トップ > 音楽CD・DVD > 商品情報 > ジャズ > 橋本徹の『素晴らしきメランコリーの世界』対談 【5】

橋本徹の『素晴らしきメランコリーの世界』対談 【5】

2010年11月22日 (月)

interview

橋本徹の『素晴らしきメランコリーの世界』対談

稲葉:今都会に住んでいると、聴きたくない音っていうのがどんどん飛び込んでくるじゃないですか。それに常にさらされている自分たちが、じゃあ無音にしたからって癒されるかっていったら癒されないんですよね。やっぱり良いものを聴くことで癒されるっていう。

山本:やっぱりブライアン・イーノの言ってる感覚に近いかもしれませんね。

橋本:ロリ・スカッコのストームスなんかまさに夢と現実の狭間でいつも聴いている音楽なんですよね。凄く映像的でありながら、意識と無意識の間で気持ちいい、儚い白日夢のような夢幻感があって。コンピレイションを1枚のアルバムとして、通して聴くことの意味合いみたいなものを感じてもらいたいなって思っているときに、こういう曲が効くんですよ。こういう曲をインタールード的に使うことによって、曲がただ並んでいるオムニバス・ヒット集みたいなのと違って、トータリティーで聴いてもらえるっていうかね。それは『素晴らしきメランコリーのアルゼンチン』や『Chill-Out Mellow Beats 〜 Harmonie du soir』でも意識したことなんだけど。

山本:ストームスは『Chill-Out Mellow Beats〜Harmonie du soir』の後半のカルロス・ニーニョとかミア・ドイ・トッドとかラティフ・カーン辺りに繋がってますよね。

橋本:そう言ってもらえると、めちゃめちゃ嬉しいです(笑)。

山本:ジャズ・シュプリームの提示からもまさに同じことを感じましたが、以前で言うといわゆるキラー・チューンのようなクラブ・ジャズだったのが、心を鎮めるようなスピリチュアルでメディテイティヴなテイストに惹かれるようになってますよね。

橋本:ファラオ・サンダースでももちろん「You've Got To Have Freedom」だって素晴らしいんだけど「Moon Child」だったり「Sun Song」だったりっていうものに、光を当てやすくなってきているっていうかね。ビルド・アン・アーク・ファミリーの方向性も全くそうだと思うけど。

稲葉:ビルド・アン・アークの活動は、今本当に意味があるっていうか、カルロス・ニーニョからニック・ローゼンの新譜もしかり、この時代の音だと思いますね。非常に先鋭的な活動に見えるんだけれど、音は凄く穏やかというかピースフルだったりする。

山本:コンピの後半の幕開けを飾るウィリアム・フィッツシモンズも、流れの中でとても自然に響いて聴こえますね。オリジナル・アルバムとは印象がかなり違います。

稲葉:橋本さんはここからのラスト5曲の流れにとても手ごたえを感じていましたよね。

橋本:ウィリアム・フィッツシモンズは、あの売り場の始まりを飾ったし、フリーペーパーでも彼とマイケル・ゲイトリーとかを並べたりする感じに凄く共感できたし。あえて今回は『Goodnight』の方から取ったというのが僕のこだわりというか、『The Sparrow And The Crow』は絶対にアルバムを通して聴いて欲しいと思って。もう何人に勧めたか分からないし、僕の周りの人間はみんな持ってて(笑)。

山本:彼は僕らの好きなテイストを包括していましたね。アル・クーパーとかニック・ドレイクが好きな人には絶対にぐっと来る要素があって。キングス・オブ・コンヴィニエンスとかホセ・ゴンザレスとか好きな人にもおすすめできますよ。

橋本:凄くストーリー性もあるしね。ラヴ・ソングの歌詞のメンタリティーがアル・クーパーやマイケル・ゲイトリー系だよね。この曲は淡々とした中に感情が深まってくるっていう決定的な一曲だと思うね。

稲葉:実はこの曲7分以上あるんですよ。そう感じさせないっていうか身をまかせちゃうと時間の感覚がなくなるような感じなんですよね。そして淡々とした中に感極まる感じが最後あって。

橋本:アーサー・ラッセルの「Love Comes Back」なんかの、凄くチープなリズム・ボックスだけど、めちゃくちゃ切なくて沁みる感じに近いものがあるよね。

稲葉:確かにこのリズム・ボックスの感じはそうですよね。アーサー・ラッセルほど孤独っていうのを体現したミュージシャンもいないですよね。音楽から孤独が匂ってくるっていうか。そしてブラック・アトランティックですね。

橋本:この後半は自分的にはたまらなくメランコリックな世界なんですけど。ニック・ドレイク好きには、きっと伝わるはず。

稲葉:この曲は気付いたら凄い残っているっていう一曲ですよね。

素晴らしきメランコリーの世界
〜ピアノ&クラシカル アンビエンス
「心の調律師のような音楽」をキーワードに、あらゆるジャンル/年代を越えてグッド・ミュージックを愛し、必要とする人々によって起こった2010年の静かなるムーヴメントの最後を飾る、橋本徹(サバービア)選曲・監修の究極のメランコリック・コレクション!
profile

橋本徹 (SUBURBIA)

編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷・公園通りの「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・グラン・クリュ」「アプレミディ・セレソン」店主。『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは200枚を越える。NTTドコモ/au/ソフトバンクで携帯サイト「Apres-midi Mobile」、USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」を監修・制作。著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。

http://www.apres-midi.biz