エクスペリメンタリズム、団結は力なり
2012年5月8日 (火)
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いよいよ音盤に刻まれる ”エクスペリメンタリスト”としての真価。
21世紀のブルーノートおよびジャズ・シーンの牽引はおろか、ブラック・ミュージックのあらゆる可能性をも探るピアニスト、ロバート・グラスパー。昨年9月の来日公演も記憶に新しいところへ3年ぶりとなる新作がドロップ。しかもそれ、驚くべきにして超待望、クリス・デイヴ(ds)、デリック・ホッジ(el-b)、ケイシー・ベンジャミン(sax,vocoder)ら名うてのグルーヴマスターとのカルテットで実験的なサウンドを聴かせる”ロバート・グラスパー・エクスペリメント”名義による初のアルバム。その名も『Black Radio』が日本先行で発売となる。
前作『Double Booked』(2009年)のセカンド・ハーフに収められた”エクスペリメント・サイド”で数多ジャズ・ファンに(ピアノトリオ・フォーマットとの対比を明白にしながら)「ジャズの新世紀」あるいは「現代においてジャズが深化し息衝いている」ことを強烈に印象付けた驚異のカルテット。
近年リークされた、旧知のモス・デフ&デ・ラ・ソウルとのライブ・セッション音源「Stakes is High」、2008年アン・アーバーでの「J-ディラ追悼ライブ」などにおいて顕著のように、「ネイティヴ・タン」「ウマー」「ソウルクエリアンズ」「ネオ・フィリー」という文脈に基づくヒップホップ/R&B勢との絶妙な距離を保ちながら、邂逅・共闘を幾度となく繰り返してきたロバート・グラスパー。モスのツアー・バンドのディレクターを務めていたことでも知られ、また昨年2月に行なわれたエクスペリメントのN.Y. ブルーノート・ギグでは、そのモスに、カニエ・ウエスト、ルーペ・フィアスコらを交えたフリースタイル・セッションを敢行。自己レパートリーに加え、モスの「Umi Says」や(もちろん本アルバムに収録されることとなった)「Black Radio」などを披露した。このたび届けられる『Black Radio』はまさにその夜のセッションの延長線上に花開いたものとも言え、同胞・同志たちが一堂に会し怪気炎を上げたブラック・ミュージック史に残る素晴らしい記録が音盤にしかと刻み込まれている。
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ロバート・グラスパー・エクスペリメント with ルーペ・フィアスコ×カニエ・ウエスト×モス・デフ@BLUE NOTE NYC
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気になるアルバムの詳細。トラックリストを各曲ごとに追うと、何とも豪華で贅沢な、されどやおら合点のいく客演陣の参加にまずは目を奪われるはず。タイトル曲でのモス・デフをはじめ、こちらも共演歴のあるビラル、エリカ・バドゥ(同郷テキサス人)、ミシェル・ンデゲオチェロから、レイラ・ハサウェイ、レディシ、クリセット・ミッシェルといった新旧ディーヴァに、ミュージック・ソウルチャイルド、ミント・コンディションのストークリー・ウィリアムスとこちらも新旧シーンを代表するネオ・ソウル派クルーナー、そして、サー・ラー・クリエイティヴ・パートナーズのシャフィーク・フセイン、ルーペ・フィアスコ、さらに『The Story EP』で昨年デビューを果たしたばかりのL.A.のフィメール・ソウル/R&B トリオ、キングに至るまで、常にジャンルの枠を超えてコンシャスでラディカルな活動を展開する主要アクトが揃い踏んでいる。1曲を除いて(M-12)すべてがコラボレーション・チューンという、まさに怠れたメインストリーム・シーンへのカウンターとして繰り出される、同志共闘の鋭くボーダーレスな世界(とはいえ、そのサウンドは深海で揺らめく水中花のよう)からの一撃。グラスパーの無尽蔵のクリエイティヴィティはもちろんのこと、彼らの結束力の強さや濃密なシナジーを窺い知るにも申し分ない内容となっている。
目下先行配信中のシングル曲は、エリカ・バドゥをフィーチャーしたモンゴ・サンタマリアのスタンダード古典カヴァー「Afro Blue」。硬質なビートを伴ったエクスペリメントの浮遊感たっぷりの演奏を下支えに、エリカは現代最高のアフロアメリカン・レディソウルとしてのカリテを散らす。ほか、シャーデーの「Cherish The Day」をレイラ・ハサウェイと、デヴィッド・ボウイの「Letter to Hermione」をビラルと共演するなど、カヴァー・コラボについても興味が尽きないところ。
『Black Radio』 収録曲
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オーラスには、昨年の来日公演でも披露されていたケイシー・ベンジャミンがヴォーコーダーを駆使して歌う「Smells Like Teen Spirit」がしっかり収録されている。最近やたらと目にするジャズ・アクトによる「Smells...」カヴァーだが、彼らのヴァージョンには然も凡庸な原曲に対する”オンブにダッコ”感は皆無。「ニルヴァーナなどを通過してきた世代によるジャズの捉え方そのものがもはやニュースタンダード」とすることに概ねミスリードはないものの、とはいえ、彼らのスタイルは「オルタナ・ジャズ」「ニュー・ジャズ」というような実像のない新流に属するものではなく、むしろ、ブルースやジャズ百年の歴史とも真っ向から対峙しながらあくまでリアルな”新しさ”を生もうとする、ブラック・ミュージックの21世紀における”真流”と言えるような気がしてならない。
但し、それがヒップホップなのかR&Bなのかその他何某かのコンテンポラリー・ミュージックなのかと嗅ぎ分けることは彼らにとってほとんど意味を成さず、言わばそこからさらに進化していく可能性を探ること自体に意義があると、ロバート・グラスパー・エクスペリメントは大胆且つ慎重に同じ周波数をキャッチしたブラザーたちと実験を繰り返す。そのひとつの成果が『BlacK Radio』という記録として世に出る、ということだ。
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左から) クリス・デイヴ(ds)、デリック・ホッジ(el-b)、ロバート・グラスパー(p,key)、ケイシー・ベンジャミン(sax,vocoder)
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モス・デフ『Black On Both Sides』、コモン『Like Water for Chocolate』、あるいはイエスタデイズ・ニュー・クインテット『Angels Without Edges』、Qティップ『Kamaal The Abstract』に欲情し触発されながら幕を開けた彼ら同志たちの21世紀。
ドゥエレ『Subject』、ジョン・レジェンド『Get Lifted』、ビルド・アン・アーク『Peace With Every Step』、サーラー・クリエイティヴ・パートナーズ『Hollywood Recordings』などが同じベクトルを持ちながら次々と産声を上げ、そして早十年が過ぎ、フライング・ロータス『Cosmogramma』やディーデイ・ワン『Mood Algorithms』(再加工品)といったビートメイカー作品にブラック・ミュージックの大いなる可能性が見出されている現在。『Black Radio』は一般的な(便宜上の)セグメントとしての”ジャズ村”からあまりにも久々に登場した、進むべきブラック・ミュージックの”真の”未来を指し示す重要作品となり得るか否か?
どちらにせよ、ヒップホップ全盛期(その一方で、ダンス〜クラブ・ミュージックとしてのヒップホップが過渡期を迎えているとも)、ブラック・ミュージックとしてのジャズが”脆弱”と叫ばれて久しい今こそ、”ジャズ村”きってのエクスペリメンタリストとしての真価が問われる一枚になることは間違いないだろう。
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