Quiet Corner クワイエット・コーナー Vol.5

Quiet Corner クワイエット・コーナー

映像を浮かび上がらせるアンサンブルの余韻

ブラジルの“風雅”を感じさせる洗練されたアンサンブルに惹かれる。昨年リリースされたサンパウロの音楽家ルイス・ミランのアルバムの女性ヴォーカルを添えたサロン・ジャズ的な華やかな演奏が記憶に残る中、ミナスの作曲家/ピアニストのヴァグネル・チゾの新作は、自身の手がけた映画音楽を室内楽的なアレンジで仕上げ、ヴィラ・ロボスからハダメス・ニャタリ、カルロス・アギーレ・グルーポや中島ノブユキのような色彩豊かなハーモニーを聴かせてくれる。くつろぎに満ちたピアノの旋律は、どこか“バック・トゥ・スロウフード”的なイタリアの映画音楽を思わせ、弦や鍵盤による魅惑的なサウンドは、リスナーをミナスからブエノスアイレスの路地裏、そしてローマの石畳へといざなってくれる。エットーレ・スコラ監督の映画『Gente Di Roma/ローマの人々』では、盟友のアルマンド・トロヴァヨーリが、円熟みあふれるジャズ・アレンジで小粋なスコアを提供し、特にミディアム〜スロウ・テンポの楽曲のアンサンブルが秀逸。そして、そのトロヴァヨーリの映画音楽をトリオ編成でエレガントに描いたのがイタリアのピアノの皇帝アントニオ・ファラオだ。#3「Profumo Di Donnna/女の芳香」で聴かれるサウンドは美の極みとも呼ぶべき光を放ち、3分51秒の皇帝のピアノは美しく泣き輝いている。それらのアンサンブルの余韻は、夜空の星屑のようにいつまでも瞬き続ける。
文●吉本宏(音楽文筆家/bar buenos aires)

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