Delibab

アルゼンチンとブラジルを繋ぐ最重要アーティスト､ヴィトール・ハミル新譜。
カエターノ・ヴェローゾがゲスト。

ブラジルとアルゼンチン双方にリンクする南米音楽シーンのダイナミックな発展に関わる存在として、早くから知られるSSWヴィトール・ハミル。1981年にデビュー作を発表して以来、これまでに8枚のアルバムを発表。エグベルト・ジスモンチ、レニーニといった天才肌のミュージシャンから、ペドロ・アスナール、サンチアゴ・ヴァスケスなどアルゼンチン・シーンとも交流。マルコス・スザーノとのデュオ名義作品となる2007年「SATELOP SAMBATOWN」は日本でも広く扱われ、2009年には二人で来日も果たしているなど、その才能が認められて久しい存在である。
ホルヘ・ドレクスレルやヴィニシウス・カントゥアリアに通ずる内省的なボサ~MPBを聴かせてくれるヴィトール。アルゼンチンに程近いブラジル南部ポルト・アレグレ出身ということもあり、サンパウロのソリッドな部分とミナスの浮遊感を足したような絶妙なサウンド・メイクと、繊細かつ美しいメロディがヴィトールの特徴である。

最新作となる本作「DELIBAB」はホルヘ・ルイス・ボルジェスとジョアン・ダ・クーニャ・ヴェルガスという偉大なる詩人の詩に曲をつけたオマージュ作。普遍的な詩を題材に、都会的な旋律のソング・ライティング、そして色気を放つヴォーカルで、他には無い魅力が全編に渡り発揮されている。ハイライトはカエターノ・ヴェローゾとともに録音したM3「Milonga de los Morenos」。独特の艶やかさを持つ二人の歌声が奏でるバラード・ナンバーは新たな名曲の誕生を思わせる感動的な一曲である。