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橋本徹の『素晴らしきメランコリーの世界』対談 【6】

2010年11月22日 (月)

interview

橋本徹の『素晴らしきメランコリーの世界』対談

河野:そしてブラジルのデリア・フィッシャーへと素晴らしい流れですね。前作はエグベルト・ジスモンチのCarmoレーベルから発売されましたが、今回はDUBASに移ってジスモンチがゲストで参加していますね。

稲葉:ジスモンチのいかにも彼らしい独特な感覚が滲み出たプレイですね。

橋本:やっぱりアルゼンチンの人たち、カルロス・アギーレも含め、彼周辺の人たちがジスモンチに共鳴する感じっていうのが、このプレイには凄く出てると思うんだよね。それはトニーニョ・オルタとかミナスの音楽に共感するのとも近い感覚のもので。

山本:クラシカルなテイストもあって、タチアナ・パーハの『Interia』に収録されたジョビンの「Sabia」のカヴァーを思い出しますね。

河野:ジスモンチのギターがただの伴奏に終わってないのが、やっぱり凄いですよね。尖がっているのに切ないみたいな。

橋本:凄い存在感だよね。ただ優しく歌伴してるだけじゃないから。

稲葉:そしてウリセス・コンティですね。彼のピアノの音は独特なんですよね。若干テープが伸びてるんじゃないかっていうくらいの揺らぎ感が漂いますね。

橋本:フアン・スチュワートもそうなんだけれども、何だか独特の録音というかニュアンス豊かな音色の響きだよね。

山本:モノ・フォンタナにも通じるようなどこか音響的なテイストはブラジルの作品では出せないですよね。

橋本:フランス印象派のラヴェルとかの感じもまさに揺らぎじゃない? 美しいだけじゃなくてどこかに魔も潜んでいるかもしれないみたいな、ああいう神秘的な揺らぎ。深い森の奥で湖の波紋が広がっていくような。そういう感じで、夢の中みたいな感じが出たらいいなって思って。でも、こんな選曲させてもらえるようになっただけでも、今年は静かなる音楽のムーヴメントに感謝しなければいけないね(笑)。

河野:意外と潜在的にこういう感じを待っていた人も少なくないと思いますよ。お客様の反応でも実感しましたけど。

稲葉:それは僕も『素晴らしきメランコリーのアルゼンチン』の時点で思いましたね。

橋本:凄くいい話があって、『音楽のある風景〜冬から春へ』の最後に入れたアンドレス・ベエウサエルトの「Madrugada」と全く同じコード進行の曲を、去年Uyama Hirotoが偶然作ってたんですよ。時代の気分っていうか、僕らが求めている感じっていうのが「Madrugada」に象徴的にあって、それがここまで導いてくれたのかなと。「すばメラ」コーナーが始まった同時期にアンドレス・ベエウサエルトのあのアルバムが入荷したのは運命的ですよね。そしてラストに置いたのはフェルナンド・シルヴァのランブル・フィッシュ。やばいでしょう? このエンディング。光の粒のようなピアノとスキャットはカルロス・アギーレ。

山本:アギーレさんの歌声を聴いただけで涙が出ちゃいますね。

橋本:この声だったんだよね、アプレミディでギター抱えて鼻歌でリハーサルをやってたときの感じが。これが今一番、俺の心を調律してくれる曲なんだな。

河野:これはアギーレさんにも是非とも聴いてほしいコンピレイションですね。絶対に気に入ると思いますね。

山本:余韻や余情もあっていいんですよね。

河野:今回もこのコンピレイションをきっかけに繋がって行くことって本当に大きいと思います。それは時間をかけてかもしれませんが、このコンピがあることによってこういう音楽があることを知ったり、そこから新たなものが広がっていったり、新しい人と人の繋がりができたりっていうのは絶対にあると思いますね。

橋本:僕もこの一年の間にできた繋がりに感謝しています。これは「すばメラ」コーナーで勇気づけられ、励まされた結果のCDなんで。

稲葉:タイトルはメランコリーですが、めちゃくちゃポジティヴなメッセージが込められたCDですね。聴いている人がそういう意味で、勇気づけられたり、静かな力を受け取ってもらえたら最高です。

河野:要はただの鬱ではなくて、これがあることによって微かな希望や光が見えたり、明日も生きられるって気持ちになったり、それがここで言うメランコリーだと思いますね。

橋本:セバスチャン・マッキの『Luz De Agua』を初めて聴いたときの、あの感覚。そのとき、自分が音楽を聴く形っていうかね、気持ちみたいなものを自覚できたっていうか。音楽に自分が何を求めているかってことのひとつが、心を調律してくれるってことだったのかなって思って、今こういうコンピを作っているんだと思う。今回も特に最後5曲の流れに象徴的なように、そういう風に聴いてもらえたら嬉しいし、自分でも聴き続けていくだろうと思ってますね。

山本:音楽がある種のセラピーにもなるということですね。ここまで来るとやはり第2弾も楽しみになってきます!

素晴らしきメランコリーの世界
〜ピアノ&クラシカル アンビエンス
「心の調律師のような音楽」をキーワードに、あらゆるジャンル/年代を越えてグッド・ミュージックを愛し、必要とする人々によって起こった2010年の静かなるムーヴメントの最後を飾る、橋本徹(サバービア)選曲・監修の究極のメランコリック・コレクション!
profile

橋本徹 (SUBURBIA)

編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷・公園通りの「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・グラン・クリュ」「アプレミディ・セレソン」店主。『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは200枚を越える。NTTドコモ/au/ソフトバンクで携帯サイト「Apres-midi Mobile」、USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」を監修・制作。著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。

http://www.apres-midi.biz