【コラム】Akira Kosemura第18回 細い糸に縋るように Akira Kosemuraへ戻る

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2011年1月11日 (火)

連載コラム『細い糸に縋(すが)るように』
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小瀬村晶 Akira Kosemura
[producer / composer / schole records A&R]

東京在住の作曲家、音楽プロデューサー、ピアニスト。 国内外の音楽レーベルから作品を発表する傍ら、広告 / ファッション / フィルム / 舞台など、特定の分野に限定されることなく多方面で活動を展開するアーティスト。 schole recordsを主宰していることでも知られ、これまでに数多くの若手アーティストを発掘、主に海外のアーティストを中心にプロデュースも手掛けている。
最新作は、schole recordsからの「grassland」(2010年発表)



毎月、このコラムを書く段になると、その月にあったことを一生懸命思い出してみる。
日々のちょっとした出来事を拾い集めては、そこからなにか繕って文章にすることはできないものかと、悶々とする。

その結果、運良く書きたいことに辿り着けることもある。

だけれども、大抵は、今日のようにただ筆を動かして(実際にはキーボードを叩いて)刻々と時間をやり過ごしていることのほうが多い。
実際的にいって、日々の暮らしのなかで、そんなに毎月文章にしたいと思える出来事は少ない。

それでもなんとかもう一年半近くもこの連載は続いているわけで、そのなかで僕なりに学んだこともある。

その一つは、つまり「書きたいことが見当たらなくても、文章は書ける」ということである。
大事なことは、辛抱強く机に向かう姿勢であり、頭を空っぽにして筆を動かし続けることであり、あとはとにかく、書き続けることである。
なにか意味のあること、面白いことを書こうと思ってはいけない。大事なことは、ただ筆を動かし続けること。 独り言のように、ひたすらに言葉を書き綴る。

なにも考えずに机に向かっていると、空っぽの頭を埋めるようにいろいろな言葉が降ってくるようになる。
僕はただ忠実に、その浮かんでくる言葉を使って、ひたすらに原稿の空白を埋めていく。

時折、筆を止めて、書いたものを眺めてみる。そしておかしなところを添削していく。
一杯の紅茶を入れてくる。ミルクと砂糖と蜂蜜も入れる。そしてまた同じことを繰り返していく。

文章を書くことは至って簡単で、読み書きさえできれば誰でもできる。面白いことを書ける人や、意味のあることを書ける人はほんのわずかな人間かもしれないが、文章を書くことは、誰にでもできる。

こうして生まれてくる言葉の一つ一つを記録して、後から眺めてみると、まるで頭の中に降ってきたなんでもない糸屑のような断片が、驚くことに文章になっていたりする。
誰が読みたいとか、誰に読んでほしいとか、そういう類いのことは一切置いておいて、とにもかくにも、これは確かに自分の文章なのだ。

ある程度の文量が書けてくると、なんだかその文章に対して不思議と愛着のようなものが湧いてくる。
そして再度添削する。きちんとした形にしてあげたいというような気持ちにさえ、なる。
始めはなにかを書こうとしていなくても、結果としてなにかを書くことができる。

それがこの連載を通じて、僕が学んだ一つの文章の書き方である。
正直にいって、これがコラムと呼べるものなのかすら、定かではない。

ただ、僕が言えることは、意味のあることを書くのは難しいけれど、あることに意味を付けるのはそれに比べて容易い、ということである。

また一つ年が明けた。
今年も僕は、細い糸に縋るようにして、なんとか自分の文章を書き続けていきたいと思う。


http://www.akirakosemura.com/
http://www.scholecultures.net/




 
 Akira Kosemuraの「今月のオススメ」
商品ページへ

  Ketil Bjornstad / David Darling   『Epigraphs』
    [ 2000年04月28日 発売 / 通常価格 ¥2,615 (tax in) ]

ピアノとチェロによる、洗練された作曲と演奏に加えて、所々に遊び心も感じられる良作。ECMらしいシンプルなパッケージも、音楽に合っていて印象深い。発売は2000年ですが、2011年最初に買った作品。







商品ページへ 【Akira Kosemura作品】

  Akira Kosemura  『grassland』
    [ 通常盤 / 2010年2月13日 発売 / 通常価格 ¥2,310(tax in) ]


scholeより発表された二枚のアルバムが多くの人々に支持され、最近ではポラロイド写真をテーマにした完全即興演奏によるピアノアルバム『Polaroid Piano』の発表、さらに自身の作品だけにとどまらず、映像作品「ウミウシ 海の宝石」への音楽提供や、ケンタッキーTVCMの音楽制作、nano universeやTOSHIBA REGZAのウェブサイト音楽、アパレルブランドへの楽曲提供など、ますます活動の幅を広げる気鋭のアーティスト、Akira Kosemuraが自身のレーベルscholeからリリースする三枚目のアルバム『grassland』。 多くのゲストミュージシャンを迎え入れて制作された本作、これまでの作品が光と影、両方を持っていたとしたならば、今作は最も光に満ちあふれている。その濃い密度で紡がれた音楽は、これまでの集大成といえるだろう。 また、今作は通常のCD盤に加え、限定生産盤としてミュージックビデオ作品を七作収録した豪華CD + DVDパッケージ盤も同時リリースとなる。小瀬村のこれまでの作品のなかから、四人の映像作家がそれぞれ楽曲を選び制作された映像作品集は、デビュー当初より小瀬村の作品ヴィジュアルを支えているSCHOLE INC.の面々に加え、ロンドンから Mario Cavalliを監督に迎えて製作された三作品もパッケージ。一つの到達点を迎えた彼の今後に、大いに期待が高まる作品となった。


商品ページへ 【schole records最新作】

    nunu  『nunu』
    [ SCH017 / 2011年01月15日 発売 / 通常価格 ¥1,575 (tax in) ]

schole recordsより、ドイツの女性ピアニスト nunu の1st mini Album がリリース。 7曲のピアノソロで構成されるデビュー作品となる今作は、彼女の根本となっているであろうクラシック音楽の気品と、インプロビゼーションによるプレイスタイルを織り交ぜた静寂の中の音楽。極めて少ない音数で成り立つクラシカルな旋律、展開の起伏の触れ幅が少ないが故の、完璧な程の力の解け具合が際立って存在を成している。 メランコリックな鍵盤が静かに語り出す「wa1c oo」から幕を開け、オルゴールの様なエレクトリックピアノの音色でリフレインする、ミニマルなフレーズが印象的な「kimidoll」。全身が解きほぐされてゆく様なスロウ・ジャズ テイストの「chocolat」。そして、なだらかに終盤を迎える「serce polska」「alb」へ。音大でピアノを学んだというアカデミックな経歴を持ちながら、彼女の楽曲は構成の緻密さやテクニックに重点を置いたものではなく、即興演奏によるところの直感と揺らぎに委ねられ剥き出しのまま形となった、彼女の"スピリット"そのものだ。自由に飾り立てないものほど、不意に深く心を打たれてしまう様に、白と黒のみで彩られた鍵盤の上で、必要なものだけがそっと取り残された nunuの音楽。重ねて聴くほどに、静寂の中に存在する豊かな音の創りに気付かされる。その研ぎ澄まされた表現力は、「指先から音が零れ落ちる」そんな言葉がまさに彼女の音楽を表現するには相応しい。そこはかとない音楽家としての才能と、しなやかで神秘的な"女性像"を秘めた、静謐に紡がれる、美しく憂いた指先の短編集。



次回へ続く…(2/10更新予定)。


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    2009年8月よりスタートしたAkira Kosemuraによる月イチ連載コラム『細い糸に縋るように』。
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    【連載】未来派野郎Aチーム 第14話

    3ヶ月の潜伏期間を経て久々のAチーム復活!今回は『Best of 2010』。
    小瀬村さん他、お馴染みのアーティストの方々にもご参加いただきました!

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    祝!schole records 3周年!
    エレクトロニカに留まらず、良質な音楽を発信し続ける同レーベルの記念碑的コンピ『note of seconds』がリリース!

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    Akira Kosemuraが送る待望の3rdアルバム『Grassland』。
    このアルバムの発売を記念し、Akira Kosemura氏にインタビューを敢行。全曲レビューもアリ!

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    11/20にROSE RECORDSから1stアルバムをリリースしたaCae(アカエ)。
    対談のお相手はschole records主宰・Akira Kosemuraさんです。

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    エレクトロニカなどの良質な音源をコンスタントにリリースするレーベル“schole”。
    代表のAkira Kosemura氏にお話を伺いました。

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    新進気鋭のレーベル“schole”からMotohiro Nakashimaの最新作がリリース。
    暖かくて美しい極上のアンビエント・ミュージック。

  • 【特集】schole records

    【特集】schole records

    良質なエレクトロニカ/フォークトロニカ作品をリリースし続けるレーベル“schole(スコーレ)”。
    そのカタログタイトルをHMVスタッフが一挙レビュー。







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