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Review List of うーつん 

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  • 1 people agree with this review
     2022/03/12

     劇的な表現を前面に出すより、じわじわと哀しみや悲劇、そして救済を歌いだしているように感じた。冒頭からテンション全開にせず、イエスの磔刑とその死にクライマックスを置くことを重視しているかのようだ。もちろん他の盤でも同じだろうが他の盤のような動的な表現というよりはいくらか静的な印象を受ける。

      ディスク見開きの写真ではホールに半円を描くような配置になっている。楽器奏者は通常の配置よりもう少しソーシャルディスタンスをとり着席、歌い手はその後ろにこれもソーシャルディスタンスとったかなり距離のある配置。聴こえてくる音も左右それぞれ様々な方角から耳に入ってくる。響きは豊かだしさすがの合唱なのだが、先述のソーシャルディスタンス配置のせいだろうか歌によるメッセージが私の中では一つに収斂せず、あちこちに発せられてまとまってこないような印象を受けた。 

      福音史家やイエスなどの歌手は見事に思えたが、第20曲のアリアなど一部で少々表現に苦労している(?)ような印象も持った。私個人の印象として、(指揮者の希望によるのだろうか)無理に表現に傾くより、もっと音の流れがあった方が良いのでは? と感じる部分もあった。 少なくとも1986年アルヒーフへの録音盤では自然な流れでアリアが歌われていたのも確認してみた。  歌唱の経験もない私の聴き込み方がまだ稚拙なのかもしれないが、今の印象ではこのようになってしまう。

     古巣に戻り、満を持してのヨハネ受難曲だから悪かろうはずはない。それでも今ひとつ音楽が、そして歌がまっすぐに心に届いてこない、いくばくかのもどかしさも感じた。ガーディナーのDG復帰第一作なのだから…、と期待値が高すぎたのかもしれない。

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  • 2 people agree with this review
     2022/03/07

    真っ黒なソナタ、漆黒の幻想曲、真っ暗闇の夜想曲…。ポゴレリチの新しいショパンアルバムに、ダークというか黒一色のイメージをまず持ってしまった。 華麗なショパン、美しいショパン、いわゆるまっとうなショパンを期待するなら正直お勧めできないこともあらかじめお伝えしておきたい。

     異形な演奏なのは「彼のことだから」と予想(期待)はしていたがここまでくると黙りこむしかない。このディスクがダメとか受け付けないという意味ではない。むしろこんな演奏だからこそ聴きたかったのだ。力強いを通り越し禍々しいまでに強靭なタッチと、死を連想させるような異常な静けさを併せ持ち、独特な感性でショパンの「ダークサイド」、または「異世界のショパン」を抉り出すかのようなポゴレリチの新譜は好悪がはっきり分かれると思うので購入される際は充分考えてから(?)決めてほしい。私の意見を述べさせてもらうなら、当盤は充分に聴き応えのある評価になる。

     昔の録音「夜想曲 Op.55-2」は、ポゴレリチのショパン演奏の中でのお気に入りだった。退廃というのか死の香りというのか、他の演奏者では感じられない感覚があったが、その延長線上に当盤はあると思う。  以前、彼のコンサートでソナタ第3番を聴いたときの衝撃もすごかった。彼は何を考えているのだろう、どこを見つめているのだろうと迷ううちに演奏は終わっていたのだ。一度しか聴けないコンサートゆえ、彼の言いたいことを理解しようとする前に曲が終わってしまったのが悔やまれたが、こうしてディスクになったので繰り返し聴いてみてポゴレリチの世界に浸ってみたいと思う。決して心地よい世界でないのは解っているが、その中に「何か」が潜んでいるはずだ。それを探してみたい。

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     2022/02/23

    やや太めの音の線で丹念に語られた無伴奏と感じた。華美にならない丁寧な楷書体のような装飾音でまわりをふち取り、音の出だしから音が消えていくその刹那の瞬間まで弓づかいのコントロールが行き届いているのがすばらしい。 彼のキャリアからみればもっと技術的にいろいろ盛り込むことはできたと思うが、削るべきものを削り、余計な飾りや着こなしを脱ぎすてた、さながら禅僧の着こなしのような表現を選んだように感じる。(蛇足だが、パガニーニ国際コンクールでキャリアを勝ち取ったヴァイオリニストにバッハ無伴奏の名盤が多い気がするのは偶然なのだろうか…。)

     聴いた感覚として、パルティータとソナタではカヴァコスの接し方が異なる気がした。どちらもヴァイオリンで歌うという感じではないと思う。パルティータはダイアローグ(対話)、ソナタは思索(またはモノローグ?)という感じだろうか。パルティータではなんとなく音楽の構成や表現が、対話して何かを探求していくような姿勢に感じる。一方ソナタでは思索かモノローグで登場人物は一人。ひたすら心の内奥に視線を向けているような気がする。どちらかと言えばソナタ3曲の方に彼の本領がより表現されたように感じた。

    それほど多いとはいえないが私が聴いてきた「無伴奏」の中でも独特な孤高の姿を提示していると思う。お奨めします。

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     2022/02/16

     何も考える必要はない。すばらしいリュートから発せられる音楽に、ただ身を浸すだけでいい。本当にそう思える演奏と音質。甲高く、緊張感を発する音でなく、どことなくゆったり、身構えずに聴くことができる。

     もしかすると、バッハ自身もカントルの激務が終わった深夜、一日の最後に自室でつま弾いて楽しんだのかも…、と想像するのも一興。 おすすめの聴き方は、ほの暗くした部屋でソファーなどでくつろぎながら耳を傾けるやり方。バッハの時代に想いを馳せながら、または何も考えずにどうぞ。1992年に録音したリュート曲集(2枚組)も併せておすすめです。

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  • 2 people agree with this review
     2022/02/11

    50年(!)かけて醸し続けた吟醸ゴルトベルク。派手さはないが、実直に曲に向かい合ってきた氏の姿勢そのものが演奏に反映されているような気持ちで聴かせてもらった。

     吟醸=素材を吟味し、丁寧に作り上げる…音楽で使うのは間違いかもしれない。しかし、一音一音をじっくりと吟味しつつ、慈しみながら、まるで今新たに発見しながら弾いているような演奏には「吟醸」がぴったり合うような気がした。

     音は比較的大きくくっきり出てくる。装飾音をちりばめるより、音楽の自然な流れを壊さないようひとつひとつの音の重なりや構造に重点を置いて演奏しているように思えた。

     2枚にまたがるのでディスク交換で少し間をとってしまうのは当初マイナスかなと思っていたが、第15変奏でじんわりと終わり、ディスクを入れ替えて2枚目冒頭第16変奏 Overtureで新鮮な空気が流れ込んでくると「これもアリだな」と思える。2枚組はこういった活かし方もあるのですね。

     加えて、アンコール曲 BWV.699を紹介する時の、氏の声のなんと若々しいこと。若輩者の私が言うのもおこがましいが、ゴルトベルク変奏曲と共にすばらしい年輪を重ねてきた人物だからこその声と感じた。

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     2022/02/11

     オルガン、チェンバロ、クラヴィコードを愉しみ、バッハの音楽の幅広さを感じられる3枚組だ。

      1枚目はオルガン。誰もが知る「トッカータ ニ短調 BWV565」から壮大かつ華麗に始まるのが心憎い。演奏は早めで、音を伸ばして引きずらずサクッと楽想や音を変化させていく。あまり大げさに響かせず明るくのびのびとしたオルガンと感じた。刺激的なトッカータBWV565から始まり、コラール前奏曲で歌い、トッカータとフーガBWV540の壮大なドラマで幕を閉じて聴き応えは十分。

      2枚目はチェンバロ。第5集の主要演目であるトッカータを中心に軽やかに弾き進んでいく。トッカータは今まであまり聴いてこなかったがこうしてまとまった量で聴くと楽想のきらびやかさと即興的技術の冴えが問われる作品なのだろうか。現代のジャズにも通じそうなスリルと愉しさを満喫できる。

      そして3枚目はクラヴィコード。アルバム全体として大きく壮麗な音からディスクを替えるたびにミニマムで室内楽的に落ち着いてくるのも面白い。クラヴィコードでの演奏をCDで聴くのは初めて。なるほどチェンバロとも違う音色と空気感が面白い。どことなく、チェンバロにリュートとツィンバロンのテイストを加えて3で割ったような朴訥な音色がするものと知ることができた。楽器の音はかなりこじんまりしているということだが、CDで聴いているので楽器のすぐ傍で聴かせてもらっているようなごく私的な室内楽を愉しむ感覚だ。セバスティアン・バッハも仕事が終わって自室でリュートやクラヴィコードなどを愉しんでいたのだろうか。

      一つだけ注文としてあげたいのは解説書の中身。せっかく初登場の楽器もあるのだからもう少し楽器の写真の撮り方や量を工夫してもらいたい。解説書にはクラヴィコードの鍵盤部分アップが数枚のみ。楽器全体が写ったものや演奏中の写真などがそろっていたらよかったのにと思った。このシリーズは様々な楽器を使い分けていくのでも画期的なのだからオルガンでもチェンバロでも収録場所全体が目で楽しめるような写真が入ってくれたら嬉しいです。

      挑戦的な作品、壮麗な作品、即興的な作品、ひとりでつま弾くような作品を楽器を替えつつ広く聴けるのでお薦めしたい。 

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     2022/01/30

     必聴かつ必読のディスクとしてお奨めしたい。
     作品の性格ゆえか人を寄せ付けないような厳しさをイメージして入手した。しかし、実際に聴いてみると音は温かく明晰で丸みもあり、少なくとも「隔絶の感」というイメージはない。判り易く言うと「聴きやすい」のだ。音列の変化と派生・発展が美しい調和をもって響きかけてくる気がするのだ。詳しい評価は耳の良い他の方々のレビューを待ちたいところ。おそらくこの作品に初めて取りかかる方にも聴き込んでいる方にもそれぞれ評価されるような演奏ではないだろうか。

      どうしても「フーガの技法」というとバッハ最晩年の作曲技法の極北と構えて作品に挑むパターンになるように思う。もちろん、それだけの覚悟をもって対峙しないと取り組めない作品なのだろう。ところが渡邊順生(と崎川晶子)両氏の手によって聴き応えと「聴く愉しみ」も兼ね備えたディスクに仕上がっていると思う。

      そして解説書のボリュームと質の高さがすばらしい。渡邊順生氏の丁寧な説明文は「買ってよかった」と思える充実した内容なので学ぶ価値の高いディスクとしても薦めていきたい。「初期稿(自筆稿)」と「印刷稿」別の聴く順番やCDトラックのプログラム指南まで添えてある位なのだ。どの順番で聴こうとその価値に違いが出るわけではない、むしろいろいろな聴き方をすることで作品へのアプローチも感想も増えてくることだろう。

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     2022/01/09

    幾分禁欲的で、カチッと硬めのチェンバロの音色(と私は感じた)が心地よい。 演奏ペースは中庸とゆったりの中間位だろうか。少なくとも聴いていてせわしなくなる感じはない。複雑なテクスチュアのうつろいを愉しむのにちょうどよい塩梅の演奏と思う。

     鈴木雅明によるパルティータやフランス組曲などの演奏は聴いていないが、当盤の曲目と楽器の相性は良いように感じた。今となっては指揮者・鈴木雅明の方が通りが良いが、やはり氏のチェンバロ(またはオルガン)演奏を聴くのもまた愉しい。チェンバロ演奏は今までも聴いてはきたものの、ここ最近、特にはまっておりこのディスクもことあるごとに聴かせてもらっている。

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     2022/01/09

    チェロを愛し、チェロに愛された音楽家・ビルスマの生の声が楽しく、分かりやすく入ってくる。打ち解けた間柄である聞き手(渡邊順生氏)との対談だからこそ率直な、そしてユーモアも交えた内容が引き出され、読む方も自然に惹きこまれるかのようだ。音楽の書(でもあるわけだが)としてよりも豊かな人生を歩いた音楽家の道のりを振り返る書として読む方が適切なのかもしれない。

      ビルスマのディスクで私が好きなのはブラームスのソナタ、六重奏曲、シューベルトのピアノ・トリオ、アルペジオーネ・ソナタ&「ます」五重奏曲にバッハの無伴奏とボッケリーニの五重奏曲など。聴いていて目(耳?)が覚めるような鮮烈さと同時にホッとできるようなあたたかさも持ち合わせているのが特徴かな…と考えていた。実際にこの本を読んでみて「演奏がその人となりを表しているのだ」と納得することができた。特にボッケリーニについては昔、なんの前情報もなく購入し時々日曜日などに聴くことがあった。曲自体は音楽の山も谷もないが、だからこそ心に穏やかに入ってくるような気がしたものだ。ようするに、聴いていて「ほっこり」できるのだ。本書を読んでみてボッケリーニへの愛情を知り、「このような演奏家だからこのディスクでほっこりできるのか」と思ったこと(「ほっこり聴けた」ことが氏の理想かどうかは定かではないが…)も書き添えておきたい。

      チェロを通して音楽と人生を謳歌したビルスマ。彼の音楽を愛する方はぜひ手元に置いていただきたい。バッハの無伴奏6曲についての興味深い解説もあるので無伴奏チェロ組曲が好きな方、チェロ演奏を、更にバッハや古楽をもっと知りたい方にも手を伸ばしていただきたい。おすすめです。

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     2022/01/06

    「初期作品」と侮るなかれ、若かりしバッハの意気軒昂ぶりがシュタイアーの演奏で再現されているのがすばらしい。もっと名曲やもっと後の作品を混ぜてもよさそうなところ、あえてのこのようなプログラミング。「バッハは初期でもバッハの魅力にあふれている」というシュタイアーのメッセージなのだろうか。実際、ここに収められている作品のフレッシュさ、元気と才気のほとばしりは尋常ではない。高いテンションで突き進む演奏と、粒立ちがはっきりしながら豪華なチェンバロの音響は「初期作品」という言葉を忘れさせてくれる。おすすめです。

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     2022/01/05

    16世紀の古い音楽が新鮮な響きで教会の空間を満たすことを聴ける喜び。バッハのマタイ受難曲への興味から派生してこちらのディスクに手が伸びた次第だが、サヴァールのこの曲集への愛情、そして研究により創り出された美しく崇高な演奏に聴き惚れてしまった。

     浅学ゆえ詳細な解説はできないが、キリスト教における音楽の貢献と発展の1ページを開いた気がする。グレゴリオ聖歌の頃のシンプルながら想いのこもった歌唱、受難曲などでの朗誦などの技法は今だからこそ新鮮にしみこんでくるような気がする。この曲集より後代にはバッハなどが精緻かつ複雑な受難曲を生むことになるが、当盤に聴ける質素で簡潔な内容にキリスト者でない私もなにやら心が洗われるような気がする。今でこそ、ディスクで何度も聴けるわけだが、この当時にこれらの作品を聴けたのはそこにいたほんの一握りの人々のみ、何度でも聴ける代物ではないし、「再演」や「ツアー」というシステムもなかなかないだろうからみな一期一会の気持ちで真摯に音楽と向き合っていたのだろう…。そして教会を満たす響きに身を浸すからこそ「神の御業」に想いを馳せることもできたのであろう。

     このような歴史的な価値を有するすばらしいディスクなのだからこそ日本語訳や解説をきちんと入れてほしかった。そうすることで(元々キリスト教に詳しいとは言えない)我々日本人にその価値を理解してもらえると思うので、ぜひ輸入元さんには検討してもらいたい。その点について★をひとつ減らしたいところだが、それでは演奏者に失礼と思い減らさず★5つのままで投稿しようと思う。

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     2021/12/31

    J.S.バッハの生涯の足跡とそこに残された作品の概要が丹念にまとめられている。筆者はJ.S.バッハの息子C.P.E.バッハの研究を主とされているとのこと。どうしてもJ.S.バッハのみに焦点が定められてしまい「J.S.バッハとそれ以外のバッハ」とみられてしまうのが一般的と思われるが、ここではかのセバスティアンが「バッハ一族の血脈の中で醸成されて出てきた最高の成果」としてあらわれた者であることが理解できる。著書の中でJ.S.バッハは「バッハ」でなく「セバスティアン」として紹介されている点からも明白だ。セバスティアンの生涯とそこで生み出された作品、さらに家族関係や師弟・交友関係、職場の同僚関係なども描かれバッハの人間像の一端に触れることもできることも勉強になる。書籍のサイズがあと1サイズ大きく文字の大きさや表の見易さが改良されればいいな…と思う点もあるが、各ジャンル別に作品紹介も網羅され、年表(生活や活動と作品の連関)も入っており、セバスティアンを知りたい方、知っているがもっと広いレンジで俯瞰したい方ともにおすすめです。

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     2021/12/21

    ヴィオラとピアノによるなんと優しく、懐かしい歌。ブラームスの最晩年の作品だがその中に仄かに青年のような憧れや愛情をも感じてしまった。ヴィオラ(1672年製ストラディヴァリウス)がたゆたうように歌えば、ピアノ(1899年製ベヒシュタイン)が包み込むような響きで応える。タメスティとディベルギアンのデュオによる演奏で、私がブラームスのヴィオラ・ソナタでイメージしていた「セピア色に近い白黒」だけでなく、ほんのりとやわらかい彩りもふわっとのせられたような感覚を感じさせてもらうことができた。

     やわらかくしなやかに歌うヴィオラの歌は強弱という単純なものさしで測るのではなく「歌」として自由に感情と言葉を表出してくれていると考えた方がしっくりくる。ピアノもまるみを帯びたあたたかい響きで歌を支えてくれている。ヴィオラ・ソナタの周りを囲っている曲たちも魅力的。当盤全体の想いとしてはヴィオラ・ソナタがメインなのではなく、ブラームスが表した「歌」のアルバムなのではないだろうか。聴いていて心の奥底がじんわりと温まるようなアルバム。おすすめです。

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     2021/12/18

    第1番BWV870 冒頭の煌びやかな開始からしてグイっと惹きこまれてしまった。バッハのチェンバロ作品演奏の大本命・シュタイアーによる平均律は第2巻から開始された(解説書の中には「第1巻2022年リリース予定」の予告も…)。
      第1巻ならまだしも渋めの第2巻で前奏曲とフーガの繰り返し…、正直最後の方は疲れてしまうところだが当盤では一気に聴きとおすだけの推進力があったと思う。音の表現効果も多彩で聴いていて「音響の万華鏡だな」と感じてしまった。そのおかげもあって「次はどんな仕掛けで愉しませてくれるのだろう」と聴き進めてしまうのだ。どんな仕掛けかは聴いていただければ一聴瞭然。
    前奏曲の自由さと、フーガの声部を描き分ける構成力とファンタジーのアイディア、または創意(inventionとでも呼べばいいのだろうか?)が至る所にちりばめられ聴くたびに「こんな音や響きがあったのか」と発見することが実に愉しい。24曲に凝縮された晦渋かつ複雑なミクロコスモスの世界をシュタイアーの舵取りで旅することができるディスク。お薦めです。

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     2021/11/27

     曲目の多彩さ、音のパレットの色彩の多さがうまく融合した作品だ。東京オペラシティ コンサートホールで当プログラムを聴かせてもらったが、小菅優の腕前はもちろんとして「これだけ豊かな曲の構成を考え実行できるのが凄いな」と感じたものだ。実演で聴いてしまったがゆえにその実感や迫力をCDでは追いきれないので★をひとつ落としておくが、実演に接しなかった方には★五つ分の聴きごたえがあると確信する。

      今回のテーマは「風」。その「風」は軽く気持ち程度に吹くものでなく実に質感豊かに吹いてくる。小菅の奏でる風はどれも存在感があった。単なるイメージで消えてしまうことなく、風を頬で感じるもの(ダカンやクープラン、ラモーなど)、身体で受けとめて感じるようなもの(西村朗、ベートーヴェンなど)など様々。今回のシリーズ4部作はおそらく彼女のディスコグラフィの一里塚となるように思う。今後のさらなる活動拡大を期待しつつ、皆さんにもお勧めしたい。

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