オルガ・トカルチュク

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優しい語り手 ノーベル文学賞記念講演

オルガ・トカルチュク

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784000253604
ISBN 10 : 4000253603
Format
Books
Publisher
Release Date
September/2021
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

嘘や憎しみにあふれた情報の断片を、共感や優しさによってつなげ、神話的な物語の力を蘇らせる「第四人称」の語りとは(「優しい語り手」)。絶えざる流浪、破局、全体主義を経験しながら、西欧の周縁で菌糸体のような独自の生育をとげた中欧文学の魅力とは(「「中欧」の幻影は文学に映し出される」)。細分化していく世界を「星座」的な形式で再構築する、新たな文学の可能性がここに開かれる―『プラヴィエクとそのほかの時代』『昼の家、夜の家』『逃亡派』のノーベル賞作家が語る、二つの講演。

目次 : 優しい語り手/ 「中欧」の幻影は文学に映し出される―中欧小説は存在するか/ 第四人称の語り手の未来―訳者あとがき

【著者紹介】
オルガ・トカルチュク著 : 1962年ポーランド生まれ。詩人・小説家・エッセイスト。ワルシャワ大学で心理学を専攻、卒業後セラピストを経て作家となる。2007年の『逃亡派』(白水社、2014年)によりポーランドの権威ある文学賞ニケ賞を受賞し、同作の英訳はマン・ブッカー国際賞を受けた。14年の『ヤクブの書』で再びニケ賞を受賞。19年、前年度のノーベル文学賞を受賞

小椋彩訳 : 北海道大学文学部卒業。東京大学大学院にて博士号(文学)取得。現在、東洋大学文学部日本文学文化学科助教。専門はポーランドとロシアの文学・文化

久山宏一 : 東京外国語大学卒業。アダム・ミツキェーヴィチ大学にて博士号(文学)取得。現在、東京外国語大学など非常勤講師、ポーランド広報文化センター文化担当エクスパート。専門はポーランドとロシアの文学・文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • Vakira

    自分が周囲から得る情報、五感。視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚。僕が得た感覚は君 に伝える事が出来ない。だから言葉に翻訳し伝える。しかし綺麗、五月蠅い、臭い、 甘い、痛いという言葉から感覚を受け取る訳ではなく、君は感覚を想像しなければな らない。感情だって同じだ。喜び、悲しみ、怒り、嫌悪、驚き、恐れ、好意。顔の表 情、仕草、態度から判断するしかない。しかし物語はどうだろう。いつしか君は主人 公に同化、あるいは俯瞰して類似の感情を共有する。猫が無意識にじゃれる様に虚構 と判っていても君の心は踊りだす。

  • けんとまん1007

    タイトルに惹かれて、その後、ノーベル文学賞受賞者だと知った。現代の現状認識と課題、そして、そこに立ちながら、希望を捨てない姿勢が凄い。情報に溢れた、しかも、玉石混交であり、何が事実なのか・・・よりも、声の大きさだけが独り歩きしている今。だからこそ、言葉の力を信じ、その言葉に息吹を吹き込む。人は、生まれ育った環境の文化・歴史・自然環境などから多大な影響を受ける。それを踏まえた、第四人称という概念。著者の作品を読んでみよう。

  • とよぽん

    タイトル、表紙の装画ともに穏やかな印象の本だが、内容はオルガ・トカルチュクの作家としての覚悟を宣言するかのような、崇高で力強い講演だった。そして、二つ目の講演では中欧というところがヨーロッパの中でどのような存在なのか語られていた。「ホロコーストはわたしたちを、幾世代にもわたる完全なショック状態に陥れました。」「歴史は信用しません――あまりにもたびたび、わたしたちを騙してきたからです。」このポーランドの作家の小説を読んでみたいと思った。

  • ゆう

    ポーランドの作家、トカルチュクの2つの講演を収録。文学の未来についての、美しい希望のような言葉がたくさんつまっている。その背景にあるのは、権力や制度の暴力によって、幾度も傷ついてきた人々の記憶の蓄積だ。わたしは枠組みのなかで生きざるを得ない小さな存在だが、そうであっても、枠組みは決してわたしそのものではない。だからあなたも、彼女/彼もきっとそうだろう。制度に駆動される正義や悪に利用されてはならない。その上で、わたしとあなた、彼女/彼を繋ぐことは可能だろうか。そのような言葉を、視座を、探し出せるだろうか。

  • kei

    2018年度ノーベル文学賞受賞。カズオ・イシグロの記念講演が比較的読みやすかったので手にしたのですが、こちらはなかなか難しかったです。トカルチュク作品を試しに読んでみようと思います。「優しい語り手」…ノーベル賞受賞記念講演。母親との思い出の話から始まる。わたしたちには世界を語るあたらしい方法が欠けている。どのように書くべきか、物語を組み立てるべきか。新しい種類の語り手「第四人称」について。文学は優しさの上に建てられていて、この方法のおかげでわたしたちの経験はまだ生まれてもいない人にめぐりあう。

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