ピエール・ブーレーズは、作曲家としてセリー音楽の推進から電子音響技術の活用まで、常に革新的な作品を通じて現代音楽界に大きな足跡を残すとともに、指揮・著述・組織運営にわたる広範な活動を展開。そのいずれにおいても刺激的で創造性に富んだ多大な影響力で、第二次大戦後の西洋音楽界をリードし続けてきました。
1966〜68年にかけて、ブーレーズがクレンペラー時代のニュー・フィルハーモニア管、およびセル時代のクリーヴランド管と録音したLP3枚分のドビュッシーの管弦楽作品集は、オーケストレーションの細部を透明・精緻に再現し、伴奏音型の微妙な変化やリズム・パターンの推移をまるでレントゲンを当てたかのような明晰さで描き切ったという点で、それまでの19世紀生まれの指揮者たちのフランス音楽解釈とはまったく異なるドビュッシー演奏解釈の地平を開拓しました。後年のDGへの再録音にきかれる巨匠的風貌とは異なる、壮年期のブーレーズならではの、冷徹なまでの情熱に貫かれた緻密さへの志向は、この録音以降も凌駕されたことはありません。
そして『ペレアスとメリザンド』はドビュッシーの唯一のオペラであり、20世紀オペラの中でも数少ない傑作のひとつ。架空の国アルモンドで展開される宿命的な愛の悲劇をレシタティーフのような表現で歌われる、節度と洗練の極致とも感じ取れる作品です。曖昧さの精妙な音の綾を描き分けたブーレーズの指揮。独自の視点から見た独特な演奏で、カラヤン盤とは対照的表現による名盤のひとつです。
歌詞対訳は付属しません。(輸入元情報)
【収録情報】
Disc1
ドビュッシー:
1. 交響詩『海』 L.109
2. 夜想曲 L.91
3. 交響組曲『春』 L.61
4. クラリネットと管弦楽のための第1狂詩曲 L.116
ジェルヴァース・ド・ペイエ(クラリネット:4)
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
ピエール・ブーレーズ(指揮)
録音時期:1966年12月19,21日(1) 1968年12月3-6日(2-4)
録音場所:ロンドン、バーキング・タウン・ホール(1) アビー・ロード・スタジオ(2-4)
録音方式:ステレオ(アナログ/セッション)
Disc2
1. 牧神の午後への前奏曲 L.86
2. バレエ音楽『遊戯』 L.126
3. 管弦楽のための『映像』 L.122
4. 神聖な舞曲と世俗的な舞曲 L.103
アリス・シャリーフ(ハープ:4)
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1-2)
クリーヴランド管弦楽団(3-4)
ピエール・ブーレーズ(指揮)
録音時期:1966年12月19-21日(1,2) 1967年11月17日(3,4)
録音場所:ロンドン、バーキング・タウン・ホール(1,2) クリーヴランド、セヴェランス・ホール(3,4)
録音方式:ステレオ(アナログ/セッション)
Disc3-5
● 歌劇『ペレアスとメリザンド』全曲
エリザベート・ゼーダーシュトレーム(ソプラノ)
ジョージ・シャーリー(テノール)
ドナルド・マッキンタイア(バリトン)
イヴォンヌ・ミントン(アルト)、他
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団
ピエール・ブーレーズ(指揮)
録音時期:1969年12月〜1970年1月
録音場所:ロンドン、アビー・ロード・スタジオ
録音方式:ステレオ(アナログ/セッション)