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橋本徹の『素晴らしきメランコリーの世界』対談 【3】

2010年11月22日 (月)

interview

橋本徹の『素晴らしきメランコリーの世界』対談

河野:これって多分、全くアーティストとか曲目を知らない方でも、例えばうちの親父とかでもすっと聞けちゃうと思うんですよ。ラムチョップっていう比較的マイナーで旧譜であるにも関わらず、なんであのコーナーで展開したかというと、前に帰省したときにうちの親父にラムチョップを聞かせたら、普段演歌しか聴かないような親父が「何だこれ、凄くいいな」って反応したんですよ。それが凄く印象的で。それこそ本当の音楽の力だなって。静かな音楽の力強さがそこにはあるのかなって。

橋本:まったくうちの母親がそうで、まったく音楽なんて詳しくもないのに『素晴らしきメランコリーのアルゼンチン』をずっと聴いているんですよ。

河野:やっぱりそこに届くっていうのは凄く嬉しいですよね。

山本:それに『素晴らしきメランコリーの世界』はフリー・ソウルと通じる部分がありますよね。ジャンルを越えてテイストに共感するという意味で。フリー・ソウルもヒップホップ好きな人、ネオアコ好きな人、AOR好きな人、ブラジル音楽好きな人たちが、自由なスタンスで共鳴しましたよね。

橋本:確かに今回のコンピは、クラシカルなものが好きな人も、ジャズが好きな人も、インディーの内省的なシンガー・ソングライターが好きな人も、ワールド・ミュージックのリスナーの人も何か感じられるものがあるんじゃないかと思っています。

稲葉:橋本さんは一貫してこういう聞き方を提唱されてますね。

河野:結局は、僕らが「すばメラ」コーナーでやっていたことは、サバービアの影響を受けていたんですよ。

稲葉:そこからまた橋本さんや鈴木惣一朗さんが何かを感じ取って行くっていう。世代が巡ってますよね。

橋本:でも本当に共通して好きになった音楽があるじゃない? ミナスの音楽が好きだったらカボ・ヴェルデの音楽のたおやかさは絶対に好きでしょう? みたいな。セバスチャン・マッキもパット・メセニー&ライル・メイズもジョー・クラウゼルも好きでしょう? みたいな。そういうなかなか形にしづらかったものが、あのコーナーで同列に扱われていたことが皆を勇気づけたのは絶対にあると思う。

山本:既成の情報に流されず本能的に耳で聴いて感じることですよね。

稲葉:カルロス・アギーレの今年の盛り上がりも、本当に小さなところから始まりましたよね。アギーレが何者かも知られてなくて。そこから1年間で日本でこれだけ有名になったのは、リスナーが自分の感性に響くものを正直に受け入れたからこそですよ。

山本:素直に反応したんでしょうね。特別な情報があるわけでもないから。

稲葉:10月のスパイラルホールでのカルロス・アギーレ公演の客層は、いわゆるワールドミュージックのコアなファンではなく、本当に幅広かったですね。

河野:本当に「届いているな」っていうのが実感できるようなオーディエンスでした。

稲葉:そうなんです。で、あのオーディエンスは今回のコンピレイションを聞いて欲しい人々へと繋がっていきますね。

全員:まさしくそうですね。

稲葉:だとすると、この流れを絶やしたくないなぁ、という想いが凄く強いんです。

橋本:確かに、静かにじわじわと浸透していくっていうのが、今回の状況には合ってると思うね。

稲葉:こういう時代だと、皆が結果をすぐ求めがちで、じわじわと浸透していく方がいいとは思っていてもなかなかトライしづらい。でも僕らはそんなに大規模ではないにしろ、幸運にもそれがやれる環境にいるのはとても貴重だなと。

河野:本来あるべき姿に原点回帰している感じですよね。

素晴らしきメランコリーの世界
〜ピアノ&クラシカル アンビエンス
「心の調律師のような音楽」をキーワードに、あらゆるジャンル/年代を越えてグッド・ミュージックを愛し、必要とする人々によって起こった2010年の静かなるムーヴメントの最後を飾る、橋本徹(サバービア)選曲・監修の究極のメランコリック・コレクション!
profile

橋本徹 (SUBURBIA)

編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷・公園通りの「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・グラン・クリュ」「アプレミディ・セレソン」店主。『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは200枚を越える。NTTドコモ/au/ソフトバンクで携帯サイト「Apres-midi Mobile」、USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」を監修・制作。著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。

http://www.apres-midi.biz