオペラは、ビゼーの《カルメン》。音楽祭終了後、ベルリンで全曲が演奏会形式上演されました。主役を務めるのは、マグダレーナ・コジェナー。彼女が舞台でこの役を歌うのは、ザルツブルクが初めてだったとのことです。相手役は、今や欧州、アメリカで大スターのヨナス・カウフマン。フランスものを得意とするラトルの指揮も、聴き逃せません。

この演奏会をDCHで聴く!


 これからのDCH演奏会

ドゥダメルの《ツァラトゥストラ》。コルンゴルトのソリストはカヴァコス
(日本時間4月29日午前3時)

【演奏曲目】
ラヴェル:《マ・メール・ロワ》
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲
R・シュトラウス:《ツァラトゥストラはこう語った》

ヴァイオリン:レオニダス・カヴァコス
指揮:グスターボ・ドゥダメル


 グスターボ・ドゥダメルは、指揮者の役割について「私はオーケストラの一部に過ぎません。お互いが歩み寄ることによって初めて、マジックは生まれるのです」と控え目に語っています。しかし彼が、現代で最も重要な指揮者のひとりであることは、疑いがありません。音楽に没入し、オーケストラと聴衆を触発する才に長けたドゥダメルが、ベルリン・フィルと交響詩《ツァラトゥストラはこう語った》をメインとしたプログラムに挑みます。

放送日時:2012年4月29日(日)日本時間午前3時

この演奏会をDCHで聴く!

ベルリン・フィルの12人のチェリストたち、創立40周年記念コンサート!
(日本時間5月10日午前3時)

【演奏曲目】
ユリウス・クレンゲル、ガブリエル・フォーレ、クロード・ドビュッシー、モーリス・ラヴェル、アストル・ピアソラ、エンニオ・モリコーネ他の作品

ソプラノ:アンネッテ・ダッシュ
ベルリン・フィルの12人のチェリストたち


 ベルリン・フィルの12人のチェリストたちは、ベルリン・フィルのアンサンブルのなかでもひときわ人気の高い団体です。その彼らが今年、創立40周年を迎えます。この演奏会は、そのアニヴァーサリー。ソプラノのアンネッテ・ダッシュをゲストに迎え、フォーレ、ドビュッシーのフランスものから、ピアソラ、モリコーネのクロスオーヴァーに至るまで、多彩なプログラムを演奏します。

放送日時:2012年5月10日(木)日本時間午前3時

この演奏会をDCHで聴く!

 アーティスト・インタビュー

アンネ・ソフィー・フォン・オッター(第2回)
「カラヤンの〈アダージェット〉を聴いた時には、“世の中にこんなに美しい音楽があるのか”と思いました」
聞き手:クリストフ・ハルトマン
(ベルリン・フィル/オーボエ奏者)
(2011年12月15日)

【演奏曲目】
ヤナーチェク:《利口な雌狐の物語》より最終場面
マーラー:《大地の歌》

独唱:アンネ・ソフィー・フォン・オッター、ステュワート・スケルトン、ジェラルド・フィンリー
指揮:サー・サイモン・ラトル


 アンネ・ソフィー・フォン・オッターのインタビュー第2回目です。今回には、前回ご紹介したオッターの父ゲランの話題が登場します。彼は、第2次世界大戦中にスウェーデンの外交官としてナチス高官と関係し、興味深い政治的エピソードを残していますが、アンネ・ソフィーのインタビューにもしばしば登場します。彼女にとって、父親がいかに重要な存在であったかをうかがわせる言及です。
 同時に彼女が、カラヤン指揮マーラー:交響曲第5番でこの作曲家に目覚めた、というコメントも関心を誘います。ルートヴィヒの歌う《リュッケルト歌曲集》は、若きフォン・オッターにとってもバイブルだったようです。

クリストフ・ハルトマン 「マーラーはあなたのお気に入りの作曲家と言えますか」

アンネ・ソフィー・フォン・オッター 「そうです」

ハルトマン 「共演で記憶に残っているのは、アバドとの演奏会です。あれは第3交響曲でしたか…」

フォン・オッター 「パリの演奏会のことですか。あれは第2交響曲でした。スウェーデン放送合唱団との共演です。あれは参加した人々全員にとって、心に残る体験でした。まさに一期一会です。スウェーデン人としては、母国のコーラスが参加していたので、その意味でも誇らしかったです(笑)」

ハルトマン 「ご自身のマーラー体験を、お聞かせいただけますか」

フォン・オッター 「マーラーを発見したのは、大人になってからでした。子供の頃、私の家にはあまり多くのレコードがなく、ほとんどがバッハやモーツァルトでした。父は、グレゴリオ聖歌をよく聴いていました。父は非常に真面目で、根を詰めるタイプの人だったので、グレゴリオ聖歌を聴いて心身の疲労を癒していたのです。しかし、マーラーの《亡き子をしのぶ歌》や《大地の歌》のLPもありました。当時、私はこうした作品があまり好きではありませんでした。何だか、怖い感じがしたのです。レコード・ジャケットも悲しげな枯葉がモチーフで、あまりいいイメージではありませんでした。しかし大人になって、クリスタ・ルートヴィヒの歌う《リュッケルト歌曲集》を聴き、ショックを受けました。カラヤンの指揮です。そして彼が指揮した交響曲第5番も。これは、本当に大きな事件と呼べる体験でした。第4楽章のアダージェットを初めて耳にした時には、開いた口がふさがりませんでした。“こんなに美しい音楽があるなんて、信じられない”という感じです。その後音楽学校の卒業試験で、オーケストラ伴奏の作品を歌わなくてはなりませんでした。そこで、《リュッケルト歌曲集》を選んだのです」

ハルトマン 「オッターさんは、ロンドンで勉強されたんですよね」

フォン・オッター 「それは、まだストックホルムにいた時の話です。ストックホルムで6年間、ロンドンで1年間勉強しました。それ以来、私はマーラーを頻繁に歌っています。《子供の魔法の角笛》はもちろん、交響曲第3番や第2番、《亡き子をしのぶ歌》等です。それから交響曲第8番も、ベルリンで(アバドの指揮で)ご一緒に演奏しました」

ハルトマン 「よく覚えています」

フォン・オッター 「私にとって《大地の歌》は、本当に特別な作品です。秘密の引き出し、(大事なものを収めた)宝箱に入っている、という感じです。非常に大切なので、私はその蓋を頻繫に開けたいとは思いません。というのは、作品の内容、意味がとてつもなく大きく、強いからです。歌詞だけでも本当に深い内容があり、“日常”にしてしまいたくないと感じます。また私は、このような特別な価値を持つ作品について、多くを語りたいとは思いません。“なぜこんなに美しいのか”などと語りつくしてしまったら、音楽が持っている魔法が消え去ってしまう気がします。この曲を歌っていると、本当に涙が溢れ出てきますね。マーラーはこの曲を作曲していた時、心の底から深いものを感じていたのだと思います」

ハルトマン 「《大地の歌》について、マーラーの友人だったブルーノ・ワルターの手記を読んだことがあります。作品が成立したのは1907年から09年ですが、ワルターはこの曲について、“マーラーが生ではなく、死からインスピレーションを受けた最初の作品だ”と記しています。“死”というよりは、“生以外から”ということでしょうか。1907年といえば、マーラーの人生に衝撃が訪れた時期です。彼自身が心臓病を患ったことに加え、最愛の長女が亡くなっています。《大地の歌》の曲調には、そうした状況も関係しているように思います」

フォン・オッター 「まったくその通りです。作曲中のマーラーの頭には、そうした考えが駆けめぐっていたことでしょう。私は、彼が手紙等で作品について語っていることをあまり知りません。しかし、彼が人生や死について思いを馳せたに違いないと確信しています。しかしそれ以上に驚くべきなのは、彼がそうした考え、気持ちをあのような作品として音にした、ということなのです。一体どうやったらあのような曲が書けるのでしょう。オーケストレーションだけを取っても、驚嘆に値します。私はこの曲を歌う時は、本当に自分のベストを尽くします。最後の数分になると、私はマーラーのことを想います。彼の顔が目に浮かんでくるのですが、“今日の私の出来には満足でしたか?”と問いかけるのです」

この演奏会をDCHで聴く!

 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

東京クヮルテットが2013年に完全解散を発表
 東京クヮルテットが2013年6月に解散することが発表された。当初同弦楽四重奏団は、第2ヴァイオリンとヴィオラのメンバーを交代し、活動を続けることを発表していたが、2013年のイエール大学での連続演奏会を最後に、完全解散が決まったという。
 決定の経緯については、第1ヴァイオリンのマーティン・ビーヴァーが以下のように語っている。「長い歴史のある弦楽四重奏団のメンバーを交代することは、難しいことである。さらに、そのうちのふたりを同時に交代するのは、ほとんど不可能なことだ。同僚たちが引退するに当たって、我々はこの数ヵ月で、徐々に次のような結論に至った。すなわち我々の長く、素晴らしいキャリアに最もふさわしいのは、それに美しい終止符を打つことであると」
 なお同団のメンバーは、1976年よりイエール・スクール・オブ・ミュージックで教鞭も取っているという(写真:© Pete Checchia)。

東京クヮルテット公式サイトの声明文

アイヴァー・ボルトンがザルツブルク・モーツァルテウム管の契約を延長
 イギリスの指揮者アイヴァー・ボルトンが、ザルツブルク・モーツァルテウム管との契約を、2014年まで延長した。ボルトンは、2001年に芸術監督として着任。2004年には首席指揮者のポストを得ている。新しい契約は、2012年9月1日に始まり、2014年8月31日で終了するという。

ナイーヴがフランチェスコ・ピエモンテージと契約
 フランチェスコ・ピエモンテージが、ナイーヴと専属契約することになった。今後、最低でも3枚のアルバムが制作され、プログラムはモーツァルトとドビュッシーになるという。最初のCDは、2013年春リリースの予定。
 ピエモンテージは、イタリア語圏スイスの生まれで、2007年にエリザベート王妃コンクールに第3位入賞している。

ケルン・オペラが資金不足で来シーズン閉場?
 これまでにも資金難でニュースとなっていたケルン・オペラが、来シーズン閉場になる可能性があるという。これは同歌劇場のインテンダント、ウヴェ・エリック・ラウフェンベルクが発表したもので、資金不足ゆえにアーティスト等の契約を結ぶことができないとのこと。ケルン市の文化担当官ゲオルク・クヴァンダーは、補助を約束しているが、現在の状態では、経営は引き続き困難であり、「このままでは、戦後ドイツ始まって以来初めて、劇場シーズン全体がクローズという事態もまぬがれないだろう(ラウフェンベルク)」。

 デジタル・コンサートホール(DCH)について

 デジタル・コンサートホール(DCH)は、ベルリン・フィルの演奏会がインターネットでご覧いただける最新の配信サービスです。高画質カメラにより収録されたベルリン・フィルのほぼ全てのシンフォニー・コンサートが、ハイビジョン映像で中継されます。演奏会の生中継のほか、アーカイヴ映像がオンディマンドでいつでも再生可能。さらにベルリン・フィルに関係したドキュメンタリーなども鑑賞できます。
 ご利用いただくにあたって、特別なインターネットの回線は必要ありません。3種類の画像レベルがあり、2.5Mbps以上の回線をお持ちの方は、ハイビジョンの映像もお楽しみいただけます。音質もCDに迫る高音質を実現し、年間30回にわたる定期演奏会がリアルな音で体感できます。
 料金は「48時間券」(9.90ユーロ。約1,100円)、「30日券」(29ユーロ。約3,200円)、「12ヶ月券」(149ユーロ。約16,650円の3種類。以上のパスで、有効期間中すべての演奏会の映像(過去2シーズンのアーカイヴ映像を含む)が無制限にご覧いただけます。なお、26歳までの学生・生徒の方には、30%の学割が適用されます。 あなたもぜひ、www.digitalconcerthall.comで、ベルリン・フィルの「今」を体験してください。

詳細を読む

DCHトップページへ(コンテンツ視聴にはログインが必要です)
12ヶ月券、30日券等のお求めはこちらから(購入にはログインが必要です)
ベルリン・フィル公式ウェブ、トップページへ(英語)

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2012年5月9日(水)発行を予定しています。

©2012 Berlin Phil Media GmbH, all rights reserved.


DCHアーカイヴ検索