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2010年9月30日 (木)

ドイツ銀行 ベルリン・フィル
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 ベルリン・フィル関係ニュース

ラトル指揮テレサ・カレーニョ・ユース管の演奏会がデジタル・コンサートホールで無料配信!
 ベネズエラの青少年音楽教育機関エル・システマに所属するテレサ・カレーニョ・ユース管が、10月4日、ベルリン・フィルハーモニーに客演します。このコンサートが、デジタル・コンサートホールで無料生中継されることになりました。指揮は前半のベートーヴェン「交響曲第5番《運命》」をエル・システマで育った若手クリスティアン・バスケス、後半のプロコフィエフ「交響曲第5番」をサー・サイモン・ラトルが担当します。
 エル・システマは、政情不安と経済的困難にあるベネズエラにおいて、子供たちに音楽の喜びを教えるために設立された教育機関です。すでに30年にわたる歴史を持ちますが、近年は出身者であるグスターボ・ドゥダメルとシモン・ボリバル・ユース管の成功により国際的に脚光を浴びるようになりました。ラトルとベルリン・フィルは彼らの活動を支援し、すでに数回にわたってシモン・ボリバル・ユース管をベルリンに招聘しています。今回は、同オケとならんでエル・システマのトップ・オケに数えられるテレサ・カレーニョ・ユース管が初めて客演することになります(詳細は下記「次回のデジタル・コンサートホール演奏会」の項参照)。


ソニー〈ブラビア〉でデジタル・コンサートホールを観よう!
 8月4日より、ソニーの液晶テレビ〈ブラビア〉で、デジタル・コンサートホールを観ることができるようになりました。これはテレビのメニューにデジタル・コンサートホールがプレインストールされたもので、リモコンを操作するだけでデジタル・コンサートホールの映像が手軽にご覧いただけます。しかもメニューやプログラムの表示は、すべて日本語。これまでに以上に気軽にベルリン・フィルの演奏が視聴できる画期的なサービスとなっています。
 現在のところ、アップロード可能なのはアーカイブの映像のみ。料金はデジタル・コンサートホールと同じで、すでに12ヵ月券や30日券をお求めの方には、追加料金はかかりません。詳細は、ソニーのサイトをご覧ください。


ベルリン・フィル、フランクフルト「アウフタクト2010」に客演
 フランクフルト・アルテオーパーでは、毎年9月のシーズン・オープニングを「アウフタクト」(「開幕」という意味のフェスティヴァル)として開催しています。
 今年はオーストリアの作曲家ベアート・フラーとピアニスト・指揮者のクリスティアン・ツァハリアスがメイン・アーティスト。この枠組みのなか、ベルリン・フィルは9月25日にラトルと共に客演しました。プログラムはベートーヴェンの「交響曲第4番」とマーラーの「交響曲第1番《巨人》」。その演奏は「溢れ出すパワー(『フランクフルター・ノイエ・プレッセ』紙)」と評されています。


ブーレーズ、アントニーニ指揮の定期演奏会がアーカイヴにアップ
 ベルリン・ムジークフェスト2010のハイライトとなったブーレーズの演奏会がデジタル・コンサートホールのアーカイヴにアップされました。ライブ・エレクトロニクスを伴う《…爆発−固定…》(エマニュエル・パユの独奏)は、1971年、ストラヴィンスキーの死去を受けて作曲された作品です。今回は1990年代の改訂版により演奏されています。また後半のストラヴィンスキー《ナイチンゲール》では、バーバラ・ハニガンの超絶的ハイ・ソプラノに驚嘆。ブーレーズ特有の精緻で透明な響きに、聴き手は深く魅了されることでしょう。
 一方アントニーニのバロック&古典派プロは、ベルリン・フィルの古楽演奏の最前線を伝えるものとなっています。近年はイル・ジャルディーノ・アルモニコだけでなく、外部の(シンフォニー・)オーケストラにも客演している彼ですが、ベルリン・フィルとの関係は2004年以来、大変良好。3回目となる今回の演奏会では、颯爽とした持ち味がベルリン・フィルのモダンなタッチと絶妙にマッチしています。プログラムはベートーヴェンの「交響曲第2番」と、バッハ父子の管弦楽作品です。

ブーレーズ自作自演&ストラヴィンスキー《ナイチンゲール》の演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く
アントニーニ指揮ベートーヴェン「第2」&バッハ父子の演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く

 次回のデジタル・コンサートホール演奏会

コジェナー主演のマルティヌー《ジュリエッタ》抜粋。指揮は急逝したマッケラスの代役でベルリン・フィル・デビューを飾るネトピル
(日本時間10月3日早朝3時)

 チェコ音楽がテーマとなる当演奏会は、本来サー・チャールズ・マッケラスの指揮で予定されていました。しかし彼が今年の7月14日に亡くなったことを受けて、トマーシュ・ネトピルが登場することになりました(ベルリン・フィル・デビュー)。ネトピルは現在ヨーロッパで注目を集めている若手指揮者で、すでにザルツブルク音楽祭やドレスデン・シュターツカペレに出演しています。
 今回の演奏会で目玉となるのは、チェコのメゾソプラノ、マグダレーナ・コジェナーでしょう。彼女はマルティヌーの1939年に作曲されたオペラ《ジュリエッタ》からの3つの交響的断章で主役を歌う予定です。この作品は、長い間忘れられていましたが、近年リバイバルを経験し、頻繫に演奏されています。コジェナーはすでに交響的断章をプラハで歌っており、そのライヴ録音はこの10月、ドイツのレコード賞「エコー・クラシック」で「世界初録音賞」を受賞することになっています。
 このコンサートの特色は、チェコ音楽の様々な側面がお聴きいただけることでしょう。マルティヌーでは、フランス印象派と20世紀前半のモダニズムが混ざり合い、後半のドヴォルザーク「交響曲第7番」ではスラヴ的語法が聴かれます。しかしその音調は、チェコ音楽のノスタルジックなスタイルにとどまるものではなく、ドヴォルザークの内面を開示する、暗く厳しい表情を示すものです。

【演奏曲目】
マルティヌー:歌劇《ジュリエッタ》からの交響的断章
ドヴォルザーク:交響曲第7番

ジュリエッタ:マグダレーナ・コジェナー(メゾソプラノ)、ミヘル:スティーヴ・ダヴィスリム(テノール)、ミシェル・ラグランジュ(ソプラノ)、フレドリック・ゴンカルヴ(バスバリトン)、ルネ・シルラー(バス)、バーバラ・キント(ソプラノ)、イザベル・フォスキューラー(ソプラノ)、クリスティーナ・ザイフェルト(ソプラノ)、ベッティーナ・ピーク(アルト)

指揮:トマーシュ・ネトピル


放送日時:10月3日(日)午前3時(日本時間・生中継)

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テレサ・カレーニョ・ユース管の演奏会が無料中継。指揮はラトルとバスケス
(日本時間10月5日早朝3時)

 シモン・ボリバル・ユース管と並び、ベネズエラの青少年音楽教育機関エル・シルテマを代表するテレサ・カレーニョ・ユース管の演奏会が、デジタル・コンサートホールで無料中継されることになりました。指揮は、グスターボ・ドゥダメルに続き国際的キャリアをスタートしつつあるクリスティアン・バスケスと、サー・サイモン・ラトルが担当します。ベネズエラの若者たちの生き生きとした調子が感動的なエル・システマのコンサートですが、ぜひこの機会にご覧いただければと思います。
 映像は10月5日の日本時間午前3時に生中継された後、翌日6日の午前3時より24時間限定でオンディマンド再生できます。その後はアーカイヴから削除され、視聴できなくなりますので、ご注意ください
 クリスティアン・バスケスは、1984年生まれの26歳。9歳の時からエル・システマに参加し、ヴァイオリニストとしてシモン・ボルバル・ユース管のツアーに加わっていましたが、2001年より指揮の授業を受けるようになりました。2008年にシモン・ボリバル・ユース管を初めて振り、マーラー「交響曲第2番《復活》」で成功。2009年にはフランス放送フィル、2010年にはバンベルク響にデビューしています。

【演奏曲目】
ベートーヴェン:交響曲第5番
プロコフィエフ:交響曲第5番

指揮:サー・サイモン・ラトル(プロコフィエフ)
クリスティアン・バスケス(ベートーヴェン)


放送日時:10月5日(火)午前3時(日本時間・生中継)
アーカイヴ上でのオンディマンド再生:10月6日(水)午前3時より10月7日(木)午前3時まで(期間限定)


レーピンの意外なグバイドゥーリナ《オッフェルトリウム》。指揮はデビューのグルベルグ=イェンセン
(日本時間10月10日早朝3時)

 ヴァディム・レーピンが、2年ぶりにベルリン・フィルに帰還します。前回は2008年のヨーロッパ・コンサートでしたが、そこではラトル指揮でブルッフの「ヴァイオリン協奏曲第1番」を演奏しています。それに対し今回は、グバイドゥーリナというやや意外なプログラムでの登場。《オッフェルトリウム》は、1981年にギドン・クレーメルが西側で初演し、彼女の名を広く知らしめた記念碑的な作品です。ベルリン・フィルでは、クレーメル自身が2006年にラトルと演奏していますが、比較的短い期間に再び旧ソ連系ヴァイオリニストで上演されることになります。「オッフェルトリウム」とは、「捧げもの」という意味ですが、これはグバイドゥーリナが《音楽の捧げもの》(バッハ)の主題を用いて作曲したことからくるものです。
 当演奏会におけるもうひとつのニュースは、アイヴィン・グルベルグ=イェンセンのベルリン・フィル・デビューでしょう。グルベルグ=イェンセンは、1972年ノルウェー生まれ。ヨルマ・パヌラとレオポルト・ハーガーに師事し、すでにオスロ・フィル、パリ管、ロンドン・フィル、ベルリン・ドイツ響などを振っています。昨シーズンからは、大植英次の後任として、ハノーファー放送フィルの首席指揮者にも就任。このコンサートでは、昨年ラトルにより全曲が演奏されたシベリウスの交響曲から、第1番を取り上げます。

【演奏曲目】
グバイドゥーリナ:《オッフェルトリウム》
シベリウス:交響曲第1番

ヴァイオリン:ヴァディム・レーピン
指揮:アイヴィン・グルベルグ=イェンセン


放送日時:10月10日(火)午前3時(日本時間・生中継)

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 アーティスト・インタビュー

クリスティアン・ティーレマン(第2回)
「フォルテがひとつしか付いていないというのは、ラッキーなことなのです」」
聞き手:サラ・ウィリス(ベルリン・フィル/ホルン奏者)
(定期演奏会/2009年12月10〜12日)

ブラームス:オーケストラ伴奏付き合唱曲集
《哀悼の歌》
《運命の女神たちの歌》
《運命の歌》
シェーンベルク:交響詩《ペレアスとメリザンド》

合唱:ベルリン放送合唱団(合唱指揮:ロビン・グリットン)
指揮:クリスティアン・ティーレマン


 ティーレマンのインタビュー第2回(完結編)です。後半では、昨年12月に演奏されたシェーンベルクの《ペレアスとメリザンド》とブラームスの合唱曲がテーマとなっています。ティーレマンのリハーサルについての考えも大変興味深く思われますが、今回のポイントは何と言っても彼のユーモアに溢れた話しぶりでしょう。オーケストラ団員をまねた所作(10:49)や、少年時代の「武勇伝」は彼のノンシャランとしたキャラクターを伝えており、大変興味深く思われます。

サラ・ウィリス 「シェーンベルクの《ペレアスとメリザンド》は、ものすごく大編成の曲で、しかも常にフォルテの波が続きます。私は後に座っていて、音の洪水だと思っているのですが、指揮者にとってはコントロールするのが大変でしょうね」

クリスティアン・ティーレマン 「もしシェーンベルクに会う機会があったら、私は彼に“どうして5小節ごとにffを書いたんですか”と聞きたいと思っているのです。やたらにffと書かれても、ただうるさくなってしまうだけなので、どうしたらいいか困ってしまいます。おそらくシェーンベルクはまごまごとして答えるでしょう。“ええっとそれは、要するにエスプレシーヴォ、強い感情を込めて、ということですよ。”それならもう少し分かります。指揮者は前もって、どのクライマックスが本当のクライマックスなのか、理解していなければなりません。小さなクライマックスなのか、それとも大きなクライマックスなのか。指揮者は全体像を分析し、技術的にオーケストラと実現した上で、さらに音楽をしなければならないのです」

ウィリス 「それは難しいことですね」

ティーレマン 「バランスを見つけるのが難しい。例えば作品を分析的側面だけから見ると、構造やリズムばかりで、音楽でなくなってしまいます。その一方で“この作品は素晴らしい感情的側面を持っているから、表現に重きをおきましょう”などと言って始めると、お客さんがうるさくて耳をふさぐ、ということになってしまうのです。ちなみに指揮台というのは、すべてのディティールを聴くには、ベストの位置ではありません。そしてすべてのホールが異なった音響を持っています。空の状態とお客さんが入った状態でも、音の質が違ってくるのです。私は未知のオーケストラに客演するのが好きではないのですが、その理由のひとつがこれです。慣れたオーケストラ、慣れたホールでやれば、やりたいことが比較的短期間で実現できます。ところが知らないオーケストラ、知らないホールでやると、意思疎通がうまくいかない。特にリハーサル1日目というのは、困ったものなんです。後ろの方の奏者は退屈そうな顔をしていて、本当にちゃんと弾いているのかも分からない……」

ウィリス 「私たちは楽しそうな顔をしていますか(笑)」

ティーレマン 「してますよ。少なくとも昨日のリハーサルではいい顔をしていた(笑)」

ウィリス 「いえいえ、本当にエンジョイしてますよ(笑)。今回リハーサルで、ティーレマンさんは“皆さん、fがひとつしか付いていないところはラッキーですよ”と仰いましたね(笑)」

ティーレマン 「そうです。指揮者をしていると面白い場面に出くわすことがあります。例えば《マイスタージンガー》の前奏曲。朝、リハーサルが開始し、メンバーは機嫌も良く、曲はハ長調で明るく始まりますよね。だから皆がフォルテ以上の音で弾き始めます。しかし少し流して止めたときに私が最初に言うのは、“ここはfはひとつしか書いてありませんよ”ということなのです。団員の反応はいつも、“ふん、確かにそうだな”という感じです。でもこれは本当に守らなければならない。というのはその後で、音量をさらに上げてゆくことが不可能になるからです。というわけで、我々はひとつしかfが付いていないところでは、ラッキーだな、と思うべきなのです」

ウィリス 「オペラのオーケストラは、フォルティッシモで始めなくてすむ場合は、ありがたいと思っているでしょうね。ワーグナーなど、これから5時間も弾き続けなければならないのですから」

ティーレマン 「まったくその通りです。彼らは“音量を落として!”という指揮者がいればきっと喜ぶでしょう。《影のない女》、《神々のたそがれ》、《ジークフリート》といったオペラでは、本当にものすごく大きな音が出ます。だから私は、歌手たちがこの音に対抗していることに驚きを覚えるのです。彼らは声帯2本だけで勝負するのであり、もしオーケストラがうるさすぎたら、絶叫になってしまいます。それゆえ指揮者は良きカペルマイスターでなければなりません。このカペルマイスターという言葉は、英語でも“退屈で拍を振っているだけの指揮者”というニュアンスで使われますが、本来はそういう意味ではありません。歌手を先導するだけでなく、その能力に従って音量を調節したり、時には歌にぴたりと寄り添うべきなのです。それはオーケストラの場合でも同じでしょう。例えばオーボエが素晴らしいソロを吹いたら、私はそれに付けてゆく気持ちがあります。しかも本番で突然そうしたことが起こったときに、フレキシブルに対応していかなければならないのです」

ウィリス 「声帯、ということでは、今回の演奏会では100本くらいありますね。ブラームスの合唱曲集です。実は私、これらの作品を全然知りませんでした。ほとんど演奏されない曲ですね」

ティーレマン 「私がこれらの曲を最後に指揮したのは、10年以上前、ローマ聖チェチーリア合唱団との演奏会ででした。これらの他に、あと何曲かありますよね。《ドイツ・レクイエム》のような幽玄な美しさを秘めた作品群です。ベルリン放送合唱団は素晴らしく歌ってくれます。ピアノで歌った時に、響きが薄くならず、緊張感が保たれるのです。聴衆にとっては新しい発見となることでしょう」

ウィリス 「ベルリン放送合唱団と演奏会をするのは初めてですか」

ティーレマン 「そうです。最初から大変気が合って、とても満足しています。素晴らしい合唱団です」

ウィリス 「最後にちょっとティーレマンさんの“武勇伝”についてお聞きしたいと思います(笑)。第2ヴァイオリンのアクセル・ゲアハルトさんから聞いた話なのですが、彼はティーレマンさんの家の近くに住んでいらっしゃるんだそうですね。あなたは子供の頃、いつもピアノを窓を全開にして弾いていた。それでゲアハルトさんが文句を言うと、ティーレマンさんは“ゲアハルトさん、あなたが練習しているのは全然聴いたことないですよ”と言ったとか(笑)」

ティーレマン 「それは本当です(笑)。お隣さんには、たとえ大きな庭があっても、音は聞こえてしまうものですよね。時には聞いてほしくないことも聞こえてくる……。それはともかく、私が練習していた部屋には、大きな窓がありました。確かに彼が言うとおり、上の方が開くようになっていたのです。ただ、それを閉めて弾いたとしても、ガラスに反響して、実際の音以上に大きな音に聞こえてしまったのでした。自宅には素晴らしい古いベヒシュタインのグランドがありましたので、当然音は漏れてしまったのです。ですから問題に……」

ウィリス 「それで争いは解決したんですか」

ティーレマン 「しました。大丈夫です(苦笑)」

ウィリス 「もうひとつの話は、ヴィオラのヴォルフガング・ターリッツさんから聞いたものです。当時あなたは、彼と一緒にユンゲ・ドイッチェ・フィルで弾いていらっしゃった。メンバーのなかに手相を読める女の子がいて、ヴィオラのメンバーの手相を見たのですよね。覚えていますか」

ティーレマン 「ええっと……(少し記憶を巡らせながら)。覚えてますよ」

ウィリス 「ご自分で話しますか?」

ティーレマン 「いやいや、あなたが話して」

ウィリス 「それでその女の子が、結果を持ってヴィオラのメンバーのところに戻ってきた。ターリッツさんはものすごくインテリで、頭のいい人ですから、自分が一番いい手相だと固く信じていたのです。あなたは後ろの方で退屈そうに座っていたのですが、彼女は“一番頭がいいのはティーレマン。彼はきっと成功するでしょう”と言ったのです(笑)」

ティーレマン 「ああ、そうでしたね(苦笑)。でも私たちはとてもいい友人です。仲間と室内楽をやったり、あるいはお隣さんとも。もちろん時にはうるさかったり、つまらないパッセージを何回も練習したり、迷惑を掛けることもありましたけれどね(笑)」

ウィリス 「今週、私たちも何回も曲をさらいましたけれど、とても楽しかったですよ。今日はどうもありがとうございました」

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 ベルリン・フィル演奏会批評(現地新聞抜粋)

ビシュコフの《アルプス交響曲》は、「気持ちのいい登山紀行」? (2008年10月4日)

【演奏曲目】
グラナート:《テアトゥルム・ベスティアルム》
R・シュトラウス:《アルプス交響曲》

指揮:セミョン・ビシュコフ


 ベルリン・フィルに頻繫に客演するセミョン・ビシュコフが、ドイツ人作曲家グラナートの《テアトゥルム・ベスティアルム》とR・シュトラウスの《アルプス交響曲》を演奏したコンサートです。数年前からシュトラウスのスペシャリストとして定評を得ているビシュコフですが、ここでは粘りのあるフレージングで、アルプスの広大な風景を描ききっています。
 批評で面白いのは、『モルゲンポスト』紙と『ベルリナー・ツァイトゥング』紙で、意見が完全に対立していること。『モルゲンポスト』紙が「ビシュコフの熱い指揮ぶりに比べ、音楽は意外と明晰」と評しているのに対し、『ベルリナー・ツァイトゥング』紙は「演奏はやや荒く、そそくさと終わってしまった」と片付けています。ハイライト映像に観るベルリン・フィルの演奏はなかなかゴージャスと思われますが……。

「リヒャルト・シュトラウスが1915年に作曲した《アルプス交響曲》は、グラナートの作品に比べるとずっとモダンに聴こえた。ビシュコフはここで、ベルリン・フィルを延々と続くエスプレッシーヴォの身振りで指揮した。彼は大股を広げてオーケストラの前に立ち、灰色の混じった巻き毛を情熱的に揺らしまくった。その汗はオーケストラ団員に降りかかる、といった風情。しかしそうしたオーバーアクションから生まれてくる音は意外にも明晰で、キッチュとは無縁の登山紀行であった。輝かしい弦は、むしろ涼しげな山の空気に包まれている。演奏が終わると、聴衆は拍手をするのもはばかられるといった面持ちで、黙りこくった。おそらくベルリン・フィルのすさまじい演奏能力に畏敬の念を感じたのだろう。ビシュコフは喝采に包まれてやっと我に返った、という面持ちであった(2008年10月5日付け『ベルリナー・モルゲンポスト』)」

「この作品は、グラナートのオペラ《カリギュラ》の習作である。これは残虐なローマ皇帝の物語だが、リヒャルト・シュトラウスの《アルプス交響曲》は、そうしたものものしいテーマとは無関係である。グラナートの作品が“人間の悪の本性”を小難しく扱っているのに対し、シュトラウスは滝や山々の大パノラマを霹靂してみせる。この山登りの旅は、例えばニーチェの本をリュックサックに入れて、哲学的に体験することもできるだろう。作品は《ツァラトゥストラはこう語った》と似た響きを持っているからだ。しかし、必ずしもそんな楽しみ方をしなくてもいい。聴衆に自由な聴き方を許すこうした側面は、グラナートの厳めしいメッセージ性に比べるとモダンでエレガントな印象を与えた。もっともビシュコフの指揮はエレガントさとは無縁で、山登りはたったの45分ですぐに終わってしまう。ベルリン・フィルの演奏は必ずしも明晰ではなく、対位法の強調は、むしろ声部の対立を招いていた。ビシュコフは部分を強調しすぎて、フィナーレの滔々たる歌に説得力を与えることができなかったのである。結果的に下山の道は、長く感じられた(2008年10月4日付け『ベルリナー・ツァイトゥング』紙/ペーター・ユーリング)」

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 ドイツ発最新音楽ニュース

バルトリがザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭の芸術監督に
 チェチーリア・バルトリが、2012年よりザルツブルク精霊降臨祭音楽祭の芸術監督に就任することになった。これは現在芸術監督を務めるリッカルド・ムーティの後任に当たるが、招聘は同年よりザルツブルク音楽祭の総監督となるアレクサンダー・ペレイラ(現チューリヒ歌劇場インテンダント)の働きかけによると言われる。聖霊降臨祭音楽祭は4日間開催のミニ・フェスティヴァルで、例年初夏に開催。バルトリは、バロックとベルカント・オペラに重点を置きたいと語っている。なお、今後精霊降臨祭音楽祭で上演されるオペラは、夏の音楽祭でも取り上げられるという。バルトリ自身がどの程度歌うことになるかは、現在のところ未定(写真:ベルリン国立歌劇場でドンナ・エルヴィーラを歌うバルトリ©Monika Rittershaus)。


ドミンゴがロサンゼルス・オペラとの契約を延長
 プラシド・ドミンゴが、ロサンゼルス・オペラでの監督契約を2013年まで更新した。もっとも現地では、歌手・指揮者として国際的に活躍するドミンゴが、ロサンゼルスの契約を遂行できるか疑問視されていたという。ちなみに彼は、ワシントン・オペラでも同様のポストを所持している。『ロサンゼルス・タイム』紙によると、ドミンゴは同劇場でプログラムと歌手の契約に関わっているという。


バス歌手ラズロ・ポルガールが死去
 ハンガリーのバス歌手ラズロ・ポルガールが、9月18日に急死した。享年64歳。ポルガールは、20年近くにわたりチューリヒ歌劇場のアンサンブルに所属し、アーノンクール等のプロダクションで活躍。モーツァルトからワーグナー、バルトークに至る初役で成功を収めている。なお家族は、死因を発表していないという。

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