LOUDインタビュー: DJ KAWASAKI

2011年8月27日 (土)

interview

DJ KAWASAKI

DJとして実に10年以上のキャリアを持ち、ハウス / クロスオーバーのみならず、様々な音楽へ造詣が深く、自由度の高いプレイでクラウドを魅了している、DJ KAWASAKI。'05年に、King Street Soundsより発表したファースト・シングル「Blazin'」は、ティミー・レジスフォードからもサポートされ、ワールドワイドな注目を集めた。その後は、ファースト・アルバム『Beautiful』、コレクション・アルバム『Beautiful Too』、セカンド・アルバム『You Can Make It』を軒並みヒットさせている。
そんなDJ KAWASAKIが、約3年ぶりとなるサード・オリジナル・アルバム、『PARADISE』を完成させた。彼の真骨頂である、ロマンティックなメロディーを持ったディープ・ハウスと、彼のルーツである、デトロイト・テクノを融合させるという、前代未聞のテーマに挑んだという本作。その内容は、グルーヴィーかつソウルフルながらも、ソリッドでコズミックかつエレクトロニックなサウンドも共存した、オリジナリティーあふれるものとなっている。また、DJ KAWASAKIの楽曲ではおなじみのタシータ・ドムールや、シカゴ発の実力派シンガー、アンドレア・ラブ、いまやポップス・シーンでも大活躍中のフィメール・ヒップホップMC、COMA-CHIが参加している点も注目だ。
現在のポジションに甘んずることなく、あくなき探求をし続ける気鋭クリエイター、DJ KAWASAKI。彼が新作に描いたイメージを探るべく、本人にロング・インタビューを行った。

あえて足かせをかけることで、新たに生まれるものもあったし、音楽をつくる楽しさを再確認できました。


--- これまで二作のオリジナル・アルバムを通じて、KAWASAKIさんの音楽が持つオリジナリティーが、どんどん積み上がってきたように思えます。そうやって培ってきたものを踏まえ、新作『PARADISE』では、どんなアルバムを目指したのでしょうか?

DJ KAWASAKI: 三作目で意識したことは、具体的に言うとアプローチの仕方です。前作から約三年経ちますし、その間にクラブ・シーンも大きく変化したと思うんですよ。そういった意味で、自分のスタイルを維持しつつも、新しいアプローチ、新しい音楽をつくろうと考えましたね。

--- その結果、今作で掲げたテーマが、デトロイト・ミュージックとロマンティックなハウス・ミュージックの融合だったわけですね。

DJ KAWASAKI: はい。僕はもともとデトロイト・ミュージックが好きで、一作目、二作目のアルバムにも、その要素をコッソリ入れていたんですよ(笑)。でもそれを今回初めて、一枚のアルバムを通して全体のテーマにしようと思ったんです。

--- KAWASAKIさんのバックグラウンドにある、デトロイト・ミュージックとは、具体的にどんなものなのでしょうか?

DJ KAWASAKI: もともとは、ソウルやディスコ、ジャズ / フュージョンを入り口にDJを始めたんですけど、デトロイトの音楽に興味を持ったきっかけは、セオ・パリッシュやムーディーマン、グレン・アンダーグラウンド、URの音楽に触れたことでした。セオ・パリッシュを例に挙げると、彼は古い音源をアレンジ / エディットして、新しいもののように聴かせているじゃないですか。そういう編集能力に、僕はものすごく今っぽさを感じたんです。僕が思う“デトロイトっぽさ”というのは、そういう部分にもあって、僕が思うテクノの要素は、単に音色だけでなく、そういったエディットの仕方だったりするんです。

--- なるほど。例えば、デトロイト・テクノと言った時に、多くの人がイメージするサウンドってあるじゃないですか。でも、デトロイト・ミュージックの本質は、鳴っている音の質感だけで括れるものでは無いような気がするんですよ。フィーリングやアプローチ、手法まで含めて、デトロイトの音楽が体で語っているものがあるなぁと。KAWASAKIさんが新作でチャレンジしたこととは、そういった本質に迫ることなんだなと感じました。

DJ KAWASAKI: ダニー・クリヴィットやティミー・レジスフォードが、僕の曲をDJでプレイしてくれたのも、もちろん大きな出来事だったんですが、実はDJ 3000やピラーナヘッドもプレイしてくれたりと、テクノ・シーンにも、僕の音源を評価してくれる人がいたんですよね。そういったことも、テクノ寄りのアプローチに挑戦するきっかけになりました。

--- それは彼らが、KAWASAKIさんの音楽に、本質的な部分で共感をしたからなんでしょうね。

DJ KAWASAKI: DJ 3000には、“KAWASAKIの音楽には、ソウルがある。熱いもの、エナジーを感じた”と言われました。すごく嬉しかったですね。僕はデトロイト音楽のそういうところに、魅力を感じているので。

--- 今作では、これまでにない新しいことに挑戦するということで、相当腹をくくったという気持ちもありましたか?

DJ KAWASAKI: もちろん、そうですね。三作目っていうのもありますし、自分のスタイルで新しいことをやるっていう、クリエイターとして進化していくことは絶対必要だと思ったんです。良い意味で、リスナーの期待を裏切るという意気込みもありました。

--- そのために、トライしたことは何かありますか?

DJ KAWASAKI: 共同プロデューサーの沖野修也さんが、デモを制作する際に、お題をくれたんですよ。“ピアノとストリングスは一切使わないで、デモをつくるように”と。最終的には、ピアノとストリングスを入れた曲もありますけど、あくまでサブ的な位置付けで、両楽器の音を用いています。デモ段階では、一切使っていないですね。

--- それは、驚きのお題ですね。

DJ KAWASAKI: でも、僕は“あぁ、なるほどな”って思いました。一作目、二作目は、ピアノやストリングスをフックにした曲がたくさんあったので、それをデモに入れないということは、必然的にシンセを多用することになるんです。あえて足かせをかけることで、新たに生まれるものもあったし、音楽をつくる楽しさを再確認できたので、すごく面白かったですね。そのおかげで実験的に制作して生まれた曲が、「Journey」だったりするんです。この曲は、“まるでピンク・フロイドじゃない?”って言われましたけど(笑)。

--- あえて手を封じることによって、アイディアやビジョンが広がったんですね。

DJ KAWASAKI: はい。やっぱり、頭で考えてつくるのではなく、感覚的で実験的な音楽ってたくさんあると思うんですよ。それこそが、DJがつくる音楽なんだなと感じました。

--- エレクトリックなサウンド・プロダクションにおいて、特に磨き上げた部分はありますか?

DJ KAWASAKI: セカンド・アルバムから今作までの三年間で、いろいろな音楽を消化してきましたし、時代もエレクトロやテクノ寄りに変化をしてきたので、そういった部分も参考にしましたね。ループ感やコード感、音色などに、それが色濃く表れていると思います。

--- アルバム・リリース前から、『PARADISE』の収録曲をDJでプレイしていたそうですが、反響はいかがでしたか?

DJ KAWASAKI: 初めて聴いた時に、まさか僕の曲とは思わなかった人も多かったみたいですね。「Galactic Love」に関しては、“これ、誰の曲ですか?”って聞かれることもありました(笑)。「Journey」も、DJ KAWASAKIの曲には思えないかもしれませんけど、ラスマス・フェイバーは、あの曲を一番気に入ってくれたんですよ。このアルバムでは、随分新しい挑戦をしているんですが、分かってくれる人は分かってくれるんだな、と実感しましたね。

--- ハウスって、今や多くの人が知っている音楽じゃないですか。その中には、世に出てはすぐ消えていく、消費されてしまう楽曲もあるかもしれませんが、『PARADISE』には、そうではない、リスナーの記憶に残る楽曲が詰まっているなと思いました。

DJ KAWASAKI: ありがとうございます。このアルバムには、手を抜いた曲は一切入れたくなかったんです。全曲12インチで出してもいいぐらいのクオリティーを目指しました。そういう意味では、一生残るアルバムになったら最高ですね。



新譜PARADISE / DJ KAWASAKI
ロマンティック+テック(テクノ)=ロマンテック(Roman Tech)をコンセプトにデトロイトテクノやテックハウスなどのエレクトリックな要素を取り入れた約3年ぶりとなる3rdアルバム。クラブ・シーンで絶大な人気を誇る日本人MC・COMA-CHIを起用した初の日本語詞ボーカル・トラックも収録するなど様々な挑戦が見事に結実した力作が完成!
profile

DJ/プロデューサー。2005年に、NYのDJ、Timmy Resisfordが当時デモ・ヴァージョンであった「BLAZIN’」を一晩に3回もかけた事から脚光を浴びる。同年、King Streetより12インチ・シングルで世界デビュー。国内ではKyoto Jazz Massiveの沖野修也プロデュースの元、コロムビアより2006年元旦メジャー・デビュー。ブレイク直前のモデル藤井リナをカバー・アートに起用し、一躍、ジャパニーズ・ハウス・ムーブメ ントの立役者となる。

リミキサー/プロデューサーとしても、Kyoto Jazz Massive、吉澤はじめ 、Ananda Project、STUDIO APARTMENT、TOWA TEI、Gordon Chambersのリミックス、Herbie Hancock「処女航海」のカバー等、"カワサキ・ビート"と呼ばれる独特のリズムで次々と作品を手がけている。更に、サウンド・プロデュースを担当した楽曲、沖野修也の「SHINE」は、ヨーロッパで大きな成功を収めているレーベル、Defectedからリリースされている。

この4年間で、オリジナル、REMIX、コンピレーションへの楽曲ライセンスを含めると関連作品の総セールスは30万枚を越え、新世代ハウス・シーンを牽引する存在となる。最近では、DJ 3000、DJ GIGOLOといったテクノ/エレクトロ系のDJにもプレイされる等、カッティング・エッジな音楽シーンからも熱い注目を集めている。

現在、JJazz.Net SUNTORY"WHISKY MODE"、渋谷FM"The Room Radio"にてナビゲーターも務めている。

2010年9/1、待望の3rdアルバム『PARADISE』(EMI Music Japan)をリリース。

<myspace プロフィールより>

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