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第22回ミュージック・ペンクラブ音楽賞贈呈式

2010年4月13日 (火)


 


 1966年に発足したミュージック・ペンクラブ・ジャパン(旧名称・音楽執筆者協議会)が1987年以来、毎年発表している「年間音楽賞」。音楽の言論分野で活動するクラシック(吉田秀和、池辺晋一郎ほか)、ポピュラー(岩浪洋三、湯川れい子、鈴木道子ほか)、オーディオ(菅野沖彦、貝山知弘ほか)の3部門の会員、約200名の自主投票によって選出したものです。各分野の優れた業績に光をあて、音楽界の発展、活性化に役立てようと願っております。今回からは「ベスト・ニュー・アーティスト」を加えさせていただきました。

ミュージック・ペンクラブ・ジャパン 会長 青澤唯夫
> ミュージック・ペンクラブ・ジャパンHP





    音楽評論家・批評家たちが、各自の著述原稿にまつわる権利保護を目的とし、1966年に40名程のメンバーで発足しました。当初の名称は『音楽執筆者協議会』。設立時から、クラシック/ポピュラー/オーディオの会員たちが、分野を越えて参加し、交流をはかっています。音楽批評家やミュージック・ライターたちが作った日本唯一かつ全国規模の権益保護団体。言論をもって音楽文化の向上を目指すことを第一に、会員たちの著述物に附随する著作権攘護を目的に活動してきました。  近年では、当初に比べ、会全体として文化活動の比重も増すようになってきています。作曲家・文芸評論家・DJ・音楽学者・プロデューサー諸氏をはじめ、音楽関連の文筆執筆を兼務している人々が数多く名を連ねるようになり、会員内訳も多様化しています。1994年、ペンをもって音楽と係わる人材を集めた組織としての面に光を当て、従来からの『音楽執筆者協議会』の名称を改め、現在の『ミュージック・ペンクラブ・ジャパン』へとその名を変更しました。2010年現在、会員登録は約200名。

協力:ミュージック・ペンクラブ・ジャパン事務局長 越谷政義(Mike M. Koshitani)
> Mike's Rolling News of THE STONES
 
 


 2010年3月30日、池袋にある東京芸術劇場内にて行なわれた「第22回ミュージック・ペンクラブ音楽賞」の贈呈式。著名な音楽評論・批評家、さらには、音楽関連の文筆活動に携わる作曲家、文芸評論家、DJ、音楽学者、プロデューサー等々、音楽ファンであれば、誰もが一度はその名を目にし耳にしているであろう、名だたる音の文士が、年に一度、一堂に介するというこの「ミュージック・ペンクラブ音楽賞」贈呈式を、昨年に引き続きHMVがリポートさせていただきました。



 ミュージック・ペンクラブ・ジャパン会長の青澤唯夫氏の挨拶に続き、まずは、クラシック部門の表彰から。

 「録音・録画部門 最優秀作品賞 外国人アーティスト」は、昨年の『ベルリオーズ:幻想交響曲』に続いて、『ブラームス:交響曲全集/サイモン・ラトル ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団』に贈られ、EMIミュージック・ジャパン常務取締役・行方均氏、EMIクラシックス社長エリック・ディングマン氏が揃って壇上へ上がられました。

 エリック・ディングマン氏から、海外より届いたサイモン・ラトル氏の受賞コメントが読み上げられた後、行方氏より喜びの言葉が述べられました。「今後のリリースとしては、8月に、チャイコフスキー《くるみ割り人形》を日本先行で予定しておりますので、また来年もいただけたらなと思っております(笑)。どうもありがとうございました」。

 また、「録音・録画部門 最優秀作品賞 日本人アーティスト」は、『ブルックナー交響曲第7番ホ長調 ユベール・スダーン指揮 東京交響楽団』に贈られ、東京交響楽団理事長・横川端氏、ユベール・スダーン氏の代理として同じく東京交響楽団楽団長・大野順二氏、エヌ・アンド・エフ代表・西脇義訓氏が壇上へ。

 「現在、大変厳しい環境の中ではありますが、私ども東京交響楽団は、世界を目指してもう少し修行を積んでまいりたい。そして、日本の音楽愛好家の皆さん方にさらに喜んでいただけるような演奏を続けていきたいと思っております。来年も是非お呼びいただければと思います」(横川端氏)

 残念ながらこの日欠席となったユベール・スターン氏から直筆で届いたコメントを大野順二氏が代読。「この度、第22回ミュージック・ペンクラブ音楽賞 <クラシック部門 録音・録画 作品賞>と<オーディオ部門録音賞>とのダブル受賞となりましたことを、私東京交響楽団一同、レコーディング・スタッフ一同、大変光栄に思っております。昨年に続きまして、この賞に選んでくださいました評論家各氏に心より感謝申しあげます。ハイドン、モーツァルトの古典からシューベルト、ブルックナーと演奏してきました私のプロジェクトも、この後ブルックナーの交響曲第8番、9番、テ・デウム、ベルリオーズと、近代の音楽に差しかかろうとしております。我々一同今後とも一層の努力を惜しまず、ファンの皆様にお喜びいただけるよう精進してまいりたいと思います。この度はありがとうございました」。




 「最優秀コンサート・パフォーマンス賞 外国人アーティスト」を受賞した「マルク・ミンコフスキ指揮 ルーブル宮音楽隊」の賞状授与では、東京オペラシティ文化財団理事長・田口弥氏よりマルク・ミンコフスキ氏の喜びのコメントが読み上げられました。

 「ミュージック・ペンクラブ音楽賞の受賞を大変名誉に思います。ルーブル宮音楽隊を代表して心より御礼申し上げます。私達も日本の聴衆の素晴らしさ、熱心さにとても感動いたしました。近い将来、またこれから何度でも日本を訪れたいと思っております。贈呈式に出席できないのは極めて残念ではありますが、受賞の喜びを皆さんと分かち合いたいと思います」。

 「最優秀コンサート・パフォーマンス賞 日本人アーティスト」は、フランス・ブリュッヘン・プロデュース「ハイドン・プロジェクト/フランス・ブリュッヘン&新日本フィルハーモニー交響楽団」に贈られ、新日本フィルハーモニー交響楽団専務理事・横山邦雄氏が受賞の言葉を述べられました。

 「伝統ある、また栄えある賞をいただき、新日本フィルハーモニー交響楽団の楽団一同心よりお礼を申し上げたいと思います。私どもはフランス・ブリュッヘンさんと長いこと良いお付き合いをさせていただいておりますが、<ハイドン・プロジェクト>は、その中から出てきた企画でありました。楽団員一同が、いつもブリュッヘンさんと仕事をするということを楽しみに待っているということ。こうしたことが、長い関係の中で今回の受賞につながるような良い演奏会ができた理由なのではないかなと思っております」(横山邦雄氏)

 また、フランス・ブリュッヘン氏からの喜びのコメントも発表されました。 「オーケストラは実に良い演奏をしてくれたと思っています。本当に素晴らしい出来でした。彼らは真面目に、真剣に取り組み、私の求めていたものを実現してくれました。それは、彼らが今まで演奏してきたものとは違っていたはずです。それに対して賞をいただきましたことは、本当に嬉しいことだと思っています。また、私自身本当に良い時間を過ごすことができました。どうもありがとうございました」。




 「最優秀著作出版物賞」は、「ヘンデル 創造のダイナミズム/ドナルド・バロウズ編」  藤江効子/小林裕子/三ヶ尻正・訳 (春秋社)が受賞。春秋社代表取締役・神田明氏、日本語訳を手掛けた藤江効子氏、小林裕子氏、三ヶ尻正氏に賞状と楯が贈られ、三ヶ尻氏よりドナルド・バロウズ氏からのメッセージが読み上げられました。

 「過去50年の間にヘンデルの作品、特にオペラの上映は飛躍的に増えてまいりました。また、ヘンデル研究もこの期間に兆速の進歩を遂げていて、音楽の才能もさることながら、このヘンデルという人物がどれほど多彩な人々と交流し、当時の社会や政治、思想情勢の中でいかに幅広く活動してきたかが明らかになってきています。この論文集でも、そうした多様な研究の初祖を紹介する要素となりました。これが日本語でも読めるようになったことは大変喜ばしいことで、翻訳にあたられた藤江効子名誉教授、小林裕子氏、三ヶ尻正氏、またこうした書物をとりあげ、素晴らしい形に仕上げられた春秋社の方々にもお祝いと感謝の言葉を贈りたいと思います」。

 続いて、訳者を代表し、藤江効子氏からもコメントが述べられました。「翻訳にあたった3人は、故・渡部惠一郎氏によって1998年にヘンデルの音楽作品の普及のために立ち上げられた日本ヘンデル協会の会員でございます。この本を訳すにあたりましては、3人が全てに目を通し、それぞれが全てを訳してから、それをすり合わせ、色々と討論をして作り上げるという共訳の形をとりましたので、大変時間はかかりましたけれども、この本をヘンデルの没後250周年の2009年になんとか間に合わせるようにやってきました。そのあたりにつきましては、春秋社の方々には大変ご迷惑をおかけしましたが(笑)、おかげさまで完成しまして、こうした賞をいただけましたことを光栄に存じております」(藤江効子氏)    


 この第22回から各部門に新しく設立された「ベスト・ニュー・アーティスト」、その記念すべき最初の受賞者には、メゾソプラノ歌手、日向由子氏が選ばれ、所属する及川音楽事務所代表・及川和春氏とともに喜びの壇上へ。

 「今ここに立っていることが本当に夢のようで信じられないのですが、このような素晴らしい賞をいただくことができて、とても幸せに思っております。これからも皆さんの心に届くような歌が歌えるように頑張って生きたいと思います。本当にどうもありがとうございました」(日向由子氏)   


日向由子
写真:轟美津子


 
 

交響曲全集 ラトル&ベルリン・フィル(3CD+2DVD)HQCD仕様
 『ブラームス:交響曲全集/サイモン・ラトル ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団』
 (EMI ミュージック・ジャパン/TOCE-90097〜99)

 2002年よりベルリン・フィルの芸術監督をつとめるラトルが、満を持して世に問うた感のあるブラームス交響曲全集。いずれもベルリン・フィルが持つ能力がいかんなく発揮された重厚かつ精緻な音楽が特徴的。現代のドイツ人気質を反映したブラームスと言えばよいだろうか。ブラームス作品は保守的というレッテルが張られがちだが、そこに共存する新しい要素を鮮烈に打ち出した、圧倒的な量感と膨大な情報量を併せ持つ演奏だ。 
岡本稔

交響曲第7番 スダーン&東京交響楽団(シングルレイヤーSACD)
 『交響曲第7番 スダーン&東京交響楽団』
 (エヌ・アンド・エフ/NF-61202=SACD NF-21202=CD)

 スダーンが東京交響楽団の音楽監督に就任して以来、5年間でこのオーケストラは驚くほどの飛躍を遂げた。このCDの成功はスダーンの歌に満ちた表現と明確なリズムを重視した構成を、オーケストラ全員が心から同じ思いで表現することが出来たからに他ならない。ここではスダーンと東響がブルックナーを自らの音楽として語りかけてくれる。今回はオーディオ部門の受賞もあり、すべての面でのパーフェクト受賞となった。



マルク・ミンコフスキ指揮 ルーブル宮音楽隊
Photo:Elisabeth Carecchio

マルク・ミンコフスキ指揮 ルーブル宮音楽隊
Photo:Elisabeth Carecchio
 「マルク・ミンコフスキ指揮 ルーブル宮音楽隊」
 2009年11月5日、6日 東京オペラシティ コンサートホール
 > マルク・ミンコフスキ作品一覧はこちら

 古楽器の演奏が広く関心を集める中、ルーブル宮音楽隊初来日は衝撃的ですらあった。みずみずしい響きはもちろんのこと、それに終わらない成果を極東の果てに伝えてくれた。演奏会とは何か、何のために音楽をするのか、そんなことまで考えさせるものであった。オリジナルな音を追求するルーブル宮音楽隊の姿勢は、公演すべてに貫かれていた。わが国にも「一期一会」という言葉がある、彼らのメッセージは心深く沁みわたった。 
(宮沢昭男)



ハイドン・フロジェクト/フランス・ブリュッヘン・プロデュース&指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
Photo:K.Miura

ハイドン・フロジェクト/フランス・ブリュッヘン・プロデュース&指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
Photo:K.Miura
 「ハイドン・プロジェクト/フランス・ブリュッヘン・プロデュース&指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団」 2009年2月6日〜28日 すみだトリフォニーホール
 > フランス・ブリュッヘン作品一覧はこちら

 没後200年記念の≪ハイドン・プロジェクト≫。新日本フィルハーモニー交響楽団が、フランス・ブリュッヘンを指揮に迎え、オラトリオ「天地創造」と交響曲「ロンドン・セット」を演奏。「天地創造」は柔らかい響きと滋味あふれる表現力豊かな演奏。交響曲もノン・ヴィブラート奏法で、全12曲の多種多様な性格を、秀逸なアンサンブルを生かした鮮やかな表現と包容力豊かな響きで再現。上質かつ至福の音楽は、忘れられないものになった。 

ヘンデル 創造のダイナミズム/ドナルド・バロウズ編 藤江効子/小林裕子/三ヶ尻正・訳
 「ヘンデル 創造のダイナミズム/ドナルド・バロウズ編」
 藤江効子/小林裕子/三ヶ尻正・訳 (春秋社)

 ヘンデルの没後250年を期して翻訳出版された600ページにおよぶ大著で、彼の生涯と作品を多角的な視点から読み解いている。ヘンデル作品の校訂で名高いバロウズが編纂、多岐にわたるテーマを各専門家が分担執筆。「創造の背景」「音楽の諸相」「上演をめぐる視点」の3部からなり、付録としてヘンデルの年譜、作品リストなどが掲載されている。バッハと比べて親近感が薄い私たちの国で、ヘンデルを深く知るための貴重な書籍の出版を讃えたい。

日向由子
 日向由子(メゾソプラノ)

 温かい歌声で人気のある日向由子は、東京芸術大学声楽科、国立パルマ音楽院“アリーゴ・ボイト”を卒業。在伊中に活動を始め、宗教曲のソリストや、「コシ・ファン・トゥッテ」(ドラベッラ)「蝶々夫人」(ケイト)他の諸役で好評を博す。2009年、待望のファースト・アルバム『アル・ディ・ラ〜美しきイタリアン・メロディー』をリリース。実力と魅力のほどを満喫させるデビュー作として注目された。今後のさらなる飛躍が期待される。 

JVCケンウッド・トワイライトイベント
MPCJスペシャル VOL.11


ミュージック・ペンクラブ音楽賞決定!
≪ライヴ&映像 with トーク・セッション≫

 今回のJVCケンウッド・トワイライトイベント/MPCJスペシャルVOL.10ではクラシック/オーディオ部門をフィーチャーしながら、ベスト・ニュー・アーティストに輝いた日向由子のライヴ・パフォーマンス、サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ユベール・スダーン指揮東京交響楽団の演奏映像、マルチチャンネル・ガラスCDなどを交えながらのスプリング・スペシャル。サイン会なども予定。抽選でプレゼントも!入場は無料です。

日時:2010年4月22日(木) 19時〜

会場:JVCケンウッド・丸の内ショールーム(東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1F)
出演:日向由子(ライヴ・パフォーマンスで登場)
   児玉洋子(EMIミュージック・ジャパン/プロデューサー)
   西脇義訓&福井末憲(エヌ・アンド・エフ)
   青澤唯夫(音楽評論家)
MC:Mike Koshitani
主催:ミュージック・ペンクラブ・ジャパン 
協賛:JVCケンウッド
   *入場無料
入場ご希望の方はJVCケンウッド・丸の内ショールームまでご連絡ください。
TEL:03-3213-8775 予約受付は3月1日からです。





 続いてはポピュラー部門の贈呈式。「録音・録画部門 最優秀作品賞 外国人アーティスト」は、マイケル・ジャクソン『This Is It』に贈られ、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの堀内啓氏が壇上へ。

 「私ども映画会社がこういった音楽賞をいただくということは、非常に珍しいことなのですが、大変光栄に思っております。この映画は、昨年10月28日に公開されてから、日本だけでおよそ430万人のお客様に観ていただくことができました。6月25日にマイケル・ジャクソンは他界してしまいましたが、それまでマイケル・ジャクソンに対していくらか誤解を抱いていた方もいたかと思います。ただこの映画で彼の音楽の素晴らしさ、音楽に取り組む真摯な姿勢をあらためてお客様に感じ取っていただき、その結果このように素晴らしい賞に結び付いたということは非常に喜ばしいことだと思います。本当にありがとうございました」(堀内啓氏)


ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 堀内啓氏
写真:轟美津子


 「録音・録画部門 最優秀作品賞 日本人アーティスト」を受賞したのは、昨年11月に『ソフトリー・アズ・アイ・リーヴ・ユー』をリリースしたジャズ・シンガー、マーサ三宅氏。ティートックレコーズ代表取締役・金野貴明氏とともに壇上へ上がり、受賞の言葉を述べられました。

 「実は私、今日はお祝いに駆けつけたつもりだったんです。録音なさったのは、ティートックレコーズの金野さんでして、とてもいい雰囲気にしてくださって、私は好きなように歌っただけなのに、私が賞をいただくなんて・・・ここに着いて狼狽しております(笑)。でも、嬉しい狼狽でございます(笑)。私としては、金野さんに<おめでとう>と申し上げたいです。あと何年歌えるか分かりませんけれど、できるだけ自然体で臨んで、<これが最後か?>、<もしかしたらあと一回ぐらいあるかしら?>なんて、適当な想像をしながらこれから生きていくと思いますが(笑)、心ある方々のために、おかげさまでこのレコーディングは成り立ったわけでして、多くの方々に感謝をしたいと思います。どうもありがとうございました」(マーサ三宅氏)


マーサ三宅
写真:轟美津子


  「最優秀コンサート・パフォーマンス賞 外国人アーティスト」には、「SIMON & GARFUNKEL OLD FRIENDS TOUR 2009」が選ばれ、ウドー音楽事務所興行部部長・長澤通孝氏が、昨年のザ・フー「THE WHO MAXIMUM R&B JAPAN TOUR」に引き続く受賞の言葉を述べられました。

 「今回はTBSテレビさんとの共同事業だったのですが、昨年のザ・フーに続き、サイモン&ガーファンクルを名誉ある賞に選んでいただきまして誠にありがとうございます。2003年にアメリカで話題となりました《OLD FRIENDS TOUR》の流れで、今回オーストラリア、ニュージランド、そして16年ぶり3回目となる日本での公演が実現することとなりました。あの2人もコンビをしばらく解消していたので、当初は心配でもあったのですが、実際始まってみると、それはもう素晴らしい歌と演奏でした。今回のツアーの最後は札幌ドームだったのですが、その楽屋でポール・サイモンが、<アート・ガーファンクルとのツアーは今回で最後だ>と洩らしていたことが、少し気がかりではありますが・・・。 今後も皆様の記憶に残るようなコンサートを主催していきたいと思っておりますので宜しくお願いいたします」(長澤通孝氏)

 そして、アート・ガーファンクルからミュージック・ペンクラブ・ジャパン宛てに届けられたというダイレクト・メッセージが読み上げられました。

 「サイモン&ガーファンクルの2009年日本公演は、実り多いものでした。僕のライヴに受賞だなんて勿体なさすぎる話です。僕はただのシンガーで、それを生業でやっているだけなのですから。でも、お気持ちは嬉しいです。ありがとうございます」。


 また、「最優秀コンサート・パフォーマンス賞 日本人アーティスト」には、2009年11月1日 五反田・ゆうぽうとホールで行われた「富士通コンコード・ジャズ・フェスティバル」。オールアート・プロモーション代表取締役・石塚孝夫氏、富士通(株)の松本豊氏が揃って壇上へ上がられました。

 「私の会社、オールアート・プロモーションは今年でちょうど50周年を迎えます。その記念にこの賞をいただいたということは、非常に意義があり、また、素晴らしい思い出になるかと思います。本来ならば、このコンサートを成功させてくれた日本人のアーティストたちに贈られるのが喜ばしいと、私は心から思っております。」(石塚孝夫氏)


 「最優秀著作出版物賞」は、「知ってるようで知らない映画音楽おもしろ雑学事典」大日方俊子・著 (ヤマハミュージックメディア)に贈られ、著者の大日方俊子氏から受賞の言葉が述べられました。

 「私が初めて芸能的な賞を獲ったのが、最初に作詞を手掛けた作品<グッド・ナイト・ベイビー>でした。そして今日いただいた賞も、私が初めて執筆した本で、とても運が強いという感じがいたします(笑)。映画音楽の世界というのは、一見華やかなようでいて、実はなかなか陽が当たらないジャンルで、評論家の方々がむしろ避けるところでもあります(笑)。ただ、この賞によって映画音楽に大きな光を当てていただいたこと、そして、ライバルのような評論家の皆様が私に貴重な評論を投じてくださったことに感謝いたします。どうもありがとうございました」(大日方俊子氏) 


写真:轟美津子


 新設の「ベスト・ニュー・アーティスト」には、昨年、デビュー・アルバム『Bible Belt』が各方面で絶賛されたダイアン・バーチが選ばれ、EMIミュージック・ジャパンの永野陽三氏が壇上へ。

 「昨年6月に、彼女の母国であるアメリカでダイアン・バーチはデビューしまして、それに次いで日本がアルバム『Bible Belt』を8月にリリースし、昨年末にはウドーさんの招聘で来日公演も果たし、そしてこの賞を受賞させていただいたということで、おかげさまで日本国内においてダイアン・バーチが大変盛り上がることができました。こうした盛り上がりを受けて、ヨーロッパでも今年3月にアルバム・デビューを果たし、ダイアン・バーチは、さらに世界的な活動に移っていきます。今年いっぱいはこのアルバムをプッシュしていく予定でございますので、引き続きのご支援を宜しくお願いいたします」(永野ようぞう氏)

 また、ダイアン・バーチから届いたメッセージも読み上げられました。 「私に投票してくれた皆様、アルバムのリリースにご尽力いただいた皆様、そして、このたった数年でファンになってくださった皆様、素晴らしい賞を本当にありがとうございます。昨年12月に初めて日本を訪れましたが、今まで訪れた中でも最もエキサイティングな国のひとつでした。すっかり恋してしまったこの国で、自分の音楽が受け入れられているなんて、とんでもなくありがたいことです。私の音楽を応援してくれて、そして温かく迎えていただけて感謝の気持ちでいっぱいです。皆様また近いうちにお会いしましょう」。

 
 
映画「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」
(c)2009 The Michael Jackson Company, LLC. All Rights Reserved.

映画「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」
(c)2009 The Michael Jackson Company, LLC. All Rights Reserved.
 映画「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」
 (ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

 稀代のエンタテイナー、マイケル・ジャクソが2009年7月からロンドンで行う予定だった『ディス・イズ・イット』ツアー。マイケルの2009年6月25日の急死によって、幻のツアーとなったが、そのリハーサル模様を収録した記録映像を映画化した。この映画によって、マイケルがツアーで伝えたかったメッセージ≪地球を癒そう、治そう≫がより多くの人々に伝えられるようになったのは実に皮肉であり、運命的でもある。

ソフトリー・アズ・アイ・リーヴ・ユー/マーサ三宅
 マーサ三宅 『ソフトリー・アズ・アイ・リーヴ・ユー』 (ティートックレコーズ/XQDN-1021)

 これが「ラスト・アルバム」というつもりで吹き込んだという作品。歌に気持ちが入っていて、一曲一曲の内容が、聞き手の目に浮かんでくるような見事な表現力で歌われる。特に、自動車事故のため夭折したトランペッッター、クリフォード・ブラウンの死を悼んでベニー・ゴルソンが書いた「アイ・リメンバー・クリフォード」は、その不慮の事故を聞いた時の悲しみが伝わって来て胸を打つ名唱。北島直樹(p)のトリオに増尾好秋(g)、伊勢秀一郎(tp、flh)が加わる伴奏陣も好演。
(高田敬三)



「SIMON & GARFUNKEL OLD FRIENDS TOUR 2009」

「SIMON & GARFUNKEL OLD FRIENDS TOUR 2009」
 「SIMON & GARFUNKEL OLD FRIENDS TOUR 2009」
 > サイモン&ガーファンクルの作品一覧はこちら

 サイモン&ガーファンクルは1960年代初めから活躍する伝説の名デュオだが、解散宣言のないままソロとなってから約40年がたつ。その間、時々再結成コンサートを行ってきた。中でも今回の来日公演は印象に深く刻まれている。アート・ガーファンクルの声は往年とは異なるが最もよく出ていて、のびのびとした魅力的な歌声を聴かせ、ポール・サイモンのギターや歌も聴き応えがあり、熟年の味わい深い感動を呼ぶコンサートだった。
 (鈴木道子



富士通コンコード・ジャズ・フェスティバル
Photo:ジャズワールド/内田晃一

富士通コンコード・ジャズ・フェスティバル
Photo:
ジャズワールド/内田晃一
 「富士通コンコード・ジャズ・フェスティバル」
 2009年11月1日 五反田・ゆうぽうとホール
 > 「富士通コンコード・ジャズ・フェスティバル」関連作品一覧はこちら

 24回目を迎えたジャズ・フェスティバル、これまで外国人アーティストによるものだったが、今回初めて≪ポール・ウィナーズ〜ヒストリー・オブ・ニッポン・ジャズ≫と題し北村英治、日野皓正らスイングジャーナル誌の読者投票1位経験者を中心に日本のトップ・ジャズメンを集めたステージが第一部で展開。アーティストが固有の魅力が十分に発揮され、聴衆が音楽を堪能できる構成・演出が見事だった。大ホールでのジャズ・コンサートが少なくなってきた昨今だけに、とても貴重なフェスティバルでもあった。
(高田敬三)

知ってるようで知らない映画音楽おもしろ雑学事典/大日方俊子・著
 「知ってるようで知らない映画音楽おもしろ雑学事典」
 大日方俊子・著 (ヤマハミュージックメディア)

 大型本ではないが、中味はぎっしりつまっているし、映画音楽に関するほとんどすべてのことを正確なデータをふまえて教えてくれる。雑学事典とあるが、雑学だけでなく、映画音楽の歴史や本流について歴史と中味を教えてくれる。また巻末の米、英、日のアカデミー音楽賞の受賞作などに関する一覧表も大いに役立つ。著者は元TBS-TVディレクターで、映画音楽、ミュージカルに詳しく、流行歌の作詞家としてヒット曲賞も受賞している。

ダイアン・バーチ
 ダイアン・バーチ

 ダイアン・バーチはアルバム『バイブル・ベルト』でデビューを飾った、ニューヨーク出身の女性シンガー/ソングライター。恵まれたルックスと、キャロル・キングやローラ・ニーロを思わせる作風、歌声で大きな話題を呼んだ。日本ツアーも成功させている。サザン・ソウル、ゴスペル、ブルースなど、米ルーツ・ミュージックを継承し、それを新たな形で発展させる可能性を秘めた、稀有な新人である。
(細川真平)





 続いて、オーディオ部門の贈呈式に移り、「最優秀録音・録画作品」は、SACD盤『ブルックナー交響曲第7番ホ長調 ユベール・スダーン指揮 東京交響楽団』、「最優秀録音技術」は、エヌ・アンド・エフとセーラー万年筆の共同開発による「Extreme HARD GLASS CD」にそれぞれ贈られ、エヌ・アンド・エフの録音エンジニアである福井末憲氏と、セーラー万年筆株式会社社長・中島義雄氏が受賞の喜びを語りました。

 「エヌ・アンド・エフは、プロデューサーの西脇とエンジニアである私、福井、たった2名で運営している世界最小規模のレコード会社です。昨年の神谷郁子さんのSACDの音楽賞に引き続き、今回はスダーンさんが音楽賞とのダブル受賞ということで大変ありがたく思っております。この作品は、ローム ミュージック ファンデーション様の絶大なご協力をいただきまして完成いたしました。私のやっております録音というのは、カメラでパチッと綺麗な景色を撮るのと同じ録り方なんです。そこに一切手を加えない。ですから、今回、スダーンさんと東京交響楽団さんとの演奏がいかに綺麗な音で鳴っていたかということをあらためて感じております」(福井末憲氏)

 「セーラー万年筆というのは、来年で100周年を迎える日本で最も古い文具メーカーでございますが、なぜ文具メーカーの人間が音楽賞の贈呈式にいるのかと、やや違和感を覚えている方もいらっしゃるかもしれませんが、考えてみますと《ペンクラブ》というのは執筆者の方々が集まるところで、日頃、万年筆やボールペンなどをお使いかと思いますので(笑)、そういった意味でもご縁があったなと思っております。ところで今回賞を頂戴しましたのは、文具の部門ではなくて、産業用のロボットの部門でして、2008年からエヌ・アンド・エフ様と共同で取り組んでまいりました超硬質のガラスのCDでございます。エヌ・アンド・エフ様のソフト技術と私どものロボット部門の超精密加工技術が融合したこの作品によりまして、永久不変のクリアーな音質が提供できることとなりました。つまりガラスCDは、それ自体が大変クリアーな音質であるばかりでなく、それが永久に保存できるというところに価値があります。50年、100年後にはますますその価値は高まるだろうと思っております。私どものこのような技術が、いささかでも日本の文化に貢献できれば嬉しい限りであります。今後とも文化に貢献するセーラー万年筆として頑張ってまいりますので、どうぞ宜しくお願いいたします」(中島義男氏)

 また、オーディオ部門の「最優秀著作出版物賞」は、今年度は残念ながら「該当なし」ということでした。


写真:轟美津子


 
 

交響曲第7番 スダーン&東京交響楽団(シングルレイヤーSACD)
 『交響曲第7番 スダーン&東京交響楽団』
 (エヌ・アンド・エフ/NF-61202=SACD)

 2009年3月、東京交響楽団の本拠地ミューザ川崎シンフォニーホールでのライヴ録音。音楽監督ユベール・スダーンの彫琢によりオケが到達した境地を優れた録音コンセプトが捉えた。ブルックナーの後期交響曲というと壮麗な音の大伽藍を想像するが、ここに聴く音楽は、細部まで音符を慈しみ磨き抜いた繊細でしなやかな叙情歌、ブルックナーの音楽のナイーブさと≪歌≫を私たちに体験させる。
(大橋伸太郎)



Extreme HARD GLASS CD/ガラスCD

Extreme HARD GLASS CD/ガラスCD
 「Extreme HARD GLASS CD/ガラスCD」
 (有限会社 エヌ・アンド・エフ セーラー万年筆株式会社)

 エヌ・アンド・エフとセーラー万年筆の共同開発による「Extreme HARD GLASS CD」は、ポリカCDに比べ、物理特性・耐久性・光学特性・ディスク質量・トラッカビリティ特性・信号特性等の飛躍的なグレード・アップにより、音質が向上したということに止まらず、単なる音楽媒体という次元を超え、音楽文化そのものを長期保存するために絶対に必要とされるアイテムとなる。また、「神の手」と呼ばれるロボット機器の技術開発により、市販能力も一段と期待できる。
(上田和秀)



 最後に、音楽会に多大なる貢献をなされた方への表彰となる「特別賞」。今年度は、故人となられたお二人に贈られました。生前の業績が高く評価されたマイケル・ジャクソン、忌野清志郎の両氏。

 マイケル・ジャクソンへの賞状及び楯は、株式会社BMI 高杉敬二氏を通じて実母キャサリン・ジャクソンさんへ直接手渡され、忌野清志郎への賞状及び楯は、忌野清志郎事務所ベイビィズに贈られました。

マイケル・ジャクソン
 > マイケル・ジャクソンの作品一覧はこちら

 マイケル・ジャクソンは少年時代から兄たちとジャクソン5で活躍してきたが、1980年代に入ってからの功績はめざましい。MTVに黒人への扉を開いたのはマイケルであり、『スリラー』ではミュージック・ビデオ時代をもたらし、同アルバムは最多売上げでギネスブックに記録。その卓越したダンスと音楽の一体化、R&B、ロック、ポップの統合はじめ、世界中に影響を与えた功績は大きい。突然の死は惜しまれるが、キング・オブ・ポップと称えられる彼が残した芸術は今もいきいきと異彩を放っている。
 (鈴木道子


 

忌野清志郎
 > 忌野清志郎の作品一覧はこちら

 R&Bやブルース、ロックへの愛情を音に滲ませながら、忌野清志郎は58年の生涯を鮮烈に駆け抜けた。1970年にRCサクセションの一員としてレコード・デビュー。「スローバラード」「雨あがりの夜空に」「トランジスタ・ラジオ」等、記憶に残る名曲を放ち、ソロ活動や別ユニットでも金字塔を連発。まさに≪不世出≫という言葉そのものの傑物だった。2010年3月に、89年に録音されていた幻の音源『Baby #1』がリリース。
 (原田和典




サイモン・ラトル ユベール・スダーン マルク・ミンコフスキ フランス・ブリュッヘン 日向由子 オールアート・プロモーション代表取締役・石塚孝夫氏 大日方俊子 エヌ・アンド・エフ 福井末憲氏 セーラー万年筆株式会社社長・中島義雄氏