please enable JavaScript on this site.
Guest
Platinum Stage
Gold Stage
Bronze Stage
Regular Stage
Buy Books, CDs, DVDs, Blu-ray and Goods at HMV&BOOKS online
Advanced Search
TOP > My page > Review List of つよしくん
Previous Page
Next Page
Showing 1426 - 1440 of 1958 items
%%header%%
%%message%%
10 people agree with this review 2010/06/15
「トリスタンとイゾルデ」は、私もこれまで何度も聴いてきたが、本盤を聴いて、あらためてワーグナーのオペラの最高傑作ではないかとの思いを抱いた。スケール雄大な「ニーベルングの指環」や深遠な「パルシファル」などもあるが、トリスタン和音の活用により、その後の十二音技法など、後世の音楽に絶大なる影響を与えた点を見過ごしてはならない。また、登場人物がきわめて少ないというシンプルな台本でありながら、これだけの劇的なオペラに仕立て上げた点も驚異というほかはないと考える。これだけの傑作オペラだけに、これまでフルトヴェングラーやベーム、カラヤン(オルフェオのライブ)盤など名盤が目白押しであるが、本盤のクライバー盤も、これら過去の名演に十分に匹敵する不朽の名演と高く評価したい。その名演の性格を一言で表現すると、生命力溢れる若武者の快演ということになるのではなかろうか。あの華麗な指揮ぶりを彷彿させるような力感が随所にみなぎっており、特に第2幕のトリスタンとイゾルデの愛の二重唱、マルケ王の独白、そしてメロートとトリスタンの決闘に至る変遷の激しい各場面における、ダイナミックレンジの幅が極めて大きいメリハリのある表現には圧倒される。歌手陣も超豪華。特に、トリスタンのコロ、マルケ王のクルト・モル、イゾルデのプライス、そしてクルヴェナールのディースカウの主役4人は正に完璧であり、ドレスデンシュターツカペレの演奏もいぶし銀の輝きを放っている。
10 people agree with this review
Agree with this review
1 people agree with this review 2010/06/13
シューベルトを得意としたルプーの超名演。シューベルトの最後の3つのソナタは、まぎれもなくシューベルトのあらゆる作品の最高峰とも言うべき至高の傑作群であるが、ルプーは、第20番及び第21番を70年代半ばに録音して、第19番を80年代になって漸く録音した。満を持して録音しただけあって、第20番や第21番も名演ではあったが、それらをはるかに凌ぐ深みのある名演に仕上がっていると言える。リリシストで美音家と称されるルプーだけに、抒情的な美しさが全体を支配していることは言うまでもないが、むしろ第2楽章のゆったりとしたテンポによる思索的な歩みなど、表面的な美しさに留まらず、内容の深みに入り込んでいこうという味の濃さが際立っている。それでいて、第1楽章や終楽章の力強さにおいても、いささかの不足もなく、正に知情兼備。総じてバランスのとれた至高・至純の名演に仕上がっていると言える。楽興の時も第19番と同様の傾向の名演。ルプーならではの繊細な美しさが支配しているが、表面上の美しさに留まらず、実にコクのある深みのある名演を成し遂げている点を高く評価したい。SHM−CD化による音質向上効果も非常に素晴らしいものがある。
1 people agree with this review
ルプーの若き日の名演である。ルプーはシューベルトを得意としているが、ベートーヴェンのピアノソナタとは異なった魅力を有するシューベルトのピアノソナタ特有の抒情的な美しさと、リリシストで美音家と称されるルプーの芸風が見事に符合するという点がその理由ではないかと考える。第20番と第14番のカプリングであるが、イ長調とイ短調のソナタを組み合わせたという点においても、その抜群のセンスの良さを感じさせる。まず、第20番であるが、これは、シューベルトの最高峰とも称される最後の3つのピアノソナタの中間にあたる至高の傑作。深みのある作品ではあるが、第21番のような底知れぬ深さを感じさせず、むしろ、シューベルトならではの抒情的な美しい旋律が魅力の作品であり、こうなると正にルプーの独壇場。これ以上は考えられないような優美な名演に仕上がっており、その抒情的な美しさだけをとれば、過去の名演と比較してもトップの座を争う名演と高く評価したい。他方、第14番は、若きルプーの生命力溢れる力強さが際立った豪演。第20番で見せた抒情的なアプローチとは全く別人のような力強いアプローチであり、ルプーというピアニストの一筋縄ではいかない多彩な至芸を感じさせてくれる。SHM−CD化によって、音質がかなりグレードアップした点も高く評価したい。
4 people agree with this review 2010/06/13
ブラームスのピアノ協奏曲第1番は、ブラームスの青雲の志を描いた若き日の作品であるが、ピアノパートだけでなく、オーケストラについても分厚く作曲されており、あたかもピアノ伴奏つきの交響曲の様相を呈していると言える。それだけに、過去の名演、例えば、ルービンシュタイン&メータ(イスラエル・フィル)や、ブレンデル&アバド(ベルリン・フィル)は、いずれも重厚でシンフォニックな性格の名演であった。ところが、本盤は、これらの名演と比較すると、かなり性格が異なっていると言わざるを得ない。もちろん、第1楽章の終結部や終楽章など、力強さにおいていささかの不足もないが、全体としては、抒情的で繊細さが支配していると言える。ルプーのピアノはどんなに最強奏の箇所でも、優美さを失うことはなく、特に、第2楽章の美しさは出色のものであり、ブラームスの若き青春の日々の傷つきやすい繊細な心根を表していると言えるのかもしれない。さすがはリリシストであるルプーの面目躍如と言ったところだと思われる。こうしたルプーのピアノに、ワールト&ロンドン・フィルは見事なあわせ方をしており、独墺系の指揮者やオーケストラとは一味もふた味も違った抒情的な演奏を行っていると言える。SHM−CD化によって、わすかではあるが、音質がやや鮮明になった点も高く評価したい。
4 people agree with this review
3 people agree with this review 2010/06/12
ピリオド楽器による古楽器奏法などで名を馳せた老匠アーノンクールが、近現代のアメリカ音楽の旗手であるガーシュインのオペラを指揮するというのは、いかにもアンバランスな組み合わせのような印象を受けたが、ライナーノーツのアーノンクールによる解説の中で、ベルクの「ヴォツェック」との親近性や自筆譜や演奏資料などを参照した上でのオリジナルへのこだわりが触れられており、それを読んで、漸く、アーノンクールがこのオペラに挑戦した意味を理解した。そして、実際に聴いてみたところ、大変感動したと言わざるを得ない。ポギーとべスには、マゼール&クリーヴランド管弦楽団という今や古典的とも言える超名演があるが、それとは一味もふた味も違った名演に仕上がっていると言える。リズムやテンポ切れ味の鋭さはアーノンクールならではのものであるが、このオペラ特有の、場面毎の音楽が、ジャズ風になったかと思うと、繊細な音楽になったりという、その変遷の尋常ではない激しさを、アーノンクールは、見事に描き分け、全体の造型をいささかも損なうことなく、しっかりと纏め上げた手腕はさすがという他はないと考える。歌手陣には、すべて黒人歌手を起用したとのことであるが、これまたいずれ劣らぬ名唱を披露していると言える。アルノルト・シェーンベルク合唱団による合唱も見事であり、本名演に大いなる華を添える結果となっていることを見過ごしてはならない。録音も、ライブとは思えないような鮮明で、総じて素晴らしい出来栄えであると言えよう。
3 people agree with this review
5 people agree with this review 2010/06/10
アバドの最も輝いていた時代はロンドン交響楽団時代ではないかと考えている。特に、このロンドン交響楽団時代に録音されたいわゆるラテン系のオペラは、いずれ劣らぬ名演と高く評価したい。そうした中で、本盤のカルメンも、こうした席に連なる資格を有する名演であると言える。カルメンの名演には、カラヤン&ウィーン・フィルという超弩級の名演があるが、カラヤン盤は、4幕形式のグランドオペラ版を使用していることもあり、ウィーン・フィルを使用したことも相まって、シンフォニックな重厚さを旨とするもの。これに対して、アバド盤は、イタリア人アバドのラテン人としての血を感じさせるラテン系の情緒溢れるものであると言えよう。アンサンブルなども緻密であるが、いささかも杓子定規には陥らず、どこをとってもラテン系の音楽の情緒が満載である。歌手陣も、カラヤン盤に勝るとも劣らない豪華さであり、特に、カルメン役のベルガンサ、ドン・ホセ役のドミンゴは見事なはまり役である。また、エスカミーリョ役のミルンズも大健闘であり、ミカエラ役にコトルバスとは何と言う贅沢なことであろうか。合唱陣も、少年合唱も含めて大変優秀であり、本名演に華を添える結果となっている点を見過ごしてはならない。
5 people agree with this review
2 people agree with this review 2010/06/08
ショルティとウィーン・フィルの関係は決して芳しいものではなかったと言われている。ウィーン・フィルは、ショルティのように、オーケストラに自由を与えず、自己流のやり方を押し通そうとする指揮者には好意を抱かなかったし、ショルティも晩年はともかく、本盤が録音された60年代は無機的とも評されるような鋭角的な指揮をしていた頃で、必ずしも自分の思い通りにならないウィーン・フィルに辟易している様子が、ショルティの伝記などからも伺えるからである。しかしながら、ここでは両者ともに大人の対応。共感を抱かない関係であっても、なかなかの佳演を成し遂げていると言える。ショルティの鋭角的な指揮は、決してモーツァルトとの相性がいいとは言えないが、ウィーン・フィルの優美な音色が、その演奏を角の取れたものとし、無機的になる寸前でとどまっているものと考えられる。歌手陣も、なかなか豪華。弁者にディースカウ、武士にルネ・コロなどいかにも重厚な布陣と言えるが、ザラストロのタルヴィラ、タミーノのバロウズ、パパゲーノのプライ、そしてパミーナのローレンガーの主役4者の歌唱は見事であると評価したい。唯一のミスキャストは夜の女王のドイテコムで、やや癖のある歌唱はイマイチの印象を持った。
2 people agree with this review
4 people agree with this review 2010/06/06
リリシストとして知られるルプーとシューベルトの相性は抜群のものがあるのではないかと思う。シューベルトのピアノソナタは、最後の3つのソナタについては内容の深さにおいて尋常ならざるものがあるが、それ以外のソナタについては、ベートーヴェンのそれとは異なり、人生における闘争だとか重厚な力強さではなく、むしろ、抒情的な美しさを基調とした作品が多く、そうした作品の特徴とルプーの芸風が見事に符合していると言えるからである。このような点にかんがみれば、ルプーならではの名演は第13番ということになるのではないだろうか。中期のピアノソナタの中では、最も愛らしい旋律に満ち溢れたこの傑作を、ルプーは、あたかも満点の星のきらめきのような美しさでニュアンス豊かに描き出していく。特に、第1楽章の美麗さは、筆舌には尽くしがたいものがある。これに対して、第21番は、シューベルトの最後のソナタだけあって、あの冬の旅や弦楽五重奏曲にも匹敵する深みを有する作品であるだけに、さすがのルプーも、ニュアンス豊かな美しさで曲想を描いて行くものの、今一歩、精神的な踏み込みが足りないように思われる。しかしながら、それも高い次元での比較の問題(例えば、内田光子など)であり、全体としてみれば、名演と評価するのにやぶさかではない。SHM−CD化によって、音質はかなり鮮明になったように思われる。
リリシストとか美音家として知られる名ピアニストであるルプーと、パワフルな指揮ぶりで知られるメータの組み合わせ。芸風が全く異なる両者によるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集であるが、完全にルプーペースの演奏に仕上がっていると言える。その意味では、メータは、あくまでもルプーの支え役に徹していると言える。ルプーペースの演奏というだけあって、これほどまでに美しいベートーヴェンのピアノ協奏曲は過去にも例を見ないのではなかろうか。ベートーヴェンのピアノ協奏曲だけに、重厚さであるとか、力強さなどを売りにする名演が多いが、ルプーの手にかかると、そのような点は薬にもしたくはない。それでいて、軟弱さは皆無であり、むしろ、ベートーヴェンの威圧の対象にしていない点を高く評価すべきであろう。どんなに最強奏をしても、音が割れたり、無機的になるということはいささかもなく、あたかも星がきらめくような美麗さに満ち溢れていると言える。そして、それが決して表面的な美しさにとどまっていない点も特筆しておかなければならない。どの箇所も、美しさの中に、豊かなニュアンスが込められているのが素晴らしい。SHM−CD化により、ピアノ曲との相性の良さも相まって、音質がかなりグレードアップしているのは嬉しい限りだ。
9 people agree with this review 2010/06/05
ムラヴィンスキーは、ブルックナーの後期三大交響曲のCDを遺しているが、この三大交響曲の中で、その眼光紙背に徹した峻厳な芸風から、もっとも、ムラヴィンスキーに向いているのは第9と言えるのではなかろうか。もちろん、朝比奈やヴァント、そしてかつてのシューリヒトなどの名演に接した者にしてみれば、本盤の演奏は、やや特異な印象を受けるというのが正直なところだ。第1楽章の終結部のあまり品のいいとは言えないトランペットのヴィブラートや、終楽章の金管楽器による叩きつけるような最強奏などにはどうしても違和感を感じるし、特に後者については無機的にさえ聴こえるほどだ。木管楽器、特にクラリネットやオーボエの抑揚のない直線的な奏し方も、いかにもロシア的な奏法なのであろうが、ブルックナーの演奏としてはいかがなものであろうか。終楽章のホルンの柔らかいヴィブラートも、いささか場違いな印象を与える。しかしながら、こうしたブルックナーの交響曲の演奏スタイルからすると、決してプラスにはならない演奏を行っているレニングラード・フィルを、ムラヴィンスキーは見事に統率し、総体としてムラヴィンスキーならではの個性的な名演を仕上げた点を高く評価したい。相当な練習を繰り返したことも十分に想像できるところだ。前述のように、いわゆる正統派のブルックナー演奏ではなく、あくまでも、ムラヴィンスキーの個の世界にあるブルックナー演奏と言えると思われるが、それでもこれだけ、ムラヴィンスキーの厳格なスコアリーディングに基づく個性的な解釈と、オーケストラに対する卓越した統率力を堪能させてくれれば文句は言えまい。
9 people agree with this review
4 people agree with this review 2010/06/05
ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルの黄金コンビによる超名演を非常に優れた音質で味わえる好企画CDである。ベートーヴェンの第4は、初来日直前のレニングラードでのライブである。どちらかと言えば、音質、演奏ともに、来日時の演奏の方に軍配をあげたくはなるが、あくまでもそれは高い次元での比較。そのような比較さえしなければ、本演奏も、素晴らしい名演であると言える。疾風の如き一直線のテンポではあるが、どの箇所をとっても深いニュアンスに満ち溢れており、無機的には決して陥っていない。アンサンブルの揃い方も驚異的であり、金管楽器も木管楽器の巧さも尋常ならざる素晴らしさだ。他方、ブラームスの第4は、ベートーヴェンと同日のライブであるが、これは、ムラヴィンスキーの遺した同曲の演奏中、最高の名演と高く評価したい。ベートーヴェンと同様に早めのテンポであり、もう少しテンポを緩めてもいいのではと思われる箇所も、すっと何もなかったように通りすぎてしまう。しかしながら、随所に見せるニュアンスの豊かさは、正に至高・至純の美しさに満ち溢れていると言える。終楽章は、パッサカリア形式による曲想がめまぐるしく変化するが、鉄壁のアンサンブルを堅持し、オーケストラを手足にように操る指揮芸術の凄さは、もはや筆舌には尽くしがたいものであると言える。
0 people agree with this review 2010/06/03
「千人にひとりのリリシスト」とか美音家ピアニストなどと称されているルプーであるが、本盤は、その若き時代に録音したベートーヴェンのピアノソナタの最も有名な三作品をおさめている。さすがに、リリシストと言われるだけあって、ここでも実に抒情的で美しい演奏を行っている。特に、悲愴の第2楽章や月光の第1楽章は、出色の美しさと言えるだろう。それでいて、若き時代故の生命力にも満ち溢れており、悲愴や月光の終楽章のたたみかけるような力強さは、強靭な打鍵も相まって、圧倒的な迫力を示していると言える。しかしながら、これら悲愴や月光よりも、さらにリリシストであるルプーの個性が発揮されているのは、ワルトシュタインと言えるのではないだろうか。第1楽章など、大抵のピアニストは踏みしめるような重い足取りで演奏するが、ルプーは実に繊細なソフトタッチで演奏し、他のピアニストの重厚な演奏に慣れた耳からすると、物足りなささえ感じるほどだ。しかしながら、その精緻とも言える美しさは尋常ではない。他の箇所も、ゆったりとしたテンポにより決してわめかない演奏を心がけており、ワルトシュタインの過去の名演の中でも、最も優美さを兼ね備えた名演と高く評価したい。ピアノ曲との相性抜群のSHM−CDによる高音質も、本盤の大きな魅力の一つと言える。
0 people agree with this review
4 people agree with this review 2010/06/02
4大ヴァイオリン協奏曲の一角を占める不朽の名作。しかも、ベートーヴェンが作曲した数々の楽曲の中でも、最も明朗な要素を持った傑作。この傑作ヴァイオリン協奏曲には、これまで多くの名指揮者&名ヴァイオリニストのコンビが、その登頂に向けて挑んできた。その結果として、これまで数多くの名演が成し遂げられてきたが、本盤のワルター&フランチェスカッティの黄金コンビによる演奏も、過去の様々な名演に決して引けを取らない名演であると高く評価したい。本名演の特徴を一言で言えば、情感豊かな人間的な温もりのある演奏ということができるのではないだろうか。ワルターのヒューマニティ溢れる情感豊かな指揮ぶりは、いつもながら感動的であるし、ワルターと同様に、いわゆる技術偏重には陥らず、どこまでもあたたかみのある演奏を披露するフランチェスカッティのヴァイオリンも素晴らしい。ワルターの確かな統率の下、コロンビア交響楽団も最高のパフォーマンスを示していると言える。DSDリマスタリングは、ややきつめの音質に仕上がったような印象があり、鮮明さにおいてはややグレードアップが見られるものの、全体としてイマイチな感じがしたのは大変残念だ。
2 people agree with this review 2010/06/01
モーツァルトは、数々の協奏曲の名曲を作曲した。ピアノ協奏曲を筆頭に、クラリネット協奏曲やホルン協奏曲等々、名作には事欠かない。こうした中にあって、ヴァイオリン協奏曲は5曲(ほかに偽作とされているのが2曲)作曲しているが、いずれも若書きであることもあって、綺羅星のごとく輝く他の名作協奏曲と比較すると、どうしても作品としての質が一段劣ると言わざるを得ない。それ故に、よほどの名演でないと、作品の魅力を聴き手に伝えることが困難であるということができるのかもしれない。こうした若書きの未熟さを逆手にとって、最近ではクレーメルなどによる前衛的な解釈を行う名演も生まれているが、古典的な名演としては、やはり、ワルター&フランチェスカッティの黄金コンビによる至高の名演を掲げざるを得ないのではないかと思われる。モーツァルトを得意としたワルターによる、ヒューマニティ溢れる情感豊かな演奏は高貴な優美さを湛えて感動的であるし、フランチェスカッティの、技巧一辺倒ではなく、人間的な温もりのある演奏も、素晴らしいの一言であると言える。惜しいのは、DSDリマスタリングの音質。鮮明にはなったと思うが、少しきつ過ぎるような印象を受けるのはいささか残念だ。
7 people agree with this review 2010/05/31
ハーンのチャイコフスキーということで、私も聴く前から大いに期待していたが、その期待を裏切らない素晴らしい名演だと思う。そのメインのチャイコフスキーであるが、情感溢れる実に濃厚な演奏だ。抒情的な箇所の心の込め方は尋常ではない美しさに満ち溢れている。それでいて、例えば、ムター&カラヤン盤(私は、名演と高く評価しているが)のように、土俗的な民族臭を際立たせるようなことはしていない。ムターと同様に、自由奔放なアプローチをしているように一見して思われるが、上品さを決して失うことがいささかもないのである。こうした濃厚な表情づけと上品さの見事なコラボレーションこそが、ハーンの類まれなる気高い芸風であると言えるだろう。もちろん、終楽章の確かな技巧も聴きものであり、通常使用されるアウアー版ではなく、オリジナル版を使用した点も、本名演の価値を大いに高めるのに貢献している。併録のヒグドンは、私は、今回はじめて耳にしたが、いかにも現代風の前衛的な箇所と豊かな抒情がミックスされた名曲であると思った。こうした同曲の特徴は、前述のようなハーンの芸風とぴったり符合しており、ヒグドンがハーンに同曲を捧げた理由がよくわかる。本盤は、SHM−CDで発売されたが、なかなか鮮明ないい音質に仕上がっていると思った。
7 people agree with this review
Back to Top