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松下隆一

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784065297827
ISBN 10 : 4065297826
Format
Books
Publisher
Release Date
February/2023
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

元は名うての博奕打ち、今は江戸は本所でさびれた蕎麦屋を営む銀平を、不治の病が襲った。死を前に、残された時間をいかに生きるべきか問い続ける銀平のもとへ、かつての自分を彷彿とさせる青年・清太が転がり込んだ。銀平は、清太や店を訪れる客らとの交流に、次第に残り僅かな人生を前向きにとらえるようになっていく。だが、再会を果たした元妻を襲った悲劇、さらに信頼していた清太の裏切りが、銀平の生きる気力を奪ってしまう。そして、逃れられない過去の因業が忍び寄り…。貧しさと業に苦しみながらも、希望と義理人情に賭けた人々の心揺さぶる人生賛歌。

【著者紹介】
松下隆一 : 1964年兵庫県生まれ。作家、脚本家。著書に第1回京都文学賞最優秀賞受賞作『羅城門に啼く』などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • アキ

    侠を「きゃん」と呼ぶ。勇み肌でいきなさま。またそのような人。江戸・両国橋附近の蕎麦屋の店主・銀平が主人公。齢六十になり吐血し、もう長くはない。陸奥の国を飢餓にて逃れ、賭博で身を立てたこともあったが、あることをきっかけに堅気になった。それから二十年。蕎麦がきをつくって一晩寝かせ、それに蕎麦粉と大豆粉を混ぜて練り、切って麺にする。さらに一晩寝かせて茹で、水洗いしてもう一晩寝かせる。客が来れば温めて出汁をかけて出す。その一杯の蕎麦で救われる子がいる。救ったハナちゃんに、最後に救われる。人情味あふれる物語でした。

  • hiace9000

    『雲霧』脚本家松下さん、本作の静謐感が、人と会話に独特の「間」を生み出し、それが人情物時代小説らしい詫び寂び感を伴いしっとりと読ませてくれる。元任侠者の伝説的博徒でありながら、堅気となり肋屋にて蕎麦屋を営む老人銀平。世の中の片隅に追いやられ、不遇な境遇に置かれながらも、後悔と贖罪の念から自分より弱いもの恵まれぬものを労わり、情けをかけ生きる卑屈にすら思える慎ましい姿。死病を患い、もはや幾許もない余命を人のために使ってしまうのは人の良さというより博徒の血ゆえか。謐けさ醸す各章題の佇まいにすら、味わいがある。

  • タイ子

    初読み作家さん。決して派手ではない、軽くもない、だが、読み終わって心に残るものがある。映画の中の高倉健を想像するような寡黙で過去を背負って生きる一人の男の物語。余命僅かの蕎麦屋の店主・銀平。人に食べさせる蕎麦ではなく自分が生きるだけの稼ぎがあればいいと田舎蕎麦を作る。引き返せない過去、未来もない、残された時間の中で現れた若い男の存在と元妻との再会が銀平に少しの光を与えてくれる。だが、束の間の光も消えるとき来る。裏切りという名の闇の中に。後半の博打場のシーンにドキドキ、ラストの場面に涙が止まらない。

  • 海猫

    元は名うての博打打ちで今は江戸の本所で蕎麦屋を営む銀平。血を吐いたことによって死期を悟った彼の変化を描いていく。燻し銀の味わい。前半は特に地味で大きな事件は起きないが一つ一つのエピソードが味わい深い。これまでの銀平の人生がじんわり浮かび上がるように見せる構成にも味あり。何が起きようとも自身のルーティン守ろうとする銀平の姿勢には孤独さと固い意志が感じられ染み入った。後半はある青年を庇ったことから人生を掛けた博打の大勝負となる。ここの描写も決して派手ではないが抜群の緊迫感。人生の皮肉な巡り合わせがやるせない。

  • モルク

    元博打打ち、堅気になり本所で商売っ毛全くなしの寂れた蕎麦屋の主人銀平は、病を得余命幾ばくもないことを悟る。男をつくって出ていった元妻との再会と彼女を襲った突然の悲劇、自分の影を見、気を許した青年清太の裏切りなど、希望を見いだしてはまた地獄に堕ちる。これも大飢饉で家族が餓死、父と江戸に来てからの人に言われぬ業によるものなのか。幸せをつかみ損ねた男がここにいる。人情溢れる中銀平の頑なな人生に触れる。でも俺はこれでいいんだ…先月訪れた回向院、銀平の蕎麦屋はあの辺りかなと本所近辺に思いを馳せる。

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