Integrale のシリーズとして2枚組のCDが全20巻の全集として発売されているが、本作「saison 3」は第15〜20巻をボックスセットにしたもの。これに先立って発売された「saison1/2」と併せて本作を購入すれば、ジャンゴ・ラインハルトの演奏をコンプリートできることになっている。
注目されるのは、かつて「Djangology / ジャンゴロジー」として発売されていたローマ・セッションの全貌がわかることであろう。名曲の名演として語り継がれていた演奏に、未発表の録音がたくさん出てきた。グラッペリのヴァイオリンの他のメンバーは、勉強不足でどのような演奏家なのか私は知らないが、なんだかジャンゴとグラッペリの演奏の熱に触発されて、とても良い演奏をしていると思う。
ギターの技術的なことを言うと、スケール的なフレーズとアルペジオ的なフレーズ、言い替えれば水平的なフレーズと垂直的なフレーズのバランスが優れている。後者はピックでギターを弾こうとした場合にかなりの困難さを伴うが、難なくこなしている。しかもかなりのスピードで安定しているところを見ると、同じギタリストには非常に妬ましく感じられることだろう。
面白いのは「What Is This Thing Called Love ?」のエンディングで、「ホット・ハウス」のメロディーを引用していることだ。ある時期からジャンゴのフレーズが変化してきていることは知っていたが、このような引用をするところから見てもアメリカのビバップをかなり意識しているように思う。
先行して発売された「saison 1~2」同様お買い得感が非常に高い。歴史的・音楽的に重要な演奏家の記録は、このような形でどんどん発表してほしいと思う。