【第1回目】 Recording diary of 『Lovely』
「リハル」レコーディング映像
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アルバムのコンセプト・ミーティングを経て目指したものは、アコースティックという言葉そのものである「楽器本来の響きを生かした音づくり」と、過度なアレンジや音楽的スタイルを削ぎ落とし「詞メロ本来の持つ歌心を生かした曲づくり」という制作テーマ。
音の追求に関しては、towadaが陣頭を切ってレコーディング・エンジニアの人選からレコーディング方法や機材の情報収集を進めていき、作曲に関しては、通常は初期段階からメンバー3人一緒に曲づくりをしたり、セッションのように順繰りで組み立てていく方法が多いのだが、今回はジルデコというユニットが今までになくchihiRoを一人の女性シンガーソングライターとして尊重することによって、彼女から素直に出てくる「歌」を大事に育てていった。
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2011年12月28日(水) プリプロ 1回目 at 某リハーサル・スタジオ
chihiRoが書いてきた詞メロや、それにkubotaが最小限のコードアレンジをした生まれたての曲達を、初めてベースを入れた小編成バンドで実際に演奏してみる日。テンポやリズムパターン、コードを色々当ててみるのだが、chihiRoの頭の中にあるイメージに中々近づけなかったりなど、かなり消耗した作業だったようだ。年末大好きchihiRoも、今年はたくさんの宿題を抱えて年の瀬を迎えることに。
そして、レコーディング方法も徐々に具体的になり、今回、楽器演奏者だけでなくボーカルやコーラスも全員がひとつのスタジオ空間で同時に演奏する【レコーディング・アットワンス】(いわゆるスタジオ・ライブ形式)にて録音することに決定。それにより響きの追求だけでなく、ライブ・セッションならではのミュージシャンシップ溢れる演奏や心地よい緊張感など、レコーディングの空気感を丸ごと録音するという目的に挑戦!
2012年1月16日(月) プリプロ 2回目 at 某リハーサル・スタジオ

年明け初のプリプロにして、この週末に遂にレコーディング本番を控えているという、かなり切羽詰った状況。メンバー各々はそれぞれの役割の中でテンパリ気味ながらも、曲自体は、急ピッチで進められたkubotaのアレンジで、前回のプリプロ時に比べて格段に進歩してきていた!
2012年1月20日(金) レコーディング前日最終プリプロ at Studio E-RA

明日から始まるレコーディングのスタジオに一日前から入り、実際の参加ミュージシャン達と全曲最終プリプロを行う。併せてエンジニアの羽生田さんにも入ってもらい、本来はリハーサル・スタジオであるここに機材を持ち込み、この日一日かけてレコーディングの諸々のセッティングを試行錯誤。ちなみに羽生田さんは通常レコーディングのエンジニアはされておらず、JZ BratなどのジャズクラブでライブPAエンジニアをされている方。この人選はtowadaの強い希望から実現したものだが、それが下記で解説する所以に繋がっている。
まずはミュージシャンや楽器の配置について。大きな一室のスタジオで同時に演奏するスタジオ・ライブ形式のレコーディングでは、メインのボーカルを中心にすることや、声の音量が楽器の音量よりも小さいため録音ゲインが大きいボーカルのマイクに入ってくる楽器音の距離や位置で大まかな音響バランスが決まってきてしまう。要するに、これが録音される音響的「空気感」の一番大きな要素に。同様に演奏者各々の録音マイクにも多かれ少なかれ周囲からの全ての音が干渉してくるので、それらあえての「音のかぶり」を上手く活かすことによって、最終的にリスナーの耳にバンド演奏の録音をごく自然で気持ち良い音響で届けたいという挑戦なのである。ちなみに、世間一般のポップスのレコーディングは各楽器を一つづつ録音していくことが多く、この方が録音リスクは少なくレコーディング後の音源の加工性も高くなることは確か。今回スタジオ内の配置は全員で大きな一つの円陣をつくり、ボーカルから見て一番遠くのセンターにドラム、そこから左に遠い順でベース、パーカッション、ギター。ドラムから右に遠い順でオルガン、ピアノ、2人目のギター、ボーカルに一番近い右側にコーラス2人。

それともう一つ普段と大きく違うところは、今回のレコーディングでは機材面の制約があったためでもあるがモニターにヘッドフォンを使用せず、スタジオ内にある大型スピーカーからはボーカルとコーラスとアコースティック・ギターだけを出し、演奏者には周りの楽器を自然な距離感音量で聴いてもらうことにより、本当にライブ・セッションに近い感覚で演奏してもらっている。しかし、事前の説明である程度理解していたつもりでも、実際に演奏してみると、特にボーカルのchihiRoは今までのレコーディング環境との違いに苦労したはずである。
本日プリプロの目的はこのレコーディング環境に慣れてもらいながらアレンジなどの最終チェックをするという点なので、towadaは機材セッティングの方にも意識を向けながら、駆け足で収録予定8曲全てを次々と当たっていった。各自不安も抱えたままではあろうが、いよいよ明日を迎える!
2012年1月21日(土) レコーディング 1日目 at Studio E-RA

永かったようで短かった準備期間を経て、とうとう来てしまったレコーディング1日目!本日は「星を頼りに」「雲になって」「crazy crazy」「DISLIKE」の4曲。
1曲目「星を頼りに」にはBass:平石カツミさん/Percussion:松岡"matzz"高廣さん(quasimode)/Piano:田村和大さん/Chorus:ファスンさん&Lynさんという編成。レコーディングの1曲目のためやはり音響的調整に時間が必要だったり、コーラス2人とchihiRoの音量バランスの難しさや本日初参戦の方もいたため良い演奏が録れるまでテイクを結構重ねたものの何とか無事終了!2曲目「雲になって」にはBass:平石さん/Percussion:matzzさん/Electric Guitar:吉田サトシさんという編成でジルデコでは超レアなツインギター!夕食を挟んで、3曲目「crazy crazy」にはBass:平石さん/Percussion:matzzさん/Organ:諸岡ひろやさん/Chorus:ファスンさん&Lynさんという編成。本日最終4曲目「DISLIKE」にはBass:平石さん/Percussion:matzzさん/Organ:諸岡さん/Chorus:ファスンさんという編成。

それと、このレコーディング裏ではかなり深刻なトラブルが勃発!何と明日参加予定のベーシストさんがギックリ腰を悪化させてしまい、明日の参加は絶望的な状態に!!!その方の紹介で4曲目が録り終わる頃ようやく明日のトラのベーシスト芹澤薫樹さんが急遽決定!とはいえ、本当に焦った。。。
2012年1月22日(日) レコーディング 2日目 at Studio E-RA
レコーディング2日目は「I say,」「グラデーション」「リハル」「今だけは」の4曲。
1曲目「I say,」にはBass:芹澤薫樹さん/Percussion:matzzさん/B-3 Organ:西川直人さんという編成。ベースは昨日の件で急遽トラで来ていただいた初めましての芹澤さんだったが、こういうときジャズミュージシャン達の人脈と演奏力は本当に心強い。2曲目「グラデーション」にはBass:芹澤さん/Percussion:matzzさん/Electric Guitar:サトシさんという再度ツインギター編成。夕食を挟んで、3曲目「リハル」にはBass:岩川峰人さん(ザ・ショッキング)/Percussion:matzzさん/Piano:石田衛さんという普段のライブでも気心しれた布陣。そして、このレコーディング最後となる4曲目にはBass:岩川さん/Piano:石田さんという今回一番シンプルな編成。だからこそ最後に最も空気感を感じれる演奏と歌に。

ここに書ききれないような事も沢山あり、なかなかスリリングなレコーディングでしたが、スケジュールがこぼれることも無く無事レコーディング終了!!matzzさんもお忙しい中、2日間に渡って8曲中7曲にも参加していただき感謝します!皆様、本当にお疲れ様でした!!ありがとうございました。
2012年1月27日(金) ミックスダウン at studio MSR

先日レコーディングした各曲のマルチトラック音源をミックスダウンする作業。前出の「音のかぶり」を活かしつつ、また、レコーディング時からコンプレッサーやエフェクターなどのEQを最小限にして録った生の音色をミックス後も損なわないよう、一曲一曲の楽器やボーカルの音響バランスを整えて、少しでも自分たちのイメージする良い音像に近づける。エンジニアの藤巻兄将さんに事前に作業を多少進めていてもらってはいたものの、やはり一日で8曲をチェックしなければいけないため長時間にわたってしまったが、遂にアルバム『Lovely』収録各曲が見事に仕上がった!
2012年1月29日(日) マスタリング at WONDER STATION 202 MASTERING ROOM

今回のマスタリングは、ダイレクトミックス音源から先行配信シングル『Lovely e.p.』(DSDと24bit/96kHz)のマスターと、スタジオミックス音源からアルバム『Lovely』(配信用24bit/96kHzとCD用16bit/44.1khz ※iTunesはCD用音質マスターを納品して自動的にダウンコンバートされる)の、合計2音源4種音質のマスターを作るので、CD音質だけの1音源1音質分のマスタリングに比べると相当作業時間がかかると予想。
というわけで10時マスタリング・スタジオ入り。通常、スタジオ作業は業界の通例で13時スタートが多いのだが、前途の理由に加えて、しかもこの日は何と渋谷LOOP annexでのライブとダブルヘッダーになってしまったため、午前中からマスタリング作業を始めて、午後に一旦エンジニアさんにお預けしてライブ・リハーサルに向かい、またスタジオに戻ってきてチェック。本番直前にまたライブハウスへ向かい、イベント終了後またスタジオに戻ってきて最終チェックという慌ただしさ。運悪くマシントラブルにも診まわれた影響もあって、終了してスタジオを出られたのは日付が変わってさらに深い時間に・・・でも何とか締め切り期日までに無事、先行配信シングル『Lovely e.p.』とジルデコ結成10周年記念アルバム『Lovely』の音源が完成!!本当に本当にお疲れ様でした。めでたしめでたし。