『日本の電子音楽』などの著作で知られる筆者が、膨大な資料と綿密な調査をもとに武満徹の音楽活動を1年ごとに追った、2段組みで1,100頁を超える大著。CDショップの“電子音楽”の棚に収まる作品のみを扱ったものではなく、電子音楽的な手法に注目しながら、一人の作曲家が辿った創作の全貌をあきらかにしようとしたもので、いわゆる“クラシック音楽”から、歌もの、映画・テレビの劇伴まで、好奇心と柔軟な発想と才能のいずれにも恵まれた武満が生み出した多彩な音楽すべてに目を向けている。新事実を含め、これまでのどの武満本よりも圧倒的に情報量が多い。文学や映像・美術に携わる人たちを中心とした広い交友関係もあきらかに。音楽にとどまらない当時の文化状況を浮かび上がらせる。(CDジャーナル Book Review)