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TOP > My page > Review List of つよしくん
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4 people agree with this review 2011/01/02
何よりも第29番が素晴らしい。録音も、本盤の中では最も新しい1965年の録音であるが、クレンペラーの最晩年の至芸を味わうことができる超名演だ。ゆったりとしたインテンポによる演奏で、作品の内面に沈み込んでいくような深沈とした味わいが見事であるが、その堂々たる進行の威容は、あたかもベートーヴェンの交響曲を演奏するかのような雄大なスケールを誇っていると言える。木管楽器の活かし方が、いささか度が過ぎる箇所がないわけではないが、これだけ第29番の魅力を満喫させてくれれば文句は言えまい。次いで、第31番を採りたい。モーツァルトの中期の作品を、これだけの極大なスケールで指揮した演奏は皆無。クレンペラーは、同曲が中期の作品という位置づけに拘らず、後期の作品と変わらぬアプローチで指揮をしているのだ。したがって、その壮大なスケール感においては類例は見ないが、いささか重々しく感じる箇所もないわけではない。リンツは、本盤の中では、最も古い録音(1956年)であるが、前作の同時期の録音である第25番とは異なり、ここには、最晩年のクレンペラーの芸風の萌芽があらわれていると言える。モーツァルトを聴くというよりは、ベートーヴェンの初期の交響曲を聴くと言った趣きであるが、その内容の深さや壮大なスケール感においては、群を抜いた名演と高く評価したい。HQCD化によって、音質が鮮明になったのは素晴らしい。
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2 people agree with this review 2011/01/01
録音年代の異なる第25番と、第36番&第39番を分けて評価したい。1962年に録音の第36番&第39番は、クレンペラー最晩年の芸風がよくあらわれたスケール雄大な名演だ。ややゆったりとしたインテンポによる演奏で、木管楽器の絶妙な活かし方など、随所に見られるニュアンスの豊かさは、モーツァルト演奏の理想像とも言うべきアプローチではあるが、全体的なイメージは、むしろ、ベートーヴェンの初期の交響曲を思わせるような力強い響きが支配的だ。特に、第39番の終楽章などにおける、一歩一歩着実に踏みしめていく力強いリズム感は、あたかも巨像が進軍するかのような圧倒的な迫力に満ち溢れており、その壮大なスケール感は、過去のどの演奏よりも優れていると言えるだろう。他方、第25番は、晩年のクレンペラーとは一味もふた味も異なる快速のテンポによる演奏だ。かのワルターの名演にも匹敵するが、ワルターの演奏と異なるのは、ワルターのドラマティックに対して、クレンペラーの造型の厳格な凝縮ということになろうか。いずれにせよ、モーツァルトの疾風弩闘の青春期を描いたとも言われる同曲の演奏としては、ワルターと同様に理想的な名演と言えるだろう。HQCD化によって、音質はかなり鮮明になったが、幾分、音調が明るくなり過ぎたきらいはある。
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3 people agree with this review 2011/01/01
尾高忠明&札幌交響楽団による北欧の管弦楽曲集の第2弾であるが、これらの作品の魅力を存分に味わうことができる素晴らしい名演だ。第1弾とは異なり、選曲は実に渋い。グリーグ作曲の抒情組曲から4曲を抜粋した管弦楽編曲版にはじまり、グリーグ&シベリウスの二つの悲しい旋律と二つの荘重な旋律の対比、そしてシベリウスの中期の交響詩を2曲並べた後、シベリウスの最晩年の小品で締めるというラインナップである。いずれも両作曲家による傑作ではあるが、作品の認知度からすれば、必ずしも有名作品とは言い難いところ。ところが、尾高は、これらの作品の聴かせどころのツボを心得た、実に見事な演奏を行っていると言える。これらの楽曲が有する北欧風の旋律を清澄な美しさで歌いあげているのは実に感動的であり、それでいて、例えば、抒情組曲のトロルの行進や、夜の騎行と日の出の冒頭などのように、力強さにおいてもいささかの不足もない。札幌交響楽団も、尾高の指揮の下、最高のパフォーマンスを示していると言える。日本の一地方のオーケストラが、これだけの技量を持つのようになったことに、深い感慨を覚えた次第だ。録音も、マルチチャンネル付きのSACDであり、その極上の高音質録音は、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。
3 people agree with this review
東西冷戦の真っただ中の時代、鉄のカーテンの向こうからやってきた壮年期のリヒテルによる記念碑的な名演だ。リヒテルは、全集を好んで録音したピアニストではなく、これだけの実績のあるピアニストであるにもかかわらず、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を完成したという記録はない。単発的に、本盤の第1番や第3番などを録音したのみであり、あとは、ライブい録音が何点か遺されているのみ。その意味では、本盤は、リヒテルによるベートーヴェンのピアノ協奏曲録音の貴重な記録と言える。演奏も、リヒテルのスケール雄大なピアニズムを味わうことができる名演だ。力強い打鍵といい、繊細な抒情といい、壮年期のリヒテルの素晴らしい至芸を存分に味わうことが可能だ。ミュンシュ&ボストン交響楽団も、ドイツ風の重厚な演奏を行っており、リヒテルのバックとして、最高のパフォーマンスを示していると言える。併録のピアノソナタ第22番も、ワルトシュタインと熱情に挟まれて、必ずしも有名とは言い難い同曲の真価を聴き手に知らしめることに成功した稀有の名演。そして、何と言っても素晴らしいのは、XRCD&SHM−CD盤による極上の高音質録音。本盤は、1960年の録音であるが、とても、そうとは思えないような鮮明な音質だ。とりわけ、リヒテルのピアノが実にクリアに聴こえるのが素晴らしい。
7 people agree with this review 2010/12/30
素晴らしい名演だ。デイヴィスは、シベリウスの交響曲全集を3度も完成させているのに、ニールセンの交響曲の録音はこれまでして来なかった。その意味では、満を持しての挑戦ということになるのであろうが、長年の渇きを癒すのに十分過ぎるくらいの超名演に仕上がっていると言える。第4番は、もの凄い快速のテンポだ。同曲には、カラヤンによる早めのテンポによる名演があるが、あのカラヤンでさえ全曲に約37分を要しているのだから、この演奏の約31分というのが尋常ならざる早さということがわかろうというものである。おそらくは、史上最速の第4番ということになるのではないか。とても、老匠の指揮とは思えないような生命力に満ち溢れており、この交響曲の副題でもある「不滅」の名に恥じることのない演奏ということができる。それでいて、第3部の美しさも出色のものがあり、必ずしも勢いに任せた一本調子の演奏には陥っていない。第5番は、まちがいなく、同曲演奏史上最高の名演と言える。私は、このニールセンの最高傑作をはじめて聴いたのは、今からちょうど20年前になるが、20年目にして、漸く理想の名演に辿り着いたことに深い感慨を覚える。テンポは、第4番とは一転して、ゆったりとした堂々たるものだ。それでいて、同じく超スローテンポのクーベリックの演奏のようなおどろおどろしさはいささかもなく、常に、こうしたゆったりめのテンポ設定に必然性が感じられるのが良い。冒頭の高弦によるトレモロからして、他の演奏には感じられないような内容の濃さを感じさせる。その後の緩急自在のテンポ設定、打楽器の巧みな鳴らし方、ダイナミックレンジの効果的な活用など、どれをとっても、これ以上は求め得ないような至高・至純のレベルに仕上がっており、第5番が、ニールセンの最高傑作であることを聴き手に伝えるのに十分な超名演に仕上がっていると言える。録音も素晴らしい。マルチチャンネル付きのSACDは、ニールセンの打楽器や金管楽器、木管楽器を巧みに駆使したオーケストレーションの再現には最適であり、各楽器の位置関係が明瞭にわかるような鮮明な解像度には、大変驚かされた。正に、演奏、録音ともに超優秀な至高の名CDと高く評価したい。
7 people agree with this review
4 people agree with this review 2010/12/30
いずれも、カラヤン&ベルリン・フィルの黄金時代の名演であるが、特に、第104番がダントツの名演である。カラヤンの数々の伝記を紐解くと、カラヤンは、ハイドンの交響曲の中でも、この第104番に特に愛着を抱いていたとのことであるが、それだけに、ウィーン・フィルと1種、ベルリン・フィルとは、本盤を含め3種の録音が遺されている。いずれ劣らぬ名演ではあるが、世評が高いのは、ウィーン・フィルとの録音ということになるであろう。そして、ベルリン・フィルとの3種の録音の中では、ザルツブルク音楽祭での燃焼度の高いライブ録音(1979年)にも後ろ髪を引かれる思いがするが、オーケストラの安定性という意味では、本盤の演奏を第一に採りたい。カラヤン得意のレガートが程良い品の良さをたたえて全曲を支配しており、そのエレガントな優美さは、他のどの演奏よりも優れていると言える。ここでは、ベルリン・フィルの威力を見せつけようという押しつけがましさが微塵もなく、団員全員が、カラヤンの統率の下、音楽をする喜びを噛みしめているかのように楽しげだ。他の2曲も、この当時のカラヤン&ベルリン・フィルの絶頂期を伺い知ることができる名演。HQCD化によって、音質は非常に鮮明になった。ハイドンは、第101番や第104番の緩徐楽章で、弦楽器とフルートを同時に演奏させているが、フルートの音が鮮明に分離して聴こえるのは、この高音質化の素晴らしい功績と考える。
4 people agree with this review 2010/12/29
世界最高のオーケストラに何を掲げるのかは、聴き手によってその見解を異にすると言える。もちろん、ヨーロッパで言えば、ベルリン・フィル、ウィーン・フィルを掲げるのは当然であるが、北米にまでその範囲を拡げれば、シカゴ交響楽団も、その有力な候補となり得るのは間違いないところである。特に、記憶にも新しいショルティの時代は、芸術性などは別として、オーケストラが最高の機能美を誇った黄金時代と言えよう。そして、そのシカゴ交響楽団の卓越した技量のルーツを伺い知ることができるのが本盤ということになる。ライナーは、ショルティと同じハンガリー出身の指揮者であるが、同時代のセルやオーマンディと同様に、独裁者としてシカゴ交響楽団に君臨し、徹底的にオーケストラを鍛え抜いた。その成果が本盤であり、ベートーヴェンの交響曲の中でも難曲として知られる交響曲第7番を完璧に演奏した場合の模範解答的な演奏と言えよう。鉄壁のアンサンブルや、金管や木管の卓越した機能美には、いささかの綻びが見られないのは殆ど驚異ですらある。そして、こうした完璧な演奏を、XRCD&SHM−CD盤がこれ以上は求め得ないような鮮明さで再現してくれるのは何と言う幸せであろうか。第3楽章のあっさりとした解釈など、演奏に深みが感じられないという欠点はあるが、そうしたことはこの際触れないでおきたい。
7 people agree with this review 2010/12/29
これは素晴らしい名演だ。ショスタコーヴィチの交響曲の中でも、傑作でありながら、その陰鬱な内容から敬遠されがちな同曲であるが、本盤のような名演で聴くと、あらためて、同曲がショスタコーヴィチの交響曲を代表する傑作の一つであることを再認識させられる。指揮者もオーケストラも、そして独唱陣も無名の存在であるが、こうした無名の音楽家たちが、同曲演奏史上最高の名演を成し遂げたのだから、これは隠れた才能の発掘という一大快挙と言えるだろう。第1曲冒頭の、心の底から絞り出てくるような悲痛な弦楽の音色からして、我々聴き手は、この名演の魅力にたちまち惹き込まれてしまう。第1曲から第2曲、あるいは、第7曲から第8曲という、いわゆる動と静の描き分けが実に巧みであり、独唱陣の優秀さも相まって、あたかも壮大なオペラを聴くようなドラマティックな演奏に仕上がっている。前述の冒頭の表現もそうであるが、総体として弦楽器の合奏は見事であり、特に、低弦の響きの不気味さは、同曲の魅力を十二分に発揮するものとして、最高のパフォーマンスを示していると言える。さらに、間の取り方が絶妙。クルレンツィスの指揮は、若手指揮者とは思えないような堂々たるものであり、この間の取り方が素晴らしいが故に、同曲の命でもある打楽器が大いに生きてくることになるのである。録音も実に鮮明で素晴らしく、この超名演の価値を高めるのに大きく貢献している。
1955年の録音の再創造とのことであるが、バッハ演奏の歴史的な転換点になった衝撃的な名演に対する、このような試み自体には反対するものではない。しかしながら、こうした試みは、音楽学者にとっては画期的なものであっても、芸術的な感動とは別物のように考えている。グールドは、かなり早い段階から、聴衆の入るコンサートを拒否し、ひたすらスタジオでのレコーディングを中心として活動してきた。したがって、グールドにとっては、スタジオ録音そのものが、自らの芸術を世に問う唯一の機会であった。スタジオ録音の際には、グールドは鼻歌をうたったり、ハミングしたりするし、時には椅子が軋む音すらそのままに収録しているが、こうした所為のすべてが、グールドにとっては、自らの芸術の一大要素であったのである。ところが、本CDには、ピアノ以外の音はすべて消去(抹殺との表現を敢えて使いたい)されており、ただただコンピュータじかけとも言うべき音が紡ぎだされていく。聴きようによっては、ここには血も涙もない機械音だけが流れるという、実に寒々とした音響が創造されているのだ。要するに、音響であって音楽ではないのだ。たとえ、マルチチャンネル付きのSACDによる高音質録音であっても、私としては、そのような音響は願い下げである。前述のように、このような試み自体には必ずしも反対ではないので、一定の評価はするが、音楽芸術としての感動からは程遠いと言わざるを得ず、その意味では、★は2つの評価が精一杯と言ったところであろう。
はじめに、このXRCD&SHM−CD盤の驚異的な高音質を評価しなければならない。とても1955年の録音とは思えないような鮮明な音質であり、ボストンシンフォニーホールの豊かな残響も見事に再現されている。本盤は、既にSACDでも発売されているが、マスターテープにも遡ったであろう本盤の方に軍配をあげたい。これだけの高音質になると、演奏も俄然良く聴こえるようになる。ミュンシュは、ドイツ系住民も多いストラスブール出身であることもあり、ドイツ音楽を得意とする巨匠だ。とは言っても、そのすべてが優れているわけではない。ベートーヴェンなど、必ずしも名演を成し遂げてきたとは言い難いとの評価がなされているが、本盤のような高音質CDを聴くと、実は、そうしたネガティブな評価は、従来CDの録音のせいではないかとも思えてくる。本盤における重心の低い重量感溢れる響きは何と表現すればいいのであろうか。小澤時代になり、フランス音楽への適性が謳われるようになったボストン交響楽団ではあるが、ここでは、ドイツのオーケストラではないかとの錯覚を起こすような重厚な音色を出している。ミュンシュも、比較的テンポの変化をおさえた巨匠風の指揮を行っている。いつもの燃えまくるミュンシュを見ることはできないが、立派さにおいては無類の指揮ぶりであり、名演奏との評価が揺らぐことはいささかもない。
0 people agree with this review 2010/12/29
ヴッパータール交響楽団との数々の名演で、今や時の指揮者となっている上岡であるが、何と、ピアノ独奏曲を録音したのは大変な驚きである。しかも、曲目が、内容の深さで知られるシューベルトのピアノソナタ第21番とはさらに驚いた。このような深みのある楽曲を、自らのピアニストとしてのデビュー曲に選ぶとは、上岡としてもよほど自信があるのだろう。同曲は、その内容の深さとともに、その後のブルックナーや、さらには新ウィーン楽派に繋がっていくような斬新な響きに満ち溢れているが、カプリング曲として、アルバン・ベルクのピアノソナタを選択した点にも、上岡の同曲への深い理解を感じさせる。演奏は、ゆったりとしたテンポによる思い入れたっぷりのものであり、これは、上岡が、ヴッパータール交響楽団とともに演奏した数々の交響曲などと共通するアプローチと言える。第3楽章などでは若干の明るさ、軽快さも感じさせるが、全体としては、暗い音調が支配しており、同曲をここまで深刻に演奏した例は、これまでもなかったのではあるまいか。したがって、同曲に、ウィーン風の典雅さを期待する聴き手には、相当な批判もされようが、シューベルトの最晩年の心の深層を抉り出すという厳しいアプローチは、同曲の真の魅力を引き出そうという真摯な姿勢として、高く評価すべきものと考える。録音は、マルチチャンネル付きのSACDであるが、上岡による暗い音調もあって、イマイチ効果を発揮していないと感じた。
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5 people agree with this review 2010/12/29
本年はショパンイヤーということで、数々の新録音の発売や、旧録音の発売が相次いだ。私も、そのすべてを聴いたわけではなかったが、それでもかなりの点数のCDを聴き、そして、このサイトに相当数のレビューを投稿してきた。そうした数あるCDの中で、本盤は、私が、本年聴いた最高の超名演と高く評価したい。本盤におさめられた楽曲のすべてが、それぞれの楽曲の録音の中で、トップの座に君臨する(または争う)名演であると考える。ピアノソナタ第2番の、心の深淵から浮き上がってくるような開始に先ずはぞくぞくとさせられるが、その後の、思い入れたっぷりのコクのある演奏は凄いの一言。強靭な打鍵から繊細な詩情に至るまで、あらゆる箇所が深みのある透徹した表現に貫かれているのが素晴らしい。スケルツォ第2番は、ポゴレリチの名演に並ぶ至高の名演。ポゴレリチが、切れ味鋭い若武者の快演とすれば、本演奏は、ショパンの心の内面に踏み込んだ深遠な名演と言えようか。特に、中間部の質感豊かな抒情性は、エデルマンとしても渾身の演奏と言えるのではないか。2つのノクターンも、これ以上は求め得ないような豊かな詩情に満ち溢れており、ノクターンの他の諸曲の演奏への期待を抱かせるのに十分な出来栄えだ。ピアノソナタ第3番も凄い。卓越した技量はもちろんのこと、ダイナミックレンジの思い切った採り方や、楽曲の内面に鋭く切り込んでいく深遠なアプローチ、抒情的な箇所の詩情豊かさなど、評価する言葉が思いつかないような至高・至純の高みに達した超名演と評価したい。SACDによる極上の超高音質録音も、この至高の超名演の価値をさらに高めることに大きく貢献している。
5 people agree with this review
8 people agree with this review 2010/12/28
驚天動地の名演だ。名演の前に超をいくつか付け加えてもいいのかもしれない。それくらい、弦楽四重奏曲の通例の演奏様式の常識を覆すような衝撃的な解釈、アプローチを示していると言える。アルカント弦楽四重奏団は、昨年度も、レコード・アカデミー賞の銅賞を受賞した、バルトークの弦楽四重奏曲の超名演を成し遂げているが、本盤の衝撃は、その比ではない。ドビュッシーとラヴェルの有名な弦楽四重奏曲の間に、デュティユーの弦楽四重奏曲をカプリングするという選曲のセンスの良さも光るが、この有名曲であるドビュッシー、ラヴェルの弦楽四重奏曲が含有する作品の内面への追及が尋常ではない。ダイナミックレンジの桁外れの幅の広さや、極端とも言うべき緩急自在のテンポの変化を駆使して、ひたすら作品の内実に迫っていくアプローチには、ただただ頭を垂れるのみ。それでいて、例えばラベルの第3楽章などに見られる情感豊かさは、筆舌には尽くしがたい美しさを誇っていると言える。デュティユーの各楽章(部と言ってもいいのかもしれない)毎の思い切った描き分けは、難解とも言える同曲の本質を聴者に知らしめるという意味において、これ以上は求め得ないような理想的な演奏を行っていると言える。それにしても、これらの各楽曲の演奏における4人の奏者の鉄壁のアンサンブルは、何と表現していいのであろうか。それぞれが若手奏者であるにもかかわらず、単なる技術偏重には陥らず、常に作品の内面を抉り出そうと言う真摯な姿勢には深い感銘を覚えるとともに、この団体の今後の更なる発展を予見させるものと言えよう。録音も素晴らしい。
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6 people agree with this review 2010/12/27
本年度のレコード・アカデミー大賞を受賞したCDであるが、それに相応しい超名演であると高く評価したい。アーノンクールと言えば、ベートーヴェンやブラームス、シューベルト、ドヴォルザークの交響曲などに、数々の録音を遺してきているが、その際のアプローチは、古楽器奏法をイメージとした革新的とも言えるもの。従来の伝統的、正統的なアプローチには背を向け、只管斬新な解釈を示すべく研鑽を積んできた。ところが、本盤のドイツ・レクイエムにおいては、そのような革新性は皆無であり、むしろ、同曲に名演を遺してきた独墺系の指揮者、例えば、クレンペラーやカラヤンなどの、いわゆるドイツ正統派の解釈に列に連なる演奏を繰り広げていると言える。アーノンクールも、かなりの回り道をしたが、ついに、ドイツ音楽の正統的な解釈の原点に立ち返ってきたと言える。本演奏における、ゆったりとしたテンポによる威風堂々たるたたずまいは、正に巨匠のなせる業と言えよう。この曲に顕著な清澄さや、ここぞと言う時の壮麗な迫力、そして、絶妙なゲネラルパウゼなど、どこをとっても見事な表現を行っており、過去のいかなる同曲の名演も及ばない、至高・至純の境地に達していると言える。アーノンクールにとっては手兵とも言ってもいいアルノルト・シェーンベルク合唱団や、独唱陣、更には、ウィーン・フィルも最高のパフォーマンスを示していると言える。録音も、ホールの残響を活かした名録音であり、本名演の価値を高めるのに大きく貢献している。
6 people agree with this review
4 people agree with this review 2010/12/26
聴き終えた後の爽快感はポリーニが一番だ。例えば、同じスケルツォの全集を録音したポゴレリチなどと比較するとよくわかる。ポゴレリチ盤は、聴く際にも凄い集中力を要求されるだけに、聴き終えた直後は、もう一度聴きたいとは思わない。一度聴いただけで満腹になってしまうのである。しかしながら、しばらく時間が経つと、もう一度聴きたくなる。そして、その強烈な個性が頭にこびりついて離れない。ところが、ポリーニのスケルツォは、聴き終えた後の疲れはないが、しばらく経つと、どういう演奏だったのかすぐに忘れてしまう。それ故に、もう一度聴きたいとは思わないから、CD棚の埃の中に埋もれていく。これは子守歌も舟歌も同じ。これらの楽曲をはじめて聴くには最適のCDと言えるが、スケルツォや舟歌の本質を味わおうとするのであれば、やはり、他の個性的な内容のある演奏を聴くべきである。こうした演奏評価は、一流のピアニストにとってははなはだ不本意なことである。本盤は、今から20年も前の録音。最近では、ポリーニも円熟の境地に足している。例えば、ショパンで言うと、夜想曲全集などの名演も成し遂げてきており、仮に、本盤の各楽曲を再録音すれば、次元の異なる名演を成し遂げることができるのではないか。本盤の各楽曲は、いずれも有名曲だけに、大いに期待したい。
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