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Review List of うーつん 

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  • 2 people agree with this review
     2020/03/12

      ムーディな雰囲気の会場、祝祭的な気分で待ち受ける聴衆と比べて正反対といえるようなバッハ平均律のギャップがまず面白い。 シフは会場や聴衆が何であれ、自分の信ずるバッハを粛々と弾いていく。粛々とはいってもしかめっ面で弾いているわけではない。バッハを奏する悦びそして感謝とバッハの作品に対するリスペクトがにじみ出てくる演奏スタイル。

       (私のイメージでは)プロムスは音楽の祭りと考えている中で、ただひたすら前奏曲とフーガだけを演奏するのはどうなんだろうと思っていたが、お祭り気分な聴衆がやがてシフの奏するバッハの深く温かい作品の空気に染まっていく様子は静かな感動を覚えます。

        楽器はスタインウェイ。実際の意図は不明だがスタインウェイを使ったのは派手にきらびやかに響かせるためでなく、広い会場にまんべんなく(「音」ではなく)音楽を伝えたいためにあえて選択したのかな、なんて思ってしまいます。ペダルは踏まず腕を振り回すことなく、肩・腕から手・指の絶妙なコントロールで音楽が淡々と響いてきてます。まさしくバッハを弾きこんでいるからこそできる至芸なのでしょう。私自身は弾けませんが、思うにピアノ演奏をされる方には格好の「教材」となるのではないでしょうか。

       24の小宇宙ツアーが終わり、演奏者と聴衆がしばし静寂の中でバッハの音楽に想いをはせてから拍手が湧きおこる光景を観るとシフのプログラミングと音楽づくりは成功したのがよく分かります。 おすすめです。  

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     2020/03/09

      ピリオド楽器での演奏は人によって好き嫌い、または好みの違いがはっきり分かれるものだと思っている。その中にあってラルキブデッリのメンバーによる弦の響きは私にとって好ましいものの一つである。(がんばってノン・ヴィブラート演奏してます!、という押しつけがましさがない、という意味で)音に余裕があり、キンキンしない。すこし潤いすら感じられ落ち着いて聴くことができる。  インマゼールのフォルテピアノはそれに比べるとヤンチャな活発さを感じるもののラルキブデッリとの演奏なら程よく中和され聴きやすい。そんなメンバーによる当盤はお互いの良いところ取りの一枚と言える。

      曲全体に立ち現れる鱒の溌溂とした俊敏な動き、清流の清冽さ、周りの豊かな自然と陽光などをイメージできそうな楽想、または歌を表現するにはちょうど良い。アルペジオーネ・ソナタやノットゥルノでも同じ印象で心地よく聴くことができる。私自身が「歴史的検証」「演奏技法」などとこむずかしく考えない質なのでこういった素直に音楽を奏でてくれる演奏は愉しめる。そもそも「ます五重奏曲」を聴くときにそんな重い荷物を背負っていると疲れてしまうでしょうに…。

       そんな気持ちを理解いただける方なら当盤は面白いのではないだろうか。おすすめです。

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  • 1 people agree with this review
     2020/02/17

      文庫版として登場した今回ようやく目を通した。バッハがこの受難曲に彫り込んだ(「書いた」では表現しきれない)楽曲・音符・聖句にこれほども深い意味と創意工夫がなされていたのかとあらためて驚いてしまった。バッハが全身全霊を込めてここに刻んだ全てはまさに、彼がよく署名した「Soli Deo gloria」の気持ちに収れんされることを理解できた。

      受難曲の成り立ちからバッハの取り組みや研究、そこから得られる音楽上の効果まで丁寧に記されており私のような初心者から他のベテラン愛好者、さらには演奏や歌唱を生業とする方すべてに知見を与え、マタイ受難曲に込められた想いに光を当ててくれることになるだろう。

      総じて考えると、神は遍く存在すると考えたバッハにしてみればこの長大な曲のどこをとっても神の存在を示し、その威光を称えることにつながるからこそあれほど様々な仕掛けを織り込む必要があったのだろう。この点が本書を読んで私がまず思った感想である。

      また、私個人として第1部最終の楽曲に少し違和感を覚えていたものだが本書内の解説を読んで納得し、共感できたのも面白い発見だった。  バッハを愛する方、マタイ受難曲を愛する方、音楽と知的好奇心(または研究心)を結び付けておられる方におすすめしたい。

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     2020/02/01

     再発売(2020/03)にあたり、これから購入検討する方のためにレビューしておきます。とても美しく、躍動感があり、味わい深いブルックナーです。お薦めします。 「老いてもなお名馬」と言いたくなるようなヨッフムの至芸を愉しめる全集です。

       曲中でのテンポの加速が「ブルックナーとは」と考える向きには評価が分かれるところでしょうが、私はむしろそこに人間味を感じる。ブルックナーをじっくりどっしり聴くのも好きだが、こういった躍動感あるブルックナーもあっていい。表面的にしかめっ面で抹香臭くなるだけより人間の営みとして喜びと祈りをペアにした音楽作りも頷けると思う。そこがあるから緩徐楽章での深みと祈りへの法悦がより意味を持って語りかけてくれるのがこの全集のすばらしさだろう。


       特に好きなのは弦の音色。しっとり、たっぷりと慈しみを持ってブルックナーの言葉を歌ってくれるところをぜひ聴いていただきたい。金管や木管ももちろんそれに負けてません。ヨッフムの棒の下、実にのびやかにオケがそれぞれの持ち味を引き出され、それこそオルガンのような重厚で上に伸びるような音楽になっています。

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     2019/11/20

       細川俊夫の新譜は「庭gaeden」に題をとった作品集。いつもの細川節で強さと深さ、そしてしなやかさを併せ持った音楽が終始している。庭にちなんだ曲が多くあるのは知っているがこうしてまとめて一枚に収まっているのは初めてではないだろうか。 そしてこのディスクを聴いていてふと思い出したのは、武満徹も庭に題をとった曲を多く書いていたなあ、ということ。両氏の間では少なからず交流があったと記憶しているが、「庭」についての話がでたことはあるのだろうか?

       武満徹の庭に関した曲への私の印象は絵画的・文学的であること。色彩感があり、雨や空気の湿り気のような感覚も感じられる面白さが好きである。 対して細川俊夫の本作で感じるのは能舞台。そこで演じられるのは水墨画のような色合いで秋の寒さを感じるような舞い。両氏の著作や対談集を読んで、二人とも日本らしさを意識的に表現するタイプでないと解釈している。「日本らしさ」をあからさまに出してきたり海外受けするために日本を「ダシ」に使うことを戒めている二人だが、それでもその根本には日本の文化や歴史思想が離れ難くついている気がする。

       両者の庭の曲を聴いて私がイメージするのは日本の庭園であり、その空気。バラの花がかぐわしい西洋の庭ではない。バックボーンとして古来からの日本文化や芸術思想、精神構造が本人の意思に関わらず出るのであろう。その表出の方向は異なるとしても。   だからこそ世界中でTakemitsu・Hosokawaが「日本出身の、独自の作風(声)を持つ作曲家」として聴かれるのだと思う。特に(テレビで面白おかしくやる類の)日本自慢をする気はないが、その文化に尊敬の念とプライドを持つべきであろう。その意味で当盤は、作曲者である細川俊夫、そして武満徹の二人の関係や役割、作品思想について考えるよいきっかけになった。
     

     
      

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     2019/11/19

      ドキュメンタリーとヴァインベルグのリサイタルの二本立て。どちらも見応えあるのでお勧めしたい。ヴァインベルグの「24の前奏曲 Op.100」はわずか1ヶ月違いながら別収録のCDもある。CDも今回のリサイタル映像もコンセプトはかわらない。当盤の方がリサイタルの眼目である「アンタナス・ストクスによるポートレートを上映しつつ、失われた時代への前奏曲を奏する」内容を堪能できる意味ではぴったりかもしれない。とはいえ、CD盤の価値が劣るわけではない。 当盤でひとつ注文をつけるとすれば各前奏曲ごとに「第1番」のように画面いっぱいでタイトル映像を挟むやり方は曲間の流れや緊張の持続を削ぐように思えた。各曲が連続せず独立した曲とはいえ全体を通すことで一連の物語になるように思えるからだ。


        紹介が逆になったが、前半に置かれたドキュメンタリーも秀逸。時代の波に翻弄され、彷徨いつづける意味でクレーメルもヴァインベルグも「同朋」と言えるのかもしれない。ヴァインベルグのヴァイオリン協奏曲の練習でも音を甘く流さず、意味を持たせるよう要求するクレーメルの真摯さは襟を正さずにはいられない。ともに時代を歩いてきたA.ペルトとの対話も心打つものがある。クレーメルがヴァイオリンを通して「自分の声を見つける」ことをいかに追及しているかを余すところなく伝えてくれている。

        当盤のWキャストであるクレーメルとヴァインベルグ。一方はヴァイオリンを弾き続けることで、もう一方は五線譜に音楽を刻み続けることで自分の存在を、もう少し大きく言うなら、うつろう時代の中にその存在意義を見い出していることになるのだろう。これは決して彼らだけの「道のり」ではなく、多かれ少なかれ我々も同じ道を歩んでいるのだ。芸術とかコンサートを開かずとも同じなのだ。それを共感できる方にはこのドキュメンタリーは心打つものとなろう。そんな人生の彷徨の中にいるからこそ、友人や家族との語らいや心鎮まる場所での逍遥に安らぎを感じるのだろう。映像の中でクレーメルが家族と談笑し、街角の寺院をしずかに歩くように。

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     2019/11/17

     1992年に初発だったと思うが、プロコフィエフをろくに知らないくせにすぐに購入して聴いた記憶がある。アルゲリッチの炎のごとき熱い演奏とクレーメルの冷たく怜悧なクールさが高次元で融合した演奏。これほど方向が異なる才能なのにこれほど面白いのはなぜだろう。二人の演奏を聴いてプロコフィエフの面白さと難しさを感じた記憶がある。

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     2019/10/22

      あしかけ4年かけ「四元素」にまつわる作品をプログラミングしたシリーズの第1弾。プログラムの面白さに惹かれ公演を聴きに行きたかったが都合つかずあきらめたがこうしてディスクになって一安心。こういった面白い着眼点から作られたディスクやコンサートがもっと増えたらよいと思う。小菅優のプログラミングの妙を評価していきたい。


      「水」をテーマにしたディスクでは他にもH.GrimaudがDGレーベルからだした「WATER」が思い出される。両方聴いての感想としては、グリモーは水の変遷・水を取り巻く環境に視点があり、対する小菅優の本作は水に関連のある物語・歌を紡ぎだすことに視点が置かれている気がする。  両者ともに同じ曲(フォーレの「舟歌」、武満の「雨の樹 素描II」、リストの「エステ荘の噴水」、ラヴェル「水の戯れ」など。逆にグリモーが取り上げたヤナーチェクの「霧の中で」を小菅は四元素コンサートの第3作「風」(2019)で取り扱うところの違いが興味深い。)を扱っているので聴き比べも面白い。


      このディスクでは「水の物語」として一連のストーリーができており、聴くほどにイマジネーションを掻き立てられる。水から連想される柔らかい流れるような演奏というよりは物語性を第一に個々にがっちりした構成感あり、次々に画面が変わっていく心地よさを感じる。  これから「火」「風」「大地」とシリーズ展開しやがて大きな叙事詩が出来上がる計算だが、今後を期待させる聴きごたえがある。

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     2019/10/14

      グラーフ、エラール、ベーゼンドルファーそしてスタインウェイの名器を使ってそれぞれの時代の作品を一堂に会したすごいアルバムだ。ピリオドからモダンまでピアノという楽器の特長を一枚で聴かせてくれるフルコース料理のようなディスクで、楽器による音の出方を満喫できた。楽器オタクとも言えそうなメルニコフの面目躍如たるアルバムで、彼の研究・技術と楽器への情熱が充分に感じられる。4種のピアノの中では特にベーゼンドルファーが、野太くて重心が低めの落ち着いた音に感じられ面白かった。


      しかし、私はこのアルバムに星3つで評価させていただきたい。アイディア、演奏技術の冴え、楽器の違いを愉しむにも最適なアルバムであることについては星5つで応えたいのだが、メルニコフのコメントとして紹介された「作曲者が意図したことはふさわしい楽器を用いなければ忠実に再現できない」の言に対し、「果たしてショパンは同じように演奏しただろうか?」「リストならもっとタメやグッと聴衆の心をつかむような演出を施したのでは?」という疑問が浮かんでしまうのだ。

       シューベルトが「さすらい人幻想曲」を自ら作曲しながら自分で演奏できずブチ切れたというエピソードも伝わっているが、もし弾けたとしても何か違う − 歌謡的ふくよかさと、その反動である影をまとった闇のような − 演奏の両面を出すような気がする。  ショパンもズバッとガンガン弾ききってしまう演奏より、静かな音を奏でつつ仄かな間を持たせ詩情を香らせたように思える。  リストは初めからトップギアで激走せず、ギアの波を自由に移動させることで加速感やグルーヴ(高揚)感を聴衆に与えそうな気もする。  ストラヴィンスキーはたぶんここにあるきっぱりとクリアですべての音がきらびやかな音が均等に表現され、せめぎあう演奏を好んだような気がするので納得している。


       あくまでも私個人の主観でイメージしているのでそれを基準にレビューで問題視するのはいかがなものかという意見もあるであろう。しかし、楽器がそろえば時代の”音”になるかもしれないが、その時代・その作曲家が奏した(イメージした)”音楽”になるかは違う問題のような気がする。

       楽器を愉しめる、聴きごたえのあるディスクであることは承知の上であえて上記の個人的感想を基準として星3つとさせていただく。

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     2019/10/09

     眉間にしわ寄せて考えながら聴く曲もあろうが、ここにあるような、究極的にあっけらかんとした単純明快な演奏も愉しいものである。指揮者・オケはあくまでも伴奏(そのように割り切って素晴らしい伴奏に徹したデュトワとLPOにも拍手を送りたい)、光るべきはソロのヴァイオリン…パガニーニだからこそ許される、良い意味であからさまな「ぶっ飛んだ」演奏を何も考えず楽しむことが必要な時もあろう。そんな時、このディスクは貴重だ。あの手この手で繰り出されるヴァイオリン演奏の超絶技巧を美音でスカッと弾ききるアッカルドのすばらしさを満喫されたし。

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     2019/09/30

     1998年11月14日収録の「After The Fall」がキース復帰初戦の記録で、1999年収録の本作はそのあとの収録だそうな。 両方聴いたが「After The Fall」が少し確かめながら、探りながら演っているような印象。それに対し本作「Whisper Not」はライヴを楽しんでいるような雰囲気が満ち満ちている。キースのドラマ、ドキュメンタリーとして聴くなら「After The Fall」、ライヴの醍醐味、メンバー間の掛け合いやジャズの楽しさを聴くなら「Whisper Not」かな? そして、「キース達3人のライヴが好き」なら両方かな?

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     2019/09/28

       私個人の考えとして「今、もっとも聴いておくべきピアニスト」の最右翼にいるA.シフ。数回コンサートに行ったことがあるが、どれもグッと心に残っている。

       圧巻だったのは2017年、ハイドン・モーツアルト・ベートーヴェン・シューベルトの「最後のソナタ」「最後から2番目のソナタ」を奏するリサイタル。天上から降るかのような美しいピアノの響き、特別なことも訳ありなアクションするわけでもないのに心の奥のにスーッと沁みてくる演奏の妙。しかも休憩なしで!  何でこんなことができるのだろう、といまだに思い出す夜だった。   その秘密の「ほんの少し」が文章によってつまびらかにされたのがこの本だろう。ちなみに本で読めるのはほんの少し。残りの大半は実際にコンサートで体感すべきであろう、チケットを入手できる幸運に恵まれたのならば・・・。


        前半の対談(インタビューの質問が少し表面的に見える気がするものの)でも、後半のエッセイ集でも「作曲家と作品に奉仕する」気概と研鑽、そしてそれを支えるための探求にいそしむピアニストの一面を知ることができる。同僚ピアニスト、更に政治や自らの出自・アイデンティティに関する問題に対しても率直な(または辛辣な)意見を表明し、音楽芸術の使徒(そして一人のの人間として)正面を見据えて正道を歩もうとする強烈な意志を感じる。


        バッハ作品をペダルなしで弾くことについて、反面教師的に同僚ピアニストの奏法を例に出しつつ根拠を述べるところや、ベートーヴェンのソナタ全集についての所見 −全曲揃えるまでの研鑽の様子、リサイタルに出す際に作曲した順に弾く理由、使うピアノの選定へのこだわり、ライブ録音を行うまでの取り組み方− は実に勉強になった。 こういう思索からあの演奏とディスクが世に問われたと考えるとCDを聴くときも心して聴かねばと考えるほどだ。


        発した次の瞬間から無の中に消えていく宿命を持つ音楽という芸術表現においては、それを記憶にとどめられるのはほんの一部かもしれない。この本は、やがて静寂に包まれていく音に想いを馳せ、そして静寂から音楽を紡ぎだしていこうとするアンドラーシュ・シフの人柄、ここまでの道のりと決意表明を知る端緒となることであろう。


     
       最後に付け加えると、このピアニストは我々聴衆にも容赦はない。「コンサートの聴衆のための十戒」と題した一文も載せている。音楽を娯楽的・刹那的に消費するのでなく、ピアニストと共に音楽の探求に対して「共同作業」を求めている。 ここに書いてある我々へのメッセージは大いに共感できる。演奏中にもかかわらず携帯音鳴らしたり(切り方わからないなら家に置いておくかクロークに預けるべき!)、ガサガサ探し物(飴玉?)を始める人、プログラムをバサッと落とす人(眠気に襲われましたか?)、派手にくしゃみする人(せめてハンカチ使うのが最低限のマナー)、音の響きが消え入る前にバチバチ手を鳴らしブラヴォーを叫ぶ闖入者(論外)・・・。  それらがいない状態で、シフに代表されるような匠の手で奏でられた芸術作品を匠と一緒にホールで共有出来たら・・・これほど幸せなことはないだろうと考えながら本を読み終えた。 またしばらくしたらはじめから読み返すだろうと思う。いや、読み返したい、何度でも。

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     2019/09/22

     余談から始まるが、これを書いている2019年9月にアンドラーシュ・シフの本(「静寂から音楽が生まれる」春秋社 刊 シフへのインタビューとエッセイをまとめたもの。ISBN 978-4-393-93602-3)が出版された。こちらも薦めたいがここはCDレビューの場なので自粛。

       前述の本の中でシフ自身が言及している「作曲の順番に演奏し、それをライヴの感興をなるべく忠実に残しつつディスク化する」という明確な意志の下で作られた全集の第3巻。目立った有名曲はないものの、のびのび・きびきびとし、颯爽とした快演と思う。知情意ともに中身があり、弛緩・ミスタッチがないこのディスクがライヴ収録とは恐れ入る。シフがいかにベートーヴェンのソナタを自らの血肉としているかの証左であろう。

       来年(2020年)の聖年に、有名曲は次々に演奏されるだろうが、このプログラムでコンサートホールを満席にできるか、そもそもこの曲目でコンサートは開かないであろう(この巻にレビューがないのもその辺の原因もあるのだろうか)。しかし、もしもシフが演るなら必ず行くべきである。このCDを聴けばそう思うはず。悲愴にない晴朗さ、月光にない明るさ、熱情にないのどかさなど、ベートーヴェンの素顔のひとつをのぞくことができる。私について言うなら、シフの全集のうち、最初に買ったのがこの巻。ここで聴いてその演奏の鮮烈さと豊かな響きに魅了され他の巻も次々にそろえた記憶が今も残っている。

       蛇足ながらシフの別の巻にある悲愴・月光・熱情などの有名曲もやはり名演です。別に3大ソナタをはじくつもりはないので。

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     2019/09/07

     ピリスの他のディスクでもレビューしたが、ここでも同様に「凛とした」演奏と評させてもらう。その言葉がピリスの演奏に一番合うと私は確信している。

       他の奏者によるノクターンと異なり、聴いているうちに何か胸がしめつけられるような、心の震えを呼び起こすような「真っ直ぐさ」を感じてしまう。単なる「ノクターン」でなく、「夜に想う真摯なつぶやき」を聴かされるような…。  単なるイメージ先行的な甘くて美しい夜想曲と一線を画す、心の深淵をのぞきこむような演奏と思う。

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     2019/08/22

     宮田まゆみの笙による10世紀以前の音楽が奏され、そこから続くかのように始まる21世紀の音楽『エテリック・ブループリント三部作』。さながら「現代音楽的雅楽」に感じた。  楽器や奏法・語法は時代の違いを表わすものの、その根幹となる思想を「自然に存在するエネルギーの音表現」と考えるなら時代を超えて共通するものになる…と解釈した。   実際に作曲者が意図したことを理解しているとは思えないが、ライナーノーツを読むと自然や不可知のものへの探求とその音楽表現が望月京のテーマとなっているように思える。

      「盤渉調調子・双調調子」の雅楽から「4D」への「空気」のうつろいはごく当たり前に感じたし、「ワイズ・ウォーター」は水が生まれ、変遷し、大気へと立ち昇るイメージの変奏曲にも思える。「エテリック・ブループリント」では透明でありながら響きが続く楽器の使用や空気を吹き込む形式の楽器などで、空気の存在感を耳で体感させ、そこに思いを馳せさせるような面白さを感じた。


       少なくとも雅楽と『エテリック・ブループリント三部作』のカップリングに違和感は感じず、むしろ雅楽が前に置かれたことで自然観が前置きされ興味深く愉しむことができた。もっと聴きこんでいけば彼女が潜ませてある新しい音を「音楽の大気」の中から発見できるかもしれない。

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