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風呂と愛国 「清潔な国民」はいかに生まれたか Nhk出版新書

川端美季

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784140887295
ISBN 10 : 414088729X
Format
Books
Publisher
Release Date
October/2024
Japan

Content Description

「きれい好きな」日本の私?

日本人らしさとして語られがちな「毎日風呂に入るのが当たり前」「バスタブでお湯に浸かりたい」という感覚。私たちが無意識に内面化しているこの意識は、いったいどこからきたのだろうか? 西洋人が見た江戸の庶民の入浴習慣から、「日本人は風呂好き」言説のルーツ、家政書で説かれた「清潔な国民」を育てるための女性の役割、さらには教育勅語と関わる国民道徳論で議論された、身体・精神の「潔白性」まで。入浴を通して見えてくる、衛生と統治をめぐる知られざる日本近代史!

【著者紹介】
川端美季 : 1980年神奈川県生まれ。立命館大学生存学研究所特別招聘准教授。専門は公衆衛生史。立命館大学先端総合学術研究科修了。博士(学術)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • 道楽モン

    明治政府の欧米への劣等感を払拭できる唯一のものは、江戸時代から続く湯屋(銭湯)の存在だった。欧米では上流階級も含め入浴の習慣は少ない。欧州にて猛威をふるった伝染病の影響が大きい。とはいえ、入浴習慣は健全な精神の根本であるという題目を、国民学校の教科書への記載から、国民に対する政府の洗脳が行われ、日清、日露戦争の勝利に後押しされ、結局は軍部主導の狂気の社会へと突入する。清潔が精神性と結びつけば、容易に排除を生み出し、絶対の価値観へと変容する。最近のコロナ禍での騒動もこの図式と同じである事を発見して欲しい。

  • うえぽん

    公衆衛生史家が日本の入浴習慣の形成を分析した書。仏教の施浴、鎌倉期以降の営利目的の浴場、江戸の建設労働に必須だった湯屋等が入浴文化の基礎を形成。明治期の西洋人による混浴文化への眼差し、黄禍論への対抗、英独米の公衆浴場運動からの影響にも着目。家政書、国民道徳論、修身教科書等を参照しつつ、国民を統合する道徳、日本人の特性の一つに清浄潔白があるとし、清潔、健康は社会や国のためとの考えが定着したとする。都市部の銭湯の分析等により特定の労働者層等への入浴習慣の浸透は理解できたが、農村での習慣を含めた分析も望まれる。

  • 松本直哉

    明治30年代、欧米との比較の中で生れた「日本人は風呂好き」の説が、身体的清潔と道徳的潔白の同一視によって、誇るべき国民性とされ、子どもを入浴させて清潔を保つのが良妻賢母の務めとされ、やがて戦争に向けて国民精神の統一の要となる。本書はここで終っているが、知りたかったのは、今の時代の極端なまでの除菌抗菌消臭への妄執、体臭や口臭への強迫的なまでの恐怖、それらを消すための人工香料への偏愛などの流行が、戦前における清潔への執心とどのような関係を持つのかだった。道徳的規範だったものが今では生理的執着とさえ思えるのだが

  • Sato

    『風呂と愛国』は、日本人のお風呂好きがいつ、どう形成されたのかを歴史と政治の視点から解き明かす一冊。6世紀に仏教と共に蒸し風呂が伝来し、明治以降は西洋の「東洋人=不潔」偏見に対抗するため、政府が「清潔さ」を国民の美徳として推奨。戦時中には健康や入浴習慣が愛国心と結びつけられました。私自身、お風呂は癒しであり国のためではありませんが、湯船の湯気の向こうにこんな背景があったのかと驚きました。銭湯・温泉好きの方ににおすすめな一冊です。

  • さとうしん

    江戸時代の入浴習慣が近代になってから西洋的な「清潔」の観念から評価されるようになり、外国人と比較のうえで「日本人は入浴好きである」と国民性と結びつけられ、修身の授業や家庭教育を通じて子どもたちやアイヌ、沖縄といった外地の人々にも入浴習慣を徹底するに至る過程を描く。戦前・戦中までは清潔さが国家によって押しつけられたということになりそうだが、昨今は逆に精神的不潔さというか悪どさのようなものが押しつけられがちに見えるのが何とも皮肉なことである。

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