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Review List of つよしくん 

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     2011/02/09

    スウィトナーは、ドイツ・シャルプラッテンに、ブルックナーの交響曲を第1、第4、第5、第7、第8の5曲を録音したが、病気のためにその後の録音を断念せざるを得なかったと聞く。第1を録音していることに鑑みれば、おそらくは全集の完成を目指していたものと考えられるが、録音された5曲の演奏内容の水準の高さを考えると、全集完成に至らなかったのは大変残念なことであると考える。せめて、第3や第9を録音して欲しかったというファンは、結構多いのではないだろうか。スウィトナーのブルックナーへのアプローチは非常に考え抜かれたものだ。というのも、各交響曲によって、微妙にアプローチが異なるからである。第8は、緩急自在のテンポ設定やアッチェレランドを駆使したドラマティックな名演であったし、第5は、快速のテンポによる引き締まった名演であった。他方、第4では、ゆったりとしたインテンポによる作品のみに語らせる自然体の名演であった。第1は、どちらかと言えば、第4タイプの演奏に分類されると思われるが、スウィトナーは、このように、各交響曲毎に演奏内容を変えているのであり、こうした点に、スウィトナーのブルックナーに対する深い理解と自信を大いに感じるのである。第7は、第4と同じタイプの演奏。つまりは、作品のみに語らせる演奏と言うことができる。同じタイプの名演として、ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデン盤があるが、当該盤は、オーケストラの重厚でいぶし銀の音色が名演たらしめるのに大きく貢献していた点を見過ごすことはできない。これに対して、本盤は、技量においては申し分ないものの、音色などに特別な個性を有しないシュターツカペレ・ベルリンを指揮しての名演であることから、スウィトナーの指揮者としての力量が大いにものを言っているのではないかと考えられる。録音も、ベルリン・キリスト教会の残響を活かしたものであり、きわめて秀逸である。

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     2011/02/07

    ブルックナーの第5については、昨年末、マークによる快速のテンポによる名演が発売された。全体を約66分というスピードは、とてつもないハイテンポであると言えるが、いささかも上滑りすることがない、内容豊かで重厚な名演であった。本盤のスウィトナー盤も、マーク盤ほどではないが、全体を約69分という、ブルックナーの第5としてはかなり速いテンポで演奏している。第1楽章の冒頭の弦楽器によるピツィカートはとてつもない速さであるし、その後の最強奏も畳み掛けるようなハイテンポだ。それでいて、歌うべきところは情感を込めて歌い抜くなど、いささかも薄味の演奏には陥っていない。スウィトナーは例によって、金管楽器には思い切った最強奏をさせているが、無機的には決して陥っていない。第2楽章がこれまたとてつもなく速い。冒頭のピツィカートなど、あまりの速さに、木管楽器との微妙なずれさえ感じられるが、これはいくらなんでも素っ気なさ過ぎとは言えないだろうか。それでも、それに続く低弦による主題は、ややテンポを落として情感豊かに歌い抜いている。その後は、早いテンポで曲想を進めていくが、浅薄な印象はいささかも受けない。第3楽章は、一転して中庸のテンポに戻る。その格調の高い威容は素晴らしいの一言であり、ここは本演奏でも白眉の出来と言えるのではないか。終楽章は、比較的早めのテンポで開始されるが、第1楽章や第2楽章のように速過ぎるということはない。その後は、低弦による踏みしめるような重厚な歩みや金管楽器の最強奏など、実に風格豊かな立派な音楽が連続する。フーガの歩みも、ヴァントほどではないが、見事に整理し尽くされており、雄渾なスケールと圧倒的な迫力のうちに、全曲を締めくくっている。いずれにしても、第2楽章冒頭など、やや恣意的に過ぎる解釈が聴かれないわけではないが、全体としては、名演と評価するのに躊躇しない。ベルリン・イエス教会の残響を活かした鮮明な録音も、本名演に華を添える結果となっている。

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     2011/02/06

    朝比奈には、コンサートの記録や遺された録音の数からしても、どうしてもブルックナー指揮者としてのイメージが拭えない。確かに、朝比奈のブルックナーには名演が多く、特に、最晩年の演奏は神々しささえ感じさせる至高・至純の名演揃いであった。では、朝比奈は、マーラーを無視していたかというと、決してそのようなことはない。確かに、第1は、記録によると演奏した形跡すらないようであるが、第2以降の交響曲は、コンサートでも相当回数採り上げ、かなりの点数のCDが発売されているという厳然たる事実を見過ごしてはならないだろう。特に、本盤の第2や大地の歌、第9等では、複数の録音が存在するなど、意外にもマーラーに対して一見識を持っていたのではないかとさえ思うほどだ。朝比奈のマーラーへのアプローチは、他のマーラー指揮者とはまるで異なる。荘重な微動だにしないインテンポで、マーラーがスコアに記したすべての音符を一音たりとも蔑にせずに音化していくというものだ。その意味では、朝比奈は、ベートーヴェンやブラームス、ブルックナーの交響曲に対するのと同様のアプローチで、マーラーの交響曲を指揮していることになる。それ故に、マーラーの交響曲が含有する劇的な要素などの描出にはいささか不十分な面もあると思うが、スケール雄大な壮麗さや、音楽の内面を抉り出していくような精神的な深みにおいては、他のマーラー指揮者による名演と互角に渡り合えるだけの豊かな内容を兼ね備えていると言える。本盤も、そうした朝比奈の真摯なアプローチによる壮麗な名演であり、その圧倒的な生命力や力強さにおいては、90年代の後年の録音(ポニーキャノン)よりも上位に置かれるべきものと考える。大阪フィルも朝比奈の指揮の下、素晴らしい演奏を展開しており、独唱陣や合唱団も最高のパフォーマンスを示していると言える。

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     2011/02/06

    いわゆるブルックナーの演奏の定石とされている荘重なインテンポを基調とした名演ではなく、ドラマティックな要素をより多くとり入れた異色の名演と評価したい。スウィトナーは、第4などでは、作品のみに語らせる自然体の演奏を行い、テンポにしても、音の強弱の設定にしても、いい意味での常識的な範疇におさめた演奏を展開していたが、この第8では、他の交響曲の演奏とは別人のような個性的な指揮を披露している。各楽章のトゥティに向けた盛り上がりにおいては、アッチェレランドを多用しているし、金管楽器も、随所において無機的になる寸前に至るまで最強奏させている。このようなドラマティックな要素は、本来的にはブルックナー演奏の禁じ手とも言えるが、それが決していやではないのは、スウィトナーがブルックナーの本質をしっかりと鷲掴みにしているからに他ならない。第1楽章の中間部の金管楽器の最強奏では、旋律の末尾に思い切ったリタルランドをかけるのも実に個性的であるし、第2楽章冒頭の高弦の響かせ方も、他の演奏では聴かれないものだけに新鮮味に溢れていると言える。トリオの美しさは出色のものであり、その情感の豊かさと朗々と咆哮するホルンの深みのある響きは、楽曲の魅力を表現し得て妙である。第3楽章は、非常にゆったりとしたインテンポで楽想を進めていく。弦楽合奏の滴るような厚みのある響きは美しさの極みであるし、金管楽器も木管楽器の奥行のある深い響きも素晴らしい。終楽章は、威容のある堂々たる進軍で開始するが、ティンパニの強打が圧巻のド迫力だ。その後も雄渾にして壮麗な音楽が続いていく。そして、終結部の猛烈なアッチェレランドは、ブルックナーというよりはベートーヴェンを思わせるが、いささかの違和感を感じさせないのは、スウィトナーの類稀なる指揮芸術の賜物であると考える。ベルリン・キリスト教会の豊かな残響を活かした鮮明な録音も、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。

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  • 2 people agree with this review
     2011/02/06

    作品のみを語らせる演奏というのはそうざらにあるわけではない。海千山千の指揮者が演奏をするわけであるから、作品の魅力もさることながら、指揮者の個性がどうしても前面に出てくることになるのが必定だ。さりとて、個性を極力自己抑制して、作品のみに語らせる演奏を行おうとしても、それが逆に仇となって、没個性的な薄味な演奏に陥ってしまう危険性も高いのが実情だからだ。ところが、スウィトナーはそうした単純なようで難しい至芸を見事に成し遂げてしまった。ブルックナーの第4では、同様の自然体のアプローチによる名演として、ベーム&ウィーン・フィル盤とブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデン盤がある。しかしながら、これらの両名演では、指揮者の力量も多分にあるとは思うが、それ以上に、ウィーン・フィルの深みのある優美な音色や、シュターツカペレ・ドレスデンのいぶし銀の音色による魅力が、名演に大きく貢献したという事実も忘れてはならない。これら両オーケストラと比較すると、シュターツカペレ・ベルリンは、力量においては決して劣るものではないとは思うが、特別な個性的な音を持っているわけではない。このような地味とも言えるオーケストラを指揮しての本演奏であるからして、スウィトナーの指揮者としての卓越した力量がわかろうと言うものである。ブルックナーの第4の魅力を、ゆったりとした安定した気持ちで味わうことができるという意味においては、本盤は、ベーム盤やブロムシュテット盤にも匹敵し得る至高・至純の名演と高く評価したい。ベルリン・キリスト教会の豊かな残響を活かした録音も実に秀逸だ。

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  • 5 people agree with this review
     2011/02/06

    スウィトナーは、ドイツ正統派の指揮者として、ベートーベンやシューベルト、ブラームスなどの交響曲全集を録音し、演奏内容もいずれも極めて高い評価を得ている。ブルックナーについては、交響曲全集を完成させたわけではないが、第4番以降の主要な作品を録音するとともに、その演奏内容の質の高さから、スウィトナーとしても、自らの主要レパートリーとしての位置づけは十分になされていたものと考えられる。特に、本盤の第1は、ブルックナー指揮者としてその名を馳せている他の指揮者でさえ、演奏を行うことは稀な曲目でもあり、スィトナーが第1を録音したという厳然たる事実は、前述のような位置づけの証左と言えるのではなかろうか。演奏内容は、いかにもドイツ正統派と言った評価が適切な重厚な名演だ。スウィトナーの指揮は、聴き手を驚かすような特別な個性があるわけでもない。むしろ、曲想を格調高く丁寧に進めていくというオーソドックスなものであるが、かかるアプローチは、ブルックナー演奏にとっては最適のものであると言える。金管楽器を最強奏させているが、決して無機的になることはない。そして、堅固な造形美は、いかにもドイツ人指揮者ならではのものであるが、フレージングの温かさやスケールの雄大さは、スウィトナーの個人的な資質によるものが大きいと考える。シュターツカペレ・ベルリンも重心の低い深みのある音を出しており、ブルックナー演奏としても実に理想的なものと言える。ベルリン・キリスト教会の豊かな残響を活かした録音も素晴らしい。

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  • 6 people agree with this review
     2011/02/06

    録音は今から約4年前のものであるが、素晴らしい名演だ。本盤の2年前に録音されたピアノ協奏曲第3番&第5番も、録音の素晴らしさもあって、至高の名演であったが、本盤もそれに勝るとも劣らない名演揃いであると言える。ヤルヴィは、手兵ドイツ・カンマーフィルとともにベートーヴェンの交響曲全集の名演を成し遂げているし、仲道郁代は、ベートーヴェンのピアノソナタ全集の名演を成し遂げている。その意味では、両者ともにベートーヴェン演奏に多大なる実績を有するとともに、相当なる自信と確信を持ち合わせて臨んだ録音でもあり、演奏全体にも、そうした自信・確信に裏打ちされたある種の風格が漂っているのを大いに感じさせる。オーケストラは、いわゆる一部にピリオド楽器を使用した古楽器奏法であり、随所における思い切ったアクセントや強弱の変化にその片鱗を感じさせるが、あざとさを感じさせないのは、ヤルヴィの指揮者としてのセンスの良さや才能、そして芸格の高さの証左と言える。第1番は、第1楽章冒頭をソフトに開始。しかしながら、すぐに強靭な力奏に変転するが、この変わり身の俊敏さは、いかにもヤルヴィならではの抜群のセンスの良さと言える。仲道のピアノも、透明感溢れる美音で応え、オーケストラともどもこれ以上は求め得ない優美さを湛えていると言える。それでいて、力強さにおいてもいささかも不足もなく、ヤルヴィも無機的になる寸前に至るまでオーケストラを最強奏させているが、力みはいささかも感じさせることはない。第2楽章は、とにかく美しい情感豊かな音楽が連続するが、ヤルヴィも仲道も、音楽を奏でることの平安な喜びに満ち溢れているかのようだ。終楽章は一転して、仲道の強靭な打鍵で開始。ヤルヴィもオーケストラの最強奏で応え、大団円に向かってしゃにむに突き進んでいく。後半の雷鳴のようなティンパニや終結部の力奏などは圧巻の迫力だ。それでいて、軽快なリズム感や優美さを損なうことはなく、センス満点のコクのある音楽はここでも健在である。第2番は、第1楽章冒頭の何という美しさ。特に、弦楽器のつややかな響きには抗し難い魅力がある。仲道のピアノも、実に格調高く、強靭な打鍵から繊細な抒情に至るまで表現の幅は著しく広い。そして、ヤルヴィと仲道の息の合った絶妙なコンビネーションが、至高・至純の音楽を作り出していると言える。カデンツァの格調高い堂々たるピアニズムは、仲道のベートーヴェン弾きとしての円熟の表れとして高く評価したい。第2楽章は、第1番の第2楽章と同様に、とにかく美しいとしか言いようがない情感豊かな音楽が連続する。仲道の落ち着き払ったピアノの透明感溢れる美しい響きには、身も心もとろけてしまいそうだ。終楽章は、疾風の如きハイスピードだ。それでいて、オーケストラのアンサンブルにいささかの乱れもなく、仲道の天馬空を行く軽快にして典雅なピアノとの相性も抜群だ。終結部の若干テンポを落とした終わり方も、センス満点である。ピアノと管弦楽のためのロンドは、あまり知られていない作品ではあるが、ヤルヴィや仲道の演奏を聴いていると、実に魅力的な作品に変貌する。両者の相性の良さが演奏全体を支配しており、緩急自在のテンポ設定といい、強弱の思い切った変化といい、ヤルヴィも仲道も、それぞれが自由闊達な表現を行っているのに、音楽全体の造型がいささかも弛緩しないのは驚異的な至芸と言える。そして、第4番であるが、第1楽章は、これまでの諸曲と異なり、実に巨匠風の重々しさで開始される。仲道の落ち着き払ったピアノもそうであるし、ヤルヴィの雄渾な指揮ぶりもそうだ。それでいて、時折聴くことができる仲道の透明感溢れる繊細で美しいピアノタッチが、そうした重々しさをいささかでも緩和し、いい意味でのバランスのとれた演奏に止揚している点も見過ごしてはならない。第2楽章は、さらに重々しく、あたかもベートーヴェンの心底を抉り出していくような深みは、我々聴き手の肺腑を打つのには十分だ。そして、終楽章はやや早めのテンポで進行し、これまでの諸曲を凌駕するような圧倒的なダイナミズムと熱狂のうちに、全曲を締めくくるのである。録音についても触れておきたい。前作の第3番&第5番も同様であったが、本盤は、他のSACDでもなかなか聴くことができないような鮮明な極上の超高音質録音である。しかも、マルチチャンネルが付いているので、音場の拡がりには圧倒的なものがあり、ピアノやオーケストラの位置関係さえもがわかるほどだ。ピアノの透明感溢れる美麗さといい、オーケストラの美しい響きといい、本盤の価値をきわめて高いレベルに押し上げるのに大きく貢献していると評価したい。ライナー・ノーツの平野昭氏による解説も素晴らしい。最近のライナー・ノーツは、経費節減という側面もあるのだろうが、粗悪で内容の薄いものが氾濫している。その意味では、本盤の平野氏の詳細な演奏内容の分析を加えたライナー・ノーツは、そうした嘆かわしい傾向に一石を投ずるものとして高く評価したい。

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     2011/02/06

    シマノフスキは、19世紀末から20世紀前半にかけて活躍したポーランドを代表する作曲家であり、交響曲や協奏曲、室内楽曲、器楽曲、オペラなどに至るまで、あらゆるジャンルに渡る作品を遺したにもかかわらず、お世辞にもメジャーな作曲家とは言えない存在に甘んじている。シマノフスキの前後に位置する作曲家、すなわち、ショパンや現代音楽の旗手の一人であるペンデレッキなどがあまりにも有名過ぎるというのにも起因しているのかもしれない。また、交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」で有名なグレツキにさえ、知名度において劣るのだから、遺された作品の質の高さを考えると、きわめて不当な評価を受けていると言わざるを得ない。近年では、ラトルが、一貫してシマノフスキを採り上げているし、昨年にはブーレーズによるきわめて優れた名演も生み出されており、今後、シマノフスキに対する評価が高まっていくことを大いに期待したい。本盤は、そうしたシマノフスキが作曲した2曲の弦楽四重奏曲を収録したものであるが、シマノフスキの中期と最晩年の作品だけに、その作風の大きな変化を味わうという意味においても、好カプリングCDであると言える。演奏は、カルミナ四重奏団であり、しかも、デビューCDとのことであるが、傑作でありながら、決して親しまれているとは言えない楽曲をデビュー曲として選択したところに、この団体の底知れぬ実力を感じさせる。そうしたカルミナ四重奏団の自信と気迫が、本演奏全体にも漲っており、他にも録音が殆ど存在しないことを考慮すれば、本演奏こそ、シマノフスキの弦楽四重奏曲の決定盤としての評価は、あながち不当なものではないと考える。Blu-spec-CD化による音質向上効果も大変目覚ましいものがある。

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  • 5 people agree with this review
     2011/02/05

    素晴らしい名演だ。ブロムシュテットによる本演奏に、何か特別な個性があるわけではない。ブロムシュテットは、第40番においては、地に足がついたゆったりした荘重なインテンポで、第41番においては、若干早めの軽快なインテンポで、愚直に楽想を進めていくのみである。ブロムシュテットは、自己の解釈をひけらかすようなことは一切せずに、楽曲の魅力をダイレクトに聴き手に伝えることのみに腐心しているようにも感じられる。これは、作品にのみ語らせる演奏ということができるだろう。それでも、演奏全体から漂ってくる気品と格調の高さは、ブロムシュテットの指揮による力も多分に大きいものと考える。いずれにしても、モーツァルトの第40番や第41番の魅力を深い呼吸の下に安心して味わうことができるという意味においては、トップの座を争う名演と言っても過言ではないと思われる。こうした作品のみに語らせるアプローチは、時として没個性的で、無味乾燥な演奏に陥ってしまう危険性がないとは言えないが、シュターツカペレ・ドレスデンによるいぶし銀とも評すべき重厚な音色が、演奏内容に味わい深さと潤いを与えている点も見過ごしてはならない。残響の豊かなドレスデンのルカ教会における高音質録音もきわめて優秀であり、Blu-spec-CD化によって、さらに、音場が拡がるとともに、音質により一層の鮮明さを増した点も高く評価したい。

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  • 8 people agree with this review
     2011/02/05

    ラトル&ベルリン・フィルの近年の充実ぶりを示す素晴らしい名演だ。今後、本演奏を皮切りとしてマーラーチクルスを開始するようであるが、今後の録音に大いに期待できる名演であると言える。ラトルのベルリン・フィルへのデビューは、マーラーの第5であったが、意欲だけが空回りしたイマイチの演奏であったと記憶する。その後の数年間は、ラトルもベルリン・フィルを掌握するのに苦労したせいか、凡演の数々を生み出すなど、大変苦しんだようである。しかしながら、数年前のマーラーの第9当たりから、ベルリン・フィルを見事に統率した素晴らしい名演の数々を聴かせてくれるようになった。本盤も、そうした一連の流れの中での圧倒的な名演だ。第1楽章の冒頭から、ゆったりとしたテンポで重厚な深みのある音色を出している。ここには、ラトルの復活に対する深い理解に基づく自信と風格が感じられる。トゥッティにおいてもいささかも力むことがなく、力任せの箇所は皆無。テンポの緩急やダイナミックレンジの幅の広さは桁外れであり、随所にアッチェレランドをかけるなど、劇的な要素にもいささかの不足はない。弦楽器のつややかな響きや、金管楽器の巧さも特筆すべきものであり、ベルリン・フィルも、アバド時代から続いた世代交代が、ラトル時代に入って、漸く安定期に入ったことを大いに感じることができる。終結部の大見得を切った演出は実にユニークであるが、あざとさをいささかも感じさせないのは、ラトルの復活への深い共感と理解の賜物であると考える。第2楽章は一転して早いテンポだ。しかしながら、情感の豊かさにおいては人後に落ちるものではなく、決して薄味な演奏には陥っていない。中間部の猛烈なアッチェレランドは実に個性的な解釈。第3楽章は、冒頭のティンパ二の強烈な一撃が凄まじい。その後の主部との対比は実に巧妙なものがあり、ラトルの演出巧者ぶりを大いに感じることが可能だ。それにしても、この楽章の管楽器の技量は超絶的であり、あまりの巧さに唖然としてしまうほどだ。後半の金管楽器によるファンファーレは、凄まじい迫力を誇っているが、ここでも力みはいささかも感じられず、内容の濃さを感じさせるのが素晴らしい。低弦の踏みしめるような肉厚の重厚な響きは、カラヤン時代を彷彿とさせるような充実ぶりだ。第4楽章は、ゆったりとしたテンポで進行し、静寂さが漂うが、ここでのメゾ・ソプラノのコジェナーは、素晴らしい歌唱を披露している。ベルリン・フィルも、コジェナーの歌唱と一体となった雰囲気満点の美演を披露している。特に、木管楽器の美麗な響きは、カラヤン時代にも勝るとも劣らない美しさであり、聴いていて思わず溜息が漏れるほどだ。終楽章は、壮麗にして圧倒的な迫力で開始される。低弦による合いの手の強調が実にユニーク。ゲネラルパウゼの活用も効果的だ。主部は堂々たる進軍であるが、随所に猛烈なアッチェレランドを駆使するなど、ドラマティックな要素にもいささかも不足はない。合唱が入った後は、ゆったりとした荘重なインテンポで曲想を丁寧に描き出していく。ソプラノのロイヤルや、メゾ・ソプラノのコジェナーも実に見事な歌唱を披露しており、ベルリン放送合唱団も最高のパフォーマンスを示していると言える。そして、壮大なスケールと圧倒的な迫力の下に、この至高の名演を締めくくるのである。HQCDによる音質の鮮明さや音場の幅広さも本盤の価値を高めるのに大きく貢献している点も忘れてはならない。木幡一誠氏によるライナーノーツの充実した解説は、実に読みごたえがあり、スカスカのライナーノーツが氾濫するという嘆かわしい傾向にある中で、画期的なものとして高く評価したいと考える。

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  • 5 people agree with this review
     2011/02/05

    実に鮮明でクリアな音質だ。本盤は、かつてSACDハイブリッド仕様で発売されていたが、それも十分に高音質とも言えるものの、録音の古さが目立ったと言えなくもなかった。ところが、本盤は、そもそもものが違うと感じた。今から50年以上も前の録音がこれほどまでに鮮明な音質に蘇ってしまうとは、とても信じられない思いだ。あらためて、SACD&SHM−CDのシングルレイヤー盤の底力を感じた次第だ。ピアノの音は鮮明でくっきりと再現されているし、どんなに最強奏の箇所に差し掛かっても、ピアノとオーケストラの音が鮮明に分離して聴こえるのは、録音年代を考えると驚異的ですらある。オーケストラも、金管楽器や木管楽器の音色などにいささかの古臭さを感じさせず、しかも弦楽器と明瞭に分離して聴こえるのは、見事というほかはない。演奏内容も素晴らしい名演だ。本演奏は、ハスキルの死の1か月前の録音であるが、モーツァルトの数少ない短調のピアノ協奏曲を2曲セットにしたカプリングにも、何か運命めいたものを感じさせる。ハスキルのピアノも、緩徐楽章における人生の諦観とともに、特に、両端楽章にはどこか切羽詰まった気迫のようなものが感じられるのも実に興味深い。情感の豊かさも相当なものがあるが、決して哀嘆調には陥らず、高踏的な美しさと気品を失っていない点も素晴らしい。正に、ハスキルの貴重な遺言とも言える至高・至純の美を湛えた名演と高く評価したい。マルケヴィチの指揮は、実に堂の入った巨匠風の指揮ぶりであり、当時の手兵であるコンセール・ラムルー管弦楽団を見事に統率して、最善のサポートを行っていると言える。

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     2011/02/05

    素晴らしい超高音質SACDの登場だ。本盤には、かつてマルチチャンネル付きのハイブリッドSACDが発売されていた。しかしながら、何故かマルチチャンネルならではの臨場感がイマイチで、音質的にもあまり満足が得られなかった記憶がある。それだけに、今般の、SACD&SHM−CDのシングルレイヤー盤は、これまでのSACDとは一線を画する素晴らしい高音質と言える。トゥッティの箇所に差し掛かっても、オーケストラとピアノが分離して聴こえるのは驚異的でもあり、あたかもマルチチャンネルを聴いているかのような錯覚を覚えるほどの音場の幅広さだ。演奏も、賛否両論があるようであるが、私としては、素晴らしい名演と高く評価したい。何よりも、ラン・ランのピアノが実に優れている。ラン・ランの特徴は抜群のテクニックに裏打ちされた強靭な打鍵と、思い入れたっぷりの情感豊かな表現力の幅の広さであるが、本盤でも、そうしたラン・ランの特徴が見事にプラスに働いていると言える。音の重心の低い重厚にして堂々たるピア二ズムは、その情感の豊かさと相まって、ラフマニノフのピアノ協奏曲には最も相応しいものであり、強靭な打鍵から繊細な消え入るような抒情に至るまでの表現力の幅の広さにも出色のものがある。こうしたラン・ランをサポートするゲルギエフの指揮も実に素晴らしい。もともと、ラフマニノフを得意のレパートリーとする指揮者ではあるが、ここでも、ラン・ランと同様に、ロシア的な情緒満載の実に雰囲気豊かな演奏を繰り広げている。ゲルギエフの卓抜した指揮の下、マリインスキー劇場管弦楽団も最高のパフォーマンスを示していると言える。

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     2011/02/05

    まず何よりも素晴らしいのは、SACD&SHM−CDによる極上の高音質であろう。1970年代の録音であり、今から40年近く前の録音であるが、あたかも眼前で演奏しているかのような鮮明な音質に蘇っているのには、正直言って大変驚いた。いずれも現代音楽をカプリングしているが、ハーモニカ、エレクトリック・ピアノ、エレキ・ギター、ベース、ドラムスなどの音が、オーケストラの音とは完全に分離して、きわめて鮮明に聴こえる点は驚異的ですらある。ユニバーサルは、昨年からこのSACD&SHM−CDシリーズを発売し続けているが、本盤は、その中でも、かなり上位にランキングされる高音質を誇っているのではないかと考える。演奏内容も素晴らしい。これは、小澤の若き時代の演奏であるが、現在の大指揮者小澤への発展を十分に予見し得るような、実に才気あふれる名演揃いであると言える。最近では、ブラームスなど、ドイツ音楽でもレベルの高い名演を行うようになった小澤であるが、もともとは、本盤のような現代音楽やフランス系の音楽を十八番にした指揮者であった。本盤のような名演を聴いていると、小澤のそうした楽曲への適性が実によくわかる。いずれも、ジャズとクラシック音楽の垣根があまり感じられない作品であるが、小澤は、各曲を実に切れ味鋭く巧みに描きだして行く。サンフランシスコ交響楽団も、若き小澤に引っ張られるように、最高のパフォーマンスを示しており、コーキー・シーゲルによるハーモニカやピアノ、シーゲル=シュウォール・バンドの各奏者の卓抜した技量も、本名演に大きく貢献している点を忘れてはなるまい。

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     2011/02/05

    ノリントンならではのスパイスの効いた個性的な名演だ。いわゆる現代楽器を使用した古楽器奏法であるが、フレージングは実に温かく、歌うべきところは徹底して歌い抜くなど、無味乾燥にはいささかも陥っていない点を高く評価したい。ところどころにノリントンならではの独特の仕掛けがあって、とても一筋縄ではいかないが、単なる見せかけの表面的な効果を狙ったものではなく、芸術的なレベルに達している点は、ノリントンの類まれなる才能の証左と言える。マルチチャンネル付きのSACDによる高音質録音によって、ノリントンならではの芸の細かさを鮮明な音質で堪能できるのも、本CDの大きな強みと言える。第1番は、第1楽章冒頭の、序奏部の駆け足のテンポと、主部のゆったりめのテンポの対比が、他の指揮者の演奏と真逆であり、実に個性的。呈示部の繰り返しも忠実に行っているが、決していやではないのは、ノリントンの演奏内容の面白さにあるのは自明の理であろう。第2楽章は、むせ返るような情感の豊かさが際立っており、第3楽章は一転してハイテンポで駆け抜ける。中間部の各管楽器や弦楽器の重層的な響かせ方ははじめて聴くような新鮮だ。終楽章は、第2楽章と同様に、情感の豊かさと重厚さを兼ね備えた雄渾な表現だ。第2番は、第1楽章冒頭のホルンや木管楽器の、旋律の終わりの部分にテヌートをかける吹かせ方が実に個性的。テンポは全体的に中庸と言えるが、主部の弦楽器による主旋律が他の演奏のように粘ったりしないのは、古楽器奏法の面目躍如と言ったところであろう。繰り返しを忠実に行うのは第1番と同様であるが、決していやではないのは、ノリントンの至芸の賜物と言える。第2楽章は、弦楽器をあまり歌わせないのが実に個性的。おどろおどろしい演奏が多い中で、演奏に新鮮さを与えている点を忘れてはならない。こうした演奏故に、その後に続くホルンと木管楽器の絡み合いに深みが出るのは当然のことであると考える。第3楽章は、テヌートをいささかもかけない木管楽器の軽快でリズミカルな吹かせ方、そして鋭いアクセントなどが特徴であるが、終楽章の前座と考えれば、実に的を射た解釈と言える。そして、終楽章は、一転して、中庸のテンポによる重厚で迫力ある演奏を繰り広げており、熱狂のうちに全曲を締めくくっている。第3番は、第1楽章冒頭の2つの和音のうち、2つ目の和音を強くするとか、弦楽器や管楽器の粘った弾き方、吹き方が超個性的。第2楽章の決して重くはならない演奏はノリントンならではと言えるが、それでいて歌うべき箇所は徹底して歌い抜くなど、無味乾燥にはいささかも陥っていない。第3楽章は、有名な名旋律を情感豊かに歌わせているが、中間部の木管楽器を早めにして、弦楽器をゆったりとしたテンポで情感豊かに演奏させているが、これは魔法のような圧巻の至芸と言える。終楽章は、早めのテンポで駆け抜けるが、重厚さにおいてもいささかも欠けることがない。そして、第4番。第1楽章は、全体としてはシューリヒトやムラヴィンスキーなどと同様の端麗辛口の演奏を装っているが、弦楽器の歌わせ方など、実に情感豊かであり、とても単純には言い表せない。第2楽章冒頭のテヌートがかからないホルンや木管楽器の吹かせ方も個性的であるが、それに続く、中間部の弦楽器の弾かせ方は重厚で実に感動的。それでいて、重々しくならないのは、ノリントンだけが成し得る至芸だと言える。後半の木管楽器の枯れた味わいは、ブラームス晩年の憂いを表現し得て妙だと高く評価したい。第3楽章は、意外にも中庸のテンポで開始されるが、歯切れがよく、リズミカルな管楽器や弦楽器の響かせ方は、さすがはノリントンである。終楽章は、冒頭の各和音をくっきりと明瞭に響かせるのが素晴らしい。テンポはゆったりとしているが、その後に続く各変奏を考えれば、この解釈は大正解であると考える。その後は、ノリントンの正に独壇場。弦楽器の粘ったような弾かせ方、金管楽器の朗々たる吹かせ方、アッチェレランドの連続、テンポの思い切った激変、鋭いアクセントや、心を込め抜いた情感の豊かさなど、ノリントンは可能な限りの表現を駆使して、この場面の変転の激しいパッサカリアを実に表現豊かに面白く聴かせてくれている。そして、終結部は、若干のアッチェレランドをかけながら、圧倒的な熱狂のうちに締めくくるのである。

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     2011/02/05

    バーンスタインは、その生涯に、ビデオ作品を含め、マーラーの交響曲全集を3度に渡って録音した。このような指揮者は今日においてもいまだ存在しておらず、演奏内容の質の高さだけでなく、遺された全集の数においても、他のマーラー指揮者を圧倒する存在と言えるだろう。いずれの全集も歴史的名演と評してもいいくらいの質の高いものであるが、その中での最高傑作は、やはり、衆目の一致するところ、マーラーゆかりの3つのオーケストラを指揮して録音を行った最後の全集ということになるのではなかろうか。この最後の全集で残念なのは、本盤におさめられた第8と第10、そして、大地の歌を録音できずに世を去ったことである。この全集の他の諸曲のハイレベルな出来を考えると、これは大変残念なことであったと言わざるを得ない。特に、第10は、2度目のビデオによる全集の中から抜粋したものとなっており、演奏内容は名演ではあるが、二番煎じの誹りを免れない。他方、第8は、2度目の全集におさめられた第8とほぼ同時期の録音ではあるが、ザルツブルク音楽祭におけるライブ録音であり、全く別テイク。本盤は、この第8を聴くだけでも十分にお釣りがくるCDと言える。バーンスタインの晩年の録音は、ほぼすべてがライブ録音であるのだが、録音を意識していたせいか、限りなくスタジオ録音に近い、いわゆる自己抑制したおとなしめ(と言ってもバーンスタインとしてはという意味であるが)の演奏が多い。ところが、本盤は、録音を意識していない正真正銘のライブ録音であり、この猛烈な暴れ振りは、来日時でも披露したバーンスタインのコンサートでの圧倒的な燃焼度を彷彿とさせる。これほどのハイテンションになった第8は、他の演奏では例がなく、同じく劇的な演奏を行ったテンシュテットなども、遠く足元にも及ばない(近く発売される90年代のライブ録音は未聴であり、もしかしたら、超絶的な豪演になっていることも考えられるが)。猛烈なアッチェレランドの連続や、金管楽器の思い切った最強奏、極端と言ってもいいようなテンポの激変など、考え得るすべての表現を駆使して、第8をドラマティックに表現していく。バーンスタインもあたかも火の玉のように燃えまくっており、あまりの凄さに、合唱団とオーケストラが微妙にずれる点があるところもあり、正真正銘のライブのスリリングさも満喫することができる。それでいて、楽曲全体の造型が崩壊することはいささかもなく、聴き終わった後の興奮と感動は、我々聴き手の肺腑を打つのに十分だ。録音が、若干オンマイクで、トゥッティの箇所で、音が団子状態になるのが惜しいが、演奏内容の質の高さを考えると、十分に許容範囲であると考える。

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