[2月のドススメ] THA BLUE HERB

2011年2月10日 (木)

2月のドススメ! matsui編

THA BLUE HERB 『PHASE 3.9』 / THA BLUE HERB
[2011年02月16日 発売]

【先着特典】 DVD(プレス盤)
2011年1月10日に大阪で行われた、芥川賞作家モブ・ノリオ氏をインタビュアーに迎えて行われたILL-BOSSTINOのトークショーの模様を収めたDVD!


早いもので、連載3回目を迎えたこの「担当者 今月のドススメ(仮)」。ひと月にリリースされるCDの量と言ったらそれは膨大で、その中からたった1枚を選択しここでフィーチャーしていく。その“1枚に絞る”という作業は中々に大変で、毎月頭を悩ませているわけですが・・・

今回は文句ナシの即決で、コチラをドススメ!活動第3段階目を終えたTHA BLUE HERBのライブドキュメンタリー映像作品『PHASE 3.9』!
THA BLUE HERB、音楽好きであれば誰しもが認知しているアーティストだろう。いまさら僕がここで紹介する必要はないのかもしれないが、なにせTHA BLUE HERBには特別な思い入れがある。

僕がTHA BLUE HERBの音楽に初めて触れたのは、2000年9月代々木公園野外ステージで行われたフリーイベント“HAPPERS ALL STARS”での事。当時、AUDIO ACTIVE、DRY&HEAVYに心酔していた僕は迷わずこのイベントに出かけた。丁度、AUDIO ACTIVE feat. BOSS THE MC「SCREW DRHYMER」のリリース前後の事だったと思う。AUDIO ACTIVEもDRY&HEAVYも最高のLIVEを観せてくれた。しかし、このイベントで何よりも度肝を抜いたのはTHA BLUE HERBのLIVEだったので、この出会いはよく覚えている。
僕以外の他のオーディエンスも、おそらく同じで、BOSS氏が放つ言葉とO.N.Oのビート、今まで感じたことの無い圧倒的な雰囲気にヤられ、みな踊る事も止め、ただ目の前で起こっている“何か”にじっと見入っていた。

あれから10年を超える月日が流れた。しかし、今もなお、THA BLUE HERBは、僕らを魅了し続けている。
THA BLUE HERBは、段階段階で創りあげてきたものを守るのではなく、一旦壊してしまうのだと言う。これは並みの感覚では出来ない事だろう。そうやって、新しいインスピレーションを取り入れ、変革を繰返す。これこそが、THA BLUE HERBが、僕らを魅了し続ける大きな要因かもしれない。その変革は、また僕らに新しい驚きを与えてくれる。
人は変化を嫌悪する反面、変化をしないものに対してはやがて興味を失う。THA BLUE HERBは、軸を固定したまま、それに付随する枝葉を変化させていくという点において実に気持ち良い。
事実、前述した2000年時のLIVEとPHASE3で行われたLIVEで受ける印象は大きく違う。かつてのLIVEは、どこか近寄り難い程の威圧的な空気を纏っていたが、現在はオーディエンスとの距離が随分近くなったように思う。その変化を“丸くなった”と感じる者もいるだろうが、“言葉”“音楽”“LIVE”に対するストイックな姿勢は何一つ変わってはいない。と言うよりもむしろ研ぎ澄まされている。

アルバム『LIFE STORY』発売から3年半、PHASE3と名付けられたその期間にTHA BLUE HERBは179回に及ぶLIVEを行ってきた。今回、PHASE3活動最後の15回のLIVEを収めたドキュメンタリーDVDが発売される。前回のDVD『Straight Days / Autumn Brightness Tour'08』のような仕掛け的な事や、プライベートを映す要素は全く無い。LIVEにのみ焦点を当てた作品になる。ボアダムスの伝説のドキュメンタリー『77BOADRUM』を撮った事でも知られる、川口潤監督による作品だ。お互いを良く知るアーティストと監督の信頼関係。この映像作品に限りないリアリティーと説得力が生まれたのは、その関係性があってこそだろう。毎回そうだが、THA BLUE HERBの映像作品は、一本の映画として、アートとして評価に値するものだと思う。凡百のLIVE DVDと呼ばれるものとは根本的に違う。自分の活動、作品の細部にまで神経を研ぎ澄まし、妥協をしない姿勢はインディペンデントそのものだと思う。
ここには現段階で最新のTHA BLUE HERBの姿が、裸のまま余す所なく描かれている。

THA BLUE HERBはLIVE中のMCでこんな事を発する。
「自分で見極めろ、THA BLUE HERBは何者なのか」
つまり、良いも悪いも決めるのは他人の評価ではなく自分自身だと。

そう言えば、モブ・ノリオの小説『介護入門』にも同じようなメッセージを感じた事がある。大麻を吸いながら献身的に寝たきりの祖母を介護する主人公と、その家族の対比が面白い作品だ。社会的にはアウトだが人間的な主人公と、社会的にはOKだが人間的に?な家族、正しいのは??と言った事を問うている。法律や常識といったものだけに判断を委ねるのではなく、判断の基準は自分自身の中に持っておきたいものである。

2011年の初頭、BOSS氏は上記のモブ・ノリオ氏と対談している。大阪のみで開催されており、僕はその対談を未だにチェック出来ていないのだが、そんな2人の対談と言うだけで期待してしまう。事実、話は大いに膨らみ、3時間に及ぶロング対談になったそうだ。
今回DVD『PHASE 3.9』の初回特典で、この対談を抜粋して1時間にまとめたDVDが付属する。是非早めにチェックして頂きたい。

ともあれ、このDVDを以ってTHA BLUE HERBのPHASE3は完結する。これから、おそらくは長い沈黙に入り、その中で得た多くのインスピレーションを、次回の作品でブチかましてくれる事だろう。

そんなPHASE 3の最終地点にいるBOSS氏にインタビューをさせて頂きました。コチラも是非!

HMV インタビュー ILL-BOSSTINO THA BLUE HERB PHASE3.9 タイミング

『STRAIGHT DAYS/AUTUMN BRIGHTNESS TOUR '08』リリース時のインタビュー!

HMV インタビュー ILL-BOSSTINO THA BLUE HERB STRAIGHT DAYS/AUTUMN BRIGHTNESS TOUR '08
タイミング



文中に出てきたオススメDISC


AUDIO ACTIVE feat. BOSS THE MC「SCREW DRHYMER」収録。

2007年7月7日ニューヨーク。77台のドラムで一斉に演奏された伝説のライヴイベント。

この装丁が既にヤバい・・・
 
 

ドススメ人 profile

matsui
主な担当ジャンル:
japanese hip hop/reggae
japanese indies

中学2年の春、たいして仲良くもないクラスメートからススメられた坂本龍一『HEARTBEAT』にヤられて以来、音楽の魔法にかけられ出口のないワンダーランドに迷い込む。ジャンル・国籍問わず、好きなものは好きのスタイル。
無類のフェス好き。


2月発売 その他のオススメDISC

商品ページへ  『Inspirations Compiled by ILL-BOSSTINO from THA BLUE HERB』
2011年03月02日発売

こちらはDVD『PHASE 3.9』リリースから半月後、3/2にリリースされるILL-BOSSTINO選曲のCD。BOSS氏が札幌のダンスフロアーで聴いてきた曲や、DJをやる時にかけている曲、中学校の時からずっと好きで聴いてきているアーティストの曲や、本当に僕自身のハートの深いところで大切にしてきた曲たちをコンパイル。THA BLUE HERBのLIVEや音源に散りばめられた多様な音楽的要素。その裏側の世界を垣間見れる必聴盤!ILL-BOSSTINOによる全曲への思い入れを綴った解説ブックレット付き。マスタリングは同郷の雄、KUNIYUKI TAKAHASHI氏!
【先着特典】 ILL-BOSSTINO によるMIX CD








商品ページへ  DOOBEEIS meets BooT
『9th Dope』

2011年02月11日発売

2010年にデビューアルバムをリリースしたDOOBEEIS。そのデビューアルバムを「生音」 で再構築した新録音源がリリース!バックトラックは全てDUBバンド・BooTにより弾き直され、HIDENKAとGOUKIの二人もラップを再録音。オリジナル・アルバムとは違う、一般的なREMIXアルバムでもない、いわば”アナザー・サイド・オブ・DOOBEEIS”!HIPHOPシーンはもちろん、レゲエ、DUBファン等、全てのDOPE好きに贈る1枚!




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