HMVインタビュー:DJ KOMORI

2010年7月12日 (月)

interview

DJ KOMORI

DJ KOMORI インタビュー
聞き手 西崎信太郎 (HMV渋谷)

基本的にあらゆる面でぶれてはいないと思いますね。活動の幅だったり、DJブースから見える景色の違いだったりとかはドンドン変わっていますけど、ゴールとして目指す部分は、現在の延長線上かなって思います。

--- 『What's R&B? 2010』のリリースおめでとうございます!まず『What's R&B?』のコンセプトを教えていただいて宜しいでしょうか?

『What's R&B?』は今回で2作目になるんですが、前作同様に日本人のR&Bオンリーで構成されたMix CDです。タイトルにもあるように、このシリーズはR&BらしいR&Bにこだわってやっているのが一番大きな点ですね。R&BってHipHopやReggaeとかHouseに比べると、ちょっと輪郭が見えにくいっていうか。本場のアメリカではR&Bっていうジャンルは皆が肌で感じて分かっている部分だと思うんですけど、日本ではまだその辺りの部分があいまいというか分かりにくいというか。これが「カッコいいR&Bですよ」っていう僕からの提案という意味合いも込めて、日本人のアーティストの曲を通して伝えられれば良いなという思いでやっているシリーズです。

--- 今は音楽ジャンルがクロスオーバーして、R&Bというジャンルも様々なスタイルが存在しますが、KOMORIさん視点の「カッコいいR&B」に拘るのがカッコいいですね!

POP要素が強かろうが全て音楽なんで、ジャンルの部分があいまいだからよくないとか、っていう事は全く思っていないです。ただ、今回の作品のメッセージとしては、こういうのが僕から皆さんに提供できるカッコいいR&Bですよ、っていうことですね。

--- KOMORIさんとJ-R&Bの出会いは ?

一番最初に聴いたのは・・・やっぱり久保田利伸さんでしたね。久保田さんの80年代の曲を聴き返すと、当時で言う「ブラックコンテンポラリー」の香りがするので、今聴いてもカッコいいですよね。当時は小学生だったのでR&Bって意識して聴いていたわけではないですが、一番最初の出会いと言えばやっぱり久保田利伸さんですね。

--- 以前、久保田さんとKOMORIさんは同じイベントに出演されていましたもんね!なるほど。前作の『What's R&B?』から約1年半経ってのリリースですが、この1年半を振り返ってみてKOMORIさんの視点で見るJ-R&Bシーンの変化は何かありましたか?

今回の収録曲は新しい楽曲が多くて、全体の7割くらいがこの1年半の間にリリースされた楽曲だと思います。最初から新しい楽曲だけを収録しようと思っていた気持ちも勿論あったのですが、個人的に今回のMix CDに入れたい曲が新しい楽曲が多かったので、純粋に最近の楽曲はカッコいい曲が多いなっていうのが正直な気持ちです。

--- 収録されているアーティストのバランスが凄く良いですよね。

この作品はコンピレーションではないので、DJ目線の選曲は聴きどころの一つですね。既に大ヒットしている曲もあるし、ベテランアーティストの最新アルバムの1曲だったり、これからくるアーティストの楽曲だったり、っていうバランスは良いと思います。

--- 1曲目の「Blue Magic」は、KOMORIさんプロデュースの新曲ということでフューチャリングに日之内エミ迎えていますが、日之内さんをフューチャリングに選んだ理由は?

曲のイメージは最初から僕の中で出来ていて、そのイメージにあったアーティストとして日之内さんにオファーを出させていただきました。元々パフォーマンスや歌が好きだったのも大きな理由ですね。

--- 「Blue Magic」の制作秘話などありますか?

そうですねー、夏の曲をやりましょうっていう話があって、曲を作り始めたのは1月とか2月頃だったんですよ。寒い時期だったので、夏を想像しながら作ったっていう感じでしたね(笑)。

--- 「Blue Magic」のジャケットのイメージもかなり夏っぽいイメージですよね!今回の『What’s R&B ? 2010』も夏をイメージして制作されたのですか?

「Blue Magic」に関していえば、もう夏をイメージして作った感じですけど、Mix CDの中身自体は夏に限定しているわけではないですね。

---なるほど。今回の収録曲の中でKOMORIさん的に思い入れが強い曲ってどの曲ですか?

今回の作品の中には、自分がプロデュースした曲やRemixを手がけた曲が6曲入っていて、それらの曲はそれぞれに思い入れは強いですね。あとはSoweluの「Get Ready」は昔からクラブなどでも結構プレーしていて好きですね。

--- 今、KOMORIさんが注目している日本人プロデューサーっていらっしゃいますか?

僕が今一緒にやっているUTAっていうTiny Voice(註:プロデューサーの今井了介率いるプロダクション・チーム)のプロデューサーがいるんですけど、今回収録されている楽曲もUTA絡みの楽曲が10曲くらい収録されています。その中には僕と共同で作っている曲もありますし、UTAだけで作っている曲もあります。っていうのも、一緒に仕事をしているから選びましたっていう訳ではなくて、純粋にUTAが作っている曲が好きっていうだけで、セレクトした結果このようなラインナップになったっていうだけですね。今日本で一番好きなプロデューサーですね。あとは、昔から活躍されているGiant Swingさんや今井了介さん達が作った楽曲は、僕らが日本人のアーティストにハマるきっかけとなった曲を作った方達ですし。他にもManaboonとかSTYとか、U-Key zone君やNao’ymtさんもカッコいいですね。

--- -今、名前を挙げていただいた方達が作られた楽曲がJ-R&Bシーンの基盤になっていますよね。今回の『What’s R&B ? 2010』も大体の楽曲に今の方達が絡んでいますもんね!

そうですね、僕の中ではプロデューサーを見て曲を選んだ訳ではなくて、やっぱり自分がパッと曲を聴いてカッコいいなって思う曲が彼らの曲だったっていうだけの話で。やっぱり皆さん海外モノの音楽は好きだし、新譜の音はチェックしていますし。でも、日本人のR&Bでそれを表現するにはどうしよう、っていう部分をそれぞれの表現方法やスタイルで考えて形にされていると思います。

---ブラックミュージック自体、日本で生まれた文化では無いという点を踏まえると、本場への憧れの気持ちがあったり、日本のR&Bを過小評価してしまったりする部分がまだあったり。KOMORIさん視点で捉える、現在の洋楽R&Bシーンと邦楽R&Bシーンの大きな違いは?

そうですね、単純に数で言ったら、海外アーティスト自体の数や楽曲数は本場の方が全然 多いですけど、平均点をどこで出さなきゃいけないっていう訳ではないので。なので、レベルっていう話だとちょっと難しい話になってしまいますね。 例えばブラックミュージックをひっくるめて見ると、一番違うのって才能とかではなくて、やっぱり数が違うのかなって思うのが正直な感想ですね。カッコいいアーティストの数だったりとか、ヒットするアーティストの数、リリースされる曲の数。極端な話、ヒットしない曲も海外の方が全然多いと思いますし。そういう意味では、海外でいうBeyonceやUsherとかと同じくらい、日本の曲でカッコいいって思う曲はありますし。ただ絶対数が違うっていうだけで、レベルを比べるのは難しいですけど、好きな度合いや自分の中でグッとくるレベルが違うかっていうと、そんなことは全くないですね!

--- KOMORIさんは洋楽のMix CDも数え切れないほどリリースされていますが、洋楽のMix CDと邦楽のMix CDでは、制作の際に何か違いはありますか?

基本的には変わらないですね。細かいところでは、歌詞のメッセージの部分を聴きやすいように工夫したりですかね。そんなにガラッと変わったりはしないですね。

--- そうなんですね〜。では、スバリ、KOMORIさんにとってJ-R&Bとは?

元々黒人の音楽ですし、彼らが始めたことであるのは間違いないですし、それは歴史なのでずっと変わらないですよね。 Full Of HarmonyのMihiroさんがライブの時に言っていたんですけど、「黒人文化として始まったモノだけど、俺らの肌の色だったり、俺らの声でしか出来ないR&Bがある。 だからそれをやっていきたい」って言っていたのが凄く印象的で、自分でも本当にその通りだと思いました。 シーンで長く活動されているアーティストこそ、そういった気持ちは凄く強いですよね。 海外の音楽が好きだし、憧れているし、でもやっぱり俺たちにしか出来ないことっていうのがあって。でも、それが何なのかっていうのは、アーティスト一人一人で違うと思いますし、プロデューサーの中でも違うと思います。そこの答えは簡単に出るものじゃないかもしれないですけど、たぶん日本でR&Bをやっていきたいって思っている人たちは、そういったことを常に考えているんじゃないかなって思いますね。勿論HipHopの人たちやReggaeの人たちも。それはずっと課題のままなのかも知れないですけど、それを忘れてやることはないんじゃないですかね。ずっと追いかけるっていう意味ではないですし、逆にすぐに答えが出てしまう事の方がちょっと胡散臭いっていうか。それはこれからリスナーの反応も出ていく中で、色々と形になっていくものだと思いますので、ステップアップしていく僕らの音楽を、楽しみながら聴いていただければ良いかなって思います。

--- 現時点で思う、KOMORIさん的な日本の理想のシーン、形ってありますか?

今の延長線上にはあるなって思いますね。さっきの「日本のR&Bとか?」っていう大きな話も絡んでくると、パッとこうなりたいっていう姿を描き切れていない部分もあるんですけど、自分の今やってきていることの、この先にあるんだろうなっていう気はします。やりたいことっていうのがDJ始めた頃からそんなにぶれてはいないです。例えば、昔は入りがHipHopで、Houseとかを経て最近はエレクトロとかをクラブでかけていますけど、別にそういうのはリスナーの聴く音楽が変わってきただけの話なので。レコードを買い始めて、マンスリーのMix Tapeをリリースしていた頃と今と、比べれば良くはなっていると思いますけど、基本的にあらゆる面でぶれてはいないと思いますね。活動の幅だったり、DJブースから見える景色の違いだったりとかはドンドン変わっていますけど、ゴールとして目指す部分は、現在の延長線上かなって思います。なので、今回のような邦楽Mix CDも目標に向かうプロセスとしては絶対に外せない作品かなって思いますね。

--- 熱いお話ありがとうございました!最後にHMV Onlineを見ているリスナーの方へ一言お願いいたします!

今回『What’s R&B ?2010』のツアーがあるので、CDを聴いて是非遊びに来てください!



  DJ KOMORI オフィシャル・ブログ

新譜WHAT'S R & B? 2010
圧倒的人気を誇るDJ KOMORIによる邦楽R&BミックスCDの第2弾。今回も新鮮なゲストを迎え、ダンス・チューンや、キャッチーなフロア仕様トラックをミックス。 KOMORI自身の新曲「Blue Magic feat. 日之内エミ」も収録!