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新版分裂病と人類 Upコレクション

中井久夫

User Review :5.0
(1)

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784130065146
ISBN 10 : 4130065149
Format
Books
Publisher
Release Date
September/2013
Japan

Content Description

目次 : 第1章 分裂病と人類―予感、不安、願望思考(“先取り”的な構え/ 狩猟民的な認知特性/ 農耕社会の強迫症親和性 ほか)/ 第2章 執着気質の歴史的背景―再建の倫理としての勤勉と工夫(“甘え”の断念/ 再建の仕法家―二宮尊徳/ 立て直しと世直し ほか)/ 第3章 西欧精神医学背景史(古代ギリシア/ ギリシア治療文化の変貌/ ヘレニズムに向かって ほか)

【著者紹介】
中井久夫 : 1934年奈良県に生れる。1959年京都大学医学部医学科卒業。1980年神戸大学医学部精神神経科教授。1995年兵庫県こころのケアセンター長。1997年甲南大学文学部臨床心理学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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●当書は「カウンセラーのための基本104冊...

投稿日:2021/07/19 (月)

●当書は「カウンセラーのための基本104冊」(2005.創元社)の一冊に選ばれている。●「分裂病と人類」というタイトルだが、精神病とりわけ゛全人類がなりうる可能性があると仮定する゛分裂病゛が発生する背景への洞察があるが、それは人類の歴史の中で進化に向けての宗教や文化、倫理があり、それを遂行する上での裏返しとしての排除や強迫観念が精神病とりわけその最たるものとしての分裂病の発生につながっていると受けとめた。●その歴史の中で「要するに狩猟採集民は自然の一部であるが、農耕民はすでに自然から外化され、自然と対立している」 と文中で述べられている様に「文化にひそむ不快なるもの」(フロイト)は、もっとも早い農耕社会とともにすでに成立した」とも「そこに、おそらくは、人類が人類となってゆく過程での、自然からの外化、自然的存在からの逸脱ー要するに人間のかなり根本的な倒錯性を考えざるを得ないと思う。」とも述べられている。・・・・・農耕文化を人類が取り入れた所から人類は進化のスピードを速め、更には産業革命で更に一層アクセルは踏み込まれて行っている。自然と一体であった人類が進化の中でその自然から外化していくと共に、一方でトレードオフ的にアクセルを踏まれた精神は失調する時が訪れる。適応しようとすれば不適応が生れる。人類は何かを得ていて、同時に犠牲を払う。適応に向けて「自己」は意識化された「自我」を求め、自然から外化された中で自我以外の無意識は増幅され、意識から遠のいていく。と筆者からの問題提起が聞こえたように思えた。●中井氏は木村敏氏と共にH・エランベルガーの『無意識の発見』の翻訳をされているが、まさにその時に力動精神科医の出身地が森と平野の接点、あるいは森の中という奇妙な一致に気づかれている。・・・・それは人類が離れてしまった森の文化の中に人の本来の人間性が存在していたということなのだろうか。忘れた人間性を求めて力動精神医学は取り戻そうとしたということだろうか。●最近の自然破壊と地球温暖化の状況を見ると、すでに人類は農耕化の時点から引き戻せない「進化」という甘い蜜に引き寄せられ、そのスピードを競ってきた。そもそも競うということは、「勝」があり、その裏に「負」がある。その負として精神病を人類は引き受けられるのか。あるいは「先取り的」「微分回路的」な分裂病を人類の行先としての先取り的な信号と受けとめなければならないのではないかとも思えてくる。対症療法的に精神病とその療法を学ぶことと共に分裂病の本質的な人類にとっての背景に心を手繰り寄せていくことが大切だということを当書「分裂病と人類」は示唆している様に思う。そんな気高い精神、高い意識に感服です。●農耕の文化が大量生産や生産の効率性でその精度を求めてゆき、その価値観がそうできないときの責任逃れとしての゛いしめ゛の構造であったり、そのストレスを感じ、失調した時に発症してしまう精神病であったり、それが「魔女狩り」だったり「分裂病」だったりするのだとの筆者のささやきが聞こえたように思えた。

brian さん | 滋賀県 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • ベイス

    「100分で名著」で中井久夫に初めて触れ、興味をもち購読。入門に最適、と番組で紹介されていたが、氏の思考の「飛躍」に幾度も面食らう事態に・・・それでも世界史を「分裂病」との関係で読み直すという大胆な試みは新鮮で(もう40年も前に書かれた本だけど!)刺激的だった。世界は進化すればするほど「うつ病を発症しやすい」執着気質型社会へと突き進んでいるが、このことと分裂病(いまでいう統合失調症)予備軍たる「S親和者」との関係がどうしても分からなかった。章ごとの関連をもう少し明確に「編集」してほしい・・・

  • 燃えつきた棒

    NHK「100分de名著」の「中井久夫スペシャル」で紹介されていた本。これは面白い!ページを繰る度に心に残る言葉に出会う。 本を同時に何冊も並行して読んでしまう悪癖のある僕(ちなみに現在、読みかけ本が39冊。)も、これだけ面白けりゃ集中して読むことができる。/ 【青年期に一過性に分裂病状態を経験した人の数は予想以上に多数ではあるまいか。】 ここではヴィトゲンシュタインらを挙げているが、たしか、番組では斎藤環が中井先生自身も若い頃に同じような状態に陥ったことがあると指摘していたように思う。/

  • しゅん

    分裂症と人類史の関わりが中心かと思ったら、3章の精神医学背景史に多くが割かれてた。面白かったのは2章の粘着気質と鬱の歴史的背景。日本人の職業気質は「立て直す」ことに向かっており、新しいものを作るタイプではない。悔やみ、後悔の強さが執着になり、そこから禁欲と工夫の教えが出るが、工夫が空転すると鬱に変わる。日本におけるパラノイアな倫理観を二宮尊徳の考察から浮かび上がらせる。

  • OjohmbonX

    分裂気質の特徴を電気回路の微分回路と対比し、執着気質が日本社会で倫理的とされていく起源を二宮尊徳の生涯から描き出し、西欧の精神医学が主流に見えて異端であることを魔女狩りといった現象の分析を交えて明らかにする。何をどうしたらこんな縦横無尽に書けるんだと思いながら読んでたら、後書きで「これらの著作や論文から課題や疑問を得てこういう探求の方向になった」と種明かしされるけど、高度なマジックはいっそ「魔法です。」とでも言われた方がまだ納得できるみたいな気持ちになる。

  • toiwata

    これもまたページ数が圧縮された歴史書。第三章 西欧精神医学背景史の底本はみすずライブラリーの同名の書籍と同じなので、この章については実質、再読。「つけ加えるべきものはあっても、消去すべきところはない」p.255 自著を読み返して過誤は無いと言い切る重さ。

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