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Review List of うーつん 

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     2020/07/04

     演奏家である彼女がが何を考えながら演奏しているのか、目指すところ、演奏者目線からみたその曲の「ツボ」や「難所」が平易な言葉で書かれている。彼女の演奏を聴きながら読んでみると「あ、なるほど、そういうことなのか」と思うことばかり。これからクラシック音楽の扉を開く方には格好の入門書だし、聴きこんでいる方にも音楽の深さを知らしめてくれる案内書となるはずだ。インタビュー形式で収録した内容を一人称形式に直して編集されているが文体やメッセージから彼女の真面目であたたかく、穏やかな人柄と音楽への愛着や探求心がじんわりと伝わる読み物。おすすめです。

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     2020/07/04

      ゴルトベルクはどうしても華やかで自由闊達なメロディ部に耳がいってしまう。他の演奏者のディスクでもバスは隠れがちになってしまうが、当盤は「バス声部の変奏曲」である事がとても理解しやすい演奏と感じた。そして同時にバッハに対するメジューエワのリスペクトも。 更にゴルトベルク一枚にせず他にも魅力的な曲を添えてくれているのもうれしいところだ。

      アリアに始まり、どの変奏も手が抜かれていない実に丁寧な演奏。他の奏者が丁寧でないというのではない。丁寧な弾きぶりが他の奏者以上なのだ。どの音もおろそかにしないでいて、かと言って凝り固まっている感じもない。右手のメロディ、左手のバス、両方の旋律が歌いあい、呼応しあい、入り混じっていく過程を愉しむことができる。敢えてリクエストするならリピート部の装飾においてあともう少し即興的な味付けがされたらいいな、と思うこともあったので次のディスク(または演奏)で期待したい。

      ゴルトベルクは彼女の著書「ピアノの名曲 聴きどころ弾きどころ(講談社現代新書、2017年)」内にある同曲の記述を読みながら聴くとなおさら分かりやすいのでこちらの書籍もおすすめしたい。

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     2020/05/24

      舞台は原発の燃料棒を思わせる無機質に光るオブジェが上から吊り下がるシンプルなつくり。歌は前作「松風」と比べてもかなり直情的で激しい表情付けがされている。地震などの衝撃を、家族を亡くした感情の揺れを伝えるためだろうか。打楽器による激しい出だしも今までにないやり方。動きも抑制され逆に激しい歌いぶりが余計に目立つことになる。 母親クラウディア役の表情は能の物狂いにも似た感じで痛切にその哀しみを突き付けられた。クラウディアの義姉ハルコ役の藤村実穂子も役柄にはまっていた。人間の悲劇が繰り広げられる中、それでも海は静かにそこにある。最後はみな海のかなたに目線を送りながら様々な想いを心にひめ、幕は下りていく。


      東日本大震災、その津波によって引き起こされた原発事故…現在に生きる日本人が決して忘れることができない悲劇。 福島、隅田川…突然の悲劇で子供と離ればなれになってしまった母親の哀しい狂気。  こういう括り方は不謹慎かもしれないが、悲劇であれ芸術であれ日本という地をきちんとした形で発信し理解の一端にしてもらうことは必要なことだと思う。オペラという形式で細川俊夫が伝えた「日本」。日本という国が、大震災のあった地であり、原発事故のあった地であり、「彼岸」という祖先または故人と交流する文化風習を持つ地であり、「能」という芸術が育まれた地でもある、ということを広く知って考えてもらえるようになればよいが。


      2020年に当盤を入手し視聴したためかもしれないが、放射能を防ぐ防護服のシーンなどは本年の病院内で防護服を着用し苦闘する方々のシーンにかぶって見えてしまった。2011年のあの事故だけでなく2020年に起きている災厄にも通じるような感覚をもって観ることにもなるかもしれない。

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     2020/05/22

     2017年の第1巻に続いて第2巻の登場。第1巻と同様にごく自然なふるまい、時々笑みすら浮かべる表情で気負いなくバッハの世界を豊かに構築していく姿に感心しきり。シフというとベーゼンドルファーを好んで弾くイメージがあるが、そこは弘法筆を選ばずの境地でスタインウェイ(もちろんスタインウェイだって名器で粗末な筆では全くないです)をきれいに弾きこなす。曲としてはダイナミックな音響や名人芸と無縁の、まさに「職人魂」にあふれた内面に沁み込むタイプの内容ゆえ大規模なホールでの演奏は聴衆にも演奏者にもベストの状況ではないはず。しかも2時間以上(フルマラソン並みの時間だ)という長丁場でさすがに演奏者も聴衆も疲れるだろうが、全曲終わってみると両者とも心地よい疲れと充足した時間の共有をできたという一体感すら感じる。ひたすらに真摯にバッハの世界で心遊ばせているシフの姿と音楽を堪能したい方に向けて推薦したい。

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     2020/05/17

      2019年のライヴ(DVD映像の方は2017年)が2020年にリリース。今までの中でもっとも「最新」の状態でのリリースは非常に喜ばしい。CDもDVDもソコロフのベストショットが収められていると思う。ちなみに紹介レビューにある「音楽の魔術師」という紹介はあまりしっくり来ていない。せめて「音楽の哲人」などの方が彼の演奏に合っている気がする…。

      CDはベートーヴェン最初期のソナタと最後のピアノ・ピースという対照的な前半、後半はブラームスの最後の小品集でまとめられた興味深いプログラム。特に面白いなと感じたのはベートーヴェンのバガテルOp.119。装飾や細工はせずざっくりした弾き方は、ソナタOp.2-3の後だけに何やら禅問答をしているような印象。訥々と弾きこんでいくソコロフらしい演奏と思う。
      後半のブラームスも、スケールの大きさと繊細なピアニズムという両極にありそうな要素を一体化した凄い演奏に仕上がっていると感じた。私はこれらの曲集を作曲者の「老境の諦観とノスタルジー両方の問わず語り」を芸術に昇華した作品と考えているが、ソコロフの演奏からブラームスの感情の高ぶりやふとした独り言、つぶやきが聞こえてくるような錯覚をおぼえた。

      DVDはCDと違う曲目なのでひとつのアルバムで2回愉しめるパッケージ。モーツァルトはチャーミングなK.545(リピート時の装飾も小粋)、端正な彫り込みのK.475&457は他の奏者と違う味わいを愉しめた。後半プログラムのベートーヴェンでは、Op.90でおおらかに喜びを歌って、一度ステージをさがってからOp.111へいくと思っていたら拍手もはさませずすぐさまOp.111へ。これはすごいやり方と感じた。

      普通なら一度集中し直してOp.111という高峰に向き合うところだろう。ところがソコロフのやり方によって、Op.90 第2楽章での喜びの謳歌からいきなりOp.111冒頭で奈落の底にたたき落とされるような衝撃を受けた。そしてOp.111の第2楽章では、全身が傷つき深く苦悩しながらも時間をかけて(他の演奏と比べてもかなりじっくりと弾き進んでいる)立ち上がり歩いていこうとするベートーヴェンの確固たる意志を感じた。 あくまでも私個人が聴いたうえでの解釈だが、どの曲をとっても「ただ曲を聴く」とならず、「曲を通して作曲者の哲学や人生を考えさせる」ところにいざなうところがソコロフを聴く醍醐味かと思ったりしている。

      2020年は新型コロナウィルス禍で国籍・職業・身分を問わず苦難の年となってしまった。そんな中で聴いたせいか、ベートーヴェンのOp.111をはじめとしたソコロフの演奏に感じ入るところが多いのかもしれない。もちろん、そんな時に音楽を聴くなどお気楽だという意見もあるかもしれないが、芸術で少しでも心に光をともす事も大切ではなかろうか。そこで皆さんにも聴いていただきたくおすすめする。そして皆で立ち上がって歩いていきたいと切に祈る。

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     2020/05/14

     ハーゲンSQの緻密であるけど冷たさを感じさせないやり取りをリアルに収録してあり、聴きごたえは十分。演奏のすばらしさを優秀な録音でしっかり支えてくれている。
     グリーグはなじみがなかったが北欧らしい(?)灰色がかったほの暗さが魅力的。聴いていて何かムンクの絵(「さけび」以外の絵)を連想してしまった。お国柄なのかわからないが、(私が持っているイメージとして)独特の色彩を感じさせる。暗いわけじゃない、色彩は豊かだが少しくすんだような影がかった印象を受ける。

     ブラームスの五重奏曲は、クラリネットに素晴らしく表現豊かなヴィトマンを得て相乗効果的に美しい仕上がり。自作自演のソロなどを生で聴いた経験もあるが、この人のクラリネットは息の活かし方や細かい音色付け(タンギングの技術のすばらしさと考えたらいいのだろうか?)は絶妙。タンギングが舌の使い方、つまるところ発音・発生の技術の延長線にあるものと考えている。そこにこじつけるとまるで語りかけたり歌ってみせたりするような感じでクラリネットを演奏してくるように思う。ブラームスの心の震えや心中に去来するものを語り、歌う。それをハーゲンSQがしっかり受け止めて昇華させていくように感じた。紹介レビュー分によると当盤のテーマは「内省/回想」だとか。グリーグもブラームスもそのテーマにきちっと寄り添った演奏をしみじみと聴かせてくれる。

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     2020/05/12

      四季、時間帯、天候によって自然はうつろう。その中に棲んでいる鳥もそれに合わせて歌い、暮らす。そんな当たり前なことをこのカタログが教えてくれる。 メシアン独特のリズムや音進行や音楽語法はもちろんあるが、あくまで主役は鳥たちの歌声。 エマールの明晰なピアノと、現代音楽でも自然に聴かせる表現力によって自然の空気感や鳥の存在が感じられる。(余談だが私が当盤を購入した時、開けたら鳥の羽毛が一つ入っていてびっくりした。それが輸送のせいか折れていたのが残念だった。)

      メシアンの曲だからといって頭で理解しようとしない方がよいと思う。それは音楽研究者にお任せしておけばよい。 そんなことよりエマールがピアノで表現してくれた音の連なりを、私たち音楽愛好者が鳥と大自然の大パノラマに切り換えられるか、想像力をはたらかせて聴いてみてほしい。おすすめ。

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     2020/05/10

     当盤でのピリスの演奏は、音楽の芯がしっかりしているのに力みが入っていないところがさすがの出来ばえ。 協奏曲はエラート盤・DG盤も聴いているが3種を比べてみると、自身の中に足すべきものを足し、削るべきものを削った「良い年の取り方」をしているなぁ、と感じてしまった。第1番が人気でそちらに比べると第2番はどうしても日陰的な扱いな気がするが、演奏次第ではこんなに心に訴えかけてくるのかと感じてしまう。

           そして夜想曲。 協奏曲ももちろん素晴らしい出来だが、私個人は夜想曲での充実ぶりに驚かされた。Op.9-2のように実際の演奏時間で差が出る(1996年DG盤=4:29、当盤=4:55)ものもあるが、演奏時間に差のない曲でも聴いたかぎりでは時間をかけて弾いているような感覚にされてしまう。つまるところ、一音一音を慈しむかのようにじっくり弾きこみ、甘いところは皆無。とろけるような美しさというものではない、ただ純粋に美しい。もはや「ピアノ小品」というのがはばかかられるほど内容が詰まっており、これを聴くためだけに購入してもよいくらい。おすすめです。

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     2020/05/09

      2020年春、例の騒動のため自宅に籠ることが多くなり、自然いろいろなディスクを聴きなおす機会も増えることになった。


      個人的にはアルヒーフから発売のフルニエ盤が一番しっくりくるのだが、こうして改めて聴きとおすとそのうまさや流麗さは他の追随を許さず、抵抗なくバッハの音楽が飛び込んでくる感覚だ。技巧という次元を抜けてしまっており、自由闊達に音楽が聴こえてくるのがケラス盤の凄いところ。弓が弦にこすっているというより弦の上を滑っていくかのような感覚で、音もストレスなくきめ細やかな自然さが美しい。いい演奏です。おすすめ。

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     2020/05/09

      ブラームスの作品はオリジナルor古楽器系には難しいジャンルなのだろうか。曲調や雰囲気、聴きてに刷り込まれたイメージ…。その中にあってこのディスクはとても自然体で(太くはないが)豊かな響きをそなえた演奏だと思う。チェロ、ピアノともに柔らかい音色がスーッと入ってくる。情念とか諦観を濃い口でないやり方でそのまま楽器に歌わせた演奏していると感じた。秋の黄昏どき、森に明るめで柔らかな陽が差し込むような、まさに当ディスクのジャケットデザインそのものの光景が想像される。

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     2020/05/06

      Webの音楽ニュースによるとルプーが2019年に引退をしたとか。不勉強で2020年の今さら知った次第だが寂しいかぎりだ。 コンサートでは2012年にシューベルト(D960)などのプログラム取れたものの体調不良でキャンセルされ、2013年にシューマンとシューベルト(D959)を聴けたのが最初で最後の機会。記憶違いか集中力の問題かシューベルトでかなりすごいミスをしたものの、音楽自体の美しさや繊細さは全盛期もかくやと思わせるものがあった。2019年6月、ベルリン・フィルのコンサートでもクレジットされながらキャンセル(その代役が、すでに引退していたピリスだったのにも驚いたが)していた。とにかくCDでルプーの美しい演奏を聴く方が多い立場としては残念だが、ありがとうございましたと言いたい。



      1993年録音のシューマン(フモレスケ、子供の情景、クライスレリアーナ)が最後のリリースのはずだ。  願わくば…だが、たしかシューベルトのソナタ(D840などだった気がする)を録音してリリース予定していたがひっこめた記事を読んだ記憶がある。他にも彼のリリース許可出ていないものがある気がするのでそれが出てくることを祈っている。



      で、そのルプーへの思い出として真っ先にあげたいのがこのディスク。もっとも彼らしさが出ていると思う。 他の即興曲のディスクと比較すると幾分音の線は細いが、蝶の羽のように触れたら壊れてしまいそうな繊細で優しさがこもった即興曲。芸術とはいかに繊細でこわれやすいものかと初めて聴いたときに思ったものだ。 特に好きなのはD899の1曲目、(うちの再生機の表示で)3:55位からのモノローグの辺り、特に4:13前後の音の散らし方はどの演奏とも違う、はかない美しさがある。1982年の録音ながら、今でも聴くと純真な音のうつろいに心がふるえてくる。 シューベルトへのファースト・チョイスとしてもおすすめだし、ルプーの入り口としてもすすめたい。残念ながらこれから「最新録音」の新譜はリリースされないが、かつての古い録音にも「音楽」は詰まっている…。

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     2020/04/30

       旧盤をもう少し聴きこんでから、と思っていた。が、某音楽雑誌に鈴木雅明のインタビュー記事が載り、新オルガンを盛り込んだ新しい音響と音楽作りについての記事を読んですぐに購入した次第。

       聴いてみるとたしかにオルガンの響きがしっかり聴こえているが、オケが聞こえにくくなることもない。 オルガンの響きが豊かになることで進行もはっきりし、オケと声の橋渡しや下支えも安定してくるのだと感じた。旧盤とは骨格も肉体も同じだがその所作や表情に豊かさと静けさが滲み出た、すばらしいマタイと評価したい。

       器楽もソロ歌唱も合唱も全体にゆったりとした落ち着いた雰囲気。旧盤よりさらに穏やかな表現になったと思う。ドラマとそこからほとばしる感情を表に出すというよりは、内にひそめて気持ちに表すイメージだろうか。しかし、コラールや大事な合唱部分では決然と確信力をもってマタイのドラマを伝えてくれる。 美しさ、そして哀しさとは目や耳にそのまま飛び込んでくるものだけでは感じられない、飛び込んできたものを心でそっと受けとめることで美しさや哀しさが湧き出るのだと思っている。このマタイはじっくり聴けば聴くほど心の奥底に小さな灯がともされていくようなあたたかみを感じる。もっと勉強して、そして何度も、さらに何年も聴いていきたい。おすすめです。

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     2020/04/30

       ファウストのソロによるヴァイオリン協奏曲がメインのはずだが数回聴き終えてみると不思議なことに「ファウストのソロ」という印象が少なかった。ソロ対オケの図式はなく、オケの一員であるかのような音楽作りが印象的。もっとも曲目がシンフォニアやトリオ、管弦組曲など取り混ぜてあるので余計にそう感じるのかもしれない。2枚にわたる盛りだくさんの内容だが、聴いてみるとあっという間。曲のスタイルが多彩で飽きることもないし申し分ない構成。

       もちろん、そうは言ってもファウストのうまさは際立っている。ベルリン古楽アカデミーとバッハの音楽で遊んでいるかのような自由さが際立っている。ヤーコプス指揮のロ短調ミサ曲を聴いた印象か、ベルリン古楽アカデミーには少し重心が下にある落ち着いた古風な古楽器オケと思っていたが軽さときびきびとした技術と歌心を持った楽団であることも認識できた。名手揃いの楽団だからこそファウストも一緒に音楽することに専心できるのだろうか。


       それにしてもファウストのさらさらっとした、しなやかなうまさときたら…。 素人の私が聴いても「うますぎっ!」と思ってしまうのだから、私より耳の肥えた人が聴くとどんな感想が出るのだろう。これから出てくるであろうレビューが楽しみだ。そのレビューを書いてもらうためにもこのディスクをお勧めしたい。

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     2020/04/29

      とても快活で楽しい一枚。ベートーヴェンの「皇帝」というとどうしても重厚で華麗な協奏曲というイメージで演奏されているし、そう聴いてしまうがここでの皇帝は遊び心もあり、新鮮に聴くことができた。聴いたイメージとしては「立派な壮年の皇帝」というより「若くして戴冠した野心と希望にあふれた皇帝」の感じだろうか。どっしりした皇帝を好みの方には少し物足りないかもしれない。私は抵抗なく面白く聴くことができた。  ベートーヴェンは第5番を作った時も「皇帝」を作曲したのでなく、全く新しい境地を創造したに過ぎない。斬新で常に高みを目指している作品ということを思い出させてくれた。そんな演奏だ。「今」の我々の「ベートーヴェンの皇帝協奏曲」というものさしで聴くのではなく、当時のベートーヴェンの心境とそれを聴かされた当時の聴衆の気持ちで聴いていくのがおすすめと思う。


       皇帝もよかったが私の購入目的はこちら第2番。変ロ長調協奏曲はベートーヴェンのピアニスト&作曲家として「名刺代わり」の協奏曲としての性格が表れていると思う。当時の音楽の「一般」を吸収しつつもそれを超えていこうとする、野心的でアグレッシブな曲を作っていたんだ…と思いなおされた。 自らの技術やインスピレーションを余すところなく出していく。そんな状況を再現したようなピアノ、それに応えるようなオケの丁々発止が愉しい。カデンツァはR.レヴィン(アルヒーフ カーディナーとの全集)の即興を使用したのも作曲者の意気込みと才能の発出、時代に合わせた様式を表すために必要だったのだろうか。  今後、このコンビで全集に発展していくと思うがそれを熱望したい気持ちにさせるディスクだ。おすすめです。

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     2020/04/19

       コンセルトヘボウ管弦楽団と演奏したこのディスクの魅力、それは「ギリギリの美」ということだと思う。もう少し熱が入ったり力を込めすぎてしまうとその「美」は壊れてしまう、そんなぎりぎりの状態が当盤の凄さであり、魅力ではないだろうか。もちろん表面的な美しさではない。(死や絶望のような)受け入れ難いものをも呑み込んだ中から浮き出てくる類いの、厳しいまでに屹立した美、である。

       1979年のベルリン・フィル盤でも1985年のイスラエル・フィル盤でも激しさや熱さのエネルギーが突出しているが、このコンセルトヘボウ盤ではそれほどでもない。ゆったりとした歩みで堂々たる演奏をもってバーンスタインの棒に応えるコンセルトヘボウ管弦楽団。突っ込みすぎないところがコンセルトヘボウ管弦楽団の良さでもあるし、ことマラ9について言うと「物足りない」と感じる部分もある。 が、作曲者が人生の苦しみを書き込むと同時に、美なるものに究極の回答として書き込んだメッセージを表したと考えれば…。 この曲には誰もが「人生」「死」「葛藤」など特別な思い入れを期待してしまうが、それらをも超越した美の世界へバーンスタインが辿りつきたい時、もっとも適したオケがこのコンセルトヘボウ管弦楽団だったのではないだろうか…と考えてしまった。

       指揮者とオケがどのような対話をしつつ演奏したのか判らないが、結果として残されたディスクからそのようなことを考えさせられた。 マーラーの交響曲に興味ある方なら必ず持つべきディスクと思いおすすめしたい。

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