【追悼】 チャーリー・ヘイデン



 7月11日、ジャズ・ベースの巨匠チャーリー・ヘイデンが、長年の闘病生活の末、ロサンゼルスで亡くなりました。76歳。50年代より演奏活動をはじめ、オーネット・コールマンとのカルテット、その名を広く知らしめたキース・ジャレットとのアメリカン・カルテットなどで活躍。ほか、自己のリベレーション・ミュージック・オーケストラ、カルテット・ウエスト、さらにはパット・メセニーなどとのデュオ作では、モード、ポストバップ、フリー、エスニック、フォークと多岐にわたるサウンドを展開。アメリカのジャズ・シーンに多大な影響を与えた。その功績を称えるとともに、心からご冥福をお祈りいたします。

 ギタリスト/作曲家/編曲家という多才な音楽家でもあり、チャーリー・ヘイデンの音楽を深く愛する伊藤ゴローさんにご寄稿いただきました


海外ECMからのコメント


 チャーリー・ヘイデン、ジャズ史上もっとも素晴しいベース・プレーヤーの一人が長い闘病生活の末7月11日にLAの自宅で他界されました。
 アイオワ州のシェナンドアで生まれたヘイデンはゆりかご時代からの生まれながらのミュージシャンで、2歳の時に家族と一緒に昔ながらのカントリー音楽を歌いラジオデビューを果たしました。10代でジャズに心奪われましたが、当時彼は"ヒルビリー音楽" から時代の感覚を得ていると主張していたのでした。様々なジャンルに精通していた彼はオーネット・コールマンと一緒にジャズの進化形を模索しましたが、トラディショナルな音楽を頻繁に引用しました。コールマン・カルテットでの“Rambling”という曲の中のベース・ソロはフィドル曲”Old Joe Clark”に基づいていましたし、パット・メセニーとのアルバム『80/81』の中の"Two Folk Songs"でも再度取り上げたほどでした。彼の作品全て、またECMでの録音作には一貫性があり、何か純粋で本当のことを歌いたいという 欲望が感じられるのです。数えきれないほど多くのミュージシャンが口をそろえて彼を賞賛するのは彼のこういった部分です。Hadenと一緒に20枚のアルバムをプロデュースしたマンフレッド・アイヒャーは以下のように語ります。「僕はオーネット・コールマンとの共作『Change of the Century』でのチャーリーの演奏を初めて聴いて本当に感動したんだ。彼はまず音楽を聴く達人であり、聴いた瞬間に一緒に演奏している仲間を察知し、演奏してアイディアを完璧にするんだ。音楽をしっかり支えながら、自由に飛んで行けるようにする。彼の演奏は重力をも具現化する、もしくはあなたを持ち上げてくれるんだ。チャーリーの出す一音だけでその音楽の全ての景色を変えられるんだ、それはKeith JarrettからDino Saluzziまでみんながコンサートやレコーディングで見た現象なんだ」。

 1967年から1976年までヘイデンはキース・ジャレットのベース・プレイヤーでした。初めはポール・モチアンとのトリオ、その後デューイ・レッドマンとの"American Quartet"でECMで “The Survivors’ Suite” “Eyes of the Heart” 等のアルバムを発表、またジャレットのオーケストラ音楽 “Arbour Zena” やヤン・ガルバレクの作品にも参加しました。 ポール・モチアンが自身の作曲家としての才能を発見したとき, ヘイデンは “Conception Vessel” “Tribute”で演奏、貢献しました。モチアン―ヘイデンの付き合いはジャレットのバンド時代から始まりましたが、その後ヘイデンのthe Liberation Music Orchestraへと広がっていきました。モチアンの最後のレコーディングの一つ『Live At Birdland』では久々にヘイデンと再会しリー・コニッツ、ブラッド・メルドーとのバンドで,ジャズ・スタンダードを自由にインプロヴァイズしました。

 グループ"Old & New Dreams"ではドン・チェリー、デューイ・レッドマン、エド・ブラックウェルと組みオーネット・コールマンの過去の曲とその仲間の新しい曲に取り組み、そのどちらもヘイデンの音楽コンセプトに温かく包まれた作品となりました。またヘイデンはケース・ジャレットとも2007年に再び組み、『Jasmine』『Last Dance』と2作のデュオ作品を録音、大ヒットを記録している。また、1981年にミュンヘンで行われた伝説のライヴ音源の発掘により2012年に『Carta de Amor』をリリース。彼はガルバレクとジスモンチのライヴにはいつでも参加したがっていました。しかし、その思いとカーラ・ブレイとりべレーション・ミュージック・オーケストラの新作をECMで録音するという予定はヘイデンの病気により残念ながら実現することはできませんでした。心よりご冥福をお祈りいたします。



追悼チャーリー・ヘイデン


わりと張りのある弦の響きは粘っこくて、無骨と言ってもいくらい素朴だ。
僕がチャーリー・ヘイデンのデュオに出会ったのは、キース・ジャレットの「Death and Flower」というアルバム。
キースのソロは、僕には牧歌的すぎて少し退屈だけれど、デュオは聴ける、と思った。
キースの耽美でスリリングなピアニズムも
キースのピアノを讃えながらも自分の美学を貫き、
美しい音楽に仕上げるチャーリー・ヘイデンのベーシストならではのバランス感覚、
そのジャズのフォームに感動した覚えがある。

奇才、天才のソロ・パフォーマンスは、ともすれば戦闘的になったり、
陶酔の彼方へひとりで行ってしまったりしがち。
彼のベースプレイには中和作用があるのか、そんな共演にこそ彼のベースは輝く。
ベース・プレイヤーの神髄がある。

60年代ジャズは、様々なジャンルを飲み込み拡大し、飽和状態。
フリー、前衛、ロフト、エレクトリック、ファンク、フュージョン、、、、
音楽の束縛から自由になろうと様々なジャズが試みられた。
そんな中で彼が見つけたのは、自分のフォーム「型」なのだと思う。
それはアメリカのルーツ・ミュージックや民族音楽・伝統音楽も内包した叙情的で美しいものだった。

そうして生まれたチャーリー・ヘイデンのデュオ・アルバムはどれも名盤ぞろいだ。
エグベルト・ジスモンチ、ハンク・ジョーンズ、ケニー・バロン、後にパット・メセニーとの名作「Beyond the Missouri Sky」へと彼の美学は受け継がれていった。

決して器用とは言えない朴訥としたプレイ、
ベースを少し斜めに構えた彼独特のフォームこそ、
彼の築いたジャズの態度(フォーム)ではないでしようか。

文● 伊藤ゴロー


伊藤ゴローさんのチャーリー・ヘイデン愛聴作品

Closeness Duets
1) Charlie Haden
『Closeness Duets』
Last Dance
2) Keith Jarrett / Charlie Haden 『Last Dance』
Death And The Flower
3) Keith Jarrett
『Death And The Flower』





チャーリー・ヘイデン

チャーリー・ヘイデン チャールズ・エドワード・ヘイデンは、1937年8月6日、彼自身が22ヶ月でデビューすることになる、ラジオ・ショウを持っていたC&Wのファミリー・バンドの家族としてアイオア州シェナンドに生まれる。
歌っていたチャールズは、15歳でポリオに感染、歌を断念する。やがて、スプリングフィールドに移住したヘイデン家は、ここでもレッド・フォリーがホストを務めるTVショウに出演。チャールズはべースプレイヤーとしてデビューした。後年、感じるカントリーライクな音色と、決して都会的ではない暖かいぬくもりの演奏は、こうした家庭環境がもたらした。
1957年、LAへ移住。そこでジャズを演奏し始め、エルモ・ホープ、ハンプトン・ホーズ、アート・ペッパーといったミュージシャンと共演。そして、運命的な出会いとなるポール・ブレイと「Hillcrest Club」のハウス・バンドのメンバーとして契約する。ある晩、もう一つの運命的な出会いとなるオーネット・コールマンをジェリー・マリガンのバンドのメンバーとして聴く。オーネットは程なく、マリガンのバンドを去るが、やがてヘイデンはブレイ=コールマンにドン・チェリーを加えたカルテットでHilcrest Clubに出演、親交を深めていく。
1959年、チャールズはオーネットとともにニューヨークにのぼり、ドラマーにビリー・ヒギンスを加えたバンドで「Five Spot」デビューを飾った。キース・ジャレットとのアメリカン・カルテットをはじめ、その後のヘイデンの活躍はジャズファンの知るところだが、デニー・ザイトリン、アーチー・シェップ、ロズウェル・ラッドらと自己バンド、リベレーション・ミュージック・オーケストラで活躍することは、この時代のキャリアにおける重要なトピックだろう。

1976年には、ドン・チェリー、デューイ・レッドマン、エド・ブラックウェルとのバンド、オールド・ニュー・ドリームズに参加。また80年代にはカリフォルニア芸術大学で教職に付いた。さらに90年代に入ると、ビバップを甦らせたバンド、カルテット・ウエストを、アーニー・ワッツ、アラン・ブロードベントらと結成。その間、カナダのモントリオール・ジャズ・フェスティヴァルにおけるライヴ演奏を収録した「Montreal Tapes」シリーズを発表。ジェリ・アレン、ゴンサロ・ルバルカバ、ポール・ブレイ、ドン・チェリー、そして、エグベルト・ジスモンチを擁した音源に加えて、リベレーション・ミュージック・オーケストラの演奏も発表する。
さらに2002年発表されたマイケル・ブレッカー、ブラッド・メルドーを擁した『American Dreams』は、ヘイデンの世界がさらにスペイシーな広がりを増しつつあることを認識させた。2003年発表された、亡きジョー・ヘンダーソンをフィーチャーした1989年の録音は、アル・フォスターとのトリオでヘンダーソン畢生のテナー演奏を収録した作品となった。2010年には、カルテット・ウエスト名義としては11年ぶりとなるアルバム『Sophisticated Ladies』を発表。ノラ・ジョーンズ、ダイアナ・クラール、カサンドラ・ウィルソン、メロディ・ガルドー、さらには妻であるルース・キャメロンといった現代ファースト・レディの歌唱をフィーチャーしたエレガントなヴォーカル作品となった。
ヘイデンの活動は多岐に渡りつつも、家庭環境がもたらした、優雅なC&Wライクな音色とフレーズで人気は高い。現代ジャズベースにおける数少ない重い音を持った巨匠と言えるだろう。


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