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Sym, 8, : Boulez / Vpo

Bruckner (1824-1896)

User Review :4.0
(9)

Item Details

Genre
:
Catalogue Number
:
4596782
Number of Discs
:
1
Format
:
CD
Other
:
Import

Product Description

ブルックナー交響曲第8番<ハース版>
ブーレーズ指揮ウィーン・フィル

1996年、リンツ、ザンクト・フローリアン大聖堂でのライヴ録音。いろいろな意味で混乱・混濁しがちなブルックナーの巨大交響曲が、ブーレーズの統率のもと、バランスの良い姿をあらわしています。長大なホール・トーン、個性的なオケの音というユニークな条件下での演奏ながら、手綱のほうはきちんと引き締められ、全体に、芝居がかった大仰なモーションや、必要以上の瞑想・陶酔は避けられているのがいかにもブーレーズらしいところです。とは言うものの、随所に見受けられる艶やかなポルタメントやティンパニの強奏にも象徴されるように、音響そのものはきわめてフィジカルで曲線志向の強いものとなっています。
 ブルックナー・オケとしてのウィーン・フィルの美質がたいへん尊重された演奏であり、音色変化の繊細さに加え、金管の音量コントロールも実に緻密。 
 古楽様式の嫌いなブーレーズのことですから、アクセントやフレージングは完全なモダン楽器様式であり、その意味では、同じく革新派でもアーノンクールなどの表現様式とはだいぶ傾向が異なります。

第1楽章アレグロ・モデラート
演奏時間15分8秒、中庸なテンポ設定でまさに指示通り。神秘的・威圧的であるよりも、音楽的であることを選択した解釈で、率直に音の流れと重なり具合がもたらす構造美学に貢献しようという意思のありありと感じられる姿勢は実に立派。その場限りの無節操な興奮や、効果ねらいのプロモーション的テンポ変動などにはまったく無縁なこの解釈、曲が進むにつれ、それまでのブルックナー作品とはけた違いに大きなスパンを持った作品であることが如実に判るのが大きな美点です。
たとえば、練習番号Kからの展開部クライマックス部分でもいたずらに熱狂することなく、巨大な音像を現出させ、第1主題、第2主題の双方に配慮したバランスにより、この作品ならではのアンバランスなソナタ形式構造を印象付ける効果も十分の仕上がりとなっています。

第2楽章スケルツォ
演奏時間13分39秒。主部は、きわめて躍動感と推進力の強い演奏であり、楽譜の指示を遵守して各素材のバランスを適正に保つことで、ある種無窮動的な性格があらわされているのが印象的。
民族舞曲としての逞しさと、込み入った構造様式との複合効果をよく理解させてくれるアプローチでもあり、沸き立つようなティンパニのリズム、鄙びたウィンナ・オーボエの音も実に魅力的。ほかではちょっと聴けない雰囲気が香りたつサウンドです。
一方、トリオ(中間部)では冒頭からピツィカートが強調されているのにびっくりしますが、考えてみれば楽譜のデュナーミク指定ではこれが当然なのです。要は “律動的主部に対する旋律的中間部” というスタンスが採られていないということですが、近似素材の使用など、構造的統一に配慮された書法を考慮すれば、ここでのブーレーズのアプローチは理にかなったものであり、その場しのぎ的な旋律強調とは次元の違う様式把握を教えてくれるかのようです。

第3楽章アダージョ
演奏時間24分52秒。冒頭からリズム動機をしっかり克明に響かせ、こうした緩徐楽章でも曖昧な印象を与えることがまったくないのがさすがブーレーズ。ハープやシンバルも必要以上に派手に鳴らされることはなく、音響体としてのウィーン・フィルの魅力が最大限発揮される配慮がなされていると見ることが可能です。
徹底した構造的なアプローチにも関わらず、実に美しい音楽が聴かれるのもそうした理由があってのことで、全編まさに美音の洪水ですが、クライマックスでのトゥッティに崩れが無いのにも驚かされます。
特に、複雑な表情を持った練習番号K以降では素晴らしい美感が示されており、妙な感情移入などせずとも作品そのものが雄弁に物語ることを証明していますが、一方で、169小節からのピツィカート部分では通常では考えられない立体的美感をあらわすなど、ブーレーズの手綱さばきは冴え渡っています。曲調に応じて自然にかかったのか、ブーレーズの指定なのかは不明ですが、実演でのウィーン・フィルに特有の美しいポルタメントも効果的で、コーダでは端正なフレージングのおかげで完璧に生かされたウィンナ・ホルンとの絶妙な絡み合いが最高。陶然とするばかり気高く美麗な音楽が続いて行くのには驚きです。

第4楽章フィナーレ
演奏時間22分19秒。荘厳さを保ちうる範囲での速めのテンポによる演奏で、金管とティンパニの活躍はもちろん、聖堂の長大な残響の影響もあってか、随所で確認されるオルガン的なサウンドの美しさもひときわ印象的。
ハース版を用いた演奏ゆえ、呈示部第3主題部から展開部への移行もスムーズであり、全体に、ごつごつした感触よりは滑らかで曲線的なイメージが強いのが特徴。特にテンションのあがる再現部以降では幅広い音色が魅力的で、強力な音圧で圧倒するコーダでさえ美的なのですからたまりません。
立体的音響による構造志向の強いブルックナー解釈として、交響曲ファンに広く受け入れられる演奏だと言えるでしょう。

Track List   

  • 01. Allegro Moderato
  • 02. Scherzo: Allegro Moderato, Trio: Allegro Moderato
  • 03. Adagio: Feierlich Langsam, Doch Nicht Schleppend
  • 04. Finale: Feierlich, Nicht Schnell

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Comprehensive Evaluation

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これでもブルックナーなんですね。どこかず...

投稿日:2021/04/09 (金)

これでもブルックナーなんですね。どこかずれていると感じます。もう聞くことはないCDです。

robin さん | 兵庫県 | 不明

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ブルックナー没後100年記念として1996年9月...

投稿日:2014/10/05 (日)

ブルックナー没後100年記念として1996年9月、ザンクト・フローリアン教会でのウィーン・フィルとのライヴ録音。ハース版による演奏。それまでブーレーズがブルックナーを振った音源が一般に知られておらず、この記念すべきコンサートにブーレーズが起用されたこと自体、その話題性は十分だった。 ブーレーズは周到に準備をしたと思う。驚くべき解析力であり、さすがにスコアを読み尽くし音楽を再構成するという、自身も現代音楽の代表的な作曲家であるブーレーズならではアプローチの演奏である。 残響効果も巧みに計算に入れて全体構成を考えており、ウィーン・フィルの持ち前の木管楽器の世界最高水準の美しさは絶品。その分、金管の咆哮はかなり抑え気味で(実際の臨場感は別、こちらは録音テクニックかも知れないが)、全体のバランス感が見事に統御されている。 アゴーギクなどは抑制されほとんど感じないレベル、いわゆる「激情型」とは無縁の理知的な運行ながら、しかしクールな計算だけでない、音楽へのブーレーズ流の渾身の「入れ込み」は確実に伝わってくる。特に、テンポの微妙な変化、フレーズの絶妙な融合、両者のシンクロナイズ化によって、長い楽章も休止や転調を区切りとする「局所変化」が多様でまったく飽きさせない。好悪はあろうが、ブルックナーでもこうした「知的」演奏スタイルは実に有効といった見本のような演奏。

織工 さん | 東京都 | 不明

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教会録音のため「全ての音を独立的かつ明晰...

投稿日:2008/02/21 (木)

教会録音のため「全ての音を独立的かつ明晰に響かせる」といったフランスの個々主義的なものは残響に包まれ弱まりブーレーズにしては「全ての音が溶け合う」というドイチュ・オーストリア的な音作りに接近している。私には心地良い音で、可愛らしいぶるっくなーである。

ペロペロプロス さん | 秋田県 | 不明

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