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Review List of 風信子 

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  • 5 people agree with this review
     2018/07/03

    この世に美しきものは数々あれど ショーソンのConcertほど美しい余韻を残す楽曲を知らない 下書きのまま残されたのかと疑いたくなる譜面だ ヴァイオリン協奏曲の形態を著しているが オーケストレーション前のスケッチに見える しかしピアノ協奏曲にも見えなくもない では二重協奏曲かといえば仮オーケストラ部が寂しい 結論協奏曲風六重奏曲となる 特異な他に例を見ない室内楽であり協奏曲や交響曲に匹敵する豊かな世界を表現している ショーソンの傑作を演奏してパスキエほど印象に残る演奏者はいない 久しぶりに耳傾けて聴き入ってしまった この繊細さと迸る熱情を受け止めるには聞き手もそれなりの器を用意しなけれはならない 優しさや慰めだけで病める魂を支えることはできない 世界が何からできているのかは知らねど 人が生きるのに何が必要かはいつも忘れてはいけない ショーソンの音楽が歌い語ることはその根幹に触れているように思う 朋よ聴きたまえ あなたも如何  

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  • 4 people agree with this review
     2018/07/03

    ブラームスがマイニンゲンの宮廷楽団を指揮して演奏した交響曲の鳴る様を聴きたかったという タピオラS-taは25名前後の弦に二管を加えて40名ほどのオーケストラだ 室内オケでブラームスを演奏することは珍しいことではないが 聴いて驚く ブラームスに聞こえない わたし(たち)の記憶にあるブラームス・サウンドではない ピリオド奏法を採り入れただけではないようだ 即ち古の響きを再現したからでもない 寧ろ新しい 音楽が若やぎ微笑んでいる 新しい生命の息吹をこそ感じる 4つのシンフォニーそれぞれから鎧が剥がされ埃を払い化粧を拭い透明なそれは羽衣のようなガラス繊維の衣装を羽織らせたようだ 音楽に青春を取り戻した瞬間がある そして何よりも価値あるのは二つのセレナードだろう 初めて聞くように耳が歓ぶ おそらくヴェンツァーゴもタピオラS-taもこれこそ自分たちのための音楽だと自覚して演奏したのだ 彼らにはブルックナーNo.0,1&5という傑作がある 互いの信頼と親愛が生んだブラームスだ あなたも如何 

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  • 0 people agree with this review
     2018/07/01

    90年前の録音 モノーラルは勿論だが電気式録音の初めでありSP盤のためのものであり針音が入っている 現代のデジタル音に慣れた耳には雑音と一緒に聞くようでもある まあ 電車やバスの車内でイヤフォンから聞いていると思えばいい いや それよりずっとマシなソノリティだ 重なる悪条件の中でも聞く価値がある演奏だ ブルックナーの第7交響曲の録音としても歴史上最も古い一つだが その後百年に及ぶ数々の演奏が恥ずかしくなるような啓示が齎されている 第二楽章Adagioと初めのModeratoがやや遅過ぎるが 第一楽章は完璧なAlla Breveで演奏している 常に棒を二つで振り続けたという意味ではない 随所にespressivoを効かせて伸び縮みしながら 柔軟なでありながら常にAlla breveの切迫感と推進力を失わない演奏は多くが範とすべきものだ これほど優れた演奏がありながら 歪曲されたブルックナーが広まったのはやはり第二次世界大戦とナチスの存在を抜きには考えられないように思うがどうだろうか あなたは如何 

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     2018/06/29

    オペラは嫌いでもミュージカルは好き ヒットしたミュージカルは先ずドラマが面白い 時代が下ればミュージカル・ドラマも陳腐に見えるのか知らん ベリズモ・オペラやプッチーニは耐えられるけれど それ以前のオペラは観るに値しないストーリーだ という全くの好みからミュージカルの舞台はそれなりに観ている 音楽だけをDiscで聴くのも好きだが やはり全曲を隈なくとは難しい そこでナンバーをセレクションして繋いだ接続曲が余韻に浸るにはちょうどいい 昔々スタンリー・ブラックには世話になったというのは余談 これはストラッタ&ロイヤルpoの演奏 編曲は様々な人がしているから一曲一曲味わいが違う 良し悪しを云々する前にミュージカルの舞台が思い出されて心地よい 舞台を見ていない人にはどうかといえば 気に病む必要はない 美しいメロディーとハーモニーに耳奪われて自由に幻想は広がろうもの 稀代のミュージカル・メーカー ウェッバーの音楽を愉しもう あなたも如何

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  • 1 people agree with this review
     2018/06/29

    ウェルザー=メストは3回”第7番”を録音している 29年前→27年前→10年前と次第に演奏時間が長くなってきている 56分→60分→63分 孰れも及第点だが これはブルックナーを指揮する者に絶対的に必要なものは強靭な筋力である証明にもなっている 如何なる才能も天才も筋力の衰えを補えない 一概には言えないが巨匠の名をほしいままにした指揮者のブルックナーは押し並べて”遅い” このモタモタした演奏をどんな美辞麗句で飾ろうともそこから交響曲の醍醐味を味わうことはない 老指揮者は去れ さてウェルザー=メストの演奏は年齢とともに解釈が変わったかといえば然にあらず in Tempoと言っていい スタートした時点のテンポを維持しつつ小さな表情を加味する王道を歩む 颯爽としながらも情感を繊細に反映する音楽は軽やかに大路を往くブルックナーの姿を見るようで嬉しくなる ところで第一楽章だが 多くの指揮者同様 練習記号B[C ruhig]を拠り所にして冒頭から4/4で振っている これだけが残念だ この曲はAlla BreveのAllegro Moderatoでブルックナーはスコアを書いたのだ 

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     2018/06/28

    先ず交響詩「ルオンノタル」(大気の娘)が聴けることが嬉しい 数ある交響詩の中でこの曲にはなかなか出会えない それはソプラノ独唱を必要とするからコンサートプログラムに入れ辛い ここで歌うイソコスキが素晴らしい 全19曲を歌い切るが 聴くほどに魅力が増していく シベリウス自身と他者によるオーケストレーションが半々といったところだが際立った差を感じない 5分から1分までの小曲だが味わい深い 人の声が伝える力は底知れぬ 器楽では希薄になっていたのだろう 歌という手段はフィンランドを含む北欧の風土やそこに住む人の気質を直截打ち出してくる実感に包まれる セーゲルスタム&ヘルシンキpoは歌唱を生かすに傾注してジェントルな姿勢を貫いている 本当にいい歌がある そして美しい歌唱と演奏がある 朋よお奨めです あなたも如何 

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  • 1 people agree with this review
     2018/06/26

    ピリオド・チェロ奏者そしてピリオド・オーケストラ指揮者である鈴木秀美の現代オーケストラ舞台への頻出が止まない 言うまでもなく止める必要はない それにしても芥川作品の新録音を久々に聴いたような気がする 聴けば分かるように大変魅力ある作品たちであり 共感を持つばかりでなく無辺大に想像力を刺激される そして鈴木秀美が邦人作品を奏でる意外性からか 既知の交響楽に新鮮な響きを聴く思いにとらわれる やはり奏法にピリオド的指導が入ったからだろうか 音響が澄んでいるのに野太さを感じる 軽やかさをまとい流麗に進行しながらも豊かに響き渡る爽快感は如何許りか 明治維新以来150年にわたって西洋コンプレックスが消えない 芥川也寸志に限らない 日本人作曲家の作品を日常に聴く生活を獲得したいものだ それにはオーケストラ・ニッポニカのように邦人作品に特化した楽団のみならず 日本中の演奏家が同胞作曲家作品を取り上げるべきだろう 勿論作品単位で取捨選択が為されなければならない また偽巨匠などが現れないためにもわたしたち聴衆も耳を肥やさなければならない 先ずは聴こう朋よ あたなも如何       

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  • 3 people agree with this review
     2018/06/26

    もう30年前の録音になる 当時モーツァルトがこれら傑作を残す契機となった名手ロイドゲープを引き合いに出して称揚されたグリアーだったが それはまだまだナチュラルホルンを吹きこなす奏者が限られていた現実があったからだ 現在ではピリオド楽器と現代楽器という二者択一が既に旧世代の意識となっている ピリオド楽器といっても時代の推移に沿って多種多様であることが常識となって 様々な様式の楽器を嗜む奏者が急増している ならばグリアー&マギーガンの一枚は時間の下に埋もれていくかといえば逆で バルブなしのホルンでこれだけ音質を均一にホルンの魅力ある美しさを表現しているグリアーの資質と研鑽の高さを示して後輩の範となっている その至難さなど微塵も感じさせないのどかなホルンの音を耳の雪ぎに午睡に沈むのも至福と言える 現代のパルブホルンもこの角笛の味わいを忘れた機能など備えるべきでなくまた追求すべきでない これを聴いたらダブルホルンで得意満面にソロをとる奏者が滑稽に見えてくる 音色に勝る説得力はない もしまだなら あなたも如何

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     2018/06/25

    交響曲第6番に注目している シューベルトだけではない 番号は必ずしも作曲順を示していないから こじつけだと野次が飛んできたり 一笑に付されることを自覚しているが それでも敢えて言おう その作曲家を ”見る”とき 第6交響曲にその個性が結晶していると これが肝だ 演奏家はこの”第6”をやりこなせてこそその作曲家を理解したと言える ハイドン ベートーヴェン チャイコフスキー ブルックナー マーラー シベリエス プロコフィエフ そしてショスタコーヴィチ モーツァルトはどうしたと揶揄する声が飛ぶ それは6曲まで到達しなかった多くの作曲家の仲間に入れよう 第39番こそ真の第1番と考える それはモーツァルトの最後の4年の意味を知ればこそである 長い余談で煙に巻いてはいけない 決して速いテンポで奇を衒ったりせず 牧歌性を前面に押し出したハ長調の心地よいこと 生きることの根底に原罪として永久に凍結している”悲しみ”を抉り出したロ短調との対比が鮮やかだ そして第6番を後ろに持ってきた感性に共感する もしまだなら あなたも如何

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     2018/06/24

    思想やドラマを背負わせていない音楽が心地よい ルネッサンス人にも生活苦や社会不安はあっただろうに 支配者のための音楽ではあっても人間が自然の一部でいられた世界を覗いている気持ちにさせられる 愛するマンロウの遺品は今も光は放つ宝石のようだ リコーダー クルムホルン コルネット サックバット ヴィオル リュート 太鼓 そしてガンバ類 軽い抜けの響き コロコロ転がる音の粒 肌を撫でて吹きすぎていく風なのだ 音楽がヒトの感情もシャカイの風潮も目の端に止め鼻に引っ掛けて過ぎていく吟遊詩人の道連れだった時間が垣間見得た でも音楽も人も過去へは戻れない まだ見ぬ未来へ今日もまた旅立たなくてはならない 私たちは未来に何を残せるのだろう 鼻の奥がツンとした 目の奥が曇りかけたから 立ちって歩き出す さあ あなたも‥ 

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     2018/06/24

    小品集から聴く シューマンの器楽曲は他楽器でも演奏可能に書かれている ”アダージョとアレグロ”はホルン ”幻想小曲集”はクラリネット ”3つのロマンス”はオーボエを本来想定して書かれたものであり ”民謡風の5つの小品集”はヴァイオリンでも演奏される シュヴァーベのチェロは歌う 声高ではない 口笛でも吹いているようだ わたしは好感を持って聴いた ここは好悪の分かれるところだろう 私が愛するフランス人のシャイは寧ろ冒頭のコンチェルトの方に色濃く出ているやも知れぬ 素っ気ない歌い振りと見られて損をしそうだ だがそうだ これがシューマンって奴だよなぁと肯いてしまう フォークト指揮のノーザン・シンフォニアも心得たとみえて出しゃばらない なんか堪らなく好い奴らと出会っているようで嬉しくなった モテねえだろうなぁ 上昇志向風薫せてる男子にも勿論女子にも でも好きだなーぁ こういう奴ら さあ あなたは如何 

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     2018/06/24

    三拍子揃ったDiskだ 一に好い楽器 鳴りの良さとアクションの精密さとバランスに耳奪われる 二に優れた奏者 まだ若いだろうに中川岳の鋭敏な感覚と運動性能の天分と研鑽が見える 三に音楽の豊かさ テレマンのチェンバロ独奏曲を聴く機会は少ない 作品名辞典にも数えるほどしか発見できない あれほど膨大な作品が知られているのにである 表題は「6つの序曲集」だが 辞典には「組曲 - 2つの付加楽章付き」とあり曲順も違っている 序曲に2つの舞曲を添えて三曲からなる構成をとっている 舞曲名も名乗らずソナタを模した形にしている 3つの長調と3つの短調というバランスも個性的だ もともと曲順というものもなかっただろうし どこから始めても好いし ぽっと抜き出して中でてても情趣を味わえる 何しろ好い曲で聴き惚れてしまった 何度でも掛けたくなる逸品だが 構える必要もないし改まって迎える用意もいらない 生活の中で活かされ美しい時間を作る糧となろうか さて あなたも如何
     

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     2018/06/23

    喜遊気分を愉しむ曲だから音色は第一義に挙げられる ピリオド楽器によるシューベルトのオクテットは初めて聞いた ホルンが何より個性的で気分を盛り上げる 楽章によっては倦怠を感じなくもないが 曲の性格から言って構えて聴くものではないのだから 何も畏まって一方向を睨んでいる必要もない 当に”ながら聞き”でいいのだ 注文主のフェルディナント伯爵も自分でクラリネットを演奏したのだろうし シューベルトも第二楽章Adagioでは難しくはないがクラリネットが存在感を示せるフレーズを用意して 伯爵にリード役を振っている 現代のコンサート・ピースではない とすれば生活の中で様々な場面で活用すれば好い音楽といえる それでも両端楽章などはちょっと注目して耳傾けたいものだ 奏者の技巧の見せ所でもある ヴァイオリンには名手が用意されていたようだ 機会音楽ではあるが 総じて美しい曲であることに変わりはない 聞かない手はない あなたも如何  

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  • 2 people agree with this review
     2018/06/23

    プーランクの代名詞に使われる三曲を闊達に聞かせる タンゴー指揮するアイルランドのRTE国立響が気持ち好さそうに鳴っている プーランクの全音階的響きはどこまでも拓けゆく草原のようだ 音と音がぶつかる緊張感をほとんど経験しない 始まりと終わりが不明瞭な音塊の羅列のようでもあり 奇妙な浮遊感すら感じられる プーランク独特の音の彩りとでも言おうか 一度好きになると虜になってしまう魅力に満ちている 2つのバレエからの組曲が楽天的アンニュイに染まっていても然もありなんだが 小交響曲ともいうべき”シンフォニエッタ”ですら世界を同じくしているのだから面白い 単に音色が云々という特徴では語れない 音楽の発想と構造への独自の視点を指摘せざるを得ない それがドビュッシーのような半音階旋律線を持たないメロディー感覚を失っていない平易さは驚くべき独創性だろう プーランクはフランス音楽の華なのである 朋よ愉しめ あなたも如何

     

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  • 2 people agree with this review
     2018/06/23

    「モスクワ郊外の夕べ」のバスのソロが沁みる 赤星赤軍合唱団は今も健在なのだろうか 「スリコ」の水がしみ込むように心潤す柔らかいハーモニー 「蚤の歌」は舞台劇を見ているようで愉快 「白樺は野に立てり」はテノール・ソロと激しい合唱との起伏の差に引き込まれる クラリネットの音に導かれて「ステンカ・ラージン」が始まると一緒に歌ってしまう 多くの曲はざっくざっくと歩む行進曲調か哀愁を帯びた熱唱型だが 好きな人には堪らないだろう 「ポールシュカ・ポーレ」がなかったのが残念  

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