【連載】NONA REEVES(第2回) NONA REEVES『Choice by NONA REEVESの世界』へ戻る

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Billboard Live

2011年6月14日 (火)



 



 ノーナ・リーヴスのギタリスト奥田健介です。ボーカルの西寺郷太と交互に、僕らにとってはじめてのカバー・アルバムである《“Choice“by NONA REEVES》を紹介していくというこのコーナー。第2回目である今回は、アルバムの4曲目、ビリー・ジョエルの〈JUST THE WAY YOU ARE/素顔のままで〉と、5曲目、イーグルスの〈I CAN'T TELL YOU WHY/言い出せなくて〉についてお話したいと思います。




 まず〈JUST THE WAY YOU ARE/素顔のままで〉。一口に「洋楽」といっても、その言葉からイメージされる音楽の種類、ムードは各人各様でしょう。しかし、ビリー・ジョエルの77年の大ヒット作であるこの曲のように、ここまで多数の日本人の耳の中に長年しっくりとどまり続けている「洋楽」は、ごく一部ではないかと思います。もっと言えば、「洋楽を超えた洋楽」、その認知度の高さと耳当たりのよさゆえ、曲の放つ存在感が、限りなく日本の往年のヒットソングのそれに近似してしまった「洋楽」の一例とも言えるのではないでしょうか(もちろん完全に喜ばしいことなのですが)。それくらい「テレビでしょっちゅうかかるイイ歌」であるこの曲を、クールでモダンな解釈でカバーするのは結構難しいのですが、ノーナ・リーヴスは果敢にチャレンジし、それを成し遂げました(照)。


 この曲の特徴として、やたらと性急なコード・チェンジが挙げられます。その「非ループ感」こそが、この曲にいわゆる洋楽っぽい匂いが希薄であることの一因になっていると思うんですが、誰もが認めざるを得ないあの強力な「美メロ」と一蓮托生の関係を結んでいる以上、そこは曲げられない。というか、曲げてもたぶん良くならないだろう、と。
   結果として、ノーナ・リーヴス3人とプロデューサーの冨田さんは、原曲のもつ偉大なる骨格は遵守しつつ、もともとあったオープンな都会主義をライトな密室性に変換することに成功しました。そしてその上に、ナチュラルかつエモーショナルな郷太の歌唱が鳴り響くという、ひとつの小宇宙を完成させることができたのではないでしょうか。ちなみにこの曲は、アルバムの中でもとりわけ冨田さんのアレンジ・プログラミングに委ねるところが大きかったのですが、リズムマシンやシンセのひんやりした音色ひとつひとつに、とても濃密な「意志」が託されてるなあと、聴くたびに胸が熱くなります。プレイヤーとしても、間奏部分のアコギソロは、そのフレーズの「適温」にこだわったつもりです。






 続く〈I CAN'T TELL YOU WHY/言い出せなくて〉は、これも世界的に驚異の認知度を誇るイーグルスの、79年の作品です。彼らの代表曲〈ホテル・カリフォルニア〉は、昭和17年生まれのうちの父親が、僕が数年前に帰省した際「お前もバンドやってるならこの曲聴いた方がいいぞ。知ってるか?」と、わざわざ書斎に僕を呼びつけて聴かせてくれたという超ド級の有名曲ですが、今回僕らがチョイスした〈I CAN'T TELL YOU WHY〉は、世間一般的には、〈ホテル〜〉ほどのポピュラリティはないと思われます。しかし、ミュージシャンやDJをはじめとする、ざっくり言うと「音楽マニア」の間では、昔からこの曲は根強い人気があるようで、僕の周りでもこれを好む人が多い。なんらかの音楽的魔力が、この曲にはあるのでしょう。

 原曲が持つ独特のドラムサウンド、テンポ感。エレクトリック・ピアノやギターの寂寞としたリフレイン。そしてあのほろ苦いメロディー。この曲には、スルーすることのできない特徴的な魅力がいくつも詰まっています。〈JUST THE WAY YOU ARE〉の時と同様、無理やりな再構築を目指すのではなく、この曲をカバーするのはむしろ、新しい解釈にトライしつつも代替品のない大事なものを「守る」作業に近かったように思います(今回すべての曲にあてはまることかもしれません)。
 ノーナ版〈言い出せなくて〉は、原曲よりもキーを1音下げた、若干ブラック・フィーリングの強い仕上がりになりました。「ドスッ」というバスドラムやボーカル処理などは、i Tunesで現在進行形のR&Bと並べて聴いても、自然な連なりを感じられることと思います。ギターもちょっとだけ黒人のつもりで弾きました。もともと白人が考えたフレーズを日本人の僕が(照)。





では次回は再び郷太にバトンタッチします。アルバムも後半にさしかかります。



NONA REEVES 奥田健介


NONA REEVES プロフィール

NONA REEVES

1995年5月、西寺郷太が「ノーナ・リーヴス」と名づけ音楽活動を開始。その後すぐにドラマー小松シゲル、ギタリスト奥田健介らが合流しバンド編成へ。 ちなみにノーナ・リーヴスとは西寺が、マー ヴィン・ゲイの娘ノーナの名と、ザ・ヴァンデラスのリード・シンガー、マーサ・リーヴスの姓を組み合わせて作った「架空の女性シンガー」の名である。1996年、インディ・レーベルよりはじめてのアルバム「サイドカー」を発表。97年、ワーナー・ミュージック・ジャパンよりメジャー・デビュー。その後、コロムビア、徳間ジャパンと移籍を重ねつつ、現在までにオリジナル・アルバム11枚を発表。作品は世界各地でリリースされている。近年、西寺郷太はその驚異的な80年代ポップ・マニアぶりを生かし、ラジオのレギュラーなどで高い支持を得る。特にマイケル・ジャクソンについての2作の著書は記録的なベストセラーとなった。メンバーそれぞれの活動も活発となり、SMAP、HALCALI、DEPAPEPE、土岐麻子、坂本真綾、大澤誉志幸、佐野元春、堂島孝平、YO-KING、YUKIなど多くのアーティストへ楽曲提供、プロデューサー、セッション・ミュージシャンなど様々な形で関わっている。

  オフィシャルHP
  西寺郷太Twitter
  奥田健介Twitter

Live情報

『MAD NONA 4 デビュー15周年記念 NONA3X15(ノーナ最高!)プロジェクトその1
"Choice" and "Warner Music Years 97-01" Release Party 2011』

[2011年7月16日(土)]
【会場】恵比寿 LIQUIDROOM
【開場/開演】17:30 / 18:30
【チケット料金】
■前売り 立ち見 ¥4500(税込み)※ドリンク代¥500別
■当日券 立ち見 ¥5000(税込み)※ドリンク代¥500別
【お問い合わせ】HOT STUFF PROMOTION
03-5720-9999(平日15:00〜18:00)



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関連リンク

TBSラジオ『小島慶子 キラ☆キラ』の3時台コラム「コラ☆コラ」のコーナーに西寺郷太さんレギュラー出演中(毎週水曜日)!
  『小島慶子 キラ☆キラ』HP



商品ページへ   NONA REEVES  『Choice by NONA REEVES』
    [ 2011年06月08日 発売 / 通常価格 ¥1,980(tax in) ]     

[収録曲]
01. JIVE TALKIN' (BEE GEES)
02. I WANNA BE YOUR LOVER (PRINCE)
03. DON'T TALK ABOUT IT (CULTURE CLUB)
04. JUST THE WAY YOU ARE (BILLY JOEL)
05. I CAN'T TELL YOU WHY (EAGLES)
06. SMOOTH CRIMINAL (MICHAEL JACKSON)
07. LOVE T.K.O. (TEDDY PENDERGRASS)
08. WAILING WALL (TODD RUNDGREN)
09. KOKOMO (THE BEACH BOYS)
東京・大阪でライブレストラン、「Billboard Live」を運営し、海外からスティーリー・ダンやジョージ・クリントン、セルジオ・メンデスなど世界基準のトップアーティストを始め、細野晴臣やキリンジら良質な国内アーティストもブッキングしてきたBillboard Japanが、「Billboard Records」を立ち上げた。その最初のリリースとなるのは、カヴァー・シリーズ『Choice』第1弾。そして、そこで先陣を切るにふさわしい見事なセンスを披露しているのはNONA REEVESだ。「マイケル・ジャクソンの伝道師」としてテレビ、ラジオ、執筆と大活躍、楽曲提供やプロデュースでも様々なアーティストとコラボレーションを続けるヴォーカル西寺郷太(彼はこの『Choice』シリーズの命名者でもある)をはじめ、ギター奥田健介、ドラム小松シゲルのふたりもプロデューサー、アレンジャー、セッション・ミュージシャンとして八面六臂の活躍。日本の音楽シーンになくてはならない存在となっているNONA REEVES。そんな彼らが本当に純粋な音楽への熱意と愛だけをこめたのがこの作品だ。西寺郷太は本作に「自分たちが信じてきた音楽の魔法を詰め込みました」と語り、こう続ける。「我々の骨となり、血となってきたここに選んだ70年代から80年代後半までの名曲達を歌い奏でることは、『自分とは何か?』と問いかけるノスタルジックな作業となりました。しかしそれ以上に、冷徹に2011年の『今』、守り、伝え続けたいものを浮かび上がらせることにもなったんです。メンバー一同レコーディングしながら、何度も何度も幸せな瞬間を味わいました。スタート・ボタンを押したその時から、そのことを全身で感じていただけると思います。」プリンス、マイケル・ジャクソン、ビーチ・ボーイズ、ビリー・ジョエル、カルチャー・クラブ、トッド・ラングレン…。そして、その永遠に色あせることのない珠玉のヒット曲。本作はそんな名曲たちと日本のポップ・ミュージックの良心とが邂逅した大傑作カヴァー・アルバムとなっている。




商品ページへ   NONA REEVES  『WARNER MUSIC YEARS / THE BEST OF NONA REEVES 1997-2001』
    [ 2011年06月08日 発売 / 通常価格 ¥2,500(tax in) ]     

[収録曲]
01. LOVE TOGETHER
02. DJ!DJ!(What Have I Done To Deserve This?)
03. WHERE IS THE PARTY?
04. AUGUST
05. FRIDAY NIGHT(SOUL ON)
06. Bad Girl
07. STOP ME
08. THE GIRLSICK
09. FORTY PIES
10. HiPPY CHRiSTMAS
11. WARNER MUSIC
12. CESSNA
13. I HEARD THE SOUND(Parts 1&2)
14. (HAPPINESS IS ON THE)TURNTABLES ONLY [Honmoku '77 Mix]
15. I LOVE YOUR SOUL

高度な音楽性と絶妙の同時代性を持ちながら、独自の地位を確立したノーナ・リーヴスのデビュー15周年スペシャル・プロジェクト!『アニメーション』『フライデー・ナイト』『ディスティニー』の3枚のアルバムほか、現在入手困難となったワーナー期('97-'01)音源から厳選されたベスト・アルバム発売! 筒美京平をプロデューサーに迎えた「LOVE TOGETHER」、YOU THE ROCKをフィーチャリングした「DJ!DJ! 〜とどかぬ想い〜」、「WHERE IS THE PARTY?」、CKB・横山剣を迎えた「ターンテーブルズ・オンリー feat. 横山剣」、「I LOVE YOUR SOUL」、アルバム未収録の「ヒッピー・クリスマス」など、ワーナー在籍時のノーナの代表曲を集めた待望の1枚がリリースとなります。



関連作品

 2009年03月04日 発売
 2007年02月14日 発売
 2006年02月22日 発売
 2006年05月24日 発売
 2010年06月08日 発売
※西寺郷太 全面監修


次回に続く!(6/21更新予定)




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