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Review List of 日向 爽 

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  • 2 people agree with this review
     2016/11/09

    チャイコフスキーは、最も早く西欧で認められたロシアの作曲家ということになっているが、その反面、ロシア国内では、作風がロシア的でないとして批判を浴びていたそうだ。
    チャイコフスキーは、そうした国内の批判をかわすために、民謡などロシア風の素材を用いて作曲もしたが、逆に今や、ロシア国内では、そうした曲はチャイコフスキーの作品の中では出来が悪いとみなす向きもあるようだ。

    そうした事情を反映してか、ロシアを代表する指揮者、ユーリ・テミルカーノフが指揮するチャイコフスキーの作品は格調高く色彩豊かで、まさに西欧風の洗練の極みであり、日本人が想像しがちなステレオタイプの「ロシア臭い」チャイコフスキー像とは大きく異なっている。

    ロイヤルフィルのアンサンブルもよく練られ、細部まで彫琢されていて、完成度も高く、これから初めてチャイコフスキーの交響曲を聴くという人には、ぜひおススメしたいセットだ。

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  • 3 people agree with this review
     2016/03/27

    ネヴィル・マリナーが英国のメジャー・オーケストラの首席・次席、またはそれと同等の実力を持つ奏者を集めて結成したスーパー・オーケストラ、アカデミー室内管弦楽団(Academy of St. Martin in the Fields、略称ASMF)。
    一例として、ロンドン交響楽団の首席フルート奏者を務めたウイリアム・ベネット、ロンドンフィルの首席オーボエ奏者を務めたニール・ブラック、BBC交響楽団の首席ホルン奏者を務めたティモシー・ブラウンなどが挙げられる。

    ブランデンブルグ協奏曲は、マリナー&ASMFとしては1970年、1980年に続く三度目の録音となるが、原点(1970年録音)に戻って各パート一人を基本とし、録音当時の最新の研究なども取り入れ、彼らの集大成となっていると思われる。
    同じ現代楽器のリヒターやパイヤールとASMFとの差は、ASMFが結成以来、故サーストン・ダートらの指導で、一貫して古楽(ピリオド)奏法を取り入れ、古学様式(ピリオド・スタイル)の演奏を目指している点にあると言えるだろう。
    もともとASMFは、英国の音楽学者・故サーストン・ダートが、自身の古学研究の成果を演奏に生かしたいとマリナーに相談したことがきっかけとなって結成された団体なので、現代楽器が主ではあるが、バッハやヘンデル、テレマン、ヴィヴァルディなどの作品では作曲者の自筆譜を用い。古(ピリオド)楽器や古楽(ピリオド)奏法を取り入れるなど、古学様式(ピリオド・スタイル)の演奏を目指してきた。
    今回の録音セッションでも、英国古楽界の重鎮ジョージ・マルコム(チェンバロ)、ホグウッドやピノックと共演し自身のアンサンブルを率いても同曲を録音しているフィリップ・ピケット(リコーダー)、啓蒙時代管弦楽団(Orchestra of the Age of Enlightenment)でも同曲を録音しているティモシー・ブラウン(ホルン)やマーク・ベネット(トランペット)といった「持ち替え」の奏者(現代楽器も古楽器も演奏する奏者)が参加している。

    ASMFでは、音楽表現はメンバーの合議制で決まるので、指揮者マリナーの個性は演奏に反映されない。
    しかし、一人一人の奏者が自信と確信を持って主体的に音楽を奏でるASMFの演奏は、終始、音楽をする喜びに満ち溢れていて、聴く者を惹きつけてやまないだろう。

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  • 25 people agree with this review
     2014/03/18

    ネヴィル・マリナーはフィルハーモニア管とロンドン響で第二ヴァイオリンの首席奏者を務めたヴァイオリンの名手であり、室内楽の達人でもある。
    英国の音楽学者サーストン・ダートから自身の古楽研究の成果を実際の演奏にしたいと相談されたのがもとで結成されたのが、彼の手兵アカデミー室内管弦楽団である。実際の名前はAcademy of St. Martin-in-the-Fieldsといい、マリナーによると「St. Martin-in-the-Fields教会に集う名手たち」というような意味らしい。長い名前なので英国ではASMFと略すか、単に「The Academy」と呼ばれている。マリナーについて語ることはASMFについて語ることにもなる。
    ASMFのメンバーになるには「ロンドンのメジャーオーケストラの首席または次席奏者、あるいは同等の実力のある者に限る」という厳しい条件があるそうだ。名手ぞろいのASMFは、マリナー監督に召集されたクラシック音楽ワールドカップのイングランド代表チームとも言える、オールスターチームなのである。
    マリナーは当初、コンサートマスター(英国ではリーダーと呼ぶ)としてASMFを統率していたが、合奏がうまく合わない箇所が出てきたためメンバーから指揮をするよう求められた。そこでピエール・モントゥーの好意で彼のマスタークラスに編入して指揮法を学んだ。ちなみにマリナーは影響を受けた指揮者として、オットー・クレンペラー、ヘルベルト・フォン・カラヤン、ジョージ・セルらの名を挙げているが、特にジョージ・セルについては、クリーヴランド管に客演した際には資料室に立ち寄って、同楽団所蔵の楽譜へのセルの書き込みを見て勉強するほど傾倒している。
    ここにマリナーとASMFのごく初期の音源が集大成されることになったのは非常にうれしいことだ。その魅力は以下の三点に集約されるだろう。
    まず一つは、英国音楽界のオールスターチームであるASMFの名人芸を堪能できることだ。ヘンリック・シェリングに師事し、堅実で心にしみるヴァイオリン演奏を聴かせる、コンサートミストレスのアイオナ・ブラウン女史や、ジャン・ピエール・ランパルに師事し、映画「アマデウス」ではサリエリが震えるほどの(笑)美麗なフルート演奏を聴かせたウィリアム・ベネット、ケンペ指揮ロイヤルフィルの「シェエラザード」(リムスキー=コルサコフ)でもヴァイオリン・ソロを務めた名手アラン・ラヴディなどなど、イングランド代表の名人奏者たちの鮮やかな連係プレーや見事な個人技には誰しも思わず聴き惚れてしまうことだろう。また併設された合唱団の上手さも特筆に価する。
    次に、音楽学者サーストン・ダートの依頼がきっかけとなって結成された、元祖「なんちゃって古楽」集団ASMFの、当時最先端の古楽演奏を懐しむことができる。ASMFにはサーストン・ダートやクリストファー・ホグウッド、サイモン・プレストンら英国古楽界の重鎮が奏者やブレーンとして参加しており、古楽奏法や、一部だが古楽器も取り入れている。ここに収録された演奏以外ではデイヴィッド・マンロウ、トレヴァー・ピノック、フィリップ・ピケットらとも共演している。図書館からファクシミリで自筆譜を取り寄せ、ブレーンとなる音楽学者の手によりASMF専用の楽譜が作られることもある。サーストン・ダートが演奏に加わり、第二番をフルート協奏曲、第三番をヴァイオリン協奏曲に見立てた「管弦楽組曲」(J.S.バッハ)や、ホグウッドの編集・校訂により初演時のスタイルを再現した「メサイア」(ヘンデル)、当時は珍しかったバイヤー版による「レクイエム」(モーツァルト)、通奏低音に様々な工夫を凝らした「四季」(ヴィヴァルディ)などは、今でも十分に魅力を感じられることだろう。
    そして三つ目は聴き手もASMFのメンバーと共に音楽を楽しめることだ。どのディスクを聴いても彼らが心から楽しんで演奏していることが伝わってくるようで、聴き手も楽しくなる。その根本的な理由はASMFが合議制を採っていて、練習時にメンバーが自由に意見やアイデアを出し合って演奏を作り上げていることにあるのだろう。もちろんマリナーも意見は言うが、むしろメンバー同士の対立する意見の調整に携わることが多く、彼自身の言葉によれば、練習のときに一番口数が少ないのが指揮者(コンマス)のマリナーなのだそうだ。指揮者にうるさく指図されることがなく、お互いに信頼できる仲間同士で自由に意見やアイデアを出し合って演奏できるASMFは演奏者にとって一つの理想郷(ユートピア)であり、そのためASMFへの参加希望者は増える一方で、ついにはドヴォルザークやチャイコフスキーの交響曲なども録音できるほど人数が増えてしまったようだ。
    もちろん、この28枚のディスクは彼らの活動の記録のほんの一部に過ぎず、これだけでマリナー&ASMFの魅力の全てに触れることはできないだろうが、それなりに俯瞰できる貴重なセットだと思われる。続編もぜひ期待したい。

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  • 29 people agree with this review
     2010/09/13

    このインバルのブルックナー全集には、録音が行われた1980年代には極めて珍しかった、次の4つの特徴がある。1.テンポがとても速く、すっきりとした抜けのよい響きで、「オルガンのよう」なブルックナー特有の重厚さを強調していない 2.この全集の録音当時はあまり演奏されなかった楽譜(第3番、第4番、第8番の「第1稿」など)を用いて演奏している 3.第9番の第4楽章の補完されたものを演奏している 4.習作の第0番や第00番を含む完全全集である これらのことから熱心なブルックナーファンほど、この全集の資料的価値を認めつつも、「ブルックナーらしくない演奏」として異端視するような傾向があった。しかし、21世紀になった現在、この全集で採られているテンポもそれほど速くは感じられなくなってきたし、ブルックナー本来の対位法の妙味をを生かすため、「オルガン的」な響きのを厚みもあまり強調されなくなってきた。第3番、第4番、第8番を第1稿を用いて演奏したり、第9番を補完された第4楽章付きで演奏するのも、特に珍しいことでもなくなってきている。習作の第0番や第00番も曲の価値が認められ、取り上げられる機会は増えてきている。そうした今、改めてこの全集を聴き直してみると、ここでのインバルの演奏にも控えめだが効果的なテンポの変化や「ため」はやはりあり、それなりに音の厚みもあって決して「テンポが速過ぎる薄っぺらな演奏」ではなかったことに気づく。むしろ、この全集が録音された1980年代に、インバルは既に30年後の21世紀のブルックナー演奏のスタンダード(基準)を予測し、実践していたことに驚かされる。時代がインバルに追いついた今、インバルが次に目指すものは何か? そしてまたブルックナー演奏はこれからどのように変遷していくのか? 再リリースされて入手しやすくなったこの機会に、そういったことをいろいろと考えながら、改めてじっくりと聴いてみたい全集である。

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  • 1 people agree with this review
     2010/08/30

    ロバート・ショウは厳格なトスカニーニににも信頼されていた「合唱の神様」として高名だが、オーケストラの統率にも卓越した手腕を持っていた。そのことは、彼がクリーヴランド管で長年、副指揮者としてリハーサルやコンサートを指揮し、当時の音楽監督ジョージ・セルの厚い信頼を得ていたことからもわかる。アトランタ交響楽団と、ショウが設立した併設の合唱団は日本では無名だが、両者ともショウの指導によって優れた演奏水準に達していたことが、このディスクから聴きとれる。奇をてらわないオーソドックスな演奏で、オケ・合唱・独唱が一体となって織り成す、澄み切った豊かなハーモニー、柔らかくしなやかな歌いまわしに魅了される。そして、音楽は演奏が進むにつれて自然に高まり、白熱してゆく。ミサ・ソレムニスを初めて聴く人には、他の歴史的・個性的な演奏よりも、このディスクから聴くことをお薦めしたいと思う。モーツァルトのミサはややロマン派側からのアプローチなので、そこがお気に召さない人もいるかもしれないが、演奏水準はベートーヴェン同様に高い。テラークの録音は、デンオンのワンポイント録音シリーズなどと同様、個々の楽音ではなくコンサートホールの響きを捕らえており見事なものだ。

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  • 5 people agree with this review
     2010/02/09

    マリナーやピノックら英国の音楽家たちが全幅の信頼を置くサイモン・プレストン。それもそのはず、彼はウエストミンスター大聖堂やオックスフォード・キリスト教会といった英国の名門での要職を歴任しているのだから当然だろう。
    古楽にあまり詳しくない人には、映画「アマデウス」でモーツァルトやサリエリの鍵盤楽器の独奏を代演したのがこのプレストンだといえば、より身近に感じられるかもしれない。例のサリエリが皇帝に献上したモーツァルト歓迎のマーチが、いつのまにか「もう飛ぶまいぞこの蝶々」になってしまうヤツもこのプレストンの演奏である。
    そのプレストンが満を持してリリースしたこのバッハのオルガン曲全集は、最近の古楽研究の成果を取り入れ「多彩な装飾音の追加」「ノン・レガート奏法」を積極的に行い、バッハの名曲を生き生きと再現している。その一方で「オルゲルビュッヒライン」や「シュープラー・コラール集」などでは演奏にしみじみとした深みを感じさせる。
    なお、オリジナルのボックスセットは、録音に使用された数々のイギリスの名オルガンの写真と図解を掲載したブックレットが同梱されており、さながら「(演奏例つき)英国名オルガン事典」といった趣もあった。ちなみにマリナー/ASMFらの収録で有名なスミス・スクエアの聖ヨハネ教会のオルガンも録音に使用されており、写真と図解で見ることができた。

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  • 0 people agree with this review
     2009/12/20

    ポコポコ…という素朴でかわいらしい木琴の音で奏でられるバッハ。伸ばす音をトレモロにしたりとか、バッハが譜面に書いていない音は極力加えないようにしているようだ。レオンハルトのチェンバロ用編曲よりも素のままのバッハだ。ソナタ第3番(BWV1005)のフーガを聴いたときに、思わず腹を抱えて笑ってしまいました(すいません)。奏者本人は真剣にバッハと対峙しているようなのだが、そこがまた可笑しい! 本人に「ウケよう」という気がないので、繰り返し聴いても少しもあざとくなく、むしろここまでしてバッハを弾きたかったJean Geoffroyがいとおしくすら感じられる。「入手困難」となっているパルティータも何とかして聴いてみたい。「シャコンヌ」はどんなかな?

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  • 4 people agree with this review
     2009/09/12

    濃厚で甘口の普通酒(燗酒にサイコー!)のような朝比奈の演奏とは対照的で、辛口の、磨き抜かれた大吟醸酒という感じ。きりっとしていて澱みなく、変なタメもなくて(笑)、すっきりとスムーズな演奏。ブルックナーを聴いて耳が洗い清められるような思いをしたのは、これが初めてではないだろうか。この演奏を聴くと、ハイティンクは高みに上っているのではなく、もともとこのような遥かな高みに居たのが、年とともに我々下々のところへ降りて来てくれているように思われる。復刻もすばらしく、最新録音にもそう大きなひけを取らない音質に仕上がっている。このロイヤルコンセルトヘボウ管は「美しい音色」が特長だとよく言われるが、このディスクを聴いてなるほどと実感することができた。

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  • 4 people agree with this review
     2009/06/26

    寒々として地味渋な表情の老人。その心の奥底には今も消すことのできない炎が、決して燃え上がることなくくすぶっている。「ワシの人生も、もはやここまでじゃ。だが生まれてきたことを後悔なぞしておらぬわ。大した成果はないとはいえ、為すべきことは為したのでな」 しわぶきとともに、そんな呟きが聞こえてきそうな演奏だ。
    ハンブルク国立フィルは決して名人オケではないが、ルートヴィヒの楽曲の構成感を良くとらえた、細部まで考え抜かれた指揮によって、破綻なく優れた演奏を聴かせてくれる。
    これは長年LPで聴かれてきた知る人ぞ知る大名演だが、CD化によってこれからも多くの人に末永く聴き継がれていって欲しい。

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