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Review List of つよしくん 

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  • 7 people agree with this review
     2010/05/30

    これは素晴らしい名演だ。かつてピアニストとしてプロコフィエフのピアノ協奏曲全集を完成したアシュケナージの名サポートを得て、ガヴリリュクは抜群のピアニズムを披露していると言える。特に、ピアノ協奏曲の第1番と第2番はプロコフィエフとしても初期に当たる作品あり、現代を代表するモダニストとも称された前衛時代のものだけに、かなりの技巧を要する難曲である。こうした難曲を、ガヴリリュクは、作品の特色に相応しい明晰なタッチで、曲想を精緻に描き出しており、そうした抜群のテクニックに裏打ちされた明快なアプローチが、両曲の魅力を最大限に表現するのに大きく貢献していると言える。まだまだ若く、伸びしろが多分にあるガヴリリュクだけに、今後の更なる成長が楽しみな逸材であると考えたい。アシュケナージも、これらの作品の細部に至るまでを深く理解し尽くしているだけに、前述のように名サポートを行っており、アシュケナージの統率の下、シドニー交響楽団も最高のパフォーマンスを示していると高く評価したい。SACDによる高音質録音も、エクストンとしても最高の部類に入る出来栄えであり、本名演の価値を大いに高める結果となっている点を見過ごしてはならない。

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  • 3 people agree with this review
     2010/05/30

    インバルのマーラーと言えば、20年以上前に完成したフランクフルト放送交響楽団との全集の印象が非常に強い。インバルは、おそらくは人一倍、マーラーへの深い愛着から来る心の中の力強いパッションの爆発があると思うのだが、指揮をする際には、それを出来るだけ抑制しようとしているように思われる。したがって、同じくマーラー指揮者と言われたバーンスタインやテンシュテットなどに比べると、どこか冷めたような演奏のように聴こえてしまうのは大変残念な気がする。本盤の第4は、かつての全集から20年以上経った演奏ではあるが、その抑制的な演奏傾向は殆ど変わりがないと言える。同じく東京都交響楽団を指揮したチャイコフスキーの第5など、実にドラマティックな名演を成し遂げていたのに、なぜかマーラーの交響曲ではこうも大人しめのアプローチ変わってしまうというのは、実に不思議な気がする。特に、本演奏で不出来なのは終楽章。半田の独唱など、あまりの弱々しさに大変がっかりさせられた。もちろん、インバルだけに、抑制的な表現であるからと言って内容が希薄ということはない。特に第2楽章の楽器の独特の響かせ方や第3楽章のコクのある表現は、さすがと言わせる説得力もある。

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  • 1 people agree with this review
     2010/05/27

    ナクソスレーベルは、低価格であるが故に、決して一流とは言えない指揮者やオーケストラを活用して、非常に広範囲にわたるレパートリーの作曲家の作品について多数の録音をする傾向にあり、それ故に中には粗製乱造の誹りを免れない凡演もあると言わざるを得ない。しかしながら、ブレイナー&ニュージーランド交響楽団によるヤナーチェクシリーズや、本盤のオールソップ&ボーンマス交響楽団によるバルトークシリーズは、実に水準の高い名演の数々を成し遂げている。低価格である点を考慮すれば、ナクソスレーベルは実にいい仕事をしていると高く評価したい。本盤の歌劇「青ひげ公の城」も素晴らしい名演。同曲は、バルトークの初期の作品であり、後年の作品のように前衛的な要素は少なく、バルトークにしては珍しい幻想的で神秘的な雰囲気を有した作品であるが、オールソップは手兵ボーンマス交響楽団を見事に統率して、雰囲気豊かで、なおかつ情感溢れる演奏を行っており、各7つの扉を開けた後の描き分けについても卓抜したものがある。べラチェクとメラスによる独唱も、最高のパフォーマンスを示していると言える。録音も鮮明で素晴らしく、本名演に華を添える結果となっている点を見過ごしてはならない。

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  • 1 people agree with this review
     2010/05/26

    本盤は、ヤナーチェクのオペラからの管弦楽曲の名曲を集めた全集の第2弾である。ここには、「カーチャ・カバノヴァー」と「マクロプロス事件」という、ヤナーチェクのオペラの中でもあまり知られていない曲がおさめられているが、その音楽は実に魅力的だ。ヤナーチェクは、モラヴィアの民俗音楽を自作の様々な旋律に間接的に取り入れていったとされるが、その音楽の何とも美しくて魅力的なこと。もちろん、オペラそのものも、大変に魅力的な一級の作品であると言えるが、言語がチェコ語であったり、ストーリー展開が一筋縄ではいかないこともあって、鑑賞の際にはどうしても対訳と首っ引きにならざるを得ず、こうしたヤナーチェクの魅力的な音楽そのものを味わうことが難しい面もある。しかしながら、本盤のようなオペラから聴かせどころの名曲を抜粋してくれると、ヤナーチェクの音楽そのものをゆったりとした気持ちで大いに満喫できる。これは、ヤナーチェクの音楽の魅力を広く知らしめる意味においても、大変意義のある好企画CDであるということができるだろう。ブレイナー&ニュージーランド交響楽団も素晴らしい名演を成し遂げており、本盤の価値をより一層高めることに大いに貢献している。

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  • 3 people agree with this review
     2010/05/25

    ヤナーチェクの音楽は実に魅力的だ。モラヴィアの民俗音楽を様々な自作の旋律に活かしているが、同じボヘミアの作曲家でも、先輩にあたるスメタナやドヴォルザークのように直接的ではなく、あくまでも、こうした民俗音楽を自己のものとして昇華し尽くして、いわば間接的に活用している点に、独特の魅力があると言える。したがって、親しみやすさという点では、スメタナやドヴォルザークに一歩譲るが、聴けば聴くほどに味わいが出てくるという点においては、ヤナーチェクに軍配をあげたいと考える。そんなヤナーチェクは、様々なジャンルで名曲を遺したが、その本領を発揮したのは、私としてはオペラではないかと思う。ただ、チェコ語であるとか、ストーリーが一筋縄ではいかない点もあって、どうしても対訳を参照しながらの鑑賞にならざるを得ない面もあり、その魅力的な音楽を満喫するのは困難を極めるが、ブレイナー&ニュージーランド交響楽団による、オペラからの管弦楽組曲集が発売されたのは、ヤナーチェクの音楽の魅力を広く知らしめる意味においても、大変意義深いものであると思われる。本盤におさめられた両曲ともに名演であるが、特に、「ブロウチェク氏の旅」の音楽の魅力には格別なものがある。ヤナーチェクのオペラの中でも、特に難解さを極めた作品だけに、その音楽の魅力をゆったりとした気持ちで満喫できるのは実に素晴らしいことだ。

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  • 2 people agree with this review
     2010/05/23

    最近発売されたとある小説によって、一躍脚光を浴びるようになったヤナーチェク。ヤナーチェクの作品と言えば、巷間、シンフォ二エッタなどが最も有名であるが、私は、オペラにこそヤナーチェクの真の魅力が込められていると考えている。ヤナーチェクは、モラヴィアの民俗音楽を自作の様々な旋律に活かしていったが、そうした独特の作風が最も色濃く出ているのはオペラだと思うからである。しかしながら、ヤナーチェクのオペラは、チェコ語でかかれているとともに、ストーリーも一筋縄ではいかないものが多く、鑑賞する際には、どうしても対訳と首っ引きにならざるを得ない。それ故に、ヤナーチェクがオペラに配した名曲の数々をゆったりとした気持ちで味わうことがなかなか難しいと言える。そのような中にあって、本盤のようなオペラからの名曲を抜粋したCDが発売されたのは何と言う幸せなことであろうか。本盤は、ヤナーチェクのオペラの中でも最も有名な「利口な牝狐の物語」と、シリアスな最後のオペラである「死者の家から」を収録した好選曲であり、ブレイナー&ニュージーランド交響楽団による名演や、価格の安さなども相まって、現在望み得る最高の名CDと高く評価したい。

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  • 4 people agree with this review
     2010/05/23

    ウィーン・フィルと録音した3曲が、さすがはグランドスラム盤ならではの見事な復刻である。これまでのやや不鮮明な音質とは段違いの、素晴らしい音質に蘇っている。これによって、フルトヴェングラーの名演を良好な音質で味わうことができるようになったことを大いに喜びたい。R・シュトラウスの交響詩と言えば、カラヤンによる名演が真っ先に思い浮かぶが、フルトヴェングラーの名演はそれとは全く対照的なもの。カラヤンの演奏が、オーケストラの機能美を活かした音のドラマであるとすれば、フルトヴェングラーの演奏は、劇的な人間のドラマであるということができよう。ここで指摘しておきたいのは、両者に優劣はないということ。両者ともに、それぞれのやり方で最高峰の名演を成し遂げたのだから、あとは、好みの問題と言える。ドン・ファンの彫りの深い表現、ティルのめまぐるしく変遷する場面毎の描き分けの巧みさ、死と変容のダイナミックレンジを幅広くとった劇的な表現は、フルトヴェングラーならではの至芸と言えよう。ウィーン・フィルも、フルトヴェングラーの統率の下、最高のパフォーマンスを示していると言える。併録のベルリン・フィルとのティルは、グランドスラム盤をもってしても録音はいささか良くない。演奏自体は、ウィーン・フィルとの演奏よりも劇的な表現を行っているだけに少々残念な気がした。

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  • 1 people agree with this review
     2010/05/22

    フルトヴェングラーは、ハイドンの交響曲を限られた曲しか録音しなかったが、遺された録音はいずれも名演だ。第94番もその例外ではない。第94番と言えば、同じウィーン・フィルを指揮したクリップス盤が、ウィーン風の高貴にして優雅な名演として知られているが、フルトヴェングラーは、その彫りの深い深沈たる表現によって、同曲の違った魅力を引き出すことに成功したと言えるだろう。第1楽章も、他の演奏のような軽快なテンポではなく、ややゆったりとしたテンポによる重厚な表現だ。その何と言う深さ。第2楽章も、他の指揮者とは次元が全く異なる高踏的な表現と言える。こうした名演をグランドスラム盤による見事な復刻CDで味わうことができるのは何と言う幸せであろうか。他方、ベートーヴェンの第4は、エロイカや第5、第7、第9のように、フルトヴェングラーの演奏が随一ということにはならないが、ムラヴィンスキーやクライバーなどの即物的な解釈による名演が多い中、このように彫りの深いコクのある表現を聴くと、やはり名演奏との認識を新たにする。SP復刻(特に第1楽章と第2楽章)のため、ハイドンのように鮮明な音質というわけにはいかないが、それでもさすがはグランドスラム盤。非常の聴き取りやすい音質に仕上がっているのは高く評価できる。

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  • 2 people agree with this review
     2010/05/22

    ラフマニノフの第2番は、最近では様々な指揮者によって録音がなされる超有名曲になった。それに伴って、演奏様式も、大衆に受け入れやすいということも考慮してか、ロシア的情緒を強調したあくの強いものよりも、洗練された演奏が増えてきているように思われる。本盤のスラトキンによる新盤も、そうした現代の洗練された演奏様式に沿ったものと言えるだろう。それは、最近発売されたゲルギエフによるあくの強い新盤との違いを見ても明らかだ。どこをとっても、ラフマニノフならではの極上の美酒のような名旋律を美しく響かせ、いやみのない音楽が全くよどみなくスムーズに流れていく。正に、耳の御馳走とも表現したい美演ということができるだろう。したがって、この曲に、もう少し個性的な表現を期待する聴き手からすると、いささか物足りなさを感じるかもしれない。併録のヴォカリーズは、第2で示した洗練された演奏様式を予見させるような佳演に仕上がっていると言える。このヴォカリーズを、メインの第2の後ではなく、前に持ってきたというのが、仮にスラトキンの明確な意図によるものだとすれば、第2の演奏の先取りを行うという意味において、なかなかのアイデアと言わざるを得ないだろう。デトロイト交響楽団は、スラトキンの統率の下、なかなかの好演を行っていると言える。

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  • 4 people agree with this review
     2010/05/16

    ワルターはモーツァルトを得意として、数多くの名演を遺してきたが、本盤は、SACD化により高音質化されたことも考慮すれば、最高の名盤と高く評価したい。ワルターのモーツァルトが素晴らしいのは、モーツァルトだからと言って、こじんまりとした演奏にはしないということ。あたかも、ベートーヴェンの交響曲を演奏する時と同じような姿勢で、シンフォニックで重厚、かつスケールの大きな演奏を行っている。近年の、ピリオド楽器を活用したり、古楽器奏法などを駆使した演奏とは真逆を行くものと言えるが、果たして、近年のそうした傾向が芸術の感動という観点から正しいと言えるかどうかは、私としては大いに疑問を感じている。ワルターのような、いわば古典的な名演を聴いていると、どこか故郷に帰った時のようにほっとした気分になるのは、必ずしも私だけではあるまい。プラハの随所に漂う典雅なニュアンスの込め方も感動的であるし、第40番の、特に第1楽章の魔法のようなテンポの変化や絶妙のゲネラルパウゼは、ワルターだけが可能な至芸と言えるだろう。DSDリマスタリングを基にしたSACDの高音質は極上の一言であり、ワルターの至高の名演をこのような鮮明さで味わえることを大いに喜びたい。

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  • 3 people agree with this review
     2010/05/16

    ワルターのモーツァルトは、どの演奏を聴いても素晴らしい。それは、モーツァルトの交響曲を規模が小さいからとして、こじんまりとした演奏を行うということはせず、あたかもベートーヴェンの交響曲を演奏するかのように、シンフォニックで重厚なスケールの大きい演奏を心がけているからだと考える。最近では、モーツァルトの交響曲の演奏は、ピリオド楽器を使用した演奏とか、古楽器奏法などを駆使した、こじんまりと纏まった演奏が主流になりつつある。それらの中には、一部には芸術的と評価してもいい演奏も散見される(ブリュッヘン、インマゼール等)が、ほとんどは時代考証的な域を出ない凡庸な演奏に陥っている。これは大変嘆かわしいことであり、それならば、仮に時代遅れと言われようが、ワルターのシンフォニックな演奏の方に大いに軍配をあげたくなる。それにしても、本名演の、シンフォニックかつ重厚でありながら、随所に見られるヒューマニティ溢れる情感豊かさを何と表現すればいいのだろうか。コロンビア交響楽団も、ワルターの見事な統率の下、極上の美演を披露している。惜しいのは、DSDリマスタリングがイマイチである点。モーツァルトの6大交響曲中で、SACD化やBlu-spec-CD化されていないのは本盤だけであるのも、そうした点に起因するのかもしれない。

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  • 4 people agree with this review
     2010/05/16

    シューベルトの第9は超名曲であるが、演奏そのものは非常に難しいと考えている。というのも、シューベルトが相当な意欲を持って作曲しただけに、ここには、あらゆる要素が内包されているからである。ウィーン風の優美な情緒は当然のこととして、偉大なる先達であるベートーヴェンを意識した並々ならぬ意欲、最晩年のシューベルトならではの死への恐怖と人生への達観の境地、そして、後年のブルックナーの交響曲につながる巨大さだ。同曲の名演が、どこか食い足りないのは、これらのすべての要素を兼ね備えるということが容易ではないことに起因するものと考えている。そのような中で、ワルターの演奏は、ブルックナーの交響曲につながるような巨大さにはいささか欠けるものの、それ以外の要素についてはすべて兼ね備えた名演と言えるのではないだろうか。各楽器の弾かせ方にもウィーン風の情緒が漲っているし、例えば終楽章にも見られるように、劇的な迫力においてもいささかの不足もない。第2楽章の中間部の、シューベルト最晩年ならではの行き場のない陰りの音楽の絶妙な表現も見事の一言に尽きる。コロンビア交響楽団も、ワルターの統率の下、極上の美演を披露しており、本名演に華を添えている点を見過ごしてはならない。DSDリマスタリングによって、音質が実に鮮明になったのは、大変素晴らしいことだ。

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  • 5 people agree with this review
     2010/05/16

    両曲ともに、ワルターならではのヒューマニティ溢れる情感豊かな名演だ。特に、第5については、他のどの演奏よりも美しく、同曲最高の名演と特に高く評価したい。第1楽章など、実にゆったりとしたテンポで開始するが、その懐の深さは尋常ではなく、はじめてこの曲を聴くような新鮮さを感じさせる。それでいて、第3楽章などは力強さに満ち溢れており、決して典雅な優美さ一辺倒には陥っていない。随所に感じられるニュアンスの豊かさ、繊細さも至高・至純の美しさに満ち溢れている。DSDリマスタリングによる高音質化も、決して嫌みのない音質に仕上がっており、このシリーズでは成功例に掲げられるだろう。未完成も名演。未完成には、最近では、ウィーン風の優美な情緒よりも、よりシリアスにシューベルトの内面を掘り下げていく、いわば辛口の名演が増えつつあるが、本盤は、ウィーン風の優美な情緒を売りにした古典的な名演と言えるだろう。かつての古典的な名画に「未完成交響楽」があるが、本盤の演奏は正に、当該名画のイメージ。ウィーン風のニュアンス豊かな絶美の音楽がどこまでも醸し出されていく。特に、ゆったりとしたテンポで情感豊かに演奏していく第2楽章が特に秀逸だ。録音はSACD盤がベストであるが、DSDリマスタリングも第5ほどではないものの成功しており、通常CDとしては、やはり本盤を推したい。

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  • 3 people agree with this review
     2010/05/15

    ワルターは、数多くの名録音を遺してきたが、本盤は、その中でもトップの座を争う不朽の名盤と高く評価したい。特に、第2は、ワルターの最晩年のヒューマニティ溢れる情感豊かな指揮ぶりと楽想が見事にマッチしている。ワルターは、第6にも、同じコロンビア交響楽団と名演を遺しているが、第6には、戦前のウィーン・フィルとの名演(オーパス)や、ベーム&ウィーン・フィル(DG)といった強力なライバルがいる。それに対して、第2には、そのようなライバルは存在せず、正に、本盤のコロンビア交響楽団との演奏こそ、同曲演奏史上トップの座に君臨する至高の名演ということになる。序奏部は意外にもテンポは早めであるが、主部に入ってからの中庸のテンポによるニュアンス豊かな演奏はセンス抜群。第2楽章の抒情美はこの世のものとは思えないような美しさであり、終楽章のコクのある堀の深い表現も最高だ。併録の第1も名演。こちらは、トスカニーニ&NBC交響楽団(51年盤)のような即物的な表現が好まれる傾向があるが、ワルターのような滋味あふれる表現にも十分な説得力があり、本盤の演奏を名演と評価するのにいささかの躊躇もしない。DSDリマスタリングは、本盤については成功しており、ワルターの不朽の名盤を鮮明な音質で味わうことができる幸せを大いに噛みしめたい。

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     2010/05/15

    ワルターの芸風を考慮に入れれば、第8の方が非のうちどころのない名演だと思う。最晩年のワルターならではの、ヒューマニティ溢れる滋味豊かなアプローチが、第8という交響曲の楽想にぴたりと符合するからである。コロンビア交響楽団も、第8に関しては、ワルターの統率の下、なかなかの好演を行っていると言えよう。これに対して第9であるが、ワルターの指揮だけに着目すると、名演と言っても差支えはないものと思われる。ただ問題は、コロンビア交響楽団の非力さが、この曲の場合、かなり露呈することになっており、終楽章のアンサンブルの乱れなども、これがスタジオ録音とは信じられないような情けなさだ。それと、終楽章のテノールのアルバート・ダ・コスタの独唱はいささか品を欠き、あまりの情感過多な表現ぶりに辟易とさせられた。しかしながら、これらを帳消しにしてしまうだけの名指揮をワルターは行っており、特に、第3楽章の豊かな抒情は、ワルターと言えども最晩年になって漸く表現し得た至高・至純の美しさと高く評価したい。現時点においても賛否両論が存在するDSDリマスタリングであるが、第8は大成功で、第9は、合唱入りというハンディもあるせいか、今一歩という気がした。

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